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【発明の名称】 魚釣用リール
【発明者】 【氏名】堤 わたる

【要約】 【課題】リール本体に組み込まれた各種機構の駆動部分の防水性が図れ、駆動部分の駆動性能の向上が図れる魚釣用リールを提供することを目的とする。

【解決手段】本発明の魚釣用リールは、リール本体に設けられる固定側部材と、この固定側部材に対して駆動される駆動部材との間に弾性変形可能な接触部50bを有するシール部材50を介在させており、そのシール部材は、固定側部材又は駆動部材のいずれか一方に固定するための固定部50aを備え、固定部50aの肉厚をT、他方に当接する前記接触部b近傍の肉厚をtとしたとき、T≧3tとなるように形成されていることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 リール本体に設けられる固定側部材と、この固定側部材に対して駆動される駆動部材との間に弾性変形可能な接触部を有するシール部材を介在させてなる魚釣用リールにおいて、前記シール部材は、前記固定側部材又は前記駆動部材のいずれか一方に固定するための固定部を備え、前記固定部の肉厚をT、他方に当接する前記接触部近傍の肉厚をtとしたとき、T≧3tとなるように形成されていることを特徴とする魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リール本体の駆動部材部分に設けられるシール部材に特徴を有する魚釣用リールに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、魚釣用リールは、海水、水、異物等がリール本体に付着して内部に侵入し易く、他の技術分野の製品に比べて厳しい環境で使用されることが多い。
【0003】一般的に、魚釣用リールには、スプールに釣糸を巻き取る巻取り駆動機構、スプールに釣糸を平行巻きするための釣糸平行巻き機構、スプールに制動力を付与する制動機構等が設けられており、実釣時において各機構の駆動部分に、海水、水、異物等が浸入するのを阻止するように構成したものが、実開昭57―201173号、特開平11―220985号等に見られるように公知となっている。すなわち、上記した各機構における駆動部分、例えば駆動軸とリール本体との間に、シール部材を配置するのは一般的に公知となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記したような魚釣用リールに設けられるシール部材は、防水性を確実なものとするべく、組み込み時に、固定側へ固定するための固定部が弾性変形して挟み付けられるように構成されていることが好ましい。そして、シール部材として一般的なゴム等による弾性部材を弾性変形させるための推奨変形許容量は、20%前後が好ましいと一般的にいわれている。
【0005】また、シール部材は、各種の駆動部分と接触して生じる抵抗を軽減するため、接触部(リップ形状部)を薄肉状に形成するが、接触部を薄肉に形成する際、その肉厚は、成形加工上の理由(金型による成形性、バリ発生の防止、ゴムの成形時の膨張等)、及び材質的な理由(薄すぎると、接触部先端や固定部の挟着圧力でシール部材が切れる、ゴム表面の引っ張り力で先端が丸くなる等)により、現状では0.3mm前後の厚さが限界といわれている。
【0006】しかし、シール部材を、前記接触部における限界肉厚といわれている0.3mm前後の厚さで形成すると、圧入固定部の径方向への弾性変形により変形する量は、前記推奨許容量の20%を考慮した場合、変形可能量が非常に少なく(0.06mm程度)なってしまう。このため、組み付け部分に寸法誤差が生じると、充分にシール部材を固定できず防水性能の低下が生じたり、あるいは逆に圧着変形量が多すぎて(潰しすぎて)シール部材を破損してしまうといった不具合が発生し、寸法精度の面から必要以上のコストがかかってしまう。
【0007】ここで、シール部材を、推奨変形許容寸法の出し易い肉厚に規定すると、全体的に厚肉形状となり、駆動部材が駆動する際、接触部の摩擦抵抗が大きくなってしまい、駆動性能が著しく低下する不具合が生じてしまう。
【0008】この発明は、上記した問題に基づいてなされたものであり、リール本体に組み込まれた各種機構の駆動部分の防水性が図れると共に、駆動部分の駆動性能の向上が図れる魚釣用リールを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記した課題を解決するために、本発明に係る魚釣用リールは、リール本体に設けられる固定側部材と、この固定側部材に対して駆動される駆動部材との間に弾性変形可能な接触部を有するシール部材を介在させており、前記シール部材は、前記固定側部材又は前記駆動部材のいずれか一方に固定するための固定部を備え、前記固定部の肉厚をT、他方に当接する前記接触部近傍の肉厚をtとしたとき、T≧3tとなるように形成されていることを特徴とする。
