トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業




【発明の名称】 節足動物の標本、その標本の作成方法及び標本の作成用キット
【発明者】 【氏名】野口 牧陽

【氏名】落合 潔

【要約】 【課題】扱いやすく自然に近い節足動物の標本を作成することができる方法を提供する。

【解決手段】節足動物を、プロピレングリコール中で加熱し、次いで節足動物を取り出し、取り出された節足動物をプロピレングリコール含有浸漬液に浸漬することを特徴とする節足動物の標本の作成方法;節足動物を、水中で又は水蒸気で加熱した後、プロピレングリコール含有浸漬液に浸漬し、浸漬標本とすることを特徴とする節足動物の標本の作成方法;節足動物を、水中で又は水蒸気で加熱した後、プロピレングリコール含有浸漬液に浸漬し、次いで節足動物を取り出し、取り出された該節足動物を標本とすることを特徴とする節足動物の標本の作成方法;及びプロピレングリコールを入れた容器を含む節足動物標本の作成用キット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 プロピレングリコールで処理されていることを特徴とする節足動物の標本。
【請求項2】 節足動物を、プロピレングリコール中で加熱し、次いで節足動物を取り出し、取り出された節足動物を標本とすることを特徴とする節足動物の標本の作成方法。
【請求項3】 節足動物を、プロピレングリコール中で加熱し、次いで節足動物を取り出し、取り出された節足動物をプロピレングリコール含有浸漬液に浸漬することを特徴とする節足動物の標本の作成方法。
【請求項4】 節足動物を、水中で又は水蒸気で加熱した後、プロピレングリコール含有浸漬液に浸漬し、浸漬標本とすることを特徴とする節足動物の標本の作成方法。
【請求項5】 節足動物を、水中で又は水蒸気で加熱した後、プロピレングリコール含有浸漬液に浸漬し、次いで節足動物を取り出し、取り出された該節足動物を標本とすることを特徴とする節足動物の標本の作成方法。
【請求項6】 プロピレングリコールを入れた容器を含む節足動物標本の作成用キット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は節足動物の標本、節足動物の標本の作成方法、及び節足動物標本の作成用キットに関する。
【0002】
【従来の技術】節足動物の標本作成、特に昆虫類の標本作成は広くなされている。標本作成は、通常、酢酸エチルなどの薬剤で殺虫し、又は死亡した昆虫個体を、任意の方法で成形し、これを数日から数ヶ月かけて乾燥させ、その後、標本本体を貫いた針で標本を任意の場所に固定するのが一般的である。従来ある標本作成の方法、及びその標本について、以下に示す問題点があった。
■標本本体が乾燥により硬く脆くなっているため、容易に破損する。そのため取り扱いに細心の注意が必要で、一度固定すると多様な角度から眺めたり、手に取ってみることができない。
■標本が古くなるとカブトムシ、クワガタムシなどの眼球部が白変してみずみずしさを失ってしまう。
■乾燥した標本が完成するのに長時間を要し、その間、腐敗の心配があるため湿度に注意を要する。
■標本作成中及び保管中にカツオブシムシなどの食害虫がつくことがあるため、これを防止するのに樟脳などを使用するため悪臭が避けられない。
【0003】昆虫類などの標本の作成方法として、合成樹脂液を昆虫などにコーティングあるいは注入することが提案されている(特開平3−151301号公報、特開昭59−73501号公報、特開昭53−104324号公報)。しかしながら、樹脂をコーティングすることで、昆虫の自然な外観が失われる場合もある。また、樹脂液を作るために有機溶剤を必要とし、人体への害やその臭気の問題がある。さらに、真空ポンプといった装置を必要とする場合もあり、簡便で且つ上記問題点を解消した標本の作成方法は未だ見出されていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術にある上記問題点を克服するとともに、子供をはじめ誰にでも簡単に、節足動物の標本を作成することができる方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、扱いやすく自然に近い節足動物の標本を提供することを目的とする。