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【発明の名称】 農薬被覆稲種子
【発明者】 【氏名】原田 直樹

【氏名】前田 典子

【要約】 【課題】稲の病虫害をほぼ完全に予防し得ると共に、ほぼ均一かつ良好な発芽を簡便に達成することができ、更には健康な苗を得ることができる農薬被覆稲種子を提供する。

【解決手段】農薬により被覆された稲種子において、稲種子が、その籾殻を除去されており、かつ該籾殻が除去された稲種子の表面が、バインダーと農薬を含む混合物により被覆されていることを特徴とする稲種子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 農薬により被覆された稲種子において、稲種子が、その籾殻を除去されており、かつ該籾殻が除去された稲種子の表面が、バインダーと農薬を含む混合物により被覆されていることを特徴とする稲種子。
【請求項2】 籾殻除去後に稲種子が洗浄されていないところの請求項1記載の稲種子。
【請求項3】 稲種子が、オリザ サティバ ヤポニカ、オリザ サティバ ヤバニカ、オリザ サティバ インディカ及びこれらの雑種から成る群から選ばれる一又はそれ以上の稲種子であるところの請求項1又は2記載の稲種子。
【請求項4】 農薬が、殺菌剤及び/又は殺虫剤であるところの請求項1〜3のいずれか一つに記載の稲種子。
【請求項5】 殺菌剤が、籾殻が除去された稲種子1キログラムに対して0.1〜10グラム施与されているところの請求項4記載の稲種子。
【請求項6】 殺虫剤が、籾殻が除去された稲種子1キログラムに対して3〜20グラム施与されているところの請求項4又は5記載の稲種子。
【請求項7】 殺菌剤が、フェニルピロール殺菌剤、アゾール殺菌剤及びストロビルリン殺菌剤より成る群から選ばれる一又はそれ以上の殺菌剤であるところの請求項4〜6のいずれか一つに記載の稲種子。
【請求項8】 殺虫剤が、ネオ‐ニコチノイド殺虫剤、カルバゼート殺虫剤、ピレトロイドエーテル殺虫剤及びピリジンアゾメチン殺虫剤より成る群から選ばれる一又はそれ以上の殺虫剤であるところの請求項4〜7のいずれか一つに記載の稲種子。
【請求項9】 バインダーが、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンより成る群から選ばれる一又はそれ以上のバインダーであるところの請求項1〜8のいずれか一つに記載の稲種子。
【請求項10】 バインダーが、ポリウレタン0〜50重量%とポリビニルアルコール100〜50重量%との混合物であるところの請求項1〜9のいずれか一つに記載の稲種子。
【請求項11】 葉よりも根が先に出る好気性条件下に保持することにより発芽されるところの請求項1〜10のいずれか一つに記載の稲種子。
【請求項12】 20〜40℃において少なくとも3日間保持することにより発芽されるところの請求項11記載の稲種子。
【請求項13】 25〜35℃において4〜9日間保持することにより発芽されるところの請求項11記載の稲種子。
【請求項14】 約30℃に保持することにより発芽されるところの請求項11記載の稲種子。
【請求項15】 稲種子が、葉よりも根が先に出る好気性条件下に保持されるところの請求項1〜14のずれか一つに記載の稲種子の発芽方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、農薬により被覆された稲種子に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、菌類による稲への病害を予防するために播種前に稲種籾、即ち、籾殻が付いたままの稲種子を一又は二以上の殺菌剤の溶液等に浸漬するなどしていた。しかし、該処理では菌類による病害を十分に予防できなかった。また、種子浸漬後の殺菌剤溶液の廃棄に伴う公害問題及び殺菌剤損失が多いと言う経済的問題をも有していた。更には、播種後の菌類による害を完全に防止するためには播種後にも再び殺菌剤の散布が必要であり、かつ、播種後の害虫による食害を防止するために殺虫剤の散布も必要であった。
【0003】上記の問題を解決する目的で、稲種籾を殺菌剤で被覆することが行われた。しかし、該方法においても十分な問題の解決には至っていない。
【0004】また、稲種籾を発芽させるためにはまず、種子に十分吸水させることが必要である。稲種籾はその外側が籾殻で覆われているため、籾殻を通して種子内部に十分吸水させて均一な発芽を得るためには、相当期間、種子を水に浸漬する必要があった。
【0005】従来の農薬で被覆した稲種籾では、通常、まず稲種子に籾殻が付いたまま、籾殻の上からバインダーと農薬を含む混合物により被覆した後、殺菌剤を含む水に約1日間浸漬して、付着した菌類を殺菌する。次いで、該殺菌剤を含む水を廃棄して、純粋な水に取り換えた後、水を循環しつつ、稲種子の発芽を待つ。水の循環開始から通常約3日後に、稲種子は葉の部分から発芽活動を開始し、いわゆるピジョンブレスト状態となる。得られたピジョンブレスト状態の稲種子は、所定の容器に敷き詰められた土壌に播かれて3〜7日間暗所において育成される。この間に根が出るが、先に発芽していた葉は更に大きく成長し、根の少しの伸長に比べて葉が著しく大きく伸長した状態になる。このように発芽成長した状態の稲種子は続いて容器ごと暗所から温室のような明所に移され、以下定法に従って栽培・育成される。しかし、このような方法では、発芽までに相当期間の水への浸漬が必要であり、かつこのようにして発芽された稲種子は、一般に、成長にバラツキがあり、病気に罹り易い。更に、発芽過程で使用した殺菌剤を含む水を廃棄する必要があり、公害問題及び殺菌剤の損失と言う問題をも有する。加えて、該方法において、稲種子から出たばかりの根は殺虫剤の化学毒性に比較的弱く、発芽後、根が未だ小さいうちに殺虫剤を使用すると該毒性により根の伸長が阻害され稲の成長が遅くなり、従って、根がかなり伸長した後でなければ殺虫剤を使用することができず、その間に折角発芽した稲が害虫に食害されると言う問題もあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、稲の病虫害をほぼ完全に予防し得ると共に、ほぼ均一かつ良好な発芽を迅速に達成することができ、更には健康な苗を得ることができる農薬被覆稲種子を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記種々の問題が如何なる理由により生ずるかについて鋭意検討した。