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【発明の名称】 土壌消毒機における薬液非常停止装置
【発明者】 【氏名】佐野 俊哉

【氏名】望月 倍雄

【氏名】長谷川 誠

【要約】 【課題】注入刀が耕盤に限らず地中の石などに接触した場合には、後方に逃げて破損を回避すると共に、薬液の送出を自動的に停止して作業者の安全を守る。

【解決手段】土壌消毒機1において、注入刀16の基部を機体に対し回動自在に取付けるとともに、土壌の抵抗に抗して注入刀16を支持する支持ピン22などの支持体を設け、注入刀16が支持体の支持力を超える過大な抵抗を受けて機体後方に移動するとき、その移動を検出する注入刀移動検出手段24と、その検出信号により前記薬液ポンプを自動停止する薬液ポンプ制御手段25を設けることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 地中に突き刺す注入刀を有し、その先端部に薬液ポンプより薬液を送り、機体を移動しながら薬液を地中に注入散布する土壌消毒機において、前記注入刀の先端部が機体の後方に向け移動可能に注入刀の基部を機体に取付けるとともに、作業時の土壌の抵抗に抗して注入刀を定位置に支持する支持体を設け、注入刀が支持体の支持力を超える過大な抵抗を受けて機体後方に移動するとき、その移動を検出する注入刀移動検出手段と、その検出信号により前記薬液ポンプを自動停止する薬液ポンプ制御手段を設けることを特徴とする薬液非常停止装置。
【請求項2】 前記支持体が折れ易いピンであって、このピンにより前記注入刀を作業時の土壌の抵抗に抗して定位置に支持することを特徴とする請求項1記載の薬液非常停止装置。
【請求項3】 注入刀移動検出手段の検出信号により作動する異常報知手段を設けることを特徴とする請求項1記載の薬液非常停止装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、土壌消毒機により薬液を地中に注入散布する際の安全装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般の土壌消毒機(例えば実開平3‐112204号公報)は、トラクタなどの移動農機によって畝立作業機及びマルチ作業機を牽引する構造で、トラクタのPTO出力によりロータリを駆動し、このロータリによって耕土を中央に寄せ集め、畝盛整形板によって畝を形成すると共に、シートロールから繰り出すシ−ト(マルチフィルム)で畝を覆いながら、機体に搭載したタンク内の薬液をポンプにより後輪とロータリとの間に配置された注入刀に送るようになっている。このように、マルチで覆いながら薬液を散布する部分消毒法は、畦(畝)内に有効に薬液を混入できることから、単位面積当りの使用薬量が全面消毒法に比較して減量できる利点がある。
【0003】しかし、タバコの土壌消毒などに通常使用しているクロルピクリン剤等の薬液は揮発性であり、耕して適度に空隙を有する耕土内では容易に拡散するが、さらに下層の耕していない硬い土層には浸透し難いという性質がある。従って、畝立てした耕土内では土壌消毒が進行するが、耕土より下層の硬い土層では消毒が充分でない。また、クロルピクリン剤のように揮発性の高い薬液の場合には、耕土表面に散布あるいは滴下後、畝をマルチフィルムで被覆する前に、部分的にガス化して大気中に放出されてしまうこともある。
【0004】また、作物の種類(例えばタバコ)によっては、根が畝立てされた耕土内に留まらず、耕土の下層部の耕していない硬い土層(耕盤)へも伸張する場合があり、このような場合、上記の部分消毒法では、耕土の下層部は消毒が充分に行えず、下層部までに根が伸張する場合には、残存する病原菌が根を介して作物中に進入する虞がある。
【0005】このようなことから、通常、単位面積当りの使用薬量を規定量より多くしており、部分消毒法の持つ薬量を少なくするという利点を活かしきれていない。また、薬量が多量であることは、毒物を大量に使用することに通じ、環境保全の面から好ましくない。
