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【発明の名称】 スピニングリールのスプール
【発明者】 【氏名】西川 智博

【要約】 【課題】フロントドラグ型のスプールにおいて、ディスクの剪断変形を生じにくくして十分なドラグ力を得やすくする。

【解決手段】スピニングリールのスプールは、スプール本体7と、第1軸受56と、ドラグ機構60と、第2軸受57とを備えている。スプール本体は、ドラグ収納部8及び軸受収納部9を有する筒状の糸巻胴部7aを有している。第1軸受は、軸受収納部とスプール軸15との間に装着され、スプール本体を回転自在に支持する。ドラグ機構は、ドラグ収納部に配置され、スプール軸の先端に螺合するドラグ操作部61、並びにスプール軸に回転不能かつ軸方向移動自在に装着された第1ディスク91,92及びスプール本体に回転不能に装着され第1ディスクと交互に配置された第2ディスク93を含む摩擦部62を有している。第2軸受は、第2ディスクとスプール軸との間に装着され、スプール本体をスプール軸に回転自在に支持する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】リール本体に前後移動自在かつ回転不能に装着されたスプール軸の先端に配置されたスピニングリールのスプールであって、外周に釣り糸が巻き付けられ内周部に前後に並べて配置されたドラグ収納部及び軸受収納部を有する筒状の糸巻胴部と、前記糸巻胴部の後部に設けられた大径のスカート部と、前記糸巻胴部の前部に設けられた大径の前フランジ部とを有するスプール本体と、前記軸受収納部と前記スプール軸との間に装着され、前記スプール本体を前記スプール軸に対して回転自在に支持する第1軸受と、前記ドラグ収納部に配置され、前記スプール軸の先端に螺合するドラグ操作部、並びに前記ドラグ操作部により押圧され前記スプール軸に回転不能かつ軸方向移動自在に装着された1又は複数の第1ディスク及び前記スプール軸に回転自在かつ前記スプール本体に回転不能に装着され前記第1ディスクと交互に配置された1又は複数の第2ディスクを含む摩擦部を有し、前記スプール本体を制動するドラグ機構と、前記第2ディスクのいずれかと前記スプール軸との間に装着され、前記スプール本体を前記スプール軸に対して回転自在に支持する第2軸受と、を備えたスピニングリールのスプール。
【請求項2】前記軸受収納部は、前記糸巻胴部の後面側に配置されている、請求項1に記載のスピニングリールのスプール。
【請求項3】前記ドラグ機構は、前記ドラグ操作部に接触する前記第1ディスク設けられ、ドラグ作動時に発音するドラグ発音機構をさらに有する、請求項1又は2に記載のスピニングリールのスプール。
【請求項4】前記第2軸受は、前記ドラグ発音機構が設けられた第1ディスクに対向する前記第2ディスクに装着されている、請求項3に記載のスピニングリールのスプール。
【請求項5】前記第1軸受は、前記スプール軸に回転不能に装着された筒状の軸受ガイドを介して前記スプール軸に装着されている、請求項1から4のいずれかに記載のスピニングリールのスプール。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スプール、特に、リール本体に前後移動自在かつ回転不能に装着されたスプール軸の先端に配置されたスピニングリールのスプールに関する。
【0002】
【従来の技術】スピニングリールのスプール、特にフロントドラグ型のスプールは、スプール軸に回転自在に装着された糸巻胴部と糸巻胴部の内周側に一体形成された壁部とを有するスプール本体と、糸巻胴部の内部に設けられたドラグ機構とを有している。スプール本体は、スプール軸の先端に回転自在に装着されており、特にドラグ性能を向上させたスプールでは、壁部の前後にボス部が設けられている。このボス部の内部に近接して配置された2つの玉軸受によりスプール本体は、回転自在にスプール軸に装着されている。
