| 【発明の名称】 |
スピニングリールの釣り糸案内機構 |
| 【発明者】 |
【氏名】滝倉 恒治
|
| 【要約】 |
【課題】スピニングリールの釣り糸案内機構において、釣り糸のまとわりつきを防止する。
【解決手段】スピニングリールの釣り糸案内機構であるベールアームは、第1ベール支持部材及び第2ベール支持部材8と、固定軸と、固定軸カバー11と、ラインローラと、ベールとを有している。第1ベール支持部材8及び固定軸カバー11の表面には、合成樹脂製の本体部17と、本体部17の表面に形成された撥水膜層18とを有している。また、ラインローラ及びベールの表面には、金属製の本体部17と、本体部17の表面に形成された撥水膜層18とを有している。撥水膜層18は、フッ素樹脂を金属薄膜である無電解ニッケルめっき層に含浸させることにより形成されている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】スピニングリールの第1ロータアーム及び第2ロータアームの先端に糸開放姿勢と糸巻取姿勢の間で揺動自在に装着されスプールに釣り糸を案内するためのスピニングリールの釣り糸案内機構であって、前記第1ロータアーム及び第2ロータアームの先端に各別に揺動自在に装着された第1ベール支持部材及び第2ベール支持部材と、前記第1ベール支持部材に一端が固定された固定軸と、前記固定軸の他端に前記第1ベール支持部材と間隔を隔てて設けられた固定軸カバーと、前記固定軸に回転自在に支持されたラインローラと、前記第2ベール支持部材と前記固定軸カバーとの間にわたって設けられたベールとを備え、前記第1ベール支持部材、前記固定軸カバー、前記ラインローラ及び前記ベールの少なくともいずれかは、部品本体と、前記部品本体上に形成された撥水膜層とを有している、スピニングリールの釣り糸案内機構。 【請求項2】前記部品本体と前記撥水膜層との間には下地膜層をさらに備えている、請求項1に記載のスピニングリールの釣り糸案内機構。 【請求項3】前記撥水膜層は金属薄膜層にフッ素樹脂を含浸させたものである、請求項1又は2に記載のスピニングリールの釣り糸案内機構。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、スピニングリールの釣り糸案内機構、特に、スプールに釣り糸を案内するためのスピニングリールの釣り糸案内機構に関する。 【0002】 【従来の技術】スピニングリールのロータには、釣り糸をスプールに案内するためのベールアーム(釣り糸案内機構)が設けられている。ベールアームは、第1ロータアーム及び第2ロータアームの先端に糸開放姿勢と糸巻取姿勢との間で揺動自在に装着されている。ベールアームは、第1ロータアーム及び第2ロータアームの先端に各別に揺動自在に装着された第1ベール支持部材及び第2ベール支持部材と、固定軸と、固定軸カバーと、ラインローラと、ベールとを備えている。固定軸は、第1ベール支持部材に一端が固定された軸である。固定軸カバーは、固定軸の他端に第1ベール支持部材と間隔を隔てて設けられたカバーである。ラインローラは、固定軸に回転自在に支持された金属製のローラであり、外周に釣り糸が案内される。ベールは、金属線材製であり、第2ベール支持部材と固定軸カバーとの間にわたって設けられている。 【0003】このようなベールアームでは、釣り糸案内機構を糸開放姿勢に反転させて釣り糸をスプールから繰り出した後に、釣り糸案内機構を糸巻取姿勢に復帰させると、釣り糸はベールから固定軸カバーを接触しながらラインローラに案内され、さらにスプールに案内される。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】前記従来のベールアームでは、釣り糸が濡れた状態で巻き取られると、水滴が付着した釣り糸がベールや固定軸カバーの表面にまとわりついてしまうことがある。釣り糸がベールや固定軸カバーにまとわりつくと、釣り糸の滑らかな案内を阻害するおそれがある。 【0005】本発明の課題は、スピニングリールの釣り糸案内機構において、釣り糸のまとわりつきを防止することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】発明1に係るスピニングリールの釣り糸案内機構は、スピニングリールの第1ロータアーム及び第2ロータアームの先端に糸開放姿勢と糸巻取姿勢の間で揺動自在に装着されスプールに釣り糸を案内するためのスピニングリールの釣り糸案内機構であって、第1ロータアーム及び第2ロータアームの先端に各別に揺動自在に装着された第1ベール支持部材及び第2ベール支持部材と、第1ベール支持部材に一端が固定された固定軸と、固定軸の他端に第1ベール支持部材と間隔を隔てて設けられた固定軸カバーと、固定軸に回転自在に支持されたラインローラと、第2ベール支持部材と固定軸カバーとの間にわたって設けられたベールとを備えている。