| 【発明の名称】 |
カサゴ仔魚の活力評価法及び該評価法を用いた選別法 |
| 【発明者】 |
【氏名】萩原 篤志
【氏名】阪倉 良孝
【氏名】松尾 陽子
【氏名】荒川 敏久
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| 【要約】 |
【課題】早期にカサゴ仔魚の活力を定量的に評価することが可能な活性評価法を提供することにある。
【解決手段】本発明のカサゴ仔魚の活力評価法は、産出後48時間以内のカサゴ仔魚の特性値の性状を測定することを特徴とする。また、本発明のカサゴ仔魚の活力評価法は、前記カサゴ仔魚が、産出後0.5時間〜48時間の範囲のものであることを特徴とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 産出後48時間以内のカサゴ仔魚の特性値の性状を測定又は解析し、測定値又は解析値に基づき前記カサゴ仔魚の活性を評価することを特徴とするカサゴ仔魚の活力評価法。 【請求項2】 前記カサゴ仔魚が、産出後0.5時間〜48時間の範囲のものである請求項1記載の方法。 【請求項3】 特性値の性状が、体長、行動、又は酵素活性からなる群から選択される少なくとも1つからなることを特徴とする請求項1又は2項に記載の方法。 【請求項4】 前記行動が、遊泳回数又は遊泳距離の測定であることを特徴とする請求項3記載の方法。 【請求項5】 前記遊泳回数の頻度が、20回/分以下である場合に活性有りと判断する請求項4項記載の方法。 【請求項6】 前記遊泳距離が、100mm/分以下である場合に活性有りと判断する請求項4項記載の方法。 【請求項7】 前記体長が、3.7〜3.9mmの範囲である場合に活性有りと判断する請求項3項記載の方法。 【請求項8】 前記酵素活性の測定に用いる酵素が、エステラーゼ、アルカリホスファターゼからなる群から選択される少なくとも1種である請求項4項記載の方法。 【請求項9】 前記酵素活性の測定に用いる酵素が、エステラーゼであり、かつ、活性値が、6以下である場合に活性有りと判断する請求項8記載の方法。 【請求項10】 請求項1〜9に記載の方法により活性有りと判断されたカサゴ仔魚を選別する方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、カサゴ仔魚の活力評価法に関し、特に、カサゴ仔魚の特性値の性状を測定するカサゴ仔魚の活性評価法に関する。 【0002】 【従来の技術】カサゴ(地方名アラカブ)は、長崎県下の特産種として高い市場価値をもつ海産魚である。本種は、小型魚でありながら成長が遅く、商品サイズになるまでに2〜3年を要するため、国内で養殖産業の対象となった例は少ない。一方、生態学的にみて、本種は沿岸域での定着性が強く、高い種苗放流効果が予測できることから、最近では、栽培漁業の対象種として注目されてきている。 【0003】しかしながら、カサゴに関しては、健康な産出仔魚を安定して大量に確保することが困難で、毎年安定した生産を実施できていない。これは、マダイ、ヒラメ等の量産可能種では、1産卵期間に、安定的な種苗生産を複数回実施できるが、カサゴの場合、同一年内でも種苗生産回次によって生産数変動が極めて大きいという問題があるからである。 【0004】ところで、種苗生産を遂行する上では、良質な卵や活力の高い仔魚を得ることが前提となる。高い仔魚の選別を行うことにより、その後、活力の高いカサゴが安定して成長していくこととなり、安定した水産業を提供することとなる。 【0005】現在、活力の高い仔魚を選別するために種苗の活力判定として用いられている技法は,仔魚をふ化後3−5日間飼育し、摂餌仔魚の割合と消化管内の摂餌数測定に基づく摂餌能力を指標とする方法や,仔魚を出生後無給餌で飼育した時の生残状況を指標とする方法(無給餌生残指数、SAI;新聞・辻ケ堂,1981)が知られている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した摂餌仔魚の割合と消化管内の摂餌数測定に基づく摂餌能力を指標とする方法や、生残状況を指標とする方法は、いずれも一定期間仔魚を飼育することが前提となる。