発芽までの相当期間の水への浸漬は、籾殻を通して種子に十分水を含ませて発芽を可能な限り均一にするためには必須ではあるが、余り長くすれば作業効率が悪くなり、その一方、短くすれば水の吸収が均一でなくなり発芽にバラツキが生ずる。一方、種籾から籾殻を除去すれば水への浸漬は不用になるが、発芽の間に激しくカビが発生し、そして50%を超える量の稲種子が発芽中に死滅することが分かった。根を葉より先に出させることにより幼根が慣用法におけるよりも殺虫剤に強くなり、殺虫剤を殺菌剤と一緒に被覆することが可能となり、殺虫剤の効力を発芽直後から発揮させることができる。
【0008】本発明者は、かかる知見に基づき、更に、検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】即ち、本発明は、(1)農薬により被覆された稲種子において、稲種子が、その籾殻を除去されており、かつ該籾殻が除去された稲種子の表面が、バインダーと農薬を含む混合物により被覆されていることを特徴とする稲種子である。
【0010】特許第2866921号公報には、稲種子を脱ぷして、種子伝染性病原菌が潜在しているもみ殻を除去し、洗浄して得られるほぼ無菌の稲玄米の外表面を、農薬で消毒することなく人工被膜で被覆してなることを特徴とする無病化稲玄米人工被膜種子が記載されている。該特許では、籾殻が除去された稲種子を水等で洗浄して籾殻に付着している菌が玄米を汚染しないようにすること及び農薬の使用量を極力低減するために籾殻が除去された稲種子を農薬で消毒しないことが必須である。一方、本願発明では、籾殻が除去された稲種子の洗浄及び浸漬は必須ではない。本願発明では、籾殻が除去された稲種子の表面を農薬により被覆する。即ち、農薬で被覆することにより、稲種子の外表面が農薬により消毒されることになるため、籾殻を除去した後の余計な洗浄が不要となるのである。
【0011】上記特許発明では、籾殻を除去する故に籾殻に存在する病原菌を除去することはできる。しかし、稲種子への病原菌は、籾殻のみならず、土壌、水、空気等にも存在している。従って、上記特許発明においては、土壌に播種した後に、例えば、従来から行われている慣用的な方法でこれらの病原菌に対処する必要がある。一方、本願発明では、籾殻が除去された稲種子の表面を農薬で被覆していることから、籾殻に存在する病原菌、更に、土壌、水、空気等に存在する病原菌の全てに対処し得るのである。
【0012】従って、上記特許発明とは異なり、病原菌に対処するための更なる処置が不要であるという利点を有する。そして、本願発明では、籾殻が除去された稲種子を農薬で被覆しても、結果的に農薬の全使用量は減少するのである。
【0013】
【発明の実施の形態】好ましい態様として、(2)籾殻除去後に稲種子が洗浄されていないところの上記(1)記載の稲種子、(3)稲種子が、オリザ サティバ ヤポニカ、オリザ サティバ ヤバニカ、オリザ サティバ インディカ及びこれらの雑種から成る群から選ばれる一又はそれ以上の稲種子であるところの上記(1)又は(2)記載の稲種子、(4)農薬が、殺菌剤及び/又は殺虫剤であるところの上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の稲種子、(5)殺菌剤が、籾殻が除去された稲種子1キログラムに対して0.1〜10グラム施与されているところの上記(4)記載の稲種子、(6)殺虫剤が、籾殻が除去された稲種子1キログラムに対して3〜20グラム施与されているところの上記(4)又は(5)記載の稲種子、(7)殺菌剤が、フェニルピロール殺菌剤、アゾール殺菌剤及びストロビルリン殺菌剤より成る群から選ばれる一又はそれ以上の殺菌剤であるところの上記(4)〜(6)のいずれか一つに記載の稲種子、(8)殺虫剤が、ネオ‐ニコチノイド殺虫剤、カルバゼート殺虫剤、ピレトロイドエーテル殺虫剤及びピリジンアゾメチン殺虫剤より成る群から選ばれる一又はそれ以上の殺虫剤であるところの上記(4)〜(7)のいずれか一つに記載の稲種子、(9)バインダーが、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンより成る群から選ばれる一又はそれ以上のバインダーであるところの上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の稲種子、(10)バインダーが、ポリウレタン0〜50重量%とポリビニルアルコール100〜50重量%との混合物であるところの上記(1)〜(9)のいずれか一つに記載の稲種子、(11)葉よりも根が先に出る好気性条件下に保持することにより発芽されるところの上記(1)〜(10)のいずれか一つに記載の稲種子、(12)20〜40℃において少なくとも3日間保持することにより発芽されるところの上記(11)記載の稲種子、(13)25〜35℃において4〜9日間保持することにより発芽されるところの上記(11)記載の稲種子、(14)約30℃に保持することにより発芽されるところの上記(11)記載の稲種子、(15)稲種子が、葉よりも根が先に出る好気性条件下に保持されるところの上記(1)〜(14)のいずれか一つに記載の稲種子の発芽方法を挙げることができる。
【0014】稲種子として、好ましくはオリザ サティバ ヤポニカ(Oryza sativa japonica)、オリザ サティバ ヤバニカ(Oryza sativajavanica)、オリザ サティバ インディカ(Oryza sativaindica)及びこれらの雑種から成る群から選ばれる一又はそれ以上が使用される。