本発明はまた、上記の標本の作成方法に使用できる節足動物標本の作成用キットを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、プロピレングリコールの有する軟化作用、水分活性低下作用に注目し、これを利用した節足動物の標本の作成方法を検討し、本発明を完成させるに至った。従って本発明は先ず、プロピレングリコールで処理されていることを特徴とする節足動物の標本に向けられている。本発明はまた、節足動物を、プロピレングリコール中で加熱し、次いで節足動物を取り出し、取り出された節足動物を標本とすることを特徴とする節足動物の標本の作成方法に関する。本発明はまた、節足動物を、プロピレングリコール中で加熱し、次いで節足動物を取り出し、取り出された節足動物をプロピレングリコール含有浸漬液に浸漬することを特徴とする節足動物の標本の作成方法に関する。
【0006】プロピレングリコールは引火性を有するので、より安全な方法として、水又は水蒸気によって加熱する前処理が提案できる。従って本発明は、節足動物を、水中で又は水蒸気で加熱した後、プロピレングリコール含有浸漬液に浸漬し、浸漬標本とすることを特徴とする節足動物の標本の作成方法に関する。本発明はまた、節足動物を、水中で又は水蒸気で加熱した後、プロピレングリコール含有浸漬液に浸漬し、次いで節足動物を取り出し、取り出された該節足動物を標本とすることを特徴とする節足動物の標本の作成方法に関する。本発明はさらに、プロピレングリコールを入れた容器を含む節足動物標本の作成用キットに関する。
【0007】
【発明の実施の形態】以下本発明を詳細に説明する。本明細書中において、節足動物とは、動物分類学上、節足動物門に属する動物を意味し、例えば節口類(カブトガニ等)、クモ形類(クモ等)、甲殻類(エビ、カニ等)、唇脚類(ムカデ等)、昆虫類などの綱が含まれる。さらに昆虫類には、甲虫類(カブトムシ等)、膜し類(スズメバチ等)、双し類(ハエ等)、直し類(バッタ等)、半し類(セミ等)、トンボ類、カマキリ類、ゴキブリ類などの目が含まれる。本発明は何れの節足動物にも適用可能であるが、特に昆虫類、とりわけ甲虫類の標本に適している。
【0008】本発明の標本の作成方法を施す節足動物は、例えば酢酸エチルなどの薬剤で死亡させたものでも、自然死したものでもよく、従来の方法のように別途乾燥させる工程を経る必要はない。但し、死後、長期に置くと腐るので、できるだけ早く、死後1〜2日くらいまでに、処置するのが好ましい。もし、すぐに処理できない場合には冷凍庫(−20℃〜−5℃)に保存しておくのが望ましい。
【0009】以下、プロピレングリコールで処理されている節足動物の標本を作成する各方法について工程を追って説明する。
I.節足動物を、プロピレングリコール中で加熱し、次いで節足動物を取り出し、取り出された該節足動物を標本とするか、取り出した該節足動物をプロピレングリコール浸漬液に浸漬して標本とする方法■ 節足動物を、プロピレングリコール中で加熱する。節足動物をプロピレングリコール中で加熱する具体的な態様としては、節足動物を耐熱性容器中でプロピレングリコールに浸漬させて加熱する。ここで、使用する耐熱性容器は、耐熱性のガラスビン、プラスチックバッグ、レトルトバッグなどが挙げられる。これらの耐熱性容器に、処理しようとする節足動物の体重の5倍〜100倍量、好ましくは10倍〜20倍量の質量のプロピレングリコールを入れる。そこへ、あらかじめ洗浄した節足動物の死骸を浸漬させる。1つの耐熱性容器中に、節足動物を1体に限らず、複数体入れてもよい。
【0010】ここで使用するプロピレングリコールに、界面活性剤を添加しておいてもよい。界面活性剤の添加量は、プロピレングリコール100質量部に対し、0.001〜0.1質量部が適当で、好ましくは0.005〜0.05質量部である。界面活性剤としては、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルアミンオキシドなど、家庭用中性洗剤に用いられる一般的な界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の添加に替えて、ポリプロピレングリコールに台所用中性洗剤、例えば商品名モアコンパクト(花王(株)製)などを添加してもよい。