【0003】ドラグ機構は、スプール軸の先端に螺合するドラグ操作部と、ドラグ作動部により押圧されスプール軸に回転不能に装着された1又は複数の第1ディスクと、第1ディスクと交互に配置されスプール本体に回転不能に装着された1又は複数の第2ディスクとを備えている。ドラグ操作部は、1又は複数の第1ディスクのうち前側のものの内周側に接触して第1ディスクを押圧する。また、1又は複数の第2ディスクのうち、少なくとも一番奥側のものは、前側のボス部の外周側でスプール本体に回転不能に装着されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記従来のスプールでは、ドラグ操作部が第1ディスクの内周側に偏って押圧し、奥側の第2ディスクが外周側に偏ってスプール本体を押圧する。このため、ドラグ操作部の内周側に偏った押圧面と第2ディスクの外周側に偏った押圧面とで力の食い違いにより両ディスクに剪断変形が生じやすくなる。このよう剪断変形が生じると、ドラグ操作部による押圧力がスプール本体に伝達されず、十分なドラグ力を得にくくなる。
【0005】また、ボス部内に2つの玉軸受が近接して配置されるので、軸受間距離が短くなる。このため、ドラグ作動時にスプール本体に力が作用したときにスプール本体がスプール軸に対して傾くおそれがあり、スプール本体を安定して支持しにくい。
【0006】本発明の課題は、フロントドラグ型のスプールにおいて、ディスクの剪断変形を生じにくくして十分なドラグ力を得やすくするとともに、スプール本体を安定して支持しやすくすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明1に係るスピニングリールのスプールは、リール本体に前後移動自在かつ回転不能に装着されたスプール軸の先端に配置されたスプールであって、スプール本体と、第1軸受と、ドラグ機構と、第2軸受とを備えている。スプール本体は、外周に釣り糸が巻き付けられ内周部に前後に並べて配置されたドラグ収納部及び軸受収納部を有する筒状の糸巻胴部と、糸巻胴部の後部に設けられた大径のスカート部と、糸巻胴部の前部に設けられた大径のフランジ部とを有している。第1軸受は、軸受収納部とスプール軸との間に装着され、スプール本体をスプール軸に対して回転自在に支持するものである。ドラグ機構は、ドラグ収納部に配置され、スプール軸の先端に螺合するドラグ操作部、並びにドラグ操作部により押圧されスプール軸に回転不能かつ軸方向移動自在に装着された1又は複数の第1ディスク及びスプール軸に回転自在かつスプール本体に回転不能に装着され第1ディスクと交互に配置された1又は複数の第2ディスクを含む摩擦部を有し、スプール本体を制動する機構である。第2軸受は、第2ディスクのいずれかとスプール軸との間に装着され、スプール本体をスプール軸に対して回転自在に支持するものである。
【0008】このスプールでは、スプール本体を支持する第1軸受はドラグ収納部より後方に配置された軸受収納部とスプール軸とを間に配置され、第2軸受はドラグ収納部に配置された第2ディスクとスプール軸との間に配置されている。このため、スプール本体においてドラグ収納部の内周側にボス部を設けて第2軸受を収納する必要がなくなる。この結果、ドラグ収納部の奥側に配置される第1又は第2ディスクをスプール軸の外周近くまで配置することができ、スプール軸近くでドラグ操作部により押圧される第1ディスクと第2ディスクとが略全面で対向可能になり、両ディスクの間で剪断力が生じなくなる。ここでは、第2ディスクに第2軸受を配置したので、スプール本体に第2軸受を配置する必要がなくなり、第2ディスクと第1ディスクとを略全面で対向させることができる。このため、ディスクの剪断変形が生じにくくなり十分なドラグ力を得やすくなる。
【0009】また、第1軸受をドラグ収納部の後方に配置された軸受収納部に配置し、第2軸受を第2ディスクに装着したので、2つの軸受間距離を広くとることができ、スプール本体がスプール軸に対して傾きにくくなりスプール本体を安定して支持しやすくなる。
【0010】発明2に係るスピニングリールのスプールは、発明1に記載のスプールにおいて、軸受収納部は、糸巻胴部の後面側に配置されている。この場合には、第1軸受が糸巻胴部の後面に配置されるので、両軸受の軸受間距離を広くとれ、スプール本体をより安定して支持できる。
【0011】発明3に係るスピニングリールのスプールは、発明1又は2に記載のスプールにおいて、ドラグ機構は、ドラグ操作部に接触する第1ディスク設けられ、ドラグ作動時に発音するドラグ発音機構をさらに有する。この場合には、ドラグ発音機構をスプール軸に対して回転不能な第1ディスクに設けたので、径の大きな第1ディスクの外周側で発音させることができる。このため、細かな凹凸によるクリック音を実現できる。