【0015】本発明において籾殻を稲種子から除去する方法については、稲種子を破損したり、あるいは大きく傷つけたりしなければ特に制限はなく、公知の方法を使用することができる。例えば、二本ロールを使用して籾殻を除去する方法が通常使用され得る。その一例を挙げれば下記の通りである。まず、互いに異なる回転速度及び互いに異なる回転方向を持ち、かつ所定のロール間隔を有する二本ロール間を稲種籾が通過される。すると、二本のロールと稲種籾との間に、籾殻が除去されるために適した摩擦が生じ、籾殻が稲種子から除去される。上記操作により稲種子から籾殻が完全に除去されないときには、更に、稲種子は二本ロール間に通過される。この場合の二本ロールは、上記と同一の回転速度及びロール間隔を有するものでもよいし、あるいは上記とは異なる回転速度及びロール間隔を有するものであってもよい。これらの回転速度及びロール間隔は当業者により適宜決定され得る。該二本ロールとしては市販品を使用することができ、例えば、井関農機株式会社製、MPS50、MP50、MP40、MPC40、MPC35(いずれも商標)等のMP、MPS及びMPCシリーズ、LTA10、LTA15、LTA20、LTA30(いずれも商標)等のLTAシリーズ及びMX−300Pearlmate(商標)等のMXシリーズ、ヤンマーディーゼル株式会社製、SY3700D、SY3700DC、NR3700SD(いずれも商標)等の5HPシリーズ、並びに株式会社佐竹製作所製、HT10PP、HR10PN、HR10N、THU35A(いずれも商標)等が挙げられる。
【0016】稲種籾から籾殻を除去すると稲種籾に比べて稲種子への水の吸上げがより速くかつ均一になり、かつ比較的広い範囲の温度で発芽させることができる。籾殻を除去された稲種子は、バインダーと農薬を含む混合物により被覆される前及び後は、好ましくは、15〜25℃における空気中30〜40%の相対湿度下に貯蔵される。
【0017】農薬としては、殺菌剤、殺虫剤、殺生物剤、消毒剤、病原体を制御するために有益な生物体等が使用され、好ましくは殺菌剤及び/又は殺虫剤が使用される。
【0018】殺菌剤、殺虫剤としては、当業者に公知のものが使用され得る。殺菌剤としては、好ましくはフェニルピロール殺菌剤、例えばフェンピクロニル、フルディオキソニル等、アゾール殺菌剤、例えばトリフルミゾール、プロピコナゾール、テブコナゾール等、ストロビルリン殺菌剤、例えばアゾキシストロビン等が使用される。市販品として、Rovral(商標、Rhone-Poulenc製)、Ridomyl MZ(商標、Novartis Agro製)、Healthied(商標、Kube製)、Trifmine WP(商標、日産化学工業株式会社製)、Homai(商標、日本曹達株式会社製)、Homaicoat(商標、日本曹達株式会社製)、Benlate‐T(商標、DuPont製)、Benlate 50 WP(商標、DuPont製)、Thionock 50(商標)、Daconil(商標)、Kes(商標)、Spaglin(商標)、Dacolate(商標)、Orthocide(商標)、Savior(商標、Novartis Agro製)等が挙げられ、特に好ましくは、Rovral、Ridomyl MZ、Healthied、Trifmine WP、Saviorが使用される。
【0019】殺虫剤としては、好ましくはネオ‐ニコチノイド殺虫剤、例えばイミダクロプリッド、アセタミプリッド、チアメトキサン等、カルバゼート殺虫剤、例えばビフェナゼート等、ピレトロイドエーテル殺虫剤、例えばエトフェンプロックス、フルフェンプロックス等、ピリジンアゾメチン殺虫剤、例えばピメトロジン等が使用され、市販品として、Mospilan(商標、日本曹達株式会社製)、Actara(商標、Novartis Agro製)、Cruiser(商標、Novartis Agro製)、Trebon(商標、三井化学株式会社製)、Gaucho(商標、日本バイエル製)、Admire(商標、日本バイエル製)、Confidor(商標、日本バイエル製)、Provado(商標、日本バイエル製)、Best Guard(TI‐435)(商標、武田薬品工業株式会社製)、AKD‐1022(商標、Agro‐Kanesho製)等が挙げられる。また、Baidit 2(商標)、Baidit3(商標)、Padan WS(商標)等を使用することもできる。
【0020】殺生物剤としては、例えば、Acticide 45、Acticide CSP、Acticide EW(いずれも商標、Thor Industries製)が挙げられ、消毒剤としては、例えば、アルコール、次亜塩素酸ナトリウム、トリリン酸カリウム/ナトリウムが挙げられ、及び病原体を制御するために有益な生物体としては、例えば、Trichoderma harzianum、Bacillus subtillus、Gliocladium virens等が挙げられる。
【0021】施与される殺菌剤又は殺虫剤の量は、いずれも殺菌剤又は殺虫剤の種類等に依存するが、殺菌剤は、籾殻が除去された稲種子1キログラムに対して、好ましくは0.1〜10グラム、特に好ましくは0.5〜2グラムで稲種子表面に施与され、殺虫剤は、籾殻が除去された稲種子1キログラムに対して、好ましくは3〜20グラム、特に好ましくは5〜10グラムで稲種子表面に施与される。上記範囲内で、好ましくは放出速度の遅い殺菌剤及び/又は殺虫剤を使用すれば、播種後、2〜4月間その効力を持続することができる。効力持続期間は、従来、通常の殺菌剤では約2週間、特殊な殺菌剤では2〜4月であり、また、殺虫剤では約2月である。本発明によれば効力持続期間は上記従来のものに比べて一般的に長くできる。
【0022】施与される生物致死剤及び消毒剤の量はいずれも、籾殻が除去された稲種子1キログラムに対して、好ましくは0.1〜10グラム、特に好ましくは0.5〜2グラムである。また、病原体を制御するために有益な生物体の施与量は、籾殻が除去された稲種子1キログラムに対して、好ましくは1×107〜1×1010CFU、特に好ましくは5×108〜5×109CFUである。ここで、CFU(コロニー形成単位)は、ペトリ皿における寒天培地で培養したときにコロニーを形成する該生物体の生菌数である。
