| 【発明の名称】 |
核移植卵の作製方法、該方法により得られる核移植卵、該核移植卵を発生させて得られるクローン個体、及び該クローン個体の作製方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】東 貞宏
【氏名】横山 峯介
【氏名】安齋 政幸
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| 【要約】 |
【課題】比較的高い成功率で再現性高く体細胞核を除核未受精卵に導入する方法を提供すること。
【解決手段】齧歯類由来の体細胞を電気融合により除核未受精卵に導入することを特徴とする、核移植卵の作製方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 齧歯類由来の体細胞を電気融合により除核未受精卵に導入することを特徴とする、核移植卵の作製方法。 【請求項2】 齧歯類がマウスである、請求項1に記載の核移植卵の作製方法。 【請求項3】 体細胞が胎仔細胞である、請求項1又は2に記載の核移植卵の作製方法。 【請求項4】 齧歯類由来の体細胞を除核未受精卵の細胞膜に隣接させ、電気融合用溶液を含むチャンバーの電極針の間に置き、電気を印加することにより導入することを特徴とする、請求項1から3の何れか1項に記載の核移植卵の作製方法。 【請求項5】 電気融合用溶液中の陽イオンの合計濃度が1.1〜10mM当量の範囲内であることを特徴とする、請求項4に記載の核移植卵の作製方法。 【請求項6】 陽イオンがCaイオン及び/又はMgイオンである、請求項5に記載の核移植卵の作製方法。 【請求項7】 チャンバーの電極針のギャップが2mm以下であることを特徴とする、請求項4から6の何れか1項に記載の核移植卵の作製方法。 【請求項8】 導入のための電気の印加を直流で行い、当該直流の印加の前後に交流の電気を印加することを特徴とする、請求項4から7の何れか1項に記載の核移植卵の作製方法。 【請求項9】 導入のための電気の印加を300V/cm以下の直流で行うことを特徴とする、請求項4から8の何れか1項に記載の核移植卵の作製方法。 【請求項10】 電気融合用溶液中のCaイオン及び/又はMgイオンの合計濃度が0.55〜5mMの範囲内で、チャンバーの電極針のギャップが2mm以下であり、かつ導入のための電気の印加を300V/cm以下の直流で行うことを特徴とする、請求項4に記載の核移植卵の作製方法。 【請求項11】 請求項1から10の何れか1項に記載の作製方法により作製される核移植卵。 【請求項12】 請求項11に記載の核移植卵を発生させて得られる胎仔。 【請求項13】 請求項11に記載の核移植卵または請求項12に記載の胎仔を発生させて得られるクローン個体及びその子孫。 【請求項14】 (a)請求項1から10の何れか1項に記載の方法により核移植卵を作製する工程; (b)上記工程(a)で得た核移植卵を活性化させ、胚へ発生させる工程; (c)上記工程(b)で得た胚を仮親に移植する工程;並びに(d)上記工程(c)で移植した胚を個体に発生させる工程を含む、クローン個体の作製方法。 【請求項15】 齧歯類由来の胎仔細胞を除核未受精卵に導入して得られる核移植卵。 【請求項16】 齧歯類がマウスである、請求項15に記載の核移植卵。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明が属する技術分野】本発明は、齧歯類由来の体細胞を電気融合により除核未受精卵に導入することを特徴とする核移植卵の作製方法、該作製方法を用いて作製される核移植卵、該核移植卵を発生させて得られる胎仔、該核移植卵を発生させて得られるクローン個体及びその子孫、並びに、クローン個体の作製方法に関するものである。本発明の方法は核移植卵による組織または臓器の作製と移植、クローン個体の作製及び核移植クローン技術を用いた遺伝子操作個体の作製に使用することができる。 【0002】 【従来の技術】クローン動物はイギリスのGurdonが1975年にカエルで成功して以来多くの哺乳類でも試みられてきた。しかし、成功したものはなくクローン動物が作製できるのは、両生類までで、哺乳類についてはクローン動物は実現できないものと考えられていた。