【0012】発明4に係るスピニングリールのスプールは、発明3に記載のスプールにおいて、第2軸受は、ドラグ発音機構が設けられた第1ディスクに対向する第2ディスクに装着されている。この場合には、最も前側の第2ディスクに第2軸受が装着されているので、軸受間距離が最大になるとともに、ドラグ発音機構の内周側に第2軸受を配置することで、スプール軸方向の長さをさらに短くすることができる。
【0013】発明5に係るスピニングリールのスプールは、発明1から4のいずれかに記載のスプールにおいて、第1軸受は、スプール軸に回転不能に装着された筒状の軸受ガイドを介してスプール軸に装着されている。この場合には、第1軸受がスプール軸に直接ではなく軸受ガイドにより間接的に支持されているので、ラジアル荷重が大きい大径の軸受を採用することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】〔全体構成〕図1において、本発明の一実施形態を採用したスピニングリールは、釣り竿に装着可能なリール本体2と、リール本体2に左右軸回りに回転自在に装着されたハンドル組立体1と、ロータ3と、スプール4とを備えている。ロータ3は、ハンドル組立体1の回転に連動して回転して釣り糸をスプール4に案内するものであり、リール本体2の前部に前後軸回りに回転自在に支持されている。スプール4は、ロータ3により案内された釣り糸を外周面に巻き取るものであり、ロータ3の前部に前後軸方向に往復移動自在に配置されている。
【0015】リール本体2は、リール本体2の主部を構成するリールボディ2aと、リールボディ2aから斜め上前方に一体で延びるT字状の竿取付脚2bとを有している。
【0016】リールボディ2aは、内部に機構装着用の空間を有しており、その空間内には、図2に示すように、ロータ3をハンドル組立体1の回転に連動して回転させるロータ駆動機構5と、スプール4を前後に移動させて釣り糸を均一に巻き取るためのオシレーティング機構6とが設けられている。リールボディ2aの前部には筒状部2cが形成されている。
【0017】ロータ駆動機構5は、図2に示すように、ハンドル組立体1が回転不能に装着されたマスターギア11と、このマスターギア11に噛み合うピニオンギア12とを有している。
【0018】マスターギア11は、フェースギアであり、マスターギア軸10と一体形成されている。マスターギア軸10は中心にハンドル組立体1が回転不能に係止される係止孔10aが形成された、たとえばステンレス製の中空の部材であり、その両端が、軸受を介してリールボディ2aに回転自在に支持されている。
【0019】ピニオンギア12は、図2に示すように、筒状の部材であり前後方向に沿って配置されリールボディ2aに回転自在に装着されている。ピニオンギア12の前部12aはロータ3の中心部を貫通しており、この貫通部分でナット33によりロータ3と固定されている。ピニオンギア12は、軸方向の中間部と後端部とでそれぞれ軸受14a,14bを介してリールボディ2aに回転自在に支持されている。このピニオンギア12の内部をスプール軸15が貫通している。ピニオンギア12は、マスターギア11に噛み合うとともにオシレーティング機構6にも噛み合っている。
【0020】ロータ3は、ピニオンギア12に固定された円筒部30と、円筒部30の側方に互いに対向して設けられた第1及び第2ロータアーム31,32と、両ロータアーム31,32に揺動自在に装着され、釣り糸をスプール4に案内するためのベールアーム40とを有している。円筒部30と両ロータアーム31,32とは、たとえばアルミニウム合金製であり一体成形されている。
【0021】円筒部30の前部には、図3に示すように、前壁41が形成されており、前壁41の中心部には、後方に突出するボス部42が形成されている。このボス部42の中心部にはピニオンギア12に回転不能に係止される貫通孔が形成されており、この貫通孔をピニオンギア12の前部12a及びスプール軸15が貫通している。
【0022】ピニオンギア12の前部12aにはナット33が螺合しており、このナット33によりピニオンギア12の先端部にロータ3が回転不能に固定される。ナット33の内周側には、軸受35が配置されている。軸受35は、スプール軸15とピニオンギア12の内面との間に隙間を確保するために設けられている。ナット33及び軸受35の前面には、内周側にリップを有するシール部材36が装着されている。シール部材36の先端はスプール軸15に接触している。これによりスプール軸15からリール本体2の内部への液体の浸入を防止できる。
