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【発明の名称】 クロルピクリンを含有する農薬組成物の輸送及び保管方法
【発明者】 【氏名】小澤 修二

【氏名】森安 宏一

【氏名】吉田 武幸

【要約】 【課題】クロルピクリンを含有する農薬を安全に輸送または保管する方法を提供する。

【解決手段】クロルピクリンを含有する農薬を、フェノール樹脂が85重量%以上、98重量%以下の量を含有するフェノール樹脂の塗膜により内側を被覆された金属容器に入れて輸送または保管する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 フェノール樹脂を85〜98重量%含有する塗膜により内側を被覆された金属容器にクロルピクリンを含有する農薬組成物を入れて輸送することを特徴とする、クロルピクリンを含有する農薬組成物の輸送方法。
【請求項2】 農薬組成物がクロルピクリン薫蒸剤である請求項1記載の輸送方法。
【請求項3】 農薬組成物がクロルピクリンと1,3-ジクロルプロペンを含有することを特徴とする請求項1又は2記載の輸送方法。
【請求項4】 フェノール樹脂を85〜98重量%含有する塗膜により内側を被覆された金属容器にクロルピクリンを含有する農薬組成物を入れて保管することを特徴とする、クロルピクリンを含有する農薬組成物の保管方法。
【請求項5】 農薬組成物がクロルピクリン薫蒸剤である、請求項4記載の保管方法。
【請求項6】 農薬組成物がクロルピクリンと1,3-ジクロルプロペンを含有することを特徴とする請求項4又は5記載の保管方法。
【発明の詳細な説明】【発明の属する技術分野】本発明は金属類の腐食性が強く、且つ刺激臭の強いクロルピクリンを含有する農薬を安全に輸送または保管する方法に関する。更に詳しくは、クロルピクリンを含有する農薬を金属容器に入れて安全に輸送または保管する方法に関する。
【従来技術】近年、作物の栽培団地化、特産地化に伴い、連作障害が多発し、栽培農家にとって大きな問題となっている。その防除薬剤として、クロルピクリン(トリクロロニトロメタン)を含有する農薬が有効であり、国内外で幅広く使用されている。クロルピクリンを含有する農薬は、その適応場面に応じて、クロルピクリン薫蒸剤(商品名、ドロクロール、ドジョウピクリンなど)、クロルピクリンと1,3-ジクロロプロペンの混合物(商品名、ネマクロペン油剤、ルーテクト油剤など)、クロルピクリンとダイアジノンの混合物(商品名、サンメボンなど)などがあり、500ml、5L、10L、20Lの容量で、農家に提供されている。クロルピクリンを含有する農薬は土壌病害に対して有効であるが、反面、刺激臭が強く、その取り扱いには注意が必要である。クロルピクリンの一般的性質として、金属に対する腐食性が強いことが知られている。一方で、亜鉛は腐食されないことが知られており、クロルピクリンの容器として、亜鉛メッキを施したブリキ缶、スチールドラムが使用されている。しかし、クロルピクリン中に水が存在すれば、これらの容器も安全でなく、クロルピクリンと気相の境界部分から腐食が始まり、最後はピンホールが生じて、刺激臭が周辺に洩れ出す危険があった。また、クロルピクリンと1,3-ジクロルプロペンの混合物においては、1,3-ジクロルプロペンと亜鉛との接触が好ましくないことが物質安全性データシートに記載されており、亜鉛の使用を回避する必要があった。一方、クロルピクリンを含有する農薬の輸送や保管の容器として、プラスチック容器も知られている。プラスチック容器として、刺激性の高いクロルピクリンに対してガスバリヤー性の高い樹脂であること、及びクロルピクリンに対して耐食性を示す樹脂であることが要求され、ポリアクリロニトリル系の樹脂であるバレックス樹脂容器が開発されている。しかし、この樹脂製容器も500ml容量として使用されているだけで、10L、20Lという、大用量のクロルピクリンを含有する農薬を輸送する場合、強度的に不適である。更に、ポリアクリロニトリル系の樹脂を、金属に被覆しようとした場合、金属との密着性が悪いため、接着剤でバレックス樹脂を貼り付ける作業が必要であり、石油缶などの内部を被覆する樹脂として適していない。
【発明が解決しようとする課題】本発明は、クロルピクリンを含有する農薬を安全に輸送または保存する方法を提供することにある。すなわち、クロルピクリンを含有する農薬の輸送または保管において、プラスチック容器よりも強度的に優れている金属容器を使用するにおいて、クロルピクリンを含有する農薬の品質を劣化させず、且つクロルピクリンの金属に対する腐食を防止して、クロルピクリンを含有する農薬を安全に輸送または保管する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく、樹脂で被覆した金属材料に対するクロルピクリンを含有した農薬の影響について検討を重ねた結果、フェノール樹脂で金属を被覆し、且つ塗膜中にフェノール樹脂が85重量%以上、98重量%以下の量を含有する金属材料がクロルピクリンを含有する農薬に対して十分な耐食性を示すこと、及び、該金属材料がクロルピクリンを含有する農薬の品質劣化を起こさないことを見い出し、その結果、該金属材料をクロルピクリンを含有する農薬の輸送または保管に使用すれば、安全上、優れていることを見い出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、1. フェノール樹脂を85〜98重量%含有する塗膜により内側を被覆された金属容器にクロルピクリンを含有する農薬組成物を入れて輸送することを特徴とする、クロルピクリンを含有する農薬組成物の輸送方法。