1997年、その考えを覆す出来事が、同じイギリスのwilmutのグループによりNature誌上に発表された(Nature, 385, 810-813, 1997)。彼らはヒツジの乳腺細胞を培養し、核移植前に血清濃度を0.5%と低下させることにより、飢餓培養を行った乳腺細胞を第2成熟分裂中期の染色体を除去した未受精卵の細胞質内に電気融合法で導入した。その後ヒツジの卵管内で発生させ、次に借腹動物に移植することにより、クローンヒツジ “ドリー"を誕生させた。続いて1998年にハワイ大学の若山らにより、成熟雌個体から採取した卵丘細胞の核を用いたクローンマウス誕生の報告がなされ、さらに彼らは成熟雄マウスの尾からの培養細胞からもクローン個体の作製が可能であることを報告している。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】その若山らのクローンマウス作製にはピエゾ素子を用いたマニピュレーターが不可欠であり、また、除核未受精卵に大きなガラス針を挿入して体細胞の核を導入することから核移植の成功率が低く、また大きな細胞質を持つ細胞核を導入することは困難である。さらに彼らは体細胞の核を移植するにあたり体細胞の細胞質を除くことが、クローン個体誕生の必須の条件としている。現在、世界中の研究室で再現実験が行われているが、ハワイ大学が関わった研究以外は、未だ成功の報告は得られておらず、またこの方法は煩雑な操作で除核の際に受精卵に大きな障害をもたらす方法であり、再現性の低い方法と言わざるをえない。さらに現在のゲノムプロジェクトによる遺伝子の解読が最終局面にさしかかり、次に遺伝子機能の検索が大きな問題となりつつある今、遺伝子の機能解析のためにも遺伝子を導入し易くさらに採取が容易でしかも培養が簡便な体細胞を用いた核移植技術が期待されている。即ち、本発明が解決しようとする課題は、核移植を用いたクローン個体の新規な作製方法を提供することである。より具体的には、本発明が解決しようとする第1の課題は、比較的高い成功率で再現性高く体細胞を除核未受精卵に導入する方法を提供することである。さらに、本発明が解決しようとする第2の課題は、比較的簡単な操作でクローンマウスを作製する方法を提供することである。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明者等は、このような再現性の低いマウス体細胞クローン個体の作製方法を鋭意検討した結果、体細胞の細胞質を除かず、さらに卵子に大きな障害を与えない電気により体細胞と除核未受精卵を融合することにより、90%以上の成功率で再現性高く体細胞核を導入する方法を開発することに成功した。またこの方法では、再現性が高いだけではなく、除核未受精卵への体細胞の導入を短時間で数多く行うことが可能であった。さらに採取が容易でしかも培養が簡便な胎仔由来の体細胞を用いて除核未受精卵と融合することができるので、ドナー細胞の入手を簡便に行うことができる。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。 【0005】即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。 (1) 齧歯類由来の体細胞を電気融合により除核未受精卵に導入することを特徴とする、核移植卵の作製方法。 (2) 齧歯類がマウスである、(1)に記載の核移植卵の作製方法。 (3) 体細胞が胎仔細胞である、(1)又は(2)に記載の核移植卵の作製方法。 (4) 齧歯類由来の体細胞を除核未受精卵の細胞膜に隣接させ、電気融合用溶液を含むチャンバーの電極針の間に置き、電気を印加することにより導入することを特徴とする、(1)から(3)の何れかに記載の核移植卵の作製方法。 (5) 電気融合用溶液中の陽イオンの合計濃度が1.1〜10mM当量の範囲内であることを特徴とする、(4)に記載の核移植卵の作製方法。 【0006】(6) 陽イオンがCaイオン及び/又はMgイオンである、(5)に記載の核移植卵の作製方法。 (7) チャンバーの電極針のギャップが2mm以下であることを特徴とする、(4)から(6)の何れかに記載の核移植卵の作製方法。 (8) 導入のための電気の印加を直流で行い、当該直流の印加の前後に交流の電気を印加することを特徴とする、(4)から(7)の何れかに記載の核移植卵の作製方法。 (9) 導入のための電気の印加を300V/cm以下の直流で行うことを特徴とする、(4)から(8)の何れかに記載の核移植卵の作製方法。 (10) 電気融合用溶液中のCaイオン及び/又はMgイオンの合計濃度が0.55〜5mMの範囲内で、チャンバーの電極針のギャップが2mm以下であり、かつ導入のための電気の印加を300V/cm以下の直流で行うことを特徴とする、(4)に記載の核移植卵の作製方法。 【0007】(11) (1)から(10)の何れかに記載の作製方法により作製される核移植卵。 (12) (11)に記載の核移植卵を発生させて得られる胎仔。 (13) (11)に記載の核移植卵または(12)に記載の胎仔を発生させて得られるクローン個体及びその子孫。 (14) (a)(1)から(10)の何れかに記載の方法により核移植卵を作製する工程; (b)上記工程(a)で得た核移植卵を活性化させ、胚へ発生させる工程; (c)上記工程(b)で得た胚を仮親に移植する工程;並びに(d)上記工程(c)で移植した胚を個体に発生させる工程を含む、クローン個体の作製方法。 (15) 齧歯類由来の胎仔細胞を除核未受精卵に導入して得られる核移植卵。 (16) 齧歯類がマウスである、(15)に記載の核移植卵。 【0008】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施方法及び実施態様について詳細に説明する。本発明のクローン個体の作製方法は、体細胞を体外の培養系に移し、人為的制御下である体外で増殖、あるいは凍結保存した細胞を電気融合法を用いて除核未受精卵に導入し核移植卵、胎仔、またはクローン個体を作製する方法に関する。 【0009】成獣の体細胞からクローン個体を作製した最初の報告は、ヒツジを使ったCampbell(Nature, 1996)らであり、彼らは乳腺細胞を血清飢餓状態で培養して、細胞周期をG0/G1に調整した細胞をドナー核として用いたことが成功の要因であると結論づけている。また、その他の動物においては加藤(Science, 1998)らがウシで卵丘細胞と卵管上皮細胞をドナー細胞としてクローンウシの作製に成功している。彼らもまた血清の濃度を低下させることにより、血清飢餓状態を作り細胞周期をG0/G1に調整したドナー細胞を用いて成功している。一方マウスにおいては若山(Nature, 1998)らがクローン個体の作製に成功している。彼らは、ピエゾ素子を使ったマイクロマニピュレーターを用いることでクローンマウスの作製に成功した。具体的には、雌マウスから採取した卵丘細胞をピィペッテングにより細胞質を除いた核のみを除核未受精卵にピエゾマニピュレーターを用いて導入することにより個体を得ることに成功している。彼らの成功は先ずピエゾマニピュレーターを使うことが成功の第一条件であり、また、ドナー細胞の細胞質を除くことにより未受精卵の中に含まれるであろう初期化因子を薄めることなくドナー核に作用させるために重要であるとしていた。しかし家畜で用いられている方法はマウスに用いると核移植を行った除核未受精卵が全て死滅するかあるいは発生停止を起こしてしまい、若山らがマウスで行っている方法では、ピエゾマニピュレーターの操作に並外れた習熟度が要求される。そこで本発明者らは、より簡便に実施できるクローンマウスの作製方法を開発した。 【0010】なお、核移植の方法、クローン個体の作製などの一般的技術については、国際公開WO99/37143号公報、WO98/30683号公報、WO99/01163号公報に記載されており、これらの公報に記載の内容は全て引用により本明細書に取り込むものとする。本発明でもこれらの公報に記載の技術を利用することができる。 【0011】本発明の第1の側面は、齧歯類由来の体細胞を電気融合により除核未受精卵に導入することを特徴とする、核移植卵の作製方法に関する。齧歯類動物の種類は特に限定されず、例えば、ウサギ、モルモット、マウス、ハムスター、ラットなどが挙げられ、特に好ましくはマウスである。