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【発明の名称】 工業用殺菌剤
【発明者】 【氏名】亀田 康二

【氏名】窪田 尚生

【要約】 【課題】イソチアゾロン系工業用殺菌剤の抗菌スペクトラムを拡げ、長期保存に対しても安定で、エマルションに対する相溶性がよくエマルションショックを起こさせない工業用殺菌剤の提供。

【解決手段】有効成分としてニトロアルコール化合物(a)とイソチアゾロン系化合物を用い、これに安定化剤として硝酸アルカリ金属塩を配合し、さらにアルカリ金属塩化物(d)や水溶性グリコール系溶媒を配合した工業用殺菌剤が前記課題のすべてを解決した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】ニトロアルコール化合物(a)、イソチアゾロン系化合物(b)および硝酸アルカリ金属塩(c)を含有してなる工業用殺菌剤。
【請求項2】さらにアルカリ金属塩化物(d)を含有してなる請求項1記載の工業用殺菌剤。
【請求項3】さらに水溶性グリコール系溶媒(e)を含有してなる請求項1または2記載の工業用殺菌剤。
【請求項4】(a)が一般式(1)
【化1】

(式中、Xはヒドロキシル基を有する炭素数1−4のアルキル基またはハロゲン原子、Yは水素原子、炭素数1−4のアルキル基または炭素数2−4のアルケニル基、Yは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基を有する炭素数1−4のアルキル基またはヒドロキシル基を有していてもよい炭素数2−4のアルケニル基を示す。)で表される化合物である請求項1記載の工業用殺菌剤。
【請求項5】(a)が2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールまたは2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールである請求項1記載の工業用殺菌剤。
【請求項6】(b)が一般式(2)
【化2】

(式中、XおよびXは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1−6のアルキル基、Yは水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1−8の炭化水素基を示す。)で表される化合物である請求項1記載の工業用殺菌剤。
【請求項7】(b)が2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたは5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンである請求項1記載の工業用殺菌剤。
【請求項8】(c)が硝酸ナトリウムまたは硝酸カリウムである請求項1記載の工業用殺菌剤。
【請求項9】(d)が塩化ナトリウムまたは塩化カリウムである請求項2記載の工業用殺菌剤。
【請求項10】(e)がエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールまたはジエチレングリコールモノメチルエーテルである請求項3記載の工業用殺菌剤。
【請求項11】(a)を0.01〜40重量%、(b)を0.01〜20重量%および(c)を0.01〜30重量%含有してなる請求項1記載の工業用殺菌剤。
【請求項12】さらに(d)を0.1〜5重量%含有してなる請求項11記載の工業用殺菌剤。
【請求項13】さらに(e)を0.1〜90重量%含有してなる請求項11または12記載の工業用殺菌剤。
【請求項14】ラテックス防腐剤、合成樹脂エマルション防腐剤、または塗料用防腐剤である請求項1〜13のいずれかに記載の工業用殺菌剤。
【請求項15】ニトロアルコール化合物(a)およびイソチアゾロン系化合物(b)に硝酸アルカリ金属塩(c)を配合する(a)および(b)の安定化法。
【請求項16】さらにアルカリ金属塩化物(d)を配合する請求項15記載の(a)および(b)の安定化法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はニトロアルコール化合物とイソチアゾロン系化合物を有効成分として含有する工業用殺菌剤に関し、より詳細にはニトロアルコール化合物とイソチアゾロン系化合物を含有する安定化された工業用殺菌剤およびニトロアルコール化合物とイソチアゾロン系化合物を含有する工業用殺菌剤の安定化法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、紙パルプ工業分野の抄紙工程において用いられる水、各種産業分野における循環冷却水等の種々の用水、及び水性塗料、紙用塗工液、ラテックスエマルション、織物エマルション、紡糸油、切削油、捺染糊、皮革等の製造に用いられる水は有害な微生物が繁殖し易い。微生物の繁殖した水は悪臭の発生等の原因となって作業環境を悪化させ、また前記工業における生産性や製品の品質の低下を招く。このため前記微生物の繁殖の防除や殺菌のため、工業用水等には数多くの種類の防腐剤や殺菌剤が使用されている。工業用水等における有害微生物の発生を抑制ないしは防除する薬剤の1つとしてイソチアゾロン系化合物が知られており、工業用殺菌剤や防菌剤として優れた効果を有している。しかしこのイソチアゾロン系化合物は、実用濃度では抗菌スペクトラムが狭く、多種の微生物に対しては対応しきれないという問題点を有している。さらにこのイソチアゾロン系化合物のフリー体は水、湿気、温度等に対して非常に敏感で分解し易いため、通常は水を含まない有機溶媒に溶解させた状態で保存されている。