そのため、仔魚の飼育期間中に費やす労力、所要経費、時間損失を考えると、産業面での利用価値は低い。 【0007】したがって、産出仔魚の健康度をリアルタイムで評価できれば,産出仔魚が得られた時点で,種苗生産を開始するか適切に判断することができる。産出仔魚が得られた時点でその後の仔魚の活性評価を予測できれば、労力軽減と生産の効率化に大いに役立つことから,栽培漁業および養殖業の新対象魚種となる可能性がある。しかし、このような仔魚の正確、かつ迅速な活性評価法はこれまで知られていない。 【0008】そこで、本発明の目的は、早期に仔魚の活力を定量的に評価することが可能な活性評価法を提供することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、発明者らは、出生後の仔魚に着目し、この段階での仔魚の体サイズや油球サイズ(行動のエネルギー源となる)、遊泳や摂餌等の行動能力、酵素活性等の健康度の指標となるパラメーターを追求し鋭意研究した結果、本発明のカサゴ仔魚の活性評価法を見出した。 【0010】本発明のカサゴ仔魚の活性評価法は、産出後48時間以内のカサゴ仔魚の特性値の性状を測定又は解析し、測定値又は解析値に基づき前記カサゴ仔魚の活性を評価することを特徴とする。 【0011】また、本発明のカサゴ仔魚の活性評価法の好ましい実施態様において、前記カサゴ仔魚が、産出後0.5時間〜48時間の範囲のものであることを特徴とする。 【0012】また、本発明のカサゴ仔魚の活性評価法の好ましい実施態様において、特性値の性状が、体長、行動,又は酵素活性からなる群から選択される少なくとも1つからなることを特徴とする。 【0013】また、本発明のカサゴ仔魚の活性評価法の好ましい実施態様において、前記行動解析が、遊泳回数又は遊泳距離の測定であることを特徴とする。 【0014】また、本発明のカサゴ仔魚の活性評価法の好ましい実施態様において、前記遊泳回数の頻度が、20回/分以下である場合に活性有りと判断することを特徴とする。 【0015】また、本発明のカサゴ仔魚の活性評価法の好ましい実施態様において、前記遊泳距離が、100mm/分以下である場合に活性有りと判断することを特徴とする。 【0016】また、本発明のカサゴ仔魚の活性評価法の好ましい実施態様において、前記体長が、3.7〜3.9mmの範囲である場合に活性有りと判断することを特徴とする。 【0017】また、本発明のカサゴ仔魚の活性評価法の好ましい実施態様において、前記酵素活性の測定に用いる酵素が、エステラーゼ、アルカリホスファターゼからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。 【0018】また、前記酵素活性の測定に用いる酵素が、エステラーゼであり、かつ、活性値が、6以下である場合に活性有りと判断することを特徴とする。 【0019】また、本発明のカサゴ仔魚の選別法は、請求項1〜9に記載の方法により活性有りと判断されたカサゴ仔魚を選別することを特徴とする。 【0020】 【発明の実施の形態】本発明カサゴ仔魚の活性評価法は、産出後48時間以内のカサゴ仔魚の特性値の性状を測定することにより行う。産出後48時間としたのは、産出後時間が経過すると、仔魚が餌を採取する量、生活環境などの活性評価に無関係な要因が加わり、より正確な活性評価ができないからである。 【0021】好ましくは、前記カサゴ仔魚が、産出後0.5時間〜48時間の範囲のものである。 【0022】また、本発明において、特性値の性状とは、体長、行動解析,又は酵素活性からなる群から選択される少なくとも1種からなる。 【0023】特性値の性状として、体長を選んだのは、カサゴの仔魚には、マダイやヒラメといった一般的な海産魚類とは異なる挙動が見られるからである。即ち、一般に、海産魚類においては、サイズが小さく、遊泳、摂餌能力に乏しい仔魚期での減耗が甚だしく大きい。しかし、カサゴの仔魚においては、サイズが小さい程、その後の生残率が高い。 【0024】体長としては、4mm以下が好ましく、さらに好ましくは、3.7〜3.9mmの間である。かかる範囲としたのは、3.7mm以下では、SAIが低く活性が低いと判断されたからであり、また、3.9mm以上では、SAIが低い上ほとんど生残率は0%だからである。 