【0023】ボス部42に隣接して逆転防止機構50が配置されている。逆転防止機構50は、図2に示すように、ワンウェイクラッチ51と、ワンウェイクラッチ51を作動状態(逆転禁止状態)と非作動状態(逆転許可状態)とに切り換える切換機構52とを有している。
【0024】ワンウェイクラッチ51は、ピニオンギア12に内輪が回転不能に装着され、筒状部2cに外輪が回転不能に装着された内輪遊転型のローラ形のワンウェイクラッチである。筒状部2cの内部において、ワンウェイクラッチ51の前方には、リップ付きの軸シール85が装着されている。
【0025】オシレーティング機構6は、図2に示すように、スプール軸15の略直下方に平行に配置された螺軸21と、螺軸21に沿って前後方向に移動するスライダ22と、螺軸21の先端に固定された中間ギア23とを有している。スライダ22は、螺軸21と平行に配置された2本のガイド軸24に移動自在に支持されている。スライダ22にはスプール軸15の後端が回転不能に固定されている。中間ギア23は、減速機構(図示せず)を介してピニオンギア12に噛み合っている。
【0026】〔スプールの構成〕スプール4は、図2に示すように、深溝形のものであり、ロータ3の第1ロータアーム31と第2ロータアーム32との間に配置されている。スプール4は、スプール軸15に回転自在に装着されている。スプール4は、スプール本体7と、スプール本体7に装着されたドラグ機構60と、スプール本体7をスプール軸15に回転自在に装着するための第1及び第2玉軸受56,57とを有している。
【0027】スプール本体7は、外周に釣り糸が巻かれる、たとえば軽量なアルミニウム合金製の糸巻胴部7aと、糸巻胴部7aの後部に一体で形成された大径のスカート部7bと、糸巻胴部7aの前端に設けられた大径の前フランジ部7cとを有している。
【0028】糸巻胴部7aは、図3に示すように、内周側に前後に並べて配置されたドラグ収納部8と軸受収納部9とを有している。ドラグ収納部8は、糸巻胴部7aの内周部に形成された壁部を有する円筒状の空間であり、そこにドラグ機構60の摩擦部62が収納されている。ドラグ収納部8の内周面の奥側には、摩擦部62を回転不能に係止するための係止溝8aが形成されている。ドラグ収納部8の内周面の前側には、雌ねじ部8bが形成されている。軸受収納部9は、内部に第1玉軸受56を収納するためのものであり、糸巻胴部7aの後部に筒状に突出して形成されている。
【0029】スカート部7bは、糸巻胴部7aの後端部から径方向に拡がった後ロータ3の円筒部30を覆うように後方に延びる有底円筒部材である。前フランジ部7cは、釣り糸の前方への糸落ちを防止するために設けられたものである。前フランジ部7cは、糸巻胴部7aの前端部から径方向外方に一体的に形成された第1フランジ部45と、第1フランジ部45に着脱自在に装着された第2フランジ部46とを有している。
【0030】第1フランジ部45は、糸巻胴部7aの前端から径方向外方に拡がっている。第1フランジ部45の外周部は、前端側がスプール軸15と平行に形成され、後端側が径方向外方側に突出して形成されており、その平行面が第2フランジ部46の内周面に接触して径方向への移動を規制し、突出部分が第2フランジ部46の内周部後端面に接触して後方への移動を規制している。
【0031】第2フランジ部46は、たとえばステンレス等の硬質金属又はジルコニア等の硬質セラミック製等の硬質材料製の部材である。第2フランジ部46は、糸巻胴部7aの内周面に形成された雌ねじ部8bにねじ込まれたフランジ固定部材47により第1フランジ部45に固定されている。第2フランジ部46の外周縁は丸みを帯び前方に傾斜したリング形状であり、釣り糸が前方に滑りやすい形状である。
【0032】フランジ固定部材47は、糸巻胴部7aの内周面に形成された雌ねじ部8bにねじ込まれる筒状の装着部47aと、装着部47aの先端から径方向外方に延びる鍔部47bとを有している。フランジ固定部材47は、鍔部47bの外周側後端面で第2フランジ部46を押圧して第1フランジ部45に固定している。装着部47aと糸巻胴部7aの内周面にはOリング74が装着されている。Oリング74は、両者の隙間から液体がドラグ機構60の内部に浸入するのを防止するために設けられている。