【0003】工業用殺菌剤の抗菌スペクトラムを拡げるため、種々の抗菌、防かび剤や防藻剤との併用が検討され、例えば2−ブロム−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールといった抗菌剤との併用も提案されている(特公昭58−4682)が、有効成分の安定性がなお不充分であり、またエマルションに配合した場合、そのエマルション相を破壊する、いわゆるエマルションショックが起こり勝ちである。前記イソチアゾロン系化合物の溶解に適した有機溶媒として、通常はグリコール系有機溶媒等が用いられている。しかし、該グリコール系有機溶媒で溶液化した製剤は、消防法による危険物の指定を受けており、その取扱いや保存には特別な注意を払う必要があり、グリコール系有機溶媒に溶解した製剤を安全かつ簡単に使用するのは難しいという問題があった。こそで、安全に使用できるイソチアゾロン系化合物含有の製剤として、水で希釈され、有機溶媒の濃度が下げられた製剤が提案されている。しかし、工業用殺菌剤として適当な濃度になるようにグリコール系有機溶媒に溶解した製剤を水で希釈した場合、イソチアゾロン系化合物が短期間で分解したり沈殿物が生ずる等の問題が生じた。
【0004】これらの問題を解決するため、例えば特開平5−221813号公報、特開平5−170608号公報、特開平5−286815号公報等には、イソチアゾロン系化合物の水溶液中に臭素酸又はヨウ素酸のアルカリ金属塩を安定化剤として含有させた組成物が開示されており、前記組成物中のイソチアゾロン系化合物は分解することなく、長期間にわたって安定的に存在するという効果が記載されている。しかし、臭素酸又はヨウ素酸のアルカリ金属塩、例えば臭素酸カリウムで安定化された水及びイソチアゾロン系化合物を含有する製剤でも、前記臭素酸カリウムの濃度が低下すると、イソチアゾロン系化合物の熱安定性が不十分となり、イソチアゾロン系化合物が分解し易くなるという課題があった。また、高濃度の臭素酸又はヨウ素酸のアルカリ金属塩を含有する製剤では、該製剤が数℃程度以下の低温になるとアルカリ金属塩が析出し、製剤の性能が低下するという課題があった。これは、一旦析出したアルカリ金属塩等の固形分は再溶解しにくいため、実質的に臭素酸又はヨウ素酸のアルカリ金属塩の濃度が低下し、イソチアゾロン系化合物が不安定化するためである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記状況のもと、本発明の課題は、広い抗菌性スペクトラムを有し、有機溶媒を用いない場合でも有効成分が長期に亘って安定で、しかもエマルションに対するショックがない工業的殺菌剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため本発明者らは種々研究を重ねた結果、有効成分としてニトロアルコール化合物とイソチアゾロン系化合物を用い、これらの有効成分の安定化剤として硝酸アルカリ金属塩と、必要によりさらにアルカリ金属塩化物を配合することにより、広い抗菌スペクトルを有し、有機溶媒を用いない場合でも長期に亘って高い貯蔵安定性を保持し、エマルションに配合してもエマルションショックを起こさせない優れた工業用殺菌剤を得ることに成功した。すなわち本発明は、(1)ニトロアルコール化合物(a)、イソチアゾロン系化合物(b)および硝酸アルカリ金属塩(c)を含有してなる工業用殺菌剤、(2)さらにアルカリ金属塩化物(d)を含有してなる前記(1)記載の工業用殺菌剤、(3)さらに水溶性グリコール系溶媒(e)を含有してなる前記(1)または(2)記載の工業用殺菌剤、(4)(a)が一般式(1)
【化3】

(式中、Xはヒドロキシル基を有する炭素数1−4のアルキル基またはハロゲン原子、Yは水素原子、炭素数1−4のアルキル基または炭素数2−4のアルケニル基、Yは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基を有する炭素数1−4のアルキル基またはヒドロキシル基を有していてもよい炭素数2−4のアルケニル基を示す。)で表される化合物である前記(1)記載の工業用殺菌剤、(5)(a)が2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールまたは2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールである前記(1)記載の工業用殺菌剤、(6)(b)が一般式(2)
【0007】
【化4】