【0023】本発明の稲種子は、上記の殺菌剤、殺虫剤等に加えて更に他の物質、例えば、殺鼠剤;除草剤;誘引剤;忌避剤;植物成長調整剤、例えばジベレリン酸(GA3)、オーキシン、サイトカイニン等;栄養剤、例えば硝酸カリウム、硫酸マグネシウム、鉄分等;ホルモン剤;顔料;フィラー;ワックス;酸化又は抗酸化剤;活性炭;界面活性剤;展着剤;遺伝子活性剤、例えばBRX−156(Biorex製);全体的抵抗活性剤、例えばBion(Novartis Agro製)、Messenger(Cornel University、Eden Bioscience製);植物成長促進剤、例えばGrow Ace(雪印製)、Tachigare(三共化学製);その他、例えばキトサン、種子抽出物、植物抽出物、ミネラルを施与されていてもよい。
【0024】上記の殺菌剤、殺虫剤等を、籾殻が除去された稲種子に結合するためにバインダーが使用される。該バインダーとしては公知のものを使用することができる。溶媒として水を使用するに際しては、好ましくは水溶性バインダー、又は水に乳化若しくは懸濁可能なバインダーが使用され得る。該バインダーとしては、例えば、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースポリマー、キチン、ポリ塩化ビニリデン、水分散性ポリアクリル樹脂、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、アクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、多糖類、デンプン、ガムタイプバインダー等が挙げられる。好ましくはポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水分散性ポリアクリル樹脂、ポリウレタンが使用される。上記のバインダーは単独で使用してもよく又は二以上を組合せて使用してもよい。
【0025】上記の好ましいバインダーを使用することにより、バインダー中に含められる殺菌剤、殺虫剤の効力を徐々に発揮することができて、効力を長期間に亘って持続せしめることができる。また、複数のバインダー、例えば、ポリビニルアルコールとポリウレタンとを組合せることができる。好ましくは、ポリウレタン0〜50重量%とポリビニルアルコール100〜50重量%との混合物を使用することにより、殺菌剤、殺虫剤の放出速度を適宜コントロールすることができる。
【0026】稲種子表面に施与されるバインダー量は、バインダーの種類により多少異なるが、通常、籾殻が除去された稲種子1キログラムに対して、通常0.3〜30グラム、好ましくは0.5〜10グラム、特に好ましくは1〜6グラムである。例えば、ポリビニルアセテートでは、籾殻が除去された稲種子1キログラムに対して、好ましくは1〜20グラム、より好ましくは2〜10グラム、特に好ましくは3〜6グラムであり、ポリビニルアルコールでは、好ましくは0.3〜20グラム、より好ましくは0.5〜4グラム、特に好ましくは1〜2グラムであり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースでは、好ましくは0.5〜14グラム、より好ましくは1〜7グラム、特に好ましくは2〜4グラムであり、そしてポリビニルピロリドンでは、好ましくは0.5〜12グラム、より好ましくは1〜6グラム、特に好ましくは1.5〜3グラムである。上記下限未満では、殺菌剤、殺虫剤等の必要量を籾殻が除去された稲種子に良好に施与するのが困難である。
【0027】本発明において、籾殻が除去された稲種子の表面に殺菌剤及び/又は殺虫剤を被覆する方法は、特に限定されず、公知の方法を使用することができる。例えば、殺菌剤及び/又は殺虫剤及びバインダー等を、溶媒好ましくは水に溶解、乳化若しくは懸濁した溶液、乳化液又は懸濁液を、籾殻が除去された稲種子にスプレーする方法、あるいは上記溶液、乳化液又は懸濁液に籾殻が除去された稲種子を浸漬する方法が挙げられる。好ましくはスプレーにより被覆される。スプレー被覆装置としては、例えば、Seed Processing Holland 製、型式:9300.00.00、9310.00.00、9320.00.00、9330.00.00等の回転グラニュレーター型コーティング機、Satec(ドイツ国)製、型式Satec Concept 3.10、Cimbria Heid GmbH(オーストリア国)製、型式Centricoater CC20、Willy Niklas(ドイツ国)製、型式W.N.5/500、Gustaphson(米国)製が使用され得る。
【0028】上記のようにして殺菌剤及び/又は殺虫剤により被覆された稲種子は、次いで乾燥される。被覆された稲種子の良好な品質を維持するために、該種子は、好ましくは30〜50℃において、空気中、好ましくは30〜40%の相対湿度における平衡に達するまで乾燥される。
【0029】このようにして得られた本発明の農薬被覆稲種子は、所定の容器に敷き詰められた通常の稲種子の発芽のために使用されている土壌に播かれて、そして下記の条件下に保持されて発芽させられる。
【0030】本発明において、農薬により被覆された稲種子は、葉よりも根が先に出る好気性条件下で発芽させられる。ここで好気性条件とは、稲種子の被覆表面近傍の雰囲気の酸素濃度が好ましくは1.0体積%以上、より好ましくは3.0体積%以上、特に好ましくは酸素濃度5.0体積%以上である条件を言う。稲種子が土に覆われている場合にも、稲種子の被覆表面近傍の雰囲気の酸素濃度を言い、土に含まれる酸素は考慮されない。上記下限未満の嫌気性雰囲気下、例えば、従来から行われている水中(20〜30℃、大気圧下で酸素濃度約5〜15ppm)での発芽では、稲種子からの根の伸長に比べて葉の伸長が著しく、成長も不揃いになり易く好ましくない。
【0031】本発明の殺菌剤及び/又は殺虫剤により被覆された稲種子は、稲種子の被覆表面近傍を好気性条件に保持すれば、稲種子の被覆内面、即ち、籾殻が取り除かれた種子の表面をも容易に好気性条件に保持することができる。従って、発芽に不揃いが生じることなく、稲種子からの葉の伸長に比べて根の伸長が早くかつ著しく、稲の良好かつ健全な成長を達成することができる。
【0032】上記好気性条件は、好ましくは20〜40℃、より好ましくは25〜35℃、特に好ましくは30〜35℃の温度において、通常、稲種子が土壌に播種されてからいわゆる胚発生を生じそして発芽するまでの期間、好ましくは少なくとも3日間、特に好ましくは4〜9日間保持される。これにより、稲種子の発芽を促進し、かつ発芽をより斉一化することができる。