【0033】このように、前フランジ部4cを2つの部分に分けて釣り糸に接触して傷つきやすい外周部分に硬質材料製の比重が大きい第2フランジ部46を配置し、その他の内周部分に糸巻胴部7aと一体の比重が小さい第1フランジ部45を配置しているので、前フランジ部7cでの耐磨耗性や耐久性を維持して、スプール4を可及的に軽量化できる。
【0034】第1玉軸受56は、スプール本体7をスプール軸15に対して回転自在に装着するものである。第1玉軸受56は、軸受収納部9とスプール軸15との間に軸受支持部55を介して装着されている。軸受支持部55は、スプール軸15に回転不能かつ軸方向移動不能に装着された部材である。軸受支持部55は、スプール軸15に装着された筒状部55aと、筒状部55aの後端部に形成された鍔部55bとを有している。筒状部55aは、スプール軸15にねじ込まれたスプールピン54によりスプール軸15に対して軸方向移動不能かつ回転不能に取り付けられている。鍔部55bは、第1玉軸受56の内輪の後側面に接触して配置されている。第1玉軸受56の外輪の前側面には、受け座金58が接触している。受け座金58と糸巻胴部7aの壁面との間には2枚の位置決め座金59が配置されている。ここでは、スプール4とともに回転する受け座金58を外輪に接触させてスプール軸15に対して回転不能な軸受支持部55の鍔部55bを内輪に接触させているので、3枚の座金や糸巻胴部7aとの間で滑りが生じなくなり、滑り面の表面処理や粗さの影響による起動しゃくりが生じなくなる。
【0035】ドラグ機構60は、スプール4とスプール軸15との間に装着され、スプール4にドラグ力を作用させるための機構である。ドラグ機構60は、図4に示すように、ドラグ力を手で調整するためのつまみ部61と、つまみ部61によりスプール4側に押圧される複数枚のディスクからなる摩擦部62とを有している。
【0036】スプール軸15の軸受支持部55の装着部分から前方には互いに平行な面取り部15aが形成されており、面取り部15aの先端には雄ねじ部15bが形成されている。面取り部15aはドラグ機構60を回転不能に係止するとともにスプール4の後方への移動を規制するためのものであり、雄ねじ部15bは、ドラグ機構60のドラグ力を調整するつまみ部61を螺合させるためのものである。
【0037】つまみ部61は、面取り部15aに回転不能かつ軸方向移動自在に設けられた第1部材63と、第1部材63の軸方向前方に配置されスプール軸15に螺合する第2部材64と、第1部材63と第2部材64との間に装着された発音機構65とを有している。
【0038】第1部材63は、円筒部63aと円筒部63aより大径のリング状の鍔部63bとを有する鍔付き円筒状の部材である。円筒部63aの内周部には、スプール軸15に回転不能に係止する小判形状の係止孔66が形成されている。第1部材63の円筒部63aの後端面が摩擦部62に当接する。第1部材63の円筒部63aとフランジ固定部材47の装着部47aの内周面との間には、外部から摩擦部62側への液体の侵入を防止するためのシール板71が装着されている。シール板71は、たとえば、ステンレス製のリング部材の周囲にNBR製の皿状の弾性部材をアウトサート成形して得られたシール部材であり、外周部にリップを有している。シール板71は、スナップリング79により図3左方に付勢されている。シール板71の図3左側面には、リング状の突起部71cが形成されている。この突起部71cは、後述するカバー部材68に当接して内周側への液体の侵入を防止している。
【0039】第2部材64は、第1部材63と対向しかつ第1部材63と相対回動自在に設けられている。第2部材64は、第1部材63のスプール軸15方向前方に並べて配置されたつまみ本体67と、つまみ本体67の外周部に先端が固定され第1部材63を内部に相対回動自在に収納するカバー部材68とを有している。
【0040】つまみ本体67は円盤状の部材であり、前面に前方に突出した略台形状のつまみ67aが形成されている。つまみ本体67の内部には、スプール軸15の先端の雄ねじ部15bに螺合するナット69が回転不能かつ軸方向移動自在に装着されている。また、第2部材64とナット69との間においてスプール軸15の外周にはコイルばね70が圧縮状態で配置されている。