【0011】耐熱性容器を加熱する手段としては、70〜100℃程度で湯煎する、又はオートクレーブによる処理、蒸し器による処理が挙げられる。例えば湯煎するとき、上記の節足動物を入れた耐熱性容器を水に浸して、その水を加熱沸騰させる。オートクレーブによる処理では設定温度を110〜130℃とするのが適当である。プロピレングリコールは引火性があるので、プロピレングリコールを入れた耐熱性容器に直火を施すのは危険である。
【0012】加熱時間は、標本にする節足動物の蛋白質を加熱変性し、自己消化を食い止めるとともに体内の水分をプロピレングリコールによって置換し、水分活性を十分に下げることができる長さであればよい。湯煎する場合は、一般的に、沸騰水中で5〜15分が適当である。加熱中、節足動物体がプロピレングリコールの中に十分に浸漬するようにする。そのため、節足動物体が浮いてくるような場合には、箸などを使って軽くおさえて浸漬するようにする。また加熱しながら形を整えるとよい。
【0013】■ 上記■のように加熱後、節足動物を容器から取り出し、取り出された該節足動物を標本とする。加熱が終了した容器から節足動物を取り出し、ティッシュペーパーやペーパータオルなどに包んで、液分を除くために1〜3日、室温で放置する。その後、形を整えて任意の入れ物に入れて密閉して保存することができる。例えば密閉蓋付きのガラスビン、サンプルビン、プラスティックバッグなどに入れて密閉することができる。また、標本箱に保管したり、ピンを使って固定することもできる。これらの密閉容器内には、脱酸素剤、乾燥剤、保存料、アルコール剤などを入れてもよい。また、開放状態で保管することも可能である。
【0014】■ 上記■のように加熱後、節足動物を取り出し、取り出された節足動物を新たなプロピレングリコール含有浸漬液に再度浸漬して、浸漬状態の標本とする。上記■のように加熱後、そのまま浸漬状態の標本とすることも可能である。しかしながら、加熱工程で節足動物体の死骸を浸漬させたプロピレングリコールは、加熱時死骸からの排出物で濁ることがあるので、そのまま標本に使用するのは好ましくない。そこで、上記■のように加熱後、節足動物を取り出し、取り出された節足動物を、新鮮なプロピレングリコール含有浸漬液に浸漬させて、浸漬状態の標本とする。
【0015】使用するプロピレングリコール含有浸漬液は、プロピレングリコールのみを含むものであってもよいし、プロピレングリコールに酸化防止剤、消臭剤などを添加したものでもよい。酸化防止剤としては、例えばエリソルビン酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、緑茶ポリフェノールなど、公知の水溶性酸化防止剤を使用することができる。酸化防止剤の使用量は、プロピレングリコール100質量部に対し、0.001〜0.1質量部が適当で、より好ましくは0.005〜0.05質量部である。消臭剤としては例えばシャンピニオンエキス、緑茶ポリフェノール、小麦エキスなど、植物抽出エキス類が挙げられる。このように、酸化防止剤及び/又は消臭剤を使用することで、標本の酸化臭(干物様臭気)を抑制する効果がある。酸化防止剤、消臭剤などの添加剤は、先ず微量の水に溶解し、その後プロピレングリコールと混合するのが好ましい。
【0016】上記プロピレングリコール含有浸漬液にはまた、界面活性剤を添加しておくことも好ましく、これによって標本とプロピレングリコールのなじみを早めることができる。界面活性剤の添加量は、プロピレングリコール100質量部に対し、0.001〜0.1質量部が適当で、好ましくは0.005〜0.05質量部である。界面活性剤としては、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルアミンオキシドなど、家庭用中性洗剤に用いられる一般的な界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の添加に替えて、プロピレングリコールに台所用中性洗剤、例えば商品名モアコンパクト(花王(株)製)などを添加してもよい。