【0033】好ましくは、播種後の稲種子はバーミキュライト等により覆うことができる。また、播種後の土壌には、通常の農薬処理を施すこともできる。播種後の潅水は、土壌が湿気を保持している程度であれば十分であり、過剰の水分を与えたり、あるいは種子が水没するほどの状態は、上記の好気性条件の維持が困難となり、嫌気性条件を生じ易く避けられなければならない。また、本発明では、従来の農薬で被覆した稲種籾のように所定期間暗所に保管して育成する必要はなく、環境光下に置いて発芽され得る。
【0034】このようにして発芽された稲種子は、以下、定法に従って栽培・育成される。
【0035】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0036】
【実施例】
【対照例1】稲種籾(コシヒカリ)から、二本ロール(MX−300 Pearlmate、商標、井関農機株式会社製)を使用して、籾殻を除去した。
【0037】次いで、該籾殻が除去された稲種子を水等により洗浄することなしに、室温で下記の表1に示したコーティング液(A)をスプレーし、次いで、乾燥することによりポリビニルアセテート(バインダー)により被覆された稲種子を得た。スプレーコーティングは、回転グラニュレーター型コーティング機(Seed Processing Holland 製、型式:9320.00.00)を使用して実施し、乾燥は、相対湿度30%の条件下において30〜40℃の空気流により実施した。ここで、コーティング液(A)の使用量は、籾殻が除去された稲種子1kgに対して40gであり、そして、籾殻が除去された稲種子の表面に施与されたポリビニルアセテート(バインダー)の量は、籾殻が除去された稲種子1kgに対して4.8gであった。
【0038】
【表1】
<コーティング液(A)> 成 分 含有量(重量%)
ポリビニルアセテート(バインダー) 12.0 水 88.0【0039】次に、上記の籾殻が付いたままの稲種籾、該稲種籾から籾殻を除去した稲種子、及び該籾殻を除去した稲種子をコーティング液(A)により処理した稲種子の夫々100粒を、プラスチック容器中に置かれた、60ccの水で浸された50層に折畳まれた濾紙(Schleicher and Schuel製)上に夫々播種し、そして、該好気性条件下に、温度20℃の暗所に16時間、次いで、温度30℃の明所に8時間保持する操作を繰り返し10日間実施した(条件1)。その後、発芽成長した苗が健康か否かを目視により判断した。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
<発芽した苗の状態> 稲種子の種類 健康な苗の割合籾殻が付いたままの稲種籾 64%稲種籾から籾殻を除去した稲種子 78%籾殻を除去した稲種子をコーティング液(A)により処理した稲種子 94%【0041】以上のように、発芽条件1において籾殻を除去した稲種子をコーティング液(A)により処理した稲種子、即ちポリビニルアセテート(バインダー)により被覆された稲種子は、籾殻が付いたままの稲種籾及び稲種籾から籾殻を除去した稲種子に比べてより多くの健康な苗を与えた。
【0042】
【実施例1】対照例1のようにして得られた籾殻が除去された稲種子を水等により洗浄することなしに、下記の表3に示したコーティング液(B)をスプレーし、次いで、乾燥することによりimidacloprid(殺虫剤)を含むポリビニルアセテート(バインダー)により被覆された稲種子を得た。スプレーコーティング及び乾燥は上記対照例1と同様にして実施した。ここで、コーティング液(B)の使用量は、籾殻が除去された稲種子1kgに対して56gであり、そして、籾殻が除去された稲種子の表面に施与されたimidacloprid(殺虫剤)及びポリビニルアセテート(バインダー)の量は、籾殻が除去された稲種子1kgに対して、夫々5.6g及び4.8gであった。
【0043】
【表3】
<コーティング液(B)> 成 分 含有量(重量%)
Gaucho 70WS(商標、殺虫剤、imidaclopridを70重量%含有する)
14.3 ポリビニルアセテート(バインダー) 8.6 水 77.1【0044】次に、上記の籾殻が付いたままの稲種籾、籾殻を除去した稲種子をコーティング液(A)により処理した稲種子、及び籾殻を除去した稲種子をコーティング液(B)により処理した稲種子の夫々100粒を、ポット中の土壌に夫々播種し、そして、該好気性条件下に、温度30℃の暗所に3日間、次いで、温度20℃の明所に10日間保持した(条件2)。imidaclopridによる薬害の有無について発芽成長した苗が健康か否かを目視により判断した。結果を表4に示す。
【0045】
【表4】
<発芽した苗の状態> 稲種子の種類 健康な苗の割合籾殻が付いたままの稲種籾 77%籾殻を除去した稲種子をコーティング液(A)により処理した稲種子 75%籾殻を除去した稲種子をコーティング液(B)により処理した稲種子 75%【0046】以上のように、条件2で発芽させると、籾殻を除去した稲種子をコーティング液(A)により処理した稲種子では、発芽条件1で発芽させたときに比べて健康な苗の割合は低下した。しかし、条件2における籾殻が付いたままの稲種籾の健康な苗の割合と比べて、コーティング液(A)により処理した稲種子の健康な苗の割合は殆ど変らなかった。また、条件2において、籾殻を除去した稲種子をコーティング液(B)により処理した稲種子の健康な苗の割合は、コーティング液(A)により処理した稲種子の健康な苗の割合と同じであり、imidaclopridによる薬害が殆どなく、かつ籾殻が付いたままの稲種籾に匹敵する良好な発芽状況が得られることが分かった。
【0047】
【実施例2】稲種籾(アキタコマチ)から、二本ロール(MX−300 Pearlmate、商標、井関農機株式会社製)を使用して、籾殻を除去し、籾殻が除去された稲種子を得た。