第1ベール支持部材、固定軸カバー、ラインローラ及びベールの少なくともいずれかは、部品本体と、部品本体上に形成された撥水膜層とを有している。 【0007】この釣り糸案内機構では、第1ベール支持部材、固定軸カバー、ラインローラ及びベールの少なくともいずれかの部品本体の表面には、撥水膜層が形成されている。ここでは、釣り糸が接触可能な部品本体上に撥水性を有するたとえばシリコン樹脂やフッ素樹脂等が含浸された撥水膜層を形成することにより、濡れた釣り糸が接触しても水滴が弾かれるので、釣り糸が部品本体に付着しにくくなる。したがって、第1ベール支持部材、固定軸カバー、ラインローラ及びベールに釣り糸がまとわりつくのを防止することができる。 【0008】発明2に係る釣り糸案内機構は、発明1の釣り糸案内機構において、部品本体と撥水膜層との間には下地膜層をさらに備えている。この場合、たとえば下地膜層として各種の下地処理を施すことにより、撥水膜層の密着性を向上させることができる。 【0009】発明3に係る釣り糸案内機構は、発明1又は2の釣り糸案内機構において、撥水膜層は金属薄膜層にフッ素樹脂を含浸させたものである。この場合、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂を金属薄膜層である無電解ニッケルめっき層に含浸させることにより撥水効果を高めることができる。 【0010】 【発明の実施の形態】本発明の一実施形態を採用したスピニングリールは、図1に示すように、ハンドル1を有するリール本体2と、リール本体2の前部に回転自在に支持されたロータ3と、ロータ3の前部に配置され釣り糸が巻き付けられるスプール4とを備えている。 【0011】リール本体2は、図1に示すように、リール本体2の主部を構成し側部に開口を有するリールボディ2aと、リールボディ2aから斜め上前方に一体で延びるT字状の竿取付脚2bとを有している。リール本体2の内部には、いずれも図示しないが、ロータ3を回転させるロータ駆動機構や、スプール4を回転軸芯に沿って前後方向に移動させてスプール4に釣り糸を均一に巻き取るオシレーティング機構等が設けられている。 【0012】ロータ3は回転軸に沿って前方に延びる第1ロータアーム5及び第2ロータアーム6を有している。第1ロータアーム5及び第2ロータアーム6は、互いに対向して配置され、先端には釣り糸案内機構としてのベールアーム7が揺動自在に装着されている。ベールアーム7は、糸開放姿勢と糸巻取姿勢との間で揺動し、図示しないベール反転機構によりハンドル1の糸巻取方向の回転に連動して糸開放姿勢から糸巻取姿勢に戻る。 【0013】ベールアーム7は、図1に示すように、第1ロータアーム5の先端に揺動自在に装着された第1ベール支持部材8と、第2ロータアーム6の先端に揺動自在に装着された第2ベール支持部材9とを備えている。ベールアーム7は、図2及び図3に示すように、第1ベール支持部材8の先端に一端が固定された固定軸10(図2参照)と、固定軸10の他端に第1ベール支持部材8と間隔を隔てて設けられた固定軸カバー11と、固定軸10に回転自在に支持されたラインローラ12と、第2ベール支持部材9と固定軸カバー11との間にわたって設けられたベール13とを有している。第1ベール支持部材8は第1ロータアーム5の先端外側に揺動自在に装着されている。第2ベール支持部材9は第2ロータアーム6の先端外側に揺動自在に装着されている。第1ベール支持部材8及び第2ベール支持部材9は高強度合成樹脂製である。 【0014】第1ベール支持部材8は、図4及び図5に示すように、第1ロータアーム5に固定ボルト30により揺動自在に取り付けられる円形の取付部31と、固定軸10(図2参照)が固定されラインローラ12が装着される円形のローラ支持部32と、取付部31とローラ支持部32とを連結する略均一肉厚に成型された連結部33とを有している。ローラ支持部32は、取付部31とねじれた位置に配置されており、そこには段付きの貫通孔34(図2参照)が形成されている。貫通孔34には、固定軸10を第1ベール支持部材8に固定する固定ネジ35(図2参照)が貫通している。 【0015】第1ベール支持部材8の外周部36の長手方向の稜線36aは、図4及び図5に示すように、固定軸カバー11とベール13との接合点(段差が生じている点)である基準点P(図5参照)から稜線36aまでの最大距離である第1距離R1を半径とする球体内に配置されている。基準点Pから稜線36aまでの距離R1a、R1bは外方に向けて第1距離R1より徐々に短くなるように形成されている。