【0006】上記欠点を解消すべく、本発明者らは、注入刀をその先端が畝内耕土より深い位置の耕盤にまで達するように改良をした(特願2000-94540号)。この改良により、部分消毒法の持つ薬量を少なくするという利点を活かすことができたが、反面、耕盤内に残る石や根などの異物に注入刀が接触して破損するという別の問題が出てきた。注入刀が破損すると、薬液の配管が途中で切断するなどして、有毒な薬液が地上に放出され、作業者の健康に被害を与える危険がある。こうした異物との接触事故は、従来の耕土内の散布でも、耕盤のときほどではないが、起き得る問題であった。
【0007】本発明は、こうした問題点を解消するもので、注入刀が地中の石などに接触した場合には、機体の後方に逃げて破損を回避すると共に、薬液の送出を自動的に停止して作業者の安全を守ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、地中に突き刺す注入刀を有し、その先端部に薬液ポンプにより薬液を送り、機体を移動しながら薬液を地中に注入散布する土壌消毒機において、注入刀の先端部が機体の後方に向け移動可能に注入刀基部を機体に取付けるとともに、土壌の抵抗に抗して注入刀を定位置に支持する支持体を設け、注入刀が支持体の支持力を超える過大な抵抗を受けてその先端部が機体後方に移動するとき、その移動を検出する注入刀移動検出手段を設けて、その検出信号により薬液ポンプ制御手段を作動して薬液ポンプを自動停止することを特徴とする。さらにこの薬液非常停止装置に、注入刀回動検出手段が注入刀の回動を検出した場合に作業者に異常を報知する異常報知手段を設ける。
【0009】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る土壌消毒機1の全体側面図である。2は機枠であり、トラクタ3のPTO軸に連結するロータリ4と、畝5を形成する畝立作業機6と、畝5にマルチフィルム7を被覆するマルチ作業機8、薬液タンク9を載置する載置台10、薬液ポンプ11などを取付ける。これら機枠2、ロータリ4、畝立て機6、マルチ作業機8などの構造は、前記従来の技術で説明した土壌消毒機と同様のため、説明を省略する。
【0010】上記機枠2におけるロータリ4の前方位置に水平支杆12を取付け、この水平支杆12に、左右2個の注入刀取付け金具13を水平支杆12に沿って横方向に位置調節自在に取付ける。この注入刀取付け金具13には、縦方向に数個の取付け孔14を形成した取付け板15を溶接する(図2参照)。
【0011】注入刀16はブレード17と縦杆18から成り立っている。ブレード17は三角羽根板状で、縦杆18はブレード17が畝内耕土より深い位置の土層にまで達する長さを有する。そして縦杆18の上端部に支軸19を側方から取付け孔14を通して挿入して、注入刀16を取付け板15に対し支軸19を中心に回動自在には軸支する。縦杆18の後背面には薬液ポンプ11につながる配管20を沿わせ、この配管20の下端に薬液の噴出口となるノズル21を連結する。
【0012】22は注入刀16を定位置に支持する支持ピンで、図2又は図7に示すように、取付け板15に挿通する。支持ピン22は、図3に示すように、中央部分にくびれ部23を有し、炭素鋼等の高硬度の金属で作製する。支持ピン22に直角に所定以上の応力(耐久力より大きい力)が加わると、くびれ部23が折れる。くびれ部23の太さやピンの材質を適宜選択することにより、支持ピン22の耐久力を設計できる。支持ピン22の耐久力は、注入刀16が作業中に土壌より受ける正常範囲の抵抗より大きく、注入刀16が硬い物に接触したときに受ける過大な抵抗よりも小さい大きさに設計する。
【0013】24は注入刀16の移動を検出する注入刀移動検出手段を示し、図面の例ではリミットスイッチにより構成する。支持ピン22が破損して、注入刀16が図3の一点鎖線の位置に回動すると、注入刀移動検出手段24すなわちリミットスイッチはオンとなり、信号を出力する。25は薬液ポンプ制御手段であり、薬液ポンプ11の薬液の送出、停止を制御する。そして、この薬液ポンプ制御手段25は、リミットスイッチからの信号を受け薬液ポンプ11を停止する。