また、本発明でドナー細胞として使用する体細胞は成体由来の細胞でも胎仔細胞でもよく、好ましくは胎仔細胞である。本発明で使用する体細胞は特に好ましくはマウス由来の胎仔細胞である。 【0012】ここで、胎仔細胞であればいずれの細胞でも導入に用いることができるが、遺伝子操作等が容易に行えることから、初代培養が可能な細胞を用いることが好ましい。細胞周期等にかかわらず通常状態で培養を行ったものを用いることができるが、中でも線維芽細胞(fibroblast)が好ましい。線維芽細胞の場合には、初代培養によって大量に得ることが容易であるが、出生直前の胎仔ではすでに皮膚の形成が起こっているために回収率が低下するので、妊娠12.5〜16.5日(交配確認日を0.5日とする)の胎仔から取得することが好ましい。また、かくして得られる胎仔細胞を遺伝子改変操作を行ってから導入に用いることによって、初望の性質を有するクローン個体を作製することができる。 【0013】本発明では除核未受精卵を使用する。未受精卵の単離方法及び除核方法は当業者に公知である。例えば、マウスの場合、成熟雌マウスに妊馬血清生性腺刺激ホルモン(PMSG)とヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)とを48時間間隔で投与し、hCG投与後、12〜16時間に雌マウスを屠殺して卵管膨大部を回収し、予めミネラルオイルで覆ったヒアルロニダーゼを含む卵子培養用培地(Whitten, modife Whitten, k-som, mk-som等)に卵丘に包まれた未受精卵を回収し、1〜5分後卵丘細胞がヒアルロニダーゼの作用により除去された卵子を卵子用培地で2〜5回洗浄することにより、未受精卵を回収する方法等があげられる。 【0014】洗浄された未受精卵を次いで、cytochalasin Bを添加したHepesでpHを安定させた卵子培養培地で5〜20分処理し、マニピュレターに取り付けた内径5〜8μmのガラスピペットで第二減数分裂中期の染色体と第一極体が存在するものは合わせて第一極体も吸引除去しすることにより除核することができる。このようにして得られる除核未受精卵は培地で数回洗浄してドナー細胞の導入まで培養することができる。培養は、15〜30分程度行うことが好ましい。 【0015】次いで、齧歯類由来の体細胞を電気融合により除核未受精卵に導入する。電気融合による導入の方法は、効率のよい導入を行うことができる限り特に限定されないが、好ましくは、齧歯類由来の体細胞を除核未受精卵の細胞膜に隣接させ、電気融合用溶液を含むチャンバーの電気針の間に置き、電気を印加することにより導入する。ここで、体細胞を除核未受精卵の細胞膜に隣接させる方法としては、体細胞を除核未受精卵の透明帯と卵子細胞膜の間の囲卵腔にキャピラリー等で注入する方法、透明帯等を除去して直接接触させる方法などが挙げられるが、囲卵腔にキャピラリー等で注入する方法が好ましく用いられる。 【0016】本発明で用いる電気融合用溶液中には、Caイオン、Mgイオン等の陽イオン、糖、PVA(ポリビニルアルコール)、BSA(ウシ血清アルブミン)、FCS(ウシ胎仔血清)等を必要に応じて添加することができる。陽イオンとしては、通電可能なイオンであって、低電気伝導性の溶液を調製できるものであればいかなるものでもよいが、例えば、Ca、Mg、Na、K等のイオンが挙げられる。これらは合計濃度が1.1〜10mM等量で用いることが好ましい。中でも、細胞接着に関与するイオンであることから、Caイオン及び/またはMgイオンを用いるのが好ましい。これらのイオンは単独で用いてもよいし、混合して用いることもでき、Ca/Mgの場合、その合計濃度の下限は通常0.55mM、好ましくは1mMであり、上限は通常5mM、好ましくは3.5mMである。Caイオン及び/またはMgイオンの合計濃度の好ましい範囲は、通常上記下限の濃度と上限の濃度を組み合わせた濃度範囲が適当であるが、特に1.7mMが好ましい。 【0017】糖としては、電気を通さず等張を維持できるものであればいかなるものでもよいが、マンニトール、スクロース、ソルビトール等が用いられ、中でもマンニトールが好ましい。