【0025】また、行動解析としては、総遊泳距離の測定、遊泳回数の測定を挙げることができる。これらを特性値の性状として活性評価を行うのは、視覚的に観察が容易であるということと、観察を定量的に評価できるという観点からである。特に、行動解析として総遊泳距離を測定したのは、観察方法が特別な解析装置を必要とせず、かつ定量的な数値として結果が得られるという観点からである。総遊泳距離は、例えば、産出後のカサゴ仔魚の1分間の総遊泳距離を平均したものである。1分間当たりの総遊泳距離は、好ましくは、100mm/分であり、さらに好ましくは90mm/分である。かかる範囲としたのは、総遊泳距離が長くなると、その後の生残能力が低下するおそれがあるからである。 【0026】また遊泳回数をカサゴ仔魚の活性評価基準としたのは、定性的な要素が含まれるものの、総遊泳距離よりもさらに観察が容易であるという観点からである。 【0027】遊泳回数の頻度の測定は特に限定されないが、例えば、一分間当たりの平均遊泳回数を基準とすることができる。遊泳回数の頻度は、好ましくは、20回/分以下である。これ以上の遊泳回数では、その後の仔魚の生残率に悪影響を及ぼすおそれがあるからである。 【0028】また、酵素活性の測定に用いる酵素が、エステラーゼ、アルカリホスファターゼからなる群から選択される少なくとも1種である。好ましくは、酵素としては、エステラーゼである。これは、エステラーゼが特に、生残能力との相関関係が高いと考えられるからである。 【0029】また、好適な酵素活性値は、例えば、Moffat and Snell (1995) 等のワムシ淡水種に対して用いた手法によれば、エステラーゼの場合、8以下である。さらに好ましくは、6以下である。6以下としたのは、かかる場合にカサゴ仔魚のその後の生残率が比較的高いからである。 【0030】よって、8以下、好ましくは、6以下の場合に種苗として良好なカサゴ仔魚と選別することができる。 【0031】なお、以上にカサゴ仔魚の活性評価法を用いて、種苗として良好なカサゴ仔魚を選別する手段として用いることができるが、この選別手段は、特に限定されることはない。選別手段として、従来からの標準的な選別法を本発明に適用することができる。 【0032】 【実施例】以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定して解釈される意図ではない。各実施例においては、出生時の体長、無給餌生残指数(以下SAIとする。)、行動解析、酵素活性の測定をして生残率と各種特性値との関係を調べた。 【0033】実施例1供試仔魚長崎県総合水産試験場で養成しているカサゴ親魚を,実験開始前日に200Lの黒色ポリカーボネート水槽3面に1尾ずつ収容し,自然に産仔した仔魚を実験に供した。実験は,平成10年度は12月11日〜3月17日の間に10回,平成11年度は13回(12月14日〜4月10日),計23回実施した。実験期間中,飼育水温を16.0〜16.5℃に設定した。 【0034】仔魚の飼育Fujita and Kohda(1998)によれば,カサゴの産仔は17〜22時頃に起こる。産仔仔魚2000尾(0日令)を,翌朝午前8時に,100Lの透明ポリカーボネート水槽に収容し,1日令まで無給餌で飼育した.この飼育水槽から,0,1日令の仔魚をそれぞれ20個体ずつサンプリングし,体長と油球径を測定した。次に,初期摂餌能力を調べることを目的として,産仔仔魚を平成10年度では30Lポリカーボネート水槽に400尾,平成11年度では1tアルテミアふ化槽に1万尾収容し,それぞれ0日令からいわゆるS型ワムシBrachionus rotundiformis (学名はイタリックまたは下線)を飼育水中の密度が5個体/mLになるように1日2回(9:00,13:00)給餌した。1日2回(10:30,14:30)仔魚を20尾無作為に採集し,仔魚20個体のうち何個体がワムシを摂餌しているか(これを摂餌率%と定義する)調べると共に,各仔魚の消化管内に見出されるワムシ数を計数した(摂餌数と定義)。以上の観察を0,1日令の仔魚に対して実施した。また、平成11年度には,1トンのアルテミアふ化槽内で13日令まで仔魚飼育を行い、全数計数により生残率を求めた。