(式中、XおよびXは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1−6のアルキル基、Yは水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1−8の炭化水素基を示す。)で表される化合物である前記(1)記載の工業用殺菌剤、(7)(b)が2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたは5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンである前記(1)記載の工業用殺菌剤、(8)(c)が硝酸ナトリウムまたは硝酸カリウムである前記(1)記載の工業用殺菌剤、(9)(d)が塩化ナトリウムまたは塩化カリウムである前記(2)記載の工業用殺菌剤、(10)(e)がエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールまたはジエチレングリコールモノメチルエーテルである前記(3)記載の工業用殺菌剤、(11)(a)を0.01〜40重量%、(b)を0.01〜20重量%および(c)を0.01〜30重量%含有してなる前記(1)記載の工業用殺菌剤、(12)さらに(d)を0.1〜5重量%含有してなる前記(11)記載の工業用殺菌剤、(13)さらに(e)を0.1〜90重量%含有してなる前記(11)または(12)記載の工業用殺菌剤、(14)ラテックス防腐剤、合成樹脂エマルション防腐剤、または塗料用防腐剤である前記(1)〜(13)のいずれかに記載の工業用殺菌剤、(15)ニトロアルコール化合物(a)およびイソチアゾロン系化合物(b)に硝酸アルカリ金属塩(c)を配合する(a)および(b)の安定化法、および(16)さらにアルカリ金属塩化物(d)を配合する前記(15)記載の(a)および(b)の安定化法、である。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明に用いられるニトロアルコール化合物(a)は、例えば一般式(1)
【化5】

(式中、Xはヒドロキシル基を有する炭素数1−4のアルキル基またはハロゲン原子、Yは水素原子、炭素数1−4のアルキル基または炭素数2−4のアルケニル基、Yは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基を有する炭素数1−4のアルキル基またはヒドロキシル基を有していてもよい炭素数2−4のアルケニル基を示す。)で表される化合物があげられる。(1)式において、XおよびYで表わされるヒドロキシル基を有する炭素数1−4のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基などの炭素数1−4のアルキル基の任意の位置に少なくとも1個の水酸基が置換された基があげられる。XおよびYで表わされるハロゲン原子としては、たとえば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などがあげられる。Yで表わされる炭素数2−4のアルケニル基としては、たとえば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基などがあげられる。Yで表されるヒドロキシル基を有していてもよい炭素数2−4のアルケニル基としては、前述の炭素数2−4のアルケニル基の任意の位置に少なくとも1個の水酸基が置換された基があげられる。
【0009】(1)式で表されるニトロアルコール化合物の具体例としては、たとえば、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(BNPD)、2−ブロモ−2−ニトロブタン−1,3−ジオール、3−ブロモ−3−ニトロペンタン−2,4−ジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロ−1−エタノール(DBNE)、2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン、3,3−ジブロモ−3−ニトロ−2−プロパノール、2−クロロ−2−ニトロエタノール、2−クロロ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、3−クロロ−3−ニトロ−2−プロパノール、などがあげられる。
【0010】本発明に用いられるイソチアゾロン系化合物としては、たとえば、一般式(2)
【化6】

(式中、XおよびXは、同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1−6のアルキル基、Yは水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1−8の炭化水素基を示す。)で表される化合物があげられる。