すなわち、距離R1bは距離R1aより短くなるように形成されている。また、第1ベール支持部材8の外周部36の長手方向の交差する方向の稜線36bは、図3に示すように、基準点Pから稜線36b(上方視断面における外周部)までの最大距離である第2距離R2を半径とする球体内に配置されている。基準点Pから稜線36bまでの距離R2aは外方に向けて第2距離R2より徐々に短くなるように形成されている。なお、第2距離R2と第1距離R1とは同一の長さである。 【0016】第1ベール支持部材8の連結部33は、図4及び図6に示すように、略均一肉厚で一体成形されており、そこには、他の部分より内側突出して配置されラインローラ12へ釣り糸を誘導するための釣り糸誘導面37aを有する糸ふけ抑制部37が一体で形成されている。糸ふけ抑制部37は、連結部33に固定軸10(図2参照)の突出方向に突出して形成されたリブであり、釣り糸誘導面37aは、リブの先端にラインローラ12の外周面に向かって傾斜して形成されている。 【0017】第1ベール支持部材8は、図7に示すように、合成樹脂製の本体部17と、本体部17の表面に形成された撥水膜層18とを有している。本体部17は、たとえばABS樹脂とPC樹脂とを50%ずつ混合した合成樹脂製の部材である。ABS樹脂とPC樹脂との混合割合は、40:60以上60:40以下の範囲が好ましい。 【0018】撥水膜層18は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂を金属薄膜である無電解ニッケルめっき層に含浸させることにより形成されている。このような撥水膜層18では、撥水膜層18上における水滴wの接触角aは、図8に示すように、たとえば接触角a=170度以上となっており、一般によく用いられる撥水剤を処理した場合の水滴wの接触角aが110度であることと比較して、撥水力が非常に高くなっている。 【0019】固定軸10は、図2に示すように、ステンレス合金等の金属製の部材であり、基端が固定軸カバー11から延びており、先端が第1ベール支持部材8に形成されたローラ支持部32に固定ネジ35により固定されている。このローラ支持部32は、第1ベール支持部材8の先端に円盤状に突出して一体成形されている。また、固定軸10は、固定軸カバー11の頂点が所定の方向を向くように回転方向に位置決めしてローラ支持部32に嵌め込まれている。 【0020】固定軸カバー11は、図2に示すように、固定軸10に回転方向に位置決めして連結され、頂点が中心からずれた略円錐形状である。固定軸カバー11の頂点11aは、固定軸10の軸芯を基準にしてリールの後方向でかつスプール4の径方向外方を向いている。この円錐の頂点11a付近にベール13が稜線部11bと滑らかに接合されている。ベール13と固定軸カバー11との接合部の中心は、円錐の頂点11aに位置している。また、固定軸カバー11の釣り糸案内側と逆側の稜線部11cには、凹んだ欠損部11dが形成されている。 【0021】固定軸カバー11は、図7に示すように、合成樹脂製の本体部17と、本体部17の表面に形成された前述の撥水膜層18とを有している。本体部17は、たとえば、ABS樹脂とPC樹脂とを50%ずつ混合した合成樹脂製の部材である。ABS樹脂とPC樹脂との混合割合は、40:60以上60:40以下の範囲が好ましい。 【0022】ラインローラ12は、図2に示すように、略筒状の部材であり、固定軸10に軸受20を介して回転自在に支持されている。軸受20は、ローラ支持部32と固定軸カバー11との間で固定軸10に嵌められている。軸受20の内輪20aの一端はローラ支持部32に当接し、軸受20の内輪20aの他端は固定軸カバー11との間に配置されたスペーサ21に当接している。これにより内輪20aが軸方向に位置決めされている。 【0023】ラインローラ12は、図2に示すように、軸受20の外輪20bに固定軸カバー11方向に移動不能に嵌め込まれ、釣り糸をスプール4に案内する案内部である周溝12aが外周面に形成されている。ラインローラ12は、軸受20の外輪20bのローラ支持部32側の端面に係止するように内方に突出する係止部12bを内周面に有している。これにより、ラインローラ12は、固定軸カバー11方向に移動不能になっており、固定軸カバー11との間に僅かな隙間が常に形成されるようになっている。ラインローラ12のローラ支持部32側の端面と、ローラ支持部32との間にはポリアセタール等の合成樹脂製のスラスト受けリング22が配置されている。スラスト受けリング22は、ラインローラ12がローラ支持部32と直接接触するのを防止している。 