2. フェノール樹脂を85〜98重量%含有する塗膜により内側を被覆された金属容器にクロルピクリンを含有する農薬組成物を入れて保管することを特徴とする、クロルピクリンを含有する農薬組成物の保管方法。である。
【発明の実施の形態】本発明に使用する、金属に被覆する塗膜を形成するための樹脂はフェノール樹脂である。ここで言うフェノール樹脂とはフェノール類とホルムアルデヒドを反応させて得られる樹脂で、通常、芳香族炭化水素類、ケトン類、アルコール類などの溶剤の混合物であり、市販されている。フェノール樹脂は単独で金属容器の内側に被覆してもよいが、他の樹脂や硬化剤、可塑剤、安定剤など、通常樹脂に使用されている添加剤と混合して金属容器の内側に被覆してもよい。フェノール樹脂と混合して塗膜とすることができる樹脂として、尿素樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリンフタレート樹脂、珪素樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート、AS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニラン、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリスルホン樹脂、フッ素樹脂などがあげられる。フェノール樹脂を金属に被覆する方法は、一般的に知られている方法、例えば、液状のフェノール樹脂をハケ塗り、あるいはスプレー塗装した後に加熱焼着してフェノール樹脂を金属容器の内側に塗膜として被覆することができる。塗膜中のフェノール樹脂の含有量は85重量%以上、98重量%以下であればよい。本発明で言うフェノール樹脂の含有量が85重量%、及び98重量%とは、被覆する樹脂の成分のうち、溶剤を除いた残分中にフェノール樹脂がそれぞれ85重量%、98重量%含有することを意味する。塗膜中のフェノール樹脂の含有量が多いほど、該塗膜は耐食性を増すが、多すぎると、逆に被覆が脆くなり、樹脂と金属の間で剥離等が起こりやすい。また、該塗膜中にフェノ−ル樹脂の含有量が少ないと、フェノール樹脂以外の成分がクロルピクリンを含有する農薬に溶解し、該農薬の品質低下を引き起こす。また、被覆している樹脂が膨潤したり、樹脂と金属の間で剥離や、ピンホールの発生が起きて、被覆している金属の腐食を生じ、クロルピクリンを運搬または保管する容器として、安全とは言えない。そのため、該塗膜中にフェノール樹脂が85重量%以上、98重量%以下の量を含有するのが好ましい。本発明において使用される金属容器とは、ブリキ缶、スチールドラムなど、金属製であればその材質、大きさは問わない。無論、クロルピクリンを含有する農薬組成物を入れることで保管又は輸送中に漏れなどが起こらない構造であることが必要である。フェノール樹脂で内部を被覆した金属容器に入れて、輸送または保管することのできるクロルピクリンを含有する農薬は、クロルピクリン薫蒸剤、クロルピクリンと1,3-ジクロロプロペンとの混合物、クロルピクリンとダイアジノンの混合物があげられるが、クロルピクリンを含有する農薬であれば、これらに限定されるものでない。かくして、フェノール樹脂で内部を被覆した金属容器にクロルピクリンを含有する農薬を入れて、輸送または保管を行えば、輸送時における強度的な問題は解消される。また、金属を腐食する性質を有しているクロルピクリンに対して、フェノール樹脂で被覆した金属は十分な耐食性を示し、該農薬の長期間の保管にも優れている。フェノール樹脂で被覆する金属は、ブリキ、スチール、ステンレス等、特に限定はないが、安価なものとして、ブリキやスチールが選ばれる。
【実施例】以下に、実施例により、本発明を更に詳述する。
参考例1 フェノール樹脂で被覆した金属材料の製作5mm×50mmのブリキ片の表面に、塗膜中のフェノール樹脂含有量が90重量%のフェノール樹脂(関西ペイント製、SJ-1518M)をスプレーで吹き付け、樹脂中に含まれる溶媒を室温で蒸発させた後、200℃の恒温槽に10分入れ、ブリキ片の表面を被覆した。(金属材料Aとする。)
金属材料Aの他に、実施例、及び比較例として下記の金属材料を製作した。
(B)フェノール樹脂含有量が95重量%のフェノール樹脂で被覆したブリキ片(C)フェノール樹脂含有量が98.5重量%のフェノール樹脂で被覆したブリキ片(D)フェノール樹脂含有量が80重量%のフェノール樹脂で被覆したブリキ片(E)亜鉛メッキを施したブリキ片参考例2 クロルピクリンを含有する農薬の調製下記の組成を有するクロルピクリンを含有する農薬を調製した。
(a)クロルピクリンのみ(b)クロルピクリンと1,3-ジクロロプロペンの混合物(17:74)を灯油で希釈した混合物(商品名:ネマクロペン)
(c)水分が0.05重量%含有したクロルピクリン試験例1 フェノール樹脂で被覆した金属材料の材質試験50mlの透明ガラス製のアンプル瓶に、参考例2で調製したクロルピクリンを含有した農薬を20ml入れ、更に、参考例1で製作した金属材料を加えた。アンプルを封管して、25℃、50℃の恒温槽に保管した。1.5月後、3ヶ月後、6ヶ月後に金属材料の外観を目視した。結果を表-1(表1、表2)に示した。目視結果の表示は次の通りである。
金属材料の腐食の程度H0:腐食なしH1:腐食度小H2:腐食度中H3:腐食度甚大タール発生の程度T0:タールの発生なしT1:タールの発生度小T2:タールの発生度中T3:タールの発生度甚大【表1】