【0011】(2)式におてい、XおよびXで表されるハロゲンとしては、たとえばフッ素、塩素、臭素およびヨウ素等があげられ、これらの中では塩素が好ましい。炭素数1−6のアルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ぺンチル基等があげられる。前記アルキル基の中では、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1−4のアルキル基が好ましい。以上説明した置換基の中で、Xとしては水素または塩素が好ましく、塩素がさらに好ましい。また、Xとしては水素または塩素が好ましく、水素がさらに好ましい。Yで示される置換基を有していてもよい炭素数1−8炭化水素基の置換基としては、たとえばヒドロキシル基、ハロゲン(たとえば塩素、フッ素、臭素、ヨウ素等)、シアノ基、アミノ基、カルボキシル基、炭素数1−4のアルコキシ基(たとえば、メトキシ基、エトキシ基等)、炭素数6−10のアリールオキシ基(たとえばフェノキシ基等)、炭素数1−4のアルキルチオ基(たとえばメチルチオ基、エチルチオ基等)および炭素数6−10のアリールチオ基(たとえばフェニルチオ基等)等があげられる。前記置換基の中では、ハロゲン原子、炭素数1−4のアルコキシ基等が好ましい。これらの置換基は1−5個、好ましくは1−3個の範囲で前記炭化水素基の水素が置換されていてもよく、また前記置換基はそれぞれ同一でもよく、相異なっていてもよい。
【0012】Yで示される置換されていてもよい炭化水素基の該炭化水素基としては、たとえば炭素数1−10のアルキル基、炭素数2−6のアルケニル基、炭素数2−6のアルキニル基、炭素数3−10のシクロアルキル基、炭素数6−14のアリール基等があげられる。前記炭化水素基の中では炭素数1−10のアルキル基および炭素数3−10のシクロアルキル基が好ましく、炭素数1−10のアルキル基がより好ましい。前記炭素数1−10のアルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、ノニル基よびデシル基等があげられる。これらアルキル基の中では、たとえばメチル基、エチル基等の炭素数1−3のアルキル基、およびたとえば、オクチル基、tert−オクチル基等の炭素数7−9のアルキル基がより好ましい。前記炭素数2−6のアルケニル基としては、たとえばビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基等があげられる。前記のアルケニル基の中では、ビニル基、アリル基が好ましい。前記炭素数2−6のアルキニル基としては、たとえばエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基等があげられる前記アルキニル基の中ではエチニル基およびプロピニル基が好ましい。
【0013】前記炭素数3−10のシクロアルキル基としては、たとえばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基等があげられる。前記シクロアルキル基の中ではシクロペンチル基およびシクロヘキシル基が好ましい。前記炭素数6−14のアリール基としては、たとえばフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等があげられる。前記アリール基の中ではフェニル基が好ましい。以上説明したように、Yで示される置換されていてもよい炭化水素基として種々のものがあげられるが、これら炭化水素基の中ではメチル基およびオクチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。上記(1)式で表されるイソチアゾロン系化合物の具体例としては、たとえば5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−エチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−シクロヘキシル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−エチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−t−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン等があげられる。前記化合物の中では、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンが好ましく、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンが特に好ましい。
【0014】前記式(2)で表されるイソチアゾロン系化合物は、1種または2種以上で用いられる。従って、前記2種以上の化合物を混合した状態で用いてもよい。これらのイソチアゾロン系化合物はいずれも公知の化合物であり、たとえば米国特許第3761488号明細書、米国特許第3849430号明細書、米国特許第3870795号明細書、米国特許第4067878号明細書、米国特許第4150026号明細書、米国特許第4241214号明細書、米国特許第3517022号明細書、米国特許第3065123号明細書、米国特許第3761489号明細書、および米国特許第3849430号明細書等に記載の方法またはそれらに準ずる方法によって製造することができる。次に、本発明に係るニトロアルコール化合物(a)とイソチアゾロン系化合物(b)に安定化剤として含有させる硝酸アルカリ金属塩(c)について説明する。硝酸アルカリ金属塩のアルカリ金属としては、たとえばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム等があげあられるが、それらの中では、ナトリウムおよびカリウムが好ましい。