【0010】上述したように、リール本体に設けられる駆動機構の駆動部分と接触して生じる抵抗を軽減するためには、接触部(リップ形状部)を薄肉状に形成するのが好ましいが、接触部の薄肉化は、現状における技術では約0.3mm前後の肉厚が一般的には限界といわれている。この場合、固定部の肉厚についても、接触部と同等の肉厚にすると、推奨変形許容量を20%前後として、許容量は0.06mm前後になってしまい、作成誤差によって、隙間が生じて防水性が低下したり、潰しすぎによるシール部材の破損等、生産管理上の不具合が生じ易くなってしまう。
【0011】この固定部における許容量については、生産管理が行い易く、また、充分なつぶし量を確保するために、最低でも0.2mm前後としておくのが好ましく、この0.2mmを確保するためには、固定部は、最低でも0.8mm以上の厚さが必要となり、前記推奨変形許容量である20%前後を確実に維持するためには、固定部の肉厚は、0.9mm以上は必要となる。
【0012】従って、接触部における肉厚を、現状における最低限界値と考えられる0.3mm前後に形成した場合、その固定部の肉厚は、少なくとも0.9mm前後あれば良いこととなり、固定部の肉厚をT、他方に当接する前記接触部近傍の肉厚をtとしたとき、T≧3tとすることで、摩擦による駆動部材の駆動性能の低下を極力防止して、その防水性が図れるようになる。
【0013】なお、前記の数値については、現状の技術で考えられる数値を用いて説明しているが、上記の数値に限定されるものではなく、今後の技術の進歩により、シール部材の更なる薄肉化が可能となった場合においても、本件構成が適用できることは言うまでもない。
【0014】また、前記の固定側部材とは、リール本体自体、もしくはそれに設けられる部材が該当し、駆動部材とは、そのような固定側部材に対して摺動、回転、回動する等、移動する部材が該当する。さらに、固定部の肉厚Tは、固定部における最大の肉厚部分によって定められ、接触部の肉厚tは、実際に接触がなされる部分の近傍における肉厚によって定められる。
【0015】
【発明の実施の形態】図1は、本発明に係る魚釣用リールの一実施形態(スピニングリール)を示す図であり、その内部構成を示した部分断面図である。最初にこの図を参照して、魚釣用リールの全体的な構成について説明する。
【0016】スピニングリール1は、リール本体2と、リール本体前方に回転可能に配されたロータ3と、ロータ3の回転運動と同期して前後動可能に支持されたスプール5とを有している。
【0017】前記ロータ3には、円筒部3aと一対のベール支持部材(図示せず)が設けられており、各支持部材の先端には、ベール3bを保持した一対のベール支持アーム(片方のみ図示)3cが釣糸巻取り位置と釣糸放出位置との間で反転可能に支持されている。また、一方のベール支持アーム3cには、ベール3bの基端部との間に、釣糸をスプール5に案内するための釣糸案内部8が配設されている。
【0018】リール本体2内には、ハンドル軸9が回転可能に支持されており、その突出端部には、ハンドル9aが取り付けられている。ハンドル軸9には、以下に述べる駆動機構及びオシレート機構が係合しており、前記ロータ3及びスプール5は、ハンドル9aを巻取り操作することで、これらの機構を介して、夫々回転駆動及び前後動されるようになっている。
【0019】駆動機構は、前記ハンドル軸9に取り付けられる駆動歯車(フェースギヤ)10と、ハンドル軸9と直交する方向に延出し、内部に軸方向に延出する空洞部が形成されたピニオン12とを備えている。このピニオン12の前部には、ピニオンと一体回転するように前記ロータ3が取り付けられている。
【0020】ロータ3のピニオン12に対する取付けは、図2に示すように、ロータの前壁部3dの中央に形成された嵌合孔3eをピニオン12の外周に対して回り止め固定すると共に、ピニオン12の先端部に形成された雄螺子部に対して、ロータナット13を螺入することでなされる。この場合、前壁部3dの中心部には、嵌合孔3eと同芯で嵌合孔3eよりも大径の凹所3fが形成されており、ここにロータナット13に形成された袋螺子部13aが嵌合されて、ロータ3は抜け止めされた状態でピニオン12に取り付けられている。
【0021】また、ピニオン12は、リール本体に対して、軸方向に複数箇所配設される軸受15,16,17を介して、安定して回転できるように支持されており、その空洞部には、ハンドル軸9と直交する方向に延出し、先端側にスプール5を支持したスプール軸18が軸方向に移動可能に挿通されている。