【表2】

試験例2 クロルピクリンを含有する農薬の品質試験参考例1及び参考例2と同様にして作成した、樹脂で被覆した金属材料入りのクロルピクリンを含有する農薬を、25℃の恒温槽に保管した。1.5月後、3ヶ月後、6ヶ月後に、クロルピクリンを含有する農薬の色度(APHA)、及びクロルピクリン濃度を調べた。試験結果を表−2(表3)表−3(表4)〜に示した。
【表3】

【表4】

実施例 16リッターの金属製の蓋付きのブリキ缶を用意し、塗膜中のフェノール樹脂含量が90重量%のフェノール樹脂(関西ペイント製、SJ−1518M)を容器の内側にスプレーで吹き付け、樹脂中に含まれる溶媒を蒸発させた後、200℃の恒温槽に10分間入れた後室温に放置して冷まし、塗膜を形成させた。
【発明の効果】刺激性の高い、且つ、農薬として有用なクロルピクリンを含有する農薬を輸送または保管する場合、本発明の方法で輸送または保管することで、従来から懸念されていた安全上の問題点を解決することができる。その結果、クロルピクリンを含有する農薬を取り扱う運送業者や農家を始め、その周辺住民に対する安全が確保され、産業上、極めて有用である。
【出願人】 【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
【出願日】 平成12年7月10日(2000.7.10)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−20204(P2002−20204A)
【公開日】 平成14年1月23日(2002.1.23)
【出願番号】 特願2000−207639(P2000−207639)