本発明に用いられるアルカリ金属塩化物(d)のアルカリ金属としては、たとえばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム等があげられるが、それらの中ではナトリウムおよびカリウムが好ましく、特にナトリウムが好ましい。これら硝酸アルカリ金属塩やアルカリ金属塩化物を水に溶解して用いる場合には、適切な溶媒を適宜添加してもよい。前記溶媒としては、通常水溶性グリコール系溶媒、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等があげられるが、これらの中ではエチレングルコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールおよびジプロピレングリコールが好ましい。
【0015】本発明に用いられる水溶性グリコール系溶媒(e)としては、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等の炭素数2−6のアルキレングリコール系溶媒や、たとえばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒もあげられる。前記炭素数2−6のアルキレングリコールの中では、ジプロピレングリコールが、グリコールエーテル系化合物の中ではジエチレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。本発明の工業用殺菌剤における水を除く各成分の配合割合は(a)が0.01〜40重量%、好ましくは0.1〜25重量%、(b)が0.01〜20%重量%、好ましくは0.1〜10重量%、(c)が0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜15重量%であり、(d)を用いる場合は0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%、(e)を用いる場合は0.1〜90重量%、好ましくは5〜70重量%である。本発明の工業用殺菌剤は、水を含有する製剤とする場合そのpHを調整してもよい。調整する場合のpHは好ましくは約3〜6である。
【0016】前記pH調製剤としては、たとえば無機酸、カルボキシル基を有する有機化合物、スルホン酸、フェノール系化合物等の酸が主として使用される。前記無機酸の具体例としては、たとえば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、ホウ酸、亜硝酸、炭酸、フッ化水素酸、硫化水素等があげられる。前記カルボキシル基を有する有機化合物の具体例としては、たとえば酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、クエン酸、ギ酸、シュウ酸、酒石酸、安息香酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、フタル酸水素カリウム等があげられる他、たとえばグルタミン酸、グリシン等のアミノ酸があげられる。前記スルホン酸の具体例としては、たとえばp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等があげられ、前記フェノール系化合物の具体例としては、たとえばフェノールがあげられる。また、pHを微調整するにあたって、前記酸とともに、たとえば無機塩基、含チッソ系有機化合物、アミノ酸系化合物の塩基も用いられる。前記無機塩基の具体例としては、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、水酸化カルシウム、酸化マクネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等があげられる。前記含チッソ系有機化合物の具体例としては、たとえばアニリン、ピペラジン、ピペリジン、トリエチルアミン、ピリジン等があげられる。前記アミノ酸系化合物の具体例としては、たとえばヒスチジン、グルタミン等があげられる。
【0017】本発明の工業用殺菌剤(製剤)を調製する方法は特に限定されず、各化合物の配合はどのような順序で行ってもよいが、次のような方法が考えられる。水にニトロアルコール化合物、イソチアゾロン系化合物、硝酸アルカリ金属塩、必要によりさらにアルカリ金属塩化物を添加し、完全に均一になるまで混合機等を用いて混合する。添加する硝酸アルカリ金属塩、アルカリ金属塩化物は、前記したように一旦水又は水と有機溶媒との混液に溶解した後、水と混合してもよい。本発明に係るイソチアゾロン系化合物含有組成物には前述の水溶性グリコール系溶媒を含有させてもよい。
