| 【発明の名称】 