トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業




【発明の名称】 造林用苗木の食害防止具
【発明者】 【氏名】柳生 清秀

【要約】 【課題】苗木成長までの耐久性を付与して食害を確実に防止し、また軽量化と取付けの作業性を向上し、さらに生分解性を付与すること。

【解決手段】造林した苗木の少なくとも地際部分を含む幹の周囲を囲む大きさの筒状体を形成可能な四辺形シート状の食害防止具本体と、この食害防止具本体を筒状にしたとき形成される継合部に挿着する棒状の補強材とから成り、上記食害防止具本体が引裂強力4.9N以上有する耐水性を付与した紙であり、補強材が木材、竹材又は生分解性プラスチックの成型物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 造林した苗木の少なくとも地際部分を含む幹を包囲する筒状体となる生分解性シート状物の食害防止具本体と、食害防止具本体の少なくとも結合部分の縦方向全長にわたって挿着する生分解性棒状物の補強具とから成り、上記食害防止具本体が4.9N以上の引裂強力と耐水性とを備えた紙であることを特徴とする造林用苗木の食害防止具。
【請求項2】 食害防止具本体に、その結合部分から間隔をおいて1乃至複数の補強用挿入部を縦方向全長にわたって設けた請求項1に記載の造林用苗木の食害防止具。
【請求項3】 補強具が、天然材又は生分解性プラスチック成型材である請求項1に記載の造林用苗木の食害防止具。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、造林地域に植えた針葉樹(檜・杉・唐松・赤松・欅等)や広葉樹(ぶな・ミズナラ・栗等)の苗木を、主として草食性の小動物(野ネズミ・野ウサギ等)や中動物(鹿・猪等)による摂食被害(以下、単に食害という)から防ぐために用いる食害防止具に関する。
【0002】
【従来の技術】苗木の食害としては、樹皮に対する剥皮被害や幹に対する主軸切断被害等がある。苗木がこの種の食害にあうと、幹の肥大成長が著しく阻害されるばかりか、時に枯死することがある。
【0003】従来、この種の食害防止対策としては、苗木の幹の周囲を金網や樹脂板で囲むという手段が採用されている。しかし、金網や樹脂板によるときは、自然に分解消失しないため、苗木成長後に撤去回収しなければならず、また、相当の重量物となるため、取付け及び撤去回収に際して、一般に山の奥地や高地で広範囲にわたる造林地域への運搬作業が重労働であった。
【0004】また、複数枚の新聞紙を重ねて円筒形に丸めて、その重合部分をホッチキス針で止着する手段も採用されている。この新聞紙によるときは、軽量で運搬作業も容易で、撤去回収作業も不要である。しかし、強度を有しないため、小動物でも簡単に噛み破られるだけでなく、比較的短期間(約3ケ月間)で風雨や積雪等によって劣化したり、壊れたりして、苗木の成長までの間に何回も取替作業をしなければならなかった。
【0005】上記従来技術では、いずれも上述のような問題があるばかりでなく、苗木の食害防止の効果が十分でなく、年間数千ヘクタールの食害が報告されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、苗木の成長までの耐久性を付与して食害を確実に防止し、また軽量化を図って運搬作業を容易にし、構造を簡単にして取付けの作業性を向上し、さらに土中の微生物によって自然に分解可能にして回収撤去作業を不要にすることを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る造林用苗木の食害防止具は、造林した苗木の少なくとも地際部分を含む幹を包囲する筒状体となる生分解性シート状物の食害防止具本体と、食害防止具本体の少なくとも結合部分の縦方向全長にわたって挿着する生分解性棒状物の補強具とから成り、上記食害防止具本体が4.9N以上の引裂強力と耐水性とを備えた紙であることを特徴とする(請求項1)。
【0008】ここで、耐水性とは、水をはじいて浸み込みにくいことを意味し、水をはじく性質(はっ水性)又は水の浸透を妨げる性質(防水性)を意味するものとする。具体的には、耐水性は、所定の引裂強力を有する紙にはっ水加工又は防水加工等を施すことにより付与することができる。
【0009】この手段によれば、生分解性と強度と耐水性とを備えた紙からなる食害防止具本体と、その少なくとも結合部分の縦方向全長にわたって挿着される生分解性棒状物の補強具とで以て、苗木の少なくとも地際部分を含む幹を包囲する筒状体が簡単に形成される。よって、取付け作業性が向上し、軽量化が図れて運搬作業が容易になり、また筒状体を維持する耐久性が向上して、風雨等による破損や小、中動物による破壊が防止され、苗木の成長まで取替えなくても食害が確実に防止される。また、自立性が向上して、積雪にも十分に耐えることができる。さらに、設置後経年によって、地中の微生物によって水と二酸化炭素に自然に分解され、苗木成長後の回収撤去作業が不要になると共に、環境を汚染することがない。
【0010】この発明において、食害防止具本体は、その結合部分から間隔をおいて1乃至複数の補強用挿入部を縦方向全長にわたって設けた構成(請求項2)が好適である。このようにすると、食害防止具が複数本の補強具によって補強されるから、自立性がより一層向上し、積雪の多い所でも十分に耐えることができる。