糖の濃度は等張状態に調整できる濃度とすればよく、例えば、マンニトールの場合は0.3Mが好ましい。 【0018】PVA、BSA、FCS等は、チャンバー内で卵が壁等に非特異的に接着するのを防止する効果を有するため、添加することが好ましい。中でも、PVAは、合成高分子物質であるので、BSAやFCSのような生体由来のタンパク質とは異なり塩等のコンタミがほとんどなく、イオン濃度に影響しにくいために好ましく用いられる。例えば、分子量7万〜10万のPVAを用いた場合には、0〜1mg/ml、好ましくは0〜0.5mg/ml、特に好ましくは0.1mg/ml添加するのが好ましい。PVAの分子量は、例えば、3万〜7万程度のものを用いても同様の効果を得ることができる。 【0019】チャンバーの電極針のギャップは、狭く設定することで印加する電圧を下げることができ、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下である。電極針としては、細いものを用いることにより抵抗値が下がるために印加する電圧を低くすることができることから、板状のものよりも針状のものを選択することが好ましい。 【0020】除核未受精卵への体細胞の導入のための電気の印加は、300V/cm以下の直流(DC)で行う。好ましくは、200V/cm以下、より好ましくは80〜150V/cm、特に好ましくは90〜100V/cmで行う。印加時間は、細胞の状態によって選択すればよいが、例えば、5〜20μ秒、好ましくは10〜14μ秒で、複数回印加することが好ましい。印加する回数は1〜3回、好ましくは2回である。また、体細胞の導入のための電気の印加の前後に、交流(AC)電圧の印加を行ってもよい。前処理として行う交流電圧の印加は、例えば、5〜15V/cmで10μ秒の印加を1〜2回、好ましくは2回行うことができるが、これにより溶液中の卵を電極針に対して垂直に整列させ、同時に1〜5個の卵の電気融合を行う場合でも均等に融合を起こさせることができる。また、後処理として行う印加は、融合をさらに安定化させるために行うことができ、例えば、交流で2V/cm、25秒印加することができる。電気融合溶液中の陽イオンの合計濃度、チャンバーの電極針のギャップ、並びに電圧を上記した範囲に調節することにより、効率よく核移植を達成することができる。これらを組み合わせた好ましい範囲としては、例えば、電気融合用溶液中のCaイオン及び/またはMgイオンの合計濃度が0.55〜5mMの範囲内で、チャンバーの電極針のギャップが2mm以下であり、かつ導入のための電気の印加を300V/cm以下の直流で行う方法が好ましく用いられる。 【0021】上記のようにして得られた核移植卵の活性化、核移植卵の借腹マウスへの移植、並びに胎仔または個体への発生のための方法は、当業者に公知であり、例えば、国際公開WO99/37143号公報、WO98/30683号公報、WO99/01163号公報に記載の方法又はその改良法、あるいは具体的には以下の実施例に記載の手順で行うことができる。 【0022】例えば、核移植卵の活性化は、電気融合を行った卵を核膜が消失するまで卵培養用培地で培養してから、5〜10mMストロンチュームと5μg/mlのcytochalasinBを含みCa不含の卵培養地(mk−SOM)で3〜6時間処理して活性化させることができる。すなわち、ここで、ストロンチュームにより卵内においてCa放出が起こって活性化され、cytochalasinBにより、活性化によって導入された核が卵外に放出されないよう維持される。次に2〜3時間5μg/mlのcytochalasinB、Caを含む培地(mWM)で培養した後に、cytochalasinBを除くために4〜8回培地で洗浄して、活性化され核が形成されている卵を得ることができる。また、さらに、2細胞期または胚盤胞期まで培養することにより、胚盤胞から既知の方法により、該体細胞の核を有するES細胞を作製すること等もできる。また、該胚を発生させて、個体およびその子孫を得ることもできる。 【0023】また、本発明の別の側面は、齧歯類由来の胎仔細胞を除核未受精卵に導入して得られる核移植卵に関する。