【0048】次いで、該籾殻が除去された稲種子を水等により洗浄することなしに、室温で下記の表5に示したコーティング液(C)をスプレーし、次いで、乾燥することによりバインダーにより被覆された稲種子を得た。スプレーコーティング及び乾燥は上記対照例1と同様にして実施した。ここで、コーティング液(C)の使用量は、籾殻が除去された稲種子1kgに対して69gであり、そして、籾殻が除去された稲種子の表面に施与されたpefurazoate(殺菌剤)、imidacloprid(殺虫剤)及びポリビニルアセテート(バインダー)の量は、籾殻が除去された稲種子1kgに対して、夫々0.2g、11.2g及び4.8gであった。
【0049】
【表5】
<コーティング液(C)> 成 分 含有量(重量%)
Healthied 20(商標、殺菌剤、pefurazoateを20重量%含有する)
1.4 Gaucho 70WS(商標、殺虫剤、imidaclopridを70重量%含有する)
23.2 ポリビニルアセテート(バインダー) 7.0 水 68.4【0050】次に、上記の籾殻が付いたままの稲種籾、該稲種籾から籾殻を除去した稲種子、上記の籾殻を除去した稲種子をコーティング液(A)により処理した稲種子、及び籾殻を除去した稲種子をコーティング液(C)により処理した稲種子の夫々100粒を、プラスチック容器中に置かれた、60ccの水で浸された50層に折畳まれた濾紙(Schleicher and Schuel製)上に夫々播種し、そして、該好気性条件下に、温度20℃の暗所に16時間、次いで、温度30℃の明所に8時間保持する操作を繰り返し7日間実施した(条件3)。その後、発芽成長した苗が健康か否かを目視により判断した。結果を表6に示す。
【0051】
【表6】
<発芽した苗の状態> 稲種子の種類 健康な苗の割合籾殻が付いたままの稲種籾 78%稲種籾から籾殻を除去した稲種子 89%籾殻を除去した稲種子をコーティング液(A)により処理した稲種子 95%籾殻を除去した稲種子をコーティング液(C)により処理した稲種子 95%【0052】本実施例の発芽条件3は、条件1の繰返しの操作を10日間から7日間に短縮したものである。本実施例では稲種籾としてアキタコマチを使用した。籾殻を除去した稲種子をコーティング液(A)により処理した稲種子、即ちポリビニルアセテート(バインダー)により被覆された稲種子は、籾殻が付いたままの稲種籾及び稲種籾から籾殻を除去した稲種子に比べてより多くの健康な苗を与えた。これは上記の条件1の場合と同様の結果であった。また、籾殻を除去した稲種子をコーティング液(C)により処理した稲種子、即ち、ポリビニルアセテート(バインダー)、殺菌剤(pefurazoate)及び殺虫剤(imidacloprid)により被覆された稲種子の健康な苗の割合は、籾殻が付いたままの稲種籾及び稲種籾から籾殻を除去した稲種子に比べてより大きく、かつコーティング液(A)により処理した稲種子の健康な苗の割合とほぼ同じである。即ち、薬害のない良好な発芽状況が得られる。
【0053】
【実施例3】実施例2と同じ籾殻が除去された稲種子についてコーティング液(D)を用いた他は実施例2を繰り返した。コーティング液(D)の使用量は、籾殻が除去された稲種子1kgに対して69gであり、そして、籾殻が除去された稲種子の表面に施与されたpefurazoate(殺菌剤)、imidacloprid(殺虫剤)及びポリビニルピロリドン(バインダー)の量は、籾殻が除去された稲種子1kgに対して、夫々0.2g、11.2g及び2.0gであった。
【0054】
【表7】
<コーティング液(D)> 成 分 含有量(重量%)
Healthied 20(商標、殺菌剤、pefurazoateを20重量%含有する)
1.4 Gaucho 70WS(商標、殺虫剤、imidaclopridを70重量%含有する)
23.0 ポリビニルピロリドン(バインダー) 2.9 水 72.5【0055】次に、実施例2と同じに発芽状況を調査した(条件3)。その後、発芽成長した苗が健康か否かを目視により判断した。結果を表8に示す。
【0056】
【表8】
<発芽した苗の状態> 稲種子の種類 健康な苗の割合籾殻を除去した稲種子をコーティング液(D)により処理した稲種子 96%【0057】籾殻を除去した稲種子をコーティング液(D)により処理した稲種子、即ち、ポリビニルピロリドン(バインダー)、殺菌剤(pefurazoate)及び殺虫剤(imidacloprid)により被覆された稲種子の健康な苗の割合は、籾殻が付いたままの稲種籾及び稲種籾から籾殻を除去した稲種子に比べてより良好であり、かつコーティング液(A)により処理した稲種子の健康な苗の割合とほぼ同じであり、薬害のない良好な発芽状況が得られることが分かった。
【0058】
【実施例4】対照例1のようにして得られた籾殻が除去された稲種子を水等により洗浄することなしに、下記の表9に示したコーティング液(E)をスプレーし、次いで、乾燥することによりfludioxonil(殺菌剤)を含むポリビニルピロリドン(バインダー)により被覆された稲種子を得た。スプレーコーティング及び乾燥は上記対照例1と同様にして実施した。ここで、コーティング液(E)の使用量は、籾殻が除去された稲種子1kgに対して41gであり、そして、籾殻が除去された稲種子の表面に施与されたfludioxonil(殺菌剤)及びポリビニルピロリドン(バインダー)の量は、籾殻が除去された稲種子1kgに対して、夫々0.2g及び2gであった。
【0059】
【表9】
<コーティング液(E)> 成 分 含有量(重量%)
Savior(商標、殺菌剤、fludioxonilを20重量%含有する) 2.4 ポリビニルピロリドン(バインダー) 4.9 水 92.7【0060】次に、上記の籾殻を除去した稲種子、及び上記の籾殻を除去した稲種子をコーティング液(E)により処理した稲種子の夫々100粒を、条件1を使用して発芽成長させた。その後、発芽成長した苗が健康か否かを目視により判断した。結果を表10に示す。
【0061】
【表10】
<発芽した苗の状態> 稲種子の種類 健康な苗の割合稲種籾から籾殻を除去した稲種子 78%籾殻を除去した稲種子をコーティング液(E)により処理した稲種子 91%【0062】以上のように、籾殻を除去した稲種子をコーティング液(E)により処理した稲種子の健康な苗の割合は、籾殻を除去した稲種子の健康な苗の割合より高く、fludioxonilによる薬害が殆どなく、籾殻を除去した稲種籾に優る良好な発芽状況が得られることが分かった。