【0018】水溶性グリコール溶媒を用いる場合の液剤の調整方法も該溶媒を用いない場合と同様であり、ニトロアルコール化合物、イソチアゾロン系化合物および他の各成分を所定量配合した後、攪拌機を用いて完全に均一になるまで攪拌混合して製品を得る。本発明に係る工業用殺菌剤は、他の殺菌剤をさらに配合してもよい。該殺菌剤としては、たとえば2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、3−ヨード−2−プロピニルブチルカ−バメイト、メチル 2−ベンツイミダゾールカ−バメイト、3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1、1−ジオキシド、4,5−ジクロロ−1、2−ジチオール−3−オン、テトラクロロイソフタロニトリル、メチレンビスチオシアネート、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンジンクピリチオン等があげられる。これら殺菌剤の添加量はイソチアゾロン系化合物100重量部に対して0.1〜20重量部程度が好ましい。さらに、本発明に係る工業用殺菌剤には、その目的、用途等に応じて、公知の添加剤、たとえば界面活性剤、酸化防止剤等を添加してもよい。
【0019】前記界面活性剤としては、たとえば石鹸類、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン界面活性剤、高分子界面活性剤等、公知の界面活性剤があげられるが、これらの中でもノニオン系界面活性剤、およびアニオン系界面活性剤が好ましい。該ノニオン系界面活性剤としては、たとえばポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、酸化エチレンと酸化プロピレンのブロック共重合物等があげられる。また、前記アニオン系界面活性剤としては、たとえばアルキルベンゼンスルホン酸金属塩、アルキルナフタレンスルホン酸金属塩、ポリカルボン酸金属塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル金属塩、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩、リグニンスルホン酸金属塩、リグニンスルホン酸金属塩等があげられる。また、前記金属塩としては、たとえばナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩等があげられる。
【0020】酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス〔4−メチル−6−t−ブチルフェノール〕等のフェノール系酸化防止剤、アルキルジフェニルアミン、N,N’−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミン等のアミン系酸化防止剤等があげられる。これら界面活性剤および酸化防止剤の添加量は、たとえば液剤の場合、液剤100重量部に対して0.1〜5重量部の割合が好ましい。本発明に係る工業用殺菌剤に前記他の殺菌剤、界面活性剤、酸化防止剤等の添加剤を加える場合には、硝酸アルカリ金属塩、アルカリ金属塩化物、水溶性グリコール系溶媒、水等の配合割合も、これらの添加剤の種類に応じて変化させるのが好ましい。本発明の工業用殺菌剤は、従来から使用されている種々の分野の産業において使用されるが、それらの中でも製紙工程における白水、ラテックス、合成高分子エマルション、顔料、塗料、印刷版用処理液、接着剤、冷却用水、インキ、切削油、化粧用品、不織布、紡糸油、皮革等の用途等に適しており、合成高分子エマルション、紡糸油、切削油、インキ等により適している。
【0021】本発明に係る工業用殺菌剤を使用する際には、たとえば滴下法、間欠添加法、塗布法、噴霧法、浸漬法等の公知の方法を使用することができ、使用の対象となる物や目的等により前記の方法を使い分ければよい。この場合の工業用殺菌剤の添加は、対象となる含水組成物に対して有効成分の合計最終濃度が1〜5000ppmになるように行うのが好ましく、5〜1000ppm程度になるように添加するのがより好ましい。たとえばラテックスの場合は有効成分(ニトロアルコール化合物およびイソチアゾロン系化合物)の最終濃度が5〜500ppmになるように添加するのが好ましい。
【0022】
【実施例】以下、実施例、比較例および試験例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。
実施例12−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)0.75g、5−クロル−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(Cl−MIT)2.25g、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(BNPD)15g、硝酸ナトリウム(NaNO)4.3gおよび塩化ナトリウム(NaCl)1.3gを水75.4gに溶解した(溶液A)。さらに水1gを加えて製剤(100g)を得た。
【0023】実施例2実施例1で得られた溶液Aに、さらに硝酸カリウム(KNO)1.0gを加えて溶解し、製剤(100g)を得た。
実施例3MIT0.75g、Cl−MIT2.25g、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール(DBNE)1.0g硝酸ナトリウム4.3gおよび食塩1.3gをジエチレングリコール40gと水49.4gの混液に溶解した(溶液B)。さらに水1gを加えて製剤(100g)を得た。