該核移植卵は、上記したように本発明の方法を用いて作製することができる。マウス由来の胎仔細胞をドナー細胞として用いて核移植した例は本発明者が知る限りこれまでに報告はない。以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。 【0024】 【実施例】実施例1:ドナー細胞と除核未受精卵の調製ドナー細胞は妊娠12.5〜16.5日目(交配確認日を0.5として)のマウス胎仔を採取して、内臓を取り除き鋭利なハサミで細切し、0.025%〜0.25%トリプシンを含む溶液で10〜40分処理して細胞を溶出させ、次にウシ胎仔血清(FCS)を含むDMEMでトリプシンの反応を中和して遠沈後、細胞を回収して、初代培養を行った。胎仔由来の細胞は10%FCSを添加したDMEMで培養した。胎仔由来の細胞が培養皿一杯になった時点で5〜10倍に希釈して細胞を播き替えた。続いて5〜10倍に増やした細胞が培養皿一杯になった場合、10%DMSO、20%FCSを含むDMEMで-80℃〜196℃で凍結保存した。細胞は使用2〜7日前に凍結保存してあるものを融解して、直後あるいは1〜3回継代して核移植のドナー細胞として用いた。また一部の細胞は核移植前日に血清を全く含まない培地で培養し、血清飢餓培養の効果を検討することとした。 【0025】核移植を受ける除核未受精卵は、成熟雌マウスに妊馬血清生性腺刺激ホルモン(PMSG)5〜7.5iuとヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)5〜7.5iuを48時間間隔で投与し、hCG投与後、12〜16時間に雌マウスを屠殺して卵管膨大部を回収し、予めミネラルオイルで覆った150〜300uヒアルロニダーゼを含む卵子培養用培地(mk-SOM)に卵丘に包まれた未受精卵を回収し、1〜5分後卵丘細胞がヒアルロニダーゼの作用により、除去された卵子を卵子用培地で2〜5回洗浄した。 【0026】洗浄された卵子は5μg/mlにcytochalasin Bを添加したHepesでpHを安定させた卵子培養培地(mk−SOM)で5〜20分処理後に、マニピュレターに取り付けた内径5〜8μmのガラスピペットで第二減数分裂中期の染色体と第一極体が存在するものは合わせて第一極体も吸引除去しすることにより除核した。除核未受精卵は培地で数回洗浄してドナー細胞の導入まで15〜30分培養した。 【0027】ドナー細胞の準備は、先ず培養している培地を吸引除去し、0.025〜0.25%トリプシンを含む溶液で2〜10分処理して細胞を培養皿より剥がし、10%FCSを含む細胞培養培地でトリプシンを中和してピペッテングで単一の細胞に分散させ、遠沈して上清を除き細胞を再び10%FCSを含む細胞培養用培地(DMEM)に再懸濁して、使用時まで氷中で保存した。 【0028】実施例2:核移植除核未受精卵の透明帯と卵子細胞膜の間の囲卵腔に胎仔由来の細胞をマニピュレーターに取り付けたキャピラリーで注入して、電気融合用溶液(0.3Mマンニトール、1.7mM MgCl2、0.1mg/ml PVA)で1〜2回洗浄して溶液を置換し、該溶液30〜50mlで満たした融合チャンバー(ベックス社製)の電極針(ギャップ1mm)の間に1〜5個並べて置いた。装置としては、高電圧パルス式細胞融合装置LF101(ベックス社製)を用いた。 【0029】電気の印加は交流電圧(AC)が5〜14V/cm、10μ秒2回、直流(DC)90〜100V/cm、10〜14μ秒2回印加し、さらに交流電圧(AC)2V/cm、25秒印加することにより、電気融合による導入を行った。ここまでの実験操作の概要を図1に示す。電気を印加した後、Hepes緩衝培地で数回洗浄し、胎仔由来の細胞と除核未受精卵の融合を確認するまで1〜2時間37℃で観察した。融合が確認された核移植卵は卵培養用培地で数回洗浄してHepesを除き核膜が消失するまで培養した。 【0030】実施例3:核移植卵の活性化核膜が消失した核移植卵は10mMストロンチュームと5μg/ml cytochalasinBを含みCa不含の卵培養培地(mk−SOM)で3〜6時間処理して活性化を促し、次に2〜3時間5μg/ml cytochalasinB、Caを含む培地(mWM)で培養した後に、cytochalasinBを除くために4〜8回培地で洗浄した後、活性化され核が形成されている卵を判定し、活性化卵子数とした。