【0024】ラインローラ12は、図9に示すように、金属製の本体部17と、本体部17の表面に形成された前述の撥水膜層18とを有している。本体部17はたとえばステンレス合金等の金属製部材である。 【0025】ベール13は、超弾性を有する形状記憶合金製の線材からなり、第2ベール支持部材9と固定軸カバー11とに両端がたとえばかしめ固定されている。ベール13は、スプール4の周方向外方に凸に湾曲して配置され、釣り糸を固定軸カバー11に導く。 【0026】ベール13は、図9に示すように、金属製の本体部17と、本体部17の表面に形成された前述の撥水膜層18とを有している。本体部17は、たとえば超弾性を有する形状記憶合金であるNi−Ti合金等の金属製部材である。 【0027】次にスピニングリールの操作及び動作について説明する。キャスティング時には、ベールアーム7を糸開放姿勢に倒して釣竿を前方に振り出す。すると、ルアー等の仕掛けの自重により釣り糸がスプール4から繰り出される。キャスティング後にハンドル1によりロータ3を回転させると、ベールアーム7は、ベール反転機構により糸巻取姿勢に戻る。そしてロータ3が回転により釣り糸はベール13から固定軸カバー11を経てラインローラ12に案内されてスプール4に巻き取られる。 【0028】このようなスピニングリールでは、第1ベール支持部材8、固定軸カバー11、ラインローラ12及びベール13の本体部17の表面には、撥水膜層18が形成されている。このため、濡れた釣り糸が第1ベール支持部材8、固定軸カバー11、ラインローラ12及びベール13に接触しても水滴が弾かれるので、第1ベール支持部材8、固定軸カバー11、ラインローラ12及びベール13に釣り糸がまとわりつくのを防止できる。 【0029】〔他の実施形態〕 (a) 前記実施形態では、本体部17の表面に撥水膜層18が形成されていたが、図10に示すように、本体部17と撥水膜層18との間に下地膜層19をさらに形成してもよい。また、前記実施形態における撥水膜層18は、PTFEを無電解ニッケルめっき層に含浸させて形成していたが、これに限定されるものではなく、撥水性を有するシリコン樹脂やフッ素樹脂等を含浸させて形成してもよい。 【0030】(b) 前記実施形態では、第1ベール支持部材8を第1ロータアーム5の外側に配置したが、第1ベール支持部材8を第1ロータアーム5の内側に配置してもよい。 【0031】(c) 前記実施形態では、第1ベール支持部材8、固定軸カバー11、ラインローラ12及びベール13のすべての表面に撥水膜層18が形成されていたが、第1ベール支持部材8、固定軸カバー11、ラインローラ12及びベール13のうちのいずれかの表面に撥水膜層18を形成してもよい。 【0032】(d) 前記実施形態では、合成樹脂としてABS樹脂、PC樹脂、ポリエステル樹脂との混合樹脂を用いたが、それらの単体やポリプロピレン樹脂や塩化ビニール樹脂のいずれかひとつ又はそれらを混合した合成樹脂製でもよい。 【0033】(e) 前記実施形態では、第1ベール支持部材8を合成樹脂製としてが、アルミニウム合金等の比較的軟質の金属を用い、硬質被膜を陽極酸化処理により生成された金属酸化物を主成分とするセラミックスで形成してもよい。この場合には、比較的軟質な金属を用いても簡単に硬質被膜を得ることができる。 【0034】(f) 前記実施形態では、固定軸カバー11を合成樹脂製にし、固定軸10をステンレス合金製にしたが、図11に示すように、固定軸カバー11を金属製にして固定軸10と一体成形してもよい。この場合、固定軸カバー11の表面に硬質被膜を形成してもよい。 【0035】 【発明の効果】本発明に係るスピニングリールの釣り糸案内機構では、第1ベール支持部材、固定軸カバー、ラインローラ及びベールの表面には撥水膜層が形成されているので、濡れた釣り糸が第1ベール支持部材、固定軸カバー、ラインローラ及びベールに接触しても水滴が弾かれ、第1ベール支持部材、固定軸カバー、ラインローラ及びベールに釣り糸がまとわりつくのを防止することができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000002439 【氏名又は名称】株式会社シマノ
|
| 【出願日】 |
平成13年5月25日(2001.5.25) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100094145 【弁理士】 【氏名又は名称】小野 由己男 (外1名)
|
| 【公開番号】 |
特開2002−345370(P2002−345370A) |
| 【公開日】 |
平成14年12月3日(2002.12.3) |
| 【出願番号】 |
特願2001−157001(P2001−157001) |
|