【0041】カバー部材68は、段付き有底筒状の部材であり、その底部を第1部材63の円筒部63aが貫通している。また、底部にシール板71の突起部71cが当接している。カバー部材68の筒部68aは、つまみ本体67の外周面にネジ止めされている。
【0042】カバー部材68の筒部68aの先端部とつまみ本体67との間にはOリング73が装着されている。Oリング73は、たとえばNBR製の弾性部材であり、第1部材63と第2部材64のつまみ本体67との隙間から内部に液体が侵入するのを防止するために設けられている。この隙間から液体が侵入すると、たとえシール板71を設けても、第1部材63とスプール軸15との隙間を通って摩擦部62まで水が侵入し、摩擦部62が濡れてドラグ力が変動することがある。
【0043】摩擦部62は、図3及び図4に示すように、スプール軸15に回転不能に装着された前後2枚の第1ディスク91,92と、2枚の第1ディスク91,92の間に配置されスプール本体7に回転不能に装着された第2ディスク93と、前側の第1ディスク91に装着されたドラグ発音機構94とを有している。
【0044】前側の第1ディスク91は、第1部材63が接触する内円板部91aと、内円板部91aの外周側から後方に延びる円筒部91bと、円筒部91bの後端部から糸巻胴部7aの内周に向かって径方向に拡がる外円板部91cとを有している。第1ディスク91の内円板部91aの中心には、面取り部15aに係止される略矩形の係止孔91dが形成されている。この係止孔91dが面取り部15aに係止されることにより、第1ディスク91は、スプール軸15に回転不能かつ軸方向移動自在に装着されている。内円板部91aの後面は第2玉軸受57の内輪にのみ接触している。また、外円板部91cには、ドラグ発音機構94が装着されている。
【0045】後側の第1ディスク92は円板状の部材であり、中心には面取り部15aに係止される略矩形の係止孔92aが形成されている。この係止孔92aが面取り部15aに係止されることにより、第1ディスク92は、スプール軸15に回転不能かつ軸方向移動自在に装着されている。
【0046】第2ディスク93は、前方に突出する筒状の軸受収納部93aと、外周に径方向に突出する1対の耳部93bとを有する円板状の部材である。軸受収納部93aには、第2玉軸受57が装着されている。軸受収納部93aでは、第2玉軸受57の外輪の後面のみ接触している。これにより、第2玉軸受57は、外輪後面で第2ディスク93に接触し、内輪前面で第1ディスク91に接触している。スプール本体7に対して回転不能な第2ディスク92を介してスプール本体7は、第2玉軸受57によりスプール軸15に回転自在に支持されている。1対の耳部93bは、ドラグ収納部8の内周面に形成された係止溝8aに係止されており、これにより、第2ディスク93は、スプール本体7に対して回転不能である。
【0047】第1ディスク91と第2ディスク93との間、第2ディスク93と第1ディスク92との間及び第1ディスク92と糸巻胴部7aの壁面との間にはたとえばグラファイト製又はフェルト製のドラグディスク95,96,97がそれぞれ介装されている。
【0048】ここでは、第2ディスク93に第2玉軸受57を装着したので、スプール本体7に第2玉軸受を装着する必要がなくなり、第2ディスク93と第1ディスク91,92とを略全面で対向させることができる。このため、ディスクの剪断変形が生じにくくなり十分なドラグ力を得やすくなる。また、第1玉軸受56をドラグ収納部の後方に配置された軸受収納部9に配置し、第2玉軸受57を第2ディスク93に装着したので、2つの軸受間距離を広くとることができ、スプール本体7がスプール軸15に対して傾きにくくなりスプール本体7を安定して支持しやすくなる。
【0049】ドラグ発音機構94は、帯状の金属板を湾曲して折り曲げた形状のばね部材94aと、糸巻胴部7aの内周面に装着された金属製の凹凸部材94bとを有している。ばね部材94aは、第1ディスク91に係止されてスプール軸15に対して回転不能になっている。凹凸部材94bは周方向に並べて配置された多数の凹部94cが形成されたプレス成形品であり、係止溝8aの前方で糸巻胴部7aの内周面にはめ込み固定されている。ドラグ作動時、つまりスプール4がスプール軸15に対して回転すると、このばね部材94aの折り曲げられた頂点が金属製の凹凸部材94bに衝突を繰り返して発音する。