その後、2細胞期または胚盤胞期まで培養した。 【0031】実施例4:核移植卵の借腹マウスへの移植借腹に使う雌マウスは精管結紮雄と同居させ交配を確認した雌マウスを用いた(交配を確認した日をday0.5とする)。核移植後培養により2細胞期に発生した卵子はDay0.5の雌の卵管采から卵管に移植した。 【0032】 実施例5:胎仔または個体への発生借腹雌マウスへ移植後10日目で開腹して核移植卵の胎仔への発生能力を着床痕を観察することにより判定した。また、個体への発生能力の検査は妊娠満了日に帝王切開して生存産仔を確認することにより行った。実施例2における電気融合による細胞融合以降の実験操作の概要を図2に示す。 【0033】(結果) 1.核移植血清濃度0%で培養したドナー細胞を用いた核移植では、284個の未受精卵を用い256(90.1%)と高い確率で第二減数分裂中期の染色体を除去することに成功した。また融合による核移植でも高率に240(84.5%)の核移植卵が作製でき、またその全てに置いて卵子の活性化に成功した。2細胞期への発生能では132個(46.5%)の核移植卵が正常な2細胞期へと発生することが確認された。また胚盤胞期への発生率は数%と低率であった。10%血清で培養された細胞をドナー細胞核とした場合、459/496(92.5%)上記同様、高い率で染色体除去に成功し、融合は430/459(91.0%)と非常に高い成功率でありまた、続く活性化412/430(83.1%)、2細胞期への発生率は264/412(53.2%)であった。このことから、血清濃度の差は核移植卵の発生にほぼ影響せず、むしろ血清濃度10%で培養したドナー細胞を用いた場合に、より高い成功率を示すことが分かった。上記した電気融合法を用いた核移植成績の結果を以下の表1にまとめる。 【0034】 【表1】
【0035】2.生存胎仔への発生10%血清添加培地で胎仔への発生では、借腹雌マウスに移植した15個の核移植2細胞期胚のうち13個までもが着床し、そのうちの1匹が生存胎仔であった。これは、借腹雌を帝王切開して正常胎仔であることを肉眼的に確認した。 【0036】3.生存産仔への発生借腹雌マウス6匹に合計72個の核移植胚を移植し妊娠が成立した借腹雌マウスは1匹であった。妊娠が成立した雌マウスを妊娠満了日に帝王切開した結果、1匹の生存産仔が確認された。この産仔はホスターマザーに保育させた。生後14日には毛色の遺伝子型から核を提供した胎仔細胞由来のクローンマウスであることが確認できた。またこのクローンマウスは雄で生後8週令で毛色の遺伝子型の異なる雌マウスと交配した結果、正常に生殖細胞を形成していることが確認された。生存胎仔および生存産仔への発生の結果を以下の表2にまとめる。 【0037】 【表2】
【0038】 【発明の効果】本発明の方法では、比較的高い成功率で再現性高く体細胞核を除核未受精卵に導入することができ、また比較的簡単な操作でクローン個体を作製することが可能である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】599071832 【氏名又は名称】株式会社三菱化学生命科学研究所
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| 【出願日】 |
平成13年7月4日(2001.7.4) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100096219 【弁理士】 【氏名又は名称】今村 正純 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−320428(P2002−320428A) |
| 【公開日】 |
平成14年11月5日(2002.11.5) |
| 【出願番号】 |
特願2001−203442(P2001−203442) |
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