飼育水温は,親魚水槽と同様に16.0〜16.5℃に設定した。 【0035】飢餓耐性試験容量500mLのガラスビーカーに,予め試験水温(16.5℃)に調温した,ろ過海水を約200mL入れておき,0日令の仔魚を,可能な限りショックを与えないよう30尾収容した。その後,調温海水を加え500mLとした。以上を,産仔日の同じ仔魚に対して,3例ずつ設定した。これらを16.5℃にセットした恒温器に入れ,暗黒条件下で無給餌飼育を行った。換水は1日1回実施し,約170mLを新しいろ過海水と交換した。通気は行わなかった。ビーカー内の仔魚を毎日l回観察し,餓死魚を計数後ピペットで除去した。観察は供試した全個体が餓死するまで継続した。この飢餓耐性試験の結果から,次式を用いて無給餌生残指数(新聞・辻ケ堂,1981;以下SAIと略す)を算出した。 【0036】 【数1】
N:試験開始時のふ化仔魚数hi:i日日までの累積餓死尾数k:生残尾数が0となるまでの日数【0037】仔魚の性状図1は,平成11年度実験時の仔魚の平均体長(n=20)の推移を示している。体長は0,1日令共に3.6〜4.1mmの間で変動した.実験期間中、平均体長が最も大きかったのは0,1日令共に2月17日産仔仔魚であった。平成10年度の実験では,仔魚の平均体長が,平成11年度の場合よりもやや小さく,0日令では3.4〜3.9mm,1日令では3.6〜4.0mmの間で変動した。平成10,11年度共,本種の産仔期間が後期のものほど,産仔仔魚の体長が大きくなる傾向がみられた。 【0038】日間成長率は0.1〜3.3%の間で変動し,平成11年度では12月20日の産仔仔魚の成長が最も良かった(図2)。平成10年度の日間成長率は,12月11日産仔仔魚が最も高く4.2%だった。平成11年度のみ調べた13日令での生残率は(図3),産仔日の異なるグループ間で大きく変動し,3月10日以降の生残率はほぼ0%だった。また,産仔期間が初期(12月14日〜1月7日)の産仔仔魚も,生残率は30%未満とごく低い値を示した(図3)。 【0039】カサゴでは,SAIが仔魚の活力と生残能力の有効な指標になることが報告されている(新聞・辻ケ堂,1981)。本研究でも,SAI値が25以下の仔魚群を用いて飼育を行うと,13日令の時点でほとんどが死亡した(図10)。一方,SAI値30以上の仔魚群を用いることによって,13日日に30−100%の生残が得られたことから(図10),SAI値をカサゴ仔魚の活力指標の一つとすることが,妥当であることを再確認できた。ただし,これら2つの測定値間の相関は統計学的に有意なものでなかった。その理由の一つに,産仔期間初期の仔魚の生残率が30%未満と比較的低かったことが挙げられる(図3)。産仔期間後期はSAI値,生残率ともに非常に低い。一方,産仔期間初期ではSAI値は高いが,生残率は比較的低い。生残率から見ると,産仔期間中期(おそらく産仔盛期)の仔魚の生残率が特に高い。以上の事実が,SAI値と生残率の間に有意な相関が見られない原因であると考える。 【0040】実際の飼育実験を通じて求めた仔魚の生残能力に対しては,仔魚が由来する親魚の状態や卵質のみでなく,飼育技術を含めた出生後の外部環境,すなわち餌料環境や水質環境が少なからず影響を与えたものと推察される。一方,無給餌下で飼育して求めるSAI値に対しては,仔魚の生死に大きな影響を与える外部要因は比較的少なく,親魚の性状や卵質をより忠実に反映している可能性が高いと推察される。卵の質として規定される全ての性状がSAI値に反映されるわけではなく,SAI値に反映されることがない卵質の性状が,給餌下での仔魚の生残に反映する可能性もある。しかし,飼育試験で高い生残を示した仔魚群は,常に高いSAI値を示した。したがって,SAI値と高い相関を示すような特性値を出生直後の仔魚に対して見出すことができれば,仔魚の早期活力評価に対する,最初の手がかりが得られることになる。このような特性値が,さらに,給餌飼育下での生残とも相関すれば,仔魚の早期活力評価技法の開発へ展開していくことが可能になると考える。 【0041】平成10,11年度の実験を通じて,SAI値は産仔期間の前半,すなわち、12,1月に高く,以後は4月まで低い値を示す傾向が見られた。