【0063】
【実施例5】下記の表11に示したコーティング液(F)を使用した以外は、実施例4を繰り返した。コーティング液(F)の使用量は、籾殻が除去された稲種子1kgに対して48.85gであり、そして、籾殻が除去された稲種子の表面に施与されたfludioxonil(殺菌剤)、thiametoxam(殺虫剤)及びポリビニルピロリドン(バインダー)の量は、籾殻が除去された稲種子1kgに対して、夫々0.2g、5.5g及び2.0gであった。
【0064】
【表11】
<コーティング液(F)> 成 分 含有量(重量%)
Savior(商標、殺菌剤、fludioxonilを20重量%含有する) 2.0 Cruiser(商標、殺虫剤、thiametoxamを70重量%含有する) 16.1 ポリビニルピロリドン(バインダー) 4.1 水 77.8【0065】次に、実施例4と同じに発芽状況を調査した。即ち、発芽成長した苗が健康か否かを目視により判断した。結果を表12に示す。
【0066】
【表12】
<発芽した苗の状態> 稲種子の種類 健康な苗の割合籾殻を除去した稲種子をコーティング液(F)により処理した稲種子 88%【0067】籾殻を除去した稲種子をコーティング液(F)により処理した稲種子、即ち、ポリビニルピロリドン(バインダー)、殺菌剤(fludioxonil)及び殺虫剤(thiametoxam)により被覆された稲種子の健康な苗の割合は、稲種籾から籾殻を除去した稲種子の健康な苗の割合より高く、fludioxonil及びthiametoxamによる薬害が殆どなく、籾殻を除去した稲種子に優る良好な発芽状況が得られることが分かった。
【0068】
【実施例6】実施例4及び実施例5で製造した各種子、並びに籾殻が除去された稲種子について、下記のように発芽試験を実施した。
【0069】200ミリリットルの容器中に150ミリリットルの土(粒状培土、くみあい製、販売元JA)を入れた。上記の各種子の夫々100粒を該容器中に夫々播種し、次いで、上記と同じ土20ミリリットルで種子を覆い、該容器中に50ミリリットルの水を加えた。そして、該好気性条件下に、温度30℃の暗所に3日間、次いで、温度20℃の明所に7日間、合計10日間保持して発芽成長させて、苗の成長状態及びカビの発生状態を目視により判断した。結果を表13に示す。
【0070】
【表13】
<発芽した苗の状態> 稲種子の種類 カビの発生状態 苗の成長状態稲種籾から籾殻を除去した稲種子 著しく発生 普通実施例4で製造した種子 なし 良好実施例5で製造した種子 なし 良好【0071】次に、上記対照例1及び実施例1〜5で得られたコーティング液(A)〜(F)で夫々被覆処理した稲種子を、殺虫剤及び殺菌剤を散布することなしに定法に従って栽培・育成した。その結果、コーティング液(B)〜(F)で被覆処理した本発明の稲種子は良好に成長したが、コーティング液(A)で被覆処理した稲種子、即ち、バインダーのみで被覆した稲種子では病虫害の発生が著しく成長が阻害された。
【0072】
【実施例7及び比較例1】実施例7においては、対照例1のようにして得られた籾殻が除去された稲種子を水等により洗浄することなしに、下記の表14に示したコーティング液(G)をスプレーし、次いで、乾燥することによりfludioxonil(殺菌剤)を含むポリビニルアルコール(バインダー)により被覆された稲種子を得た。ここで、コーティング液(G)の使用量は、籾殻が除去された稲種子1kgに対して41gであり、そして、籾殻が除去された稲種子の表面に施与されたfludioxonil(殺菌剤)及びポリビニルアルコール(バインダー)の量は、籾殻が除去された稲種子1kgに対して、夫々0.2g及び2gであった。
【0073】
【表14】
<コーティング液(G)> 成 分 含有量(重量%)
Savior(商標、殺菌剤、fludioxonilを20重量%含有する) 2.4 ポリビニルアルコール(バインダー) 4.9 水 92.7【0074】一方、比較例1では、実施例7のようにして得られた籾殻が除去された稲種子を、流水(水道水)で2時間洗浄した。次いで、ポリビニルアルコール(バインダー)5重量%及び水95重量%から成るコーティング液(H)をスプレーし、次いで、乾燥することによりポリビニルアルコール(バインダー)のみにより被覆された稲種子を得た。ここで、上記コーティング液の使用量は、籾殻が除去された稲種子1kgに対して40gであり、そして、籾殻が除去された稲種子の表面に施与されたポリビニルアルコール(バインダー)の量は、籾殻が除去された稲種子1kgに対して2gであった。
【0075】上記いずれの場合にも、スプレーコーティング及び乾燥は上記対照例1と同様にして実施した。
【0076】次に、上記の二種類の処理により得られた稲種子、籾殻が付いたままの稲種籾及び稲種籾から籾殻を除去した稲種子の夫々100粒を、ポット中の土壌に夫々播種し、そして、該好気性条件下に、温度20℃の暗所に16時間、次いで、温度30℃の明所に8時間保持する操作を繰り返し8日間実施した(条件4)。その後、発芽成長した苗の成長状態及びカビの発生状態を目視により判断した。結果を表14に示す。
【0077】
【表14】
<発芽した苗の状態> 稲種子の種類 カビの発生状態 苗の成長状態籾殻が付いたままの稲種籾 なし 良好稲種籾から籾殻を除去した稲種子 多少発生 非常に良好実施例7により得られた稲種子 なし 非常に良好比較例1により得られた稲種子 著しく発生 良好【0078】実施例7は、殺菌剤を含有するポリビニルアルコールにより被覆された本発明の稲種子である。苗の成長は非常に良好であり、カビの発生は全く認められなかった。一方、比較例1は、特許第2866921号公報記載の稲種子である。苗の成長は実施例7に比べて悪く、加えてカビの発生が著しく、以後の成育過程において、苗の成長に悪影響を生ずることは明らかである。