【0022】この場合、スプール軸18は、その外周がピニオン12の空洞部の内周と接触しないように、すなわち両者の間に隙間が形成されるように、ピニオン12の前方側においてロータ3との間で支持されると共に、ピニオン12の後方側においてリール本体2との間で支持されている。本実施の形態では、ピニオン12の前方側における支持は、前記ロータ3を固定するロータナット(固定側部材)13との間に介在される軸受20(前方側軸受)でなされ、ピニオン12の後方側における支持は、リール本体2内に形成された支持部2bに支持された軸受21(後方側軸受)でなされる。
【0023】また、スプール軸18の後端部には、スプール軸を前後動させるよう、前記オシレート機構が配設されている。本実施形態におけるオシレート機構は、スプール軸18の後端部に取り付けられ、スプール軸に対して略直交する方向に延出する長孔22aを有する摺動体22と、前記駆動歯車10と一体的に設けられた歯車10aに噛合する連動歯車23とを備えており、連動歯車23には、径方向外側に、前記長孔22aと係合する偏芯突部23aが突設されている。
【0024】これにより、連動歯車23がハンドル9aの回転操作に伴って駆動歯車10を介して回転すると、偏芯突部23aは、その回転軌跡により長孔22a内を上下動し、摺動体22(スプール軸18)を前後動させる。
【0025】リール本体2には、ロータ3の逆回転を防止するように逆転防止機構が設けられている。本実施形態の逆転防止機構は、転がり式の一方向クラッチ25によって構成されており、この一方向クラッチは、リール本体2の前部に突出形成された筒部2aとピニオン12との間に配設されている。
【0026】リール本体の筒部2aの開口部分には、支持体30が嵌合されており、一方向クラッチ25の抜け止めを果たすと共に、ピニオン12を前方側で支持している前記軸受15を支持している。また、筒部2aの先端部分には、キャップ状の抜け止めカバー33が筒部2aの外周との間で螺合されており、筒部2aの開口を覆って前記軸受15、一方向クラッチ25及び支持体30等を抜け止め規制している。
【0027】以上のように構成されたスピニングリールによれば、ハンドル9aを巻取り操作することで、ロータ3が駆動歯車10及びピニオン12を介して回転駆動され、かつスプール5が歯車10a、連動歯車23、摺動体22及びスプール軸18を介して前後動されるので、釣糸は、ロータ3のベール支持アーム3cに設けられた釣糸案内部8を介してスプールに対して均等に巻回される。
【0028】上記した構成のスピニングリールには、その内部の適所に、海水、水、異物等の侵入を防止するためのシール部材が配設されている。このシール部材は、固定がなされる部分(固定部)と接触部とを備えており、前記固定部が、リール本体内の固定側部材に対して取着されると共に、前記接触部が、固定側部材に対して駆動されるスプール軸のような摺動部材やロータ等の回転部材に接触するように配設される。
【0029】上記した構成のスピニングリールにおいては、ロータナット(固定側部材)13と、これに対して摺動駆動されるスプール軸18との間にシール部材50が配設されている。以下、図2及び図3を参照して、シール部材50の構成について説明する。シール部材50は、BR・SBR等のゴム系材料、及びシリコン系材料等の弾性部材によって、一体成形されており、軸方向から見て略輪帯形状をなし、その中央の孔部にスプール軸18が挿通されるようになっている。
【0030】また、シール部材50は、軸受20との間で所定の間隙を規定するように、ロータナット13に形成された円周溝13bに取着される固定部50aと、前記スプール軸18の外周と接触する接触部50bとを備えている。この場合、接触部50bは、その先端縁が、固定部50aに対して軸方向にオフセットすると共に、固定部50aから中心部に向けて斜め前方に傾斜するように屈曲形成されている。そして、このように形成されたシール部材50は、その固定部50aの肉厚をT、接触部50bの肉厚をtとした場合、T≧3tとなるように形成されている。
【0031】具体的には、スプール軸18と、接触部50bとの間での接触抵抗を軽減すべく、接触部50bの肉厚tを限界の肉厚である0.3mmとした場合、固定部50aの肉厚Tは、0.9mm以上となるように形成されている。
【0032】このように、固定部50aの肉厚Tが0.9mm以上となるように形成されることで、弾性部材としての推奨変形許容量を20%とした場合、その変形量T1は、少なくとも0.18mmが確保されることとなり、固定部を確実かつ防水性を最も効果的に向上させる必要最小限の肉厚に設定しながら、接触部の柔軟性を持たせることが可能となる。
【0033】また、固定部50aの肉厚が厚く、つぶし代を大きく設定することができるので、組み込み時における固定部に高い寸法精度が必要とされなくなり、これにより、製品誤差による不具合が減少し、防水性能が安定する。すなわち、接触部に対して固定部が厚くつぶし代を大きくできるため、組み込み精度が低くても、安定した防水性能が得やすくなる。