【0017】この浸漬に使用するプロピレングリコール含有浸漬液の総使用量(質量)は、節足動物の体重の5倍以上が適当で、好ましくは10倍以上、上限は100倍、好ましくは50倍まで使用する。プロピレングリコール含有浸漬液は上記総量を一度に使用してもよいが、何度かに分けて、例えば2回〜10回にわけて、交換しながら各回2日以上おいて行うと、水/プロピレングリコールの置換が高率よく行われるため、液が節約できる。こうして浸漬標本が完成する。上記のようにして得た浸漬状態の標本は長期間変化なく、浸漬液は透明さを維持する。
【0018】■ 上記■のように作成した浸漬状態の標本から、節足動物を取り出し、これを標本とすることもできる。すなわち、浸漬状態の標本を浸漬液から取り出して保管することができる。この場合は、プロピレングリコール含有浸漬液から節足動物を取り出し、上記■で述べたのと同様の手順により、標本とすることができる。
【0019】II.節足動物を、水中で又は水蒸気で加熱した後、プロピレングリコール含有浸漬液に浸漬し、浸漬標本とするか、上記浸漬後、プロピレングリコール含有浸漬液から節足動物を取り出し、取り出された該節足動物を標本とする方法■ あらかじめ洗浄した節足動物の死骸を水中で又は水蒸気で加熱する。水中又は水蒸気で加熱する態様としては、・容器、例えば鍋、ビーカーなどを使って節足動物を水中で直火で煮沸する;
・節足動物を耐熱性容器中で水に浸漬させて、これを70〜100℃で湯煎する、オートクレーブにかける、又は蒸し器にいれる;
・節足動物をそのまま耐熱性の開放容器に入れてオートクレーブで処理するか、又は蒸し器にかけるなどが挙げられる。
【0020】加熱に用いる水には、界面活性剤を添加しておくことが好ましく、これによって節足動物体と水とのなじみを早め加熱を効率よく行うことができる。界面活性剤の添加量は、水100質量部に対し、0.001〜0.1質量部が適当で、好ましくは0.005〜0.05質量部である。界面活性剤としては、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルアミンオキシドなど、家庭用中性洗剤に用いられる一般的な界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の添加に替えて、水に台所用中性洗剤、例えば商品名モアコンパクト(花王(株)製)などを添加してもよい。
【0021】節足動物の水中での加熱又は水蒸気による加熱は、殺菌及び蛋白質を変性させて、標本の腐敗や自己消化を止めることを目的とする。耐熱性容器としては方法I.の■で説明したのと同様のものを使用することができる。ここで使用する水の量は特に限定されるものではないが、節足動物全体が浸漬するのに十分な量であることが必要である。節足動物の体重の10〜100倍量の水を用いるのが適当である。加熱時間は、標本の腐敗や自己消化を止めるのに十分な時間でよく、一般に5〜20分程度である。オートクレーブによる処理では設定温度を110〜130℃とするのが適当である。
【0022】■ 続いて、節足動物をプロピレングリコール含有浸漬液に浸漬し、浸漬標本とする。使用するプロピレングリコール含有浸漬液の組成は、方法I.■に説明したものと同様であり、酸化防止剤、消臭剤、界面活性剤などを添加したものでもよい。この浸漬は常温で実施する。浸漬には密閉容器を使用することが好ましい。節足動物体内の水分をプロピレングリコールによって置換し、水分活性を十分に下げることができる期間浸漬すれば、標本として完成したことになる。そのような浸漬時間は一般的に1週間〜2週間程度である。使用するプロピレングリコール含有浸漬液の総使用量(質量)は、節足動物の体重の5倍以上が適当で、好ましくは10倍以上、上限は100倍、好ましくは50倍まで使用する。プロピレングリコール含有浸漬液は上記総量を一度に使用してもよいが、何度かに分けて、例えば2回〜10回にわけて、交換しながら各回2日以上おいて行うと、水/プロピレングリコールの置換が高率よく行われるため、液が節約できる。こうして浸漬標本が完成する。この浸漬標本は、いつでも浸漬液から取り出して、以下の■で説明するように処理して非浸漬状態の標本とすることができる。