【0011】また、上記補強具は、天然材又は生分解性プラスチック成型材で構成(請求項3)することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を以下図面を参照して説明する。
【0013】図1は食害防止具の使用状態を示し、食害防止具Aは、苗木Sの周囲を囲むように配設した生分解性シート状物の食害防止具本体1と、この食害防止具本体1の結合用挿入部2と各補強用挿入部3とに挿着した生分解性棒状物の補強具4とから成る。ところで、上記食害防止具Aは、食害防止具本体1の結合用挿入部2と補強用挿入部3とを外側に位置したが、内側に位置することも可能である。
【0014】上記食害防止具本体1は、図2に示すように、所定の引裂強力と耐水性とを備えた縦長の長方形の紙から成り、その左右側辺には結合用挿入部2となる袋状の結合雄部2aと切欠き状の結合雌部2bとを交互に夫々設け、中間部分には所要間隔をおいて縦方向全長にわたる袋状の補強用挿入部3を複数設けて成る。
【0015】この食害防止具Aを用いるときは、所定の造林地域において、各補強用挿入部3に補強具4を挿着した食害防止具本体1を彎曲して、左右側辺の結合雄部2aと結合雌部2bとを互いに嵌まり込ませて形成した結合用挿入部2に補強具4を挿着して、苗木Sの周囲を包囲する筒状体を形成する。そして、食害防止具Aは、その下端部分を苗木の幹の地際部分の地中に埋め込んで配設するものである。
【0016】この場合において、食害防止具本体1の耐水性を付与した紙としては、所定の引裂強力を有する紙に天然又は合成のはっ水剤や防水剤等を塗布、含浸等を施したものを用いることができる。
【0017】また、上記紙の縦・横の引裂強力としては、草食性の小、中動物に噛み破られないために、4.9N以上好ましくは9.8N以上あれば十分である。
【0018】さらに、食害防止具本体1の大きさは、苗木の幹の少なくとも地際部分を含む周囲を所要間隔を有して包囲するに十分な大きさの筒状体が形成できるものであれば特に限定されるものではないが、苗木Sの大きさや地中への埋め込み部分(約50mm程度)や運搬・取付け作業等の点を考慮して、高さ200〜1000mm,内径100〜500mmの筒状体が形成できる所定長さの縦・横を有する四辺形であれば十分である。
【0019】上記実施の形態では、食害防止具本体1の補強用挿入部3は3箇所設けたが、その数は食害防止具本体の大きさに応じて適宜増減することができ、通常1〜6程度が好適である。
【0020】補強具4の材質としては、天然材(例えば、間伐材や廃材等の木材や竹材)の他、生分解性プラスチック成型材を用いることもできる。
【0021】ところで、上記生分解性プラスチックとしては、微生物系として、多糖類(バクテリアセルロース、カードラン、プルラン等)・ポリアミノ酸(ポリグルタミン酸、ポリリジン)・バイオポリエステル(ポリヒドロキシアルカノエート、その共重合体)、天然物系として、多糖類(でんぷん、セルロース等)・キチン・キトサン・脂肪族ポリエステル(ポリ−3−ヒドロキシ酪酸、ポリリンゴ酸等)、化学合成系として、ポリ乳酸・ポリグリコール酸・ポリカプロラクトン・脂肪族共重合ポリエステル・ポリグリコリド・ポリ−γ−メチルグルタメート等を用いることができる。
【0022】
【実施例】柿渋でコーティングした紙(厚み0.9mm,縦・横の引裂強力31.4N)を、縦400mm×横200mmの縦長の長方形に裁断し、その中間部分の3箇所を縦方向に10mm折り返して袋縫いにミシン掛けして直径3mmの補強用挿入部を設け、また左右両側辺も略同様にして直径3mmの結合雄部と結合雌部を交互に設けて食害防止具本体を作製した。
【0023】次に、上記食害防止具本体の各挿入部には、直径3mm、長さ400mmの生分解性プラスチック成型材からなる棒状の補強具を挿着し、また両側辺の結合雄部と結合雌部を互いに結合した結合用挿入部にも、上記補強具を挿入して所望の食害防止具を形成した。
【0024】
【発明の効果】本発明によるときは、筒状体を維持する耐久性が向上して、風雨や雪等の自然現象によって破損したり、小、中動物によって噛み破られることがなく、食害を確実に防止することができ、苗木成長までの取替作業を解消することができる。また、従来技術の金網や樹脂板に比較して、大幅な軽量化を図ることができて運搬作業が極めて容易になり、また造林地域において簡単に組立可能であり取付けの作業性を向上することができる。さらに、設置後経年によって、地中の微生物によって水と二酸化炭素に自然に分解され、苗木成長後の回収撤去作業を完全に解消することができると共に、自然環境を汚染することがなく、特に天然資材を用いると、資源のリサイクル化を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】394010506
【氏名又は名称】金井 宏彰
【出願日】 平成13年3月8日(2001.3.8)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−262753(P2002−262753A)
【公開日】 平成14年9月17日(2002.9.17)
【出願番号】 特願2001−65052(P2001−65052)