【0034】また、接触部50bが薄肉厚に形成されているため、その柔軟性が得られ、防水性能の向上を図りながら、スプール軸18はスムーズに移動することが可能となる。なお、上述したように、接触部50bの先端縁を固定部50aに対してオフセットさせ、かつ固定部に対して傾斜するような屈曲状態で接触させたことで、より柔軟に変形することが可能となり、スプール軸の摺動をより滑らかにすることが可能となる。
【0035】なお、上記した実施形態のスピニングリールでは、抜け止め部材(固定側部材)30と、これに対して回転駆動されるロータ3との間に、同様な構成のシール部材55が配設されているが、その固定部55aと接触部55bについては、上述した数値関係となるように形成されている。
【0036】図4(a)及び(b)は、上記した実施形態に配設されるシール部材の変形例を示す図である。図4(a)に示す変形例のシール部材60は、固定部60aに対して接触部60bの接触部分がオフセットされていない構成を示しており、図4(b)に示す変形例のシール部材60は、図4(a)に示す構成において、固定部60aの取着基部を、厚肉方向及び径方向に所定量だけ削除して切欠部60cを形成した構成を示している。
【0037】これらの構成においても、固定部60aの肉厚をT、接触部60bの肉厚をtとした場合、T≧3tとなるように形成されている。また、図4(b)に示すように、固定部60aの取着基部を所定量だけ削除することで、接触部60bを容易に変形させることが可能となり、接触抵抗をより低減することが可能となる。
【0038】上述したように構成されるシール部材は、魚釣用リールにおいて、固定側部材と駆動部材との間で、様々な位置に取着することが可能である。すなわち、図1に示した構成のスピニングリールでは、シール部材は、リール本体2の内部以外にも、リール本体に対して配設される部材において、その固定側部材とそれに対して駆動される駆動部材との間にも設けておくことが可能であり、例えば、釣糸案内部8の内部にも配設しておくことが可能である。
【0039】図5は、その釣糸案内部8の内部構成を示す図である。釣糸案内部8は、ベール支持アーム3cに対してベールの基端部を保持したベール保持部3hがビス8aによって固定され、ベール保持部3hに形成された軸部3iに、軸方向に2箇所配設された軸受8bを介してラインローラ8cが回転可能に支持されることで構成されている。
【0040】そして、固定側部材となるベール保持部3hの軸部3iと、これに対して回転される駆動部材となるラインローラ8cとの間に、シール部材70,80が配設されている。この場合、各シール部材70,80は、いずれも固定部70a,80aに対して、径方向外側に接触部70b,80bが形成された構成となっている。
【0041】前記シール部材70は、図6(a)に示すように、接触部70bの先端縁が固定部70aに対してオフセットされていない構成を示しており、接触部70bの肉厚t及び固定部70aの肉厚Tは、上述したようにT≧3tとなるように形成されている。また、前記シール部材80は、図6(b)に示すように、接触部80bの先端縁1が、固定部80aに対して軸方向にオフセットすると共に、その先端が径方向外側に向けて傾斜するように屈曲形成されており、接触抵抗が軽減されるように構成されている。
【0042】このようなシール部材70,80においても、上述した構成のシール部材と同様な作用効果が得られる。なお、この実施形態では、釣糸案内部内に配設される2つのシール部材は、異なる構成として示したが、2つのシール部材は、いずれか一方と同一構成であっても良い。
【0043】以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、スピニングリール以外のリール(両軸受型リール、電動リール等)にも適用可能であり、その固定側部材と駆動部材との間に、上述したような構成のシール部材が配設されていれば良い。また、上記したシール部材は、各固定部が、上述した固定側部材に取着されていたが、固定部が駆動部材側に取着されていても良い。
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、リール本体に組み込まれた各種機構の駆動部分の防水性が図れると共に、その駆動部分の駆動性能が向上した魚釣用リールが得られるようになる。
【出願人】 【識別番号】000002495
【氏名又は名称】ダイワ精工株式会社
【出願日】 平成13年5月30日(2001.5.30)
【代理人】 【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司 (外1名)
【公開番号】 特開2002−345367(P2002−345367A)
【公開日】 平成14年12月3日(2002.12.3)
【出願番号】 特願2001−161881(P2001−161881)