【0023】■ プロピレングリコール含有浸漬液に浸漬した節足動物を、取り出して、標本とする。プロピレングリコール含有浸漬液は、上記■で使用するものと同様である。また、浸漬に利用する容器なども同様である。浸漬の手順は上記■に説明したように行う。浸漬は常温で実施し、浸漬時間は、節足動物体内の水分をプロピレングリコールによって置換し、水分活性を十分に下げることができる期間であればよい。そのような浸漬時間は一般的に1週間〜2週間程度である。すなわち、使用するプロピレングリコール含有浸漬液の総使用量(質量)は、節足動物の体重の5倍以上が適当で、好ましくは10倍以上、上限は100倍、好ましくは50倍まで使用する。プロピレングリコール含有浸漬液は上記総量を一度に使用してもよいが、何度かに分けて、例えば2回〜10回にわけて、交換しながら各回2日以上おいて行うと、水/プロピレングリコールの置換が高率よく行われるため、液が節約できる。
【0024】上記の浸漬操作後、節足動物を取り出し、上記方法I.■で説明した手順で標本とすることができる。すなわち、取り出した節足動物を、ティッシュペーパーやペーパータオルなどに包んで、液分を除くために1〜3日、室温で放置する。その後、形を整えて任意の入れ物に入れて密閉して保存することができる。例えば密閉蓋付きのガラスビン、サンプルビン、プラスティックバッグなどに入れて密閉することができる。また、標本箱に保管したり、ピンを使って固定することもできる。これらの密閉容器内には、脱酸素剤、乾燥剤、保存料、アルコール剤などを入れてもよい。また、開放状態で保管することも可能である。
【0025】本発明はさらに、プロピレングリコールを入れた容器を含む節足動物標本の作成用キットに向けられている。プロピレングリコールを入れる容器は、プロピレングリコールを保持することができる容器であれば、任意のものでよい。例えば、ガラスビン、プラスチックビン、プラスチックバッグなどである。本発明のキットには、プロピレングリコールを入れた容器の他に、耐熱性容器(例えばプラスチックバッグ)、標本を保存するための容器、及び酸化防止剤、消臭剤、界面活性剤、脱酸素剤、乾燥剤などを入れた包装あるいは容器などを含めることができる。
【0026】
【発明の効果】本発明の節足動物の標本の作成方法により、作成された標本は、関節などがしなやかな物性を持ち、十分に強度がある。そのため、手にとって関節の動きなどを観察することができる。作成された標本は標本作成から長期間経過しても眼球部などが白変せず、みずみずしさを保つ。また、標本作成又は保存の際、カビの発生や腐敗がなく、また、悪臭がない。さらに標本作成工程が短時間で終了し、その工程も簡便である。プロピレングリコールは食品添加物の一種であるので、子供が扱うのにも危険が少なく、本発明は安全性が高いものである。本発明の節足動物標本の作成用キットを使用することで、簡便に良好な標本を作成することができる。
【0027】
【実施例】以下実施例により本発明を詳しく説明する。
【実施例1】自然死したクワガタムシ類のノコギリクワガタ(オス・体長65mm・体重10g・死後48時間以内)およびカブトムシ(オス・体長80mm・体重20g・死後24時間以内)の死骸を、同時に昆虫標本にすることにした。レトルト用スタンディングバッグに400ccにプロピレングリコールを満たした。その中に水道水で表面をよく洗った各死骸を入れた。レトルト用スタンディングバッグを水2リットルを満たしたなべに水煎し、直火でなべを加熱して水を沸騰させた。時々箸で死骸を沈めながら12分間煮沸を続けて加熱を止めた。別に200ccを新たなプロピレングリコールを満たした密栓蓋付きのガラス小ビンを準備し、ここにノコギリクワガタの死骸を移した。ビンを密閉して浸漬した状態で標本として保管したところ、1年経過後も全く変化はなく、良好な保存状態であった。一方カブトムシの死骸は取り出した後、ペーパータオルで5重に包んで3日間放置して液分を切った。この標本を、ガスバリア性のプラスティックバッグに食品用のアルコール保存料とともに入れて、ヒートシーラーで密閉し保管したところ、1年経過後もまったく変化はなく、良好な保存状態であった。また、標本の物性は関節部がしなやかで丈夫であり、手にとって動かしてみることができた。
【0028】