実施例4実施例3で得られた溶液Bに、さらに硝酸カリウム1.0gを加えて溶解し、製剤(100g)を得た。
【0024】比較例1MIT0.75g、Cl−MIT2.25g、BNPD15gおよび5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン(ブロニドックスK;ローム アンド ハース社製)0.3gをジプロピレングリコール18gと水63.7gの混液に加えて溶解し、製剤(100g)を得た。
比較例2MIT0.27g、Cl−MIT2.73g、BNPD15gおよび臭素酸カリウム0.3gをエチレングリコール22gと水59.7gの混液に加えて溶解し、製剤(100g)を得た。
【0025】比較例3MIT0.21g、Cl−MIT2.79g、BNPD15g、硝酸マグネシウム〔Mg(NO〕3.2gおよび塩化マグネシウム(MgCl)1.9gを水76.9gに溶解し、製剤(100g)を得た。
比較例4MIT0.27g、Cl−MITを2.73gおよびBNPD15gをエチレングリコール22gと水60gの混液に加えて溶解し、製剤(100g)を得た。
比較例5MIT0.27g、Cl−MIT2.73g、BNPD15gおよび5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン(ブロニドックスK;ローム アンド ハース社製)0.3gを水81.7gに加えて溶解し、製剤(100g)を得た。
比較例6MIT0.27g、Cl−MIT2.73g、DBNE1gおよび臭素酸カリウム0.3gをエチレングリコール22g、ジエチレングリコール21gおよび水52.7gの混液に加えて溶解し、製剤(100g)を得た。以上の実施例1−4および比較例1−6の製剤の組成を〔表1〕にまとめた。
【0026】
【表1】

【0027】試験例14週間保存後の有効成分残存率と外観変化実施例1〜4および比較例1〜6の製剤をそれぞれガラスビンに入れて密閉し、60℃の恒温槽中に4週間保存し、高速液体クロマトグラフィーで有効成分である2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)、5−クロル−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(Cl−MIT)、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール(BNPD)、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール(DBNE)の残存率(%)を測定するとともに、外観の変化を目視により視察した。判定は下記の基準で行い、結果を〔表2〕に示した。
外観に濁り又は沈殿物を生じないもの :○沈殿は生じないが濁りが生じたもの :△濁り又は沈殿物が生じたもの :×【0028】
【表2】

〔表2〕から明らかなように、硝酸アルカリ塩を配合した実施例4およびさらに塩化ナトリウムを配合した実施例1−3の製剤は、グリコール類の配合の有無に拘わらず安定で、MITの残存率はいずれも70%を越え、Cl−MIT、BNPDおよびDBNEの残存率も95%またはそれ以上であったのに対し、硝酸アルカリ塩および塩化ナトリウムを配合しなかった比較例1−6の製剤は、MITの残存率が60%またはそれ以下であり、Cl−MIT、BNPDおよびDBNEの残存率はいずれも90%以下であった。これらの結果から、ニトロアルコール化合物(a)およびイソチアゾロン系化合物(b)の両成分を有効成分として配合した工業用殺菌剤において、硝酸アルカリ塩およびさらに塩化ナトリウムの配合は有効成分の安定化に顕著な効果をもたらすことが証明された。
【0029】試験例2SBRラテックスに対する相溶性テストスライドグラス上にSBRラテックス(SA−22)と実施例1〜4および比較例1〜6で得られたそれぞれの製剤を容量比で1:1の割合で混和し、ラテックスの凝集の有無を目視観察にて、下記の基準により判定した。その結果を〔表3〕に示した。
凝集のないもの :○やや凝集があるもの :△凝集のあるもの :×【0030】
【表3】

〔表3〕から明らかなように実施例1−4の製剤がラテックスに対し、いわゆるエマルションショックを与えなかったのに対し、比較例1−6の製剤はいずれも程度の差はあれエマルションショックを与えた。
【0031】
【発明の効果】本発明の工業用殺菌剤は、水溶性グリコール類等の有機溶媒を含まない水製剤の場合であっても長期に亘り安定であり、ラテックス等のエマルションに対する相溶性がよく、いわゆるエマルションショックを与えない。
【出願人】 【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
【出願日】 平成12年6月23日(2000.6.23)
【代理人】 【識別番号】100071973
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 良隆
【公開番号】 特開2002−3307(P2002−3307A)
【公開日】 平成14年1月9日(2002.1.9)
【出願番号】 特願2000−188877(P2000−188877)