【0079】このように比較例1において著しくカビが発生するのは、籾殻を除去した際に細かい傷が種子表面上に生じ、無菌化のために行われる水洗により更に傷が大きくなり、発芽の際に該傷から多くの糖分が流出して、これを養分としてカビが発生するからと考えられる。これに対して、実施例7では、水洗を実施しない故にそれによる傷の拡大は受けない。加えて、種子表面に殺菌剤が施与されているのでカビの発生を効果的に抑制することができるのである。
【0080】
【実施例8】対照例1のようにして得られた籾殻が除去された稲種子を水等により洗浄することなしに、下記の表15〜17に示した3種類のコーティング液(I)、(J)及び(K)を夫々別の稲種子にスプレーし、次いで、乾燥することによりimidacloprid(殺虫剤)を含む、ポリウレタン含有量の異なるポリビニルアルコールにより被覆された3種類の稲種子を得た。スプレーコーティング及び乾燥は上記対照例1と同様にして実施した。ここで、コーティング液(I)〜(K)の使用量は、いずれも籾殻が除去された稲種子1kgに対して47.77gである。籾殻が除去された稲種子の表面に施与されたimidacloprid(殺虫剤)の量は、いずれのコーティング液においても、籾殻が除去された稲種子1kgに対して5.5gであった。また、バインダーの量は、籾殻が除去された稲種子1kgに対して、コーティング液(I)においては、ポリビニルアルコール3.92g及びポリウレタン0gであり、コーティング液(J)においては、ポリビニルアルコール3.53g及びポリウレタン0.39gであり、かつコーティング液(K)においては、ポリビニルアルコール2.94g及びポリウレタン0.98gであった。
【0081】
【表15】
<コーティング液(I)> 成 分 含有量(重量%)
Gaucho 70WS(商標、殺虫剤、imidaclopridを70重量%含有する)
16.4 ポリビニルアルコール(バインダー) 8.2 ポリウレタン(バインダー) 0 水 75.4【0082】
【表16】
<コーティング液(J)> 成 分 含有量(重量%)
Gaucho 70WS(商標、殺虫剤、imidaclopridを70重量%含有する)
16.4 ポリビニルアルコール(バインダー) 7.4 ポリウレタン(バインダー) 0.8 水 75.4【0083】
【表17】
<コーティング液(K)> 成 分 含有量(重量%)
Gaucho 70WS(商標、殺虫剤、imidaclopridを70重量%含有する)
16.4 ポリビニルアルコール(バインダー) 6.2 ポリウレタン(バインダー) 2.0 水 75.4【0084】上記のようにして得たコーティング液(I)〜(K)により処理された稲種子の夫々5gをペトリ皿に置き、次いで蒸留水10ミリリットルを夫々のペトリ皿に注いだ。室温で所定時間経過後に、該水中に含まれるimidacloprid(殺虫剤)の濃度を液体クロマトグラフィーにより測定した。その結果を表18に示す。
【0085】
【表18】
imidacloprid(殺虫剤)放出量(重量%)*経過時間 コーティング液の種類(時間) (I) (J) (K)
1 8.8 2.7 1.9 2 11.4 4.3 3.5 4 15.7 7.3 5.9 6 21.1 10.0 8.1 24 38.0 29.4 28.0*:imidacloprid(殺虫剤)放出量は、稲種子に含められたimidacloprid重量に対する比で示されている。
【0086】上記の結果から、ポリビニルアルコールに加えてポリウレタンを用いるとimidacloprid(殺虫剤)の水中への放出速度が抑制されることが分った。ポリウレタンを含有するコーティング液(K)により処理された稲種子における放出量は経過時間6時間で8.1重量%であり、一方、ポリウレタンを含まないコーティング液(I)により処理された稲種子における放出量は経過時間1時間で既に8.8重量%であった。
【0087】
【発明の効果】本発明は、稲の病虫害をほぼ完全に予防し得ると共に、ほぼ均一かつ良好な発芽を簡便に達成することができ、更には健康な苗を得ることができる農薬被覆稲種子を提供する。本発明の稲種子においては、従来の農薬で被覆した稲種籾の発芽に必要であった、殺菌剤を含む水への浸漬が要らない。従って、該殺菌剤を含む水の廃棄に伴う公害問題や経済的問題がない。また、従来のように、発芽を水循環しながら行う必要もなく、発芽後、所定期間、暗所に保管するという作業上の手間も全く不要である。また、葉より先に出た根は殺虫剤の化学毒性に強く、従って、殺虫剤を殺菌剤と一緒に稲種子に被覆しても従来のように根の伸長を阻害することがない。更に、本発明の稲種子では、被覆により水の吸上げを調節し得て、そして、より均一な湿分を維持することができ、かつ被覆により、籾殻を除去された種子表面の酸素濃度をも適切に調節し得て、そして、貯蔵中における種子の酸化を防止し得る。また、本発明の稲種子は籾殻が除去されているため輸入制限がなく、外国で種籾の籾殻を除去した後に輸入して国内で被覆することができ、あるいは外国で種籾の籾殻を除去しかつ被覆して輸入することが可能である。従って、種籾の種類を広範に選択することができ、また、安価に製造することができる。
【0088】従来から大規模な米作においては、飛行機等により空中から稲種子を水田に播種する方法が採られていた。該方法においては、播種後に稲種子が水面に浮き流れ出すことを防止するために、稲種子を予め水に浸漬して十分に水を吸わせてから、水田に播種していた。稲種子に水を吸わせる作業は多大な時間と労力を必要とした。本発明の農薬被覆稲種子は、播種後に水面に浮くことがない。加えて、稲種籾に比べてより小さくかつ軽い故により多量に運搬できて空中からの播種がより効率的である。従って、本発明の農薬被覆稲種子は、該空中からの播種にも使用し得る。
【出願人】 【識別番号】500178278
【氏名又は名称】インコテックジャパン株式会社
【出願日】 平成13年4月18日(2001.4.18)
【代理人】 【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
【公開番号】 特開2002−3308(P2002−3308A)
【公開日】 平成14年1月9日(2002.1.9)
【出願番号】 特願2001−119741(P2001−119741)