【実施例2】クワガタムシ類のオオクワガタ(オス:体長70mm、体重12g)を昆虫標本とすることにした。オオクワガタの死骸はいったん冷凍庫(−20℃)で2週間保管し、その後取り出して標本作成に供した。容量250ccの耐熱性のガラス容器に200ccのプロピレングリコールを入れた。冷凍庫から出し水道水で表面をよく洗ったオオクワガタの死骸を、上記のプロピレングリコールの中に入れた。このガラス容器を、水2リットルで満たしたなべに水煎し、直火でなべを加熱して水を沸騰させた。時々箸で死骸を転がしながら10分間煮沸を続けて加熱を止めた。別に200ccの新たなプロピレングリコールを満たした密閉蓋付きのガラス小ビンを準備し、ここに、上記のオオクワガタの死骸を移した。ビンを密閉して、プロピレングリコール中に浸漬した状態で標本として保管したところ、1年経過後も全く変化はなく、良好な保存状態であった。
【0029】
【実施例3】実施例2で作成した、プロピレングリコール浸漬状態のオオクワガタ標本を1年後、ビンから取り出し、これをペーパータオルで5重に包んで3日間放置して液分を切った。この標本をガスバリア性のプラスティックバッグに入れて、ヒートシーラーで密閉し保管したところ、更に1年経過後も全く変化はなく、良好な保存状態であった。また、該標本の物性は、関節部がしなやかで丈夫であり、手にとって動かしてみることができた。
【0030】
【実施例4】自然死したクワガタムシ類のヒラタクワガタ(オス・体長60mm・体重8g・死後24時間以内)の死骸を、昆虫標本にすることにした。レトルト用スタンディングバッグに200ccの水および0.1ccの台所用中性洗剤(商品名モアコンパクト、花王(株)製)を満たした。その中に水道水で表面をよく洗った上記昆虫を入れた。レトルト用スタンディングバッグを水2リッターを満たしたなべに水煎し、直火でなべを加熱して水を沸騰させた。時々箸で死骸を沈めながら12分間煮沸を続けて加熱を止めた。別に200ccの下記浸漬液Aを満たした密閉蓋付きのガラス子ビンを準備し、ここにヒラクワガタを移した。
浸漬液A:プロピレングリコール 100g 水 0.2g アルコルビン酸ナトリウム 0.01g 緑茶抽出ポリフェノール 0.01g(上記水にアルコルビン酸ナトリウムと緑茶抽出ポリフェノールを溶解させたものをプロピレングリコールに加えた。)
【0031】ビンを密閉して浸漬した状態で3日経過後、ビンの中の浸漬液Aを新たな浸漬液A(200cc)と交換した。更に1週間保管後、昆虫を取り出しペーパータオルで5重に包んで3日間放置して液分を切った。この標本を食品用の乾燥剤と共に食品保存ビンに密閉して保管したところ、1年経過後もまったく変化はなく、良好な保存状態であった。また、標本の物性は関節部がしなやかで丈夫であり、不快な腐敗臭、酸化臭がなかった。
【0032】
【実施例5】自然死したカブトムシ(オス・体長80mm、体重19g、死後24時間以内)の死骸を、昆虫標本にすることにした。水道水でよく洗った上記昆虫をアルミボールに載せオートクレーブ((株)平山製作所製、HA−300MII)に入れ、121℃、15分の加熱処理をした。自然減圧した後、別に500ccの下記浸漬液Bを満たした密閉蓋付きのガラス子ビンを準備し、ここに標本を移した。
浸漬液B:プロピレングリコール 100g 水 0.2g アルコルビン酸ナトリウム 0.01g 緑茶抽出ポリフェノール 0.01g 中性洗剤(モアコンパクト、花王製) 0.01g(上記水にアルコルビン酸ナトリウムと緑茶抽出ポリフェノールを溶解させたものをプロピレングリコールに加えた。)ビンを密栓して浸漬下状態で保管したところ、1年経過後もまったく変化はなく、良好な保存状態であった。また標本の物性は関節部がしなやかで丈夫であり、不快な腐敗臭、酸化臭がなかった。
【出願人】 【識別番号】000231637
【氏名又は名称】日本製粉株式会社
【出願日】 平成12年7月14日(2000.7.14)
【代理人】 【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔 (外9名)
【公開番号】 特開2002−12501(P2002−12501A)
【公開日】 平成14年1月15日(2002.1.15)
【出願番号】 特願2000−214842(P2000−214842)