【0014】26はフイルム感知装置であり、図5に示すように、機枠2への感知装置取付け部27と、当該感知装置取付け部27に一端を枢着又は固着した支持杆28と、当該支持杆28の他端に取付けた回転輪29と、回転輪29の軸に取付けたカム30から構成する。このカム30には、所定の位相差(図5では90度)で複数個の検知部31を取付けると共に、当該検知部31と接触する接触子(図示せず)を先端に取付け、検知部31との接触を検知すると薬液ポンプ制御手段25に薬液送出信号を送る信号発信部32を設ける。
【0015】しかして、トラクタ3を圃地内に入れ、これに連結する土壌消毒機1を降下して、注入刀16とその先端のブレード17を地中に差し込む。この際に、マルチフィルム7の端を畝端に埋設して、さらに畝面に回転輪29を下し、薬液ポンプ11のメインスイッチを入れると作業の準備が完了する。
【0016】この後、トラクタ3を図1の左方向に前進し、畝立て、マルチフィルム被覆及び土壌消毒の作業を行う。回転輪29は、マルチフィルム7を被覆した畝面の頂上部を転動し、一定のタイミングで信号発信部32から薬液ポンプ制御手段25に向け薬液送出信号を発信する。そして、薬液ポンプ制御手段25が薬液ポンプ11を作動して薬液を送出し、ノズル20より土中に散布する。注入刀16に石や根などの硬く重い障害物が接触して、注入刀16に大きい力(支持ピンの耐久力より大きい力)が加わると、支持ピン22が折れ、注入刀16は回動して機体の後方に逃げり(図3の一点鎖線参照)。このため注入刀16は破損を免れることができる。このとき、リミットスイッチ24がオンになり、薬液の送出が自動的に停止する。同時に、機体に取りつけた警報ランプやブザー(図示せず)が点灯鳴動し、作業者に注入刀16の接触事故を知らせる。これにより作業者は、トラクタ3を停止し、注入刀16に接触した根や石などを取り除いたうえで、支持ピン22を新しいものと交換し、作業を再開する。
【0017】上記の実施の形態では、支持体として支持ピン22を使用しているが、図6に示すようなバネ33など、一定の応力を有するものであってもよい。特に支持ピン22と違いバネ33は、注入刀が障害物に接触してもそれを取り除けば原状に復元するので、ピンのように交換の必要がないという利点がある。また、注入刀移動検出手段24としてリミットスイッチの代わりに、図7に示す赤外線ランプ34と光センサ35のような非接触式の検知手段を取付け、それにより注入刀の変位を検出してもよい。さらに、本発明は、注入刀16が耕盤に達しない場合にも有効に利用できることはまでもない。
【0018】
【発明の効果】以上を要するに請求項1の発明は、注入刀の基部を機体に対し回動自在に取付けるとともに、土壌の抵抗に抗して注入刀を支持する支持体を設ける。よって注入刀が石や根などの障害物に当った場合、注入刀は支持体の支持力に抗して回動するので、破損しない。さらに、注入刀が支持体の支持力を超える過大な抵抗を受けて機体後方に移動するとき、その移動を検出する注入刀移動検出手段と、その検出信号により前記薬液ポンプを自動停止する薬液ポンプ停止手段を設けるので、注入刀の機体後方に移動により薬液噴出用のノズルが地表に出ても薬液が噴出することがなく、作業者に向け薬液が噴射されるという事故が防止できる。また請求項3の発明では、前記請求項1の構成に加えさらに注入刀移動検出手段の検出信号により異常報知手段を作動するので、注入刀が障害物に接した場合に直ちに異常に気付いて土壌消毒機を停止できると共に、石や根などを取り除き、支持体を交換するなどして作業を再開できる。
【出願人】 【識別番号】391020089
【氏名又は名称】株式会社佐野アタッチ研究所
【出願日】 平成13年4月9日(2001.4.9)
【代理人】 【識別番号】100077779
【弁理士】
【氏名又は名称】牧 哲郎 (外3名)
【公開番号】 特開2002−306048(P2002−306048A)
【公開日】 平成14年10月22日(2002.10.22)
【出願番号】 特願2001−109418(P2001−109418)