一方,カサゴ仔魚の出生時の体長は,産仔期間の後半ほど大きくなる傾向が見られ,平成11年度の実験結果に基づいた解析を通じて,1日令の仔魚の体長とSAI値との間に負の相関が検出された(図9,R=−0.591,Pく0.05)。同年度に測定した0日令での体長とSAI値との間には有意な相関はみられなかったが,体長が3.9mmを超えた仔魚群5例のうち,4例ではSAIが16以下の低い値を示していることが分かった。平成10年度の実験結果からも同様の傾向が見出された。以上のことは,出生後48時間以内(いわゆる0,1日令の時点)にカサゴ仔魚の体長を計測することによって,以後の仔魚の生残能力が推定可能であることを示唆している。 【0042】本実験結果より,カサゴ仔魚の活力は,産仔されたばかりの仔魚の体長計測によって,判定が可能であると判断された。ただし,仔魚の体長測定で活力を判定する場合には注意を要する。産仔期間初期の仔魚は,SAI値は高いものの,産仔期間中期の仔魚よりも体長が小さく,給餌飼育に対する生残率は低いことがわかった。従って,産仔期間中期(産仔盛期と考えられる)の産仔仔魚の体長を測定することで,カサゴ仔魚の活力判定はさらに精度の高いものになると予想される。 【0043】図15は、体長と生残率との関係を示す。この結果から明らかなように、体長が3.7〜3.9mmの間の場合に、一部の例外を除いて生残率が顕著に高いことが分かる。 【0044】マダイやヒラメなど多くの海産魚類では,多数の分離性浮遊卵を産む。これらの魚種では,サイズが小さく,遊泳・摂餌能力に乏しい仔魚期での減耗が甚だしく大きい。このような欠点を補う上で,卵胎生や胎生という発生様式が,魚類の中で特化してきたと考えられている。カサゴ仔魚の出生時の体サイズは3−4mmの間で大きく変動した。したがって,出生時の体サイズが大きい個体ほど,以後の生残りに対して有利であると予想されたが,本研究結果はその予測を覆すものであった。即ち,産仔期間の初期から中期にかけての体サイズの増大は,仔魚の摂餌能力や飼育下での生残能力上昇をもたらすものであり,この点では卵胎生魚としての生態学的適応がみられる。 【0045】実施例2行動解析0、1日令の仔魚の行動観察を13時に実施した。仔魚は100Lポリカーボネート水槽からランダムにサンプリングした。アクリル製透明容器(縦75mm×横100mm×高さ60mm,容量450mL)内に、16.5℃に調温した濾過海水を約100mL入れ,仔魚を可能な限りショックを与えないように約20尾収容した。その後、さらに調温海水を加え300mLとした。この容器に側面から光(1000〜15001ux)を当て,5分間ビデオ(SONY,DCR−TRV)撮影を行った。同一日令の仔魚群に対し,同様の観察を個体を入れ替えながら3回繰り返した。 【0046】撮影した画像を14インチのモニター(SONY,KV−14GVl)に再生し,5分間の録画画像中、無作為に仔魚(3個体)の行動軌跡を1分間選び,OHPシートに写した。これを産仔日が同じ仔魚のグループに対し,3回繰り返し,0,1日令の仔魚,各9個体の軌跡を求めた。本実験では,Puvanendran et al.(submitted)を参考にし,仔魚の軌跡を写したOHPシートから,キルビメーター(UCHIDA、デジタルキルビメーター)で移動距離を測り,1分間の遊泳軌跡に対する総遊泳距離と遊泳行動を示した回数,1回の遊泳行動によって遊泳した距離を求めた。 【0047】0日令仔魚の総遊泳距離は,平成11年度3月10日に出生した仔魚のグループで,120mm前後の大きな値を示した(図5)。1日令仔魚の総遊泳距離は,平成11年度3月10日および4月5日産仔の仔魚が最長の120mmを示し,他では50〜100mmであった。年度間を比較すると平成11年度の仔魚の方が,0,1日令を通じて高い値を示した。遊泳回数は,0日令では8〜26回,1日令では8〜33回であった。総遊泳距離同様,平成11年度の仔魚が高い値を示した。また,1回の遊泳行動によって,移動した距離は,0日令では3.5〜8.0 mm,1日令では3.5〜6.0 mmの間で変動した。産仔期の進行にともなって,活発な遊泳行動を示す出生仔魚が増える傾向がみられた。 