【0050】〔リールの操作及び動作〕このスピニングリールでは、キャスティング時等の糸繰り出し時にはベールアーム40を糸開放姿勢に倒す。この結果、釣り糸は仕掛けの自重によりスプール4の先端側から順に繰り出される。このとき、前フランジ部7cを2つの部分に分けて釣り糸に接触して傷つきやすい外周部分に硬質材料製の比重が大きい第2フランジ部46を配置したので、前フランジ部7cでの耐磨耗性や耐久性を維持することができる。
【0051】糸巻取時には、ベールアーム40を糸巻取姿勢側に戻す。これは、ハンドル組立体1を糸巻取方向に回転させると、図示しないベール反転機構の働きにより自動的に行われる。ハンドル組立体1の回転力は、マスターギア軸10及びマスターギア11を介してピニオンギア12に伝達される。ピニオンギア12に伝達された回転力は、その前部12aからロータ3に伝達されるとともに減速機構を介してピニオンギア12に噛み合う中間ギア23によりオシレーティング機構6に伝達される。この結果、ロータ3が糸巻取方向に回転するとともにスプール4が前後に往復移動する。
【0052】仕掛けに魚がかかると、魚の引きによりドラグ機構60が動作しスプール4が逆転することがある。ドラグ作動時には、第1ディスク91,92はスプール軸15に対して回転不能であり、第2ディスク93は、スプール4に対して回転不能であるので、ドラグディスク95〜97を介して第1ディスク91,92と第2ディスク93の間で滑りが生じる。このときのドラグ力は、つまみ部61のつまみ67aを回して設定される第1部材63の第1ディスク91への押圧力により定まる。
【0053】このつまみ部61の押圧力は、第1ディスク91、第2ディスク93及び第1ディスク92を介してスプール本体7に伝達される。このとき、第2玉軸受57を第2ディスク93内に装着したので、第1ディスク91,92及び第2ディスク92が略全面で対向し剪断力が生じにくくなる。このため、剪断力によるドラグ力の低下が生じなくなり、十分なドラグ力を得ることができる。また、2つの軸受間距離を広くすることができるので、スプール4に力が作用してもスプール本体7がスプール軸15に対して傾きにくくなる。
【0054】〔他の実施形態〕
(a)前記実施形態では、深溝型のスプールを例に説明したが、本発明は浅溝形のスプールにも適用できる。
【0055】(b)前記実施形態では、前記実施形態では、第2軸受57をスプール軸15に直接装着したが、スプール軸15に回転不能に軸受支持部を設け、その軸受支持部に第2玉軸受を装着してもよい。
【0056】(c)前記実施形態では、第1軸受56を収納する軸受収納部9を糸巻胴部7aの後面に筒状に一体形成したが、別体で形成してもよい。また、この別体で形成した軸受収納部をスカート部等の他の構成要素と一体にしてもよい。この場合にも、軸受収納部は糸巻胴部に含まれる。
【0057】(d)前記実施形態では、糸巻胴部7aの内部にドラグ収納部8を設け、ドラグ機構60の摩擦部を設けているが、スカート部の内部にもドラグ機構の摩擦部を設けてもよい。
【0058】
【発明の効果】本発明によれば、第2ディスクに第2軸受を配置したので、スプール本体に第2軸受を配置する必要がなくなり、第2ディスクと第1ディスクとを略全面で対向させることができる。このため、ディスクの剪断変形が生じにくくなり十分なドラグ力を得やすくなる。
【0059】また、第1軸受をドラグ収納部の後方に配置された軸受収納部に配置し、第2軸受を第2ディスクに装着したので、2つの軸受間距離を広くとることができ、スプール本体がスプール軸に対して傾きにくくなりスプール本体を安定して支持しやすくなる。
【出願人】 【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
【出願日】 平成13年5月29日(2001.5.29)
【代理人】 【識別番号】100094145
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 由己男 (外1名)
【公開番号】 特開2002−345369(P2002−345369A)
【公開日】 平成14年12月3日(2002.12.3)
【出願番号】 特願2001−160888(P2001−160888)