【0048】SAIと遊泳行動との関係SAIと総遊泳距離との関係を図12に示す。相対的に、SAI値が高い場合に総遊泳距離が短いことが分かる。 【0049】また、SAIと遊泳回数との関係を図13に示す。相対的に、SAI値が高い場合に遊泳回数が少ないことが分かる。 【0050】体長と総遊泳距離との関係体長と総遊泳距離との関係を図14に示す。体長と総遊泳距離とは、高い相関関係を示した(R=0.847)。図14に示すように、生残率が高い3.7〜3.9mmの範囲では、相対的に総遊泳距離が短いことが分かる。 【0051】以上の結果から、遊泳行動を調査することにより、その後のカサゴの生残率を把握できることが判明した。 【0052】実施例3酵素活性全ての産仔魚群について,無給餌で飼育している100Lポリカーボネート水槽から0・1日令の仔魚を無作為に5尾ずつサンプリングし,1.7mLのマイクロテストチューブ20本に収容後(計100個体),−80℃のディープフリーザーで凍結保存した。 【0053】酵素活性測定には、生体内の酵素と反応すると蛍光を生じる蛍光基質5−Carboxyfluorescein diacetate,acetoxymethyl ester(MolecularProbes,Inc.、以下5−CFDA,AMと略称;反応する酵素はエステラーゼ)を用いた05−CFDA,AM5.0mgをDMSOl mLに溶かし18.8mMol/Lにした後,さらにDMSOで1/40の濃度に希釈し,0.47mMol/Lにした。今回はこの濃度の基質を用いて酵素活性測定を行った。測定は,Moffat and Snell(1995)が淡水ワムシ種に対して用いた手法に従い,基質濃度と反応時間を改変して行った。凍結したサンプルを解凍後,ホモジナイズし、これに基質を1.3μL加えて良く攪拌し,暗所に15分間おいた。その後,酵素反応を停止させるため,SDS(125mg/mL)を20μL添加した。次に,9000回転で5分間遠心分離機にかけた後,上澄み液の蛍光量を蛍光光度計(Turner社,TD−700)で測定した。各産仔日の各日令毎に3サンプルずつ用いた。その後,1個体当たりの酵素活性を求めた。 【0054】平成11年度に産仔された仔魚のエステラーゼ活性を図6に示した。酵素活性は,0日令では2.22〜10.69の間で,1日令では3.7〜11.09の間で変動し,産仔期間が後半に移るにつれて,エステラーゼ活性が直線的に高くなる傾向が見られた。 【0055】エステラーゼ活性と生残率との関係を図8に示す。この図から明らかなように、エステラーゼ活性が8以下の場合に相対的に高い生残率を示した。 【0056】また、体長とエステラーゼ活性との関係を図7に示す。体長とエステラーゼ活性との間にも比較的高い相関関係が得られた(R=0.776〜0.779)。 【0057】 【発明の効果】本発明のカサゴ仔魚の活性評価法によれば、仔魚の活性評価を極めて早期に判定し得るという有利な効果を奏する。 【0058】また、本発明のカサゴ仔魚の活性評価法によれば、カサゴ仔魚を一定期間飼育する必要がないため、飼育に費やす労力、経費、時間等を節減できるという有利な効果を奏する。
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| 【出願人】 |
【識別番号】501145000 【氏名又は名称】長崎大学長
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| 【出願日】 |
平成13年5月1日(2001.5.1) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100072051 【弁理士】 【氏名又は名称】杉村 興作 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−325521(P2002−325521A) |
| 【公開日】 |
平成14年11月12日(2002.11.12) |
| 【出願番号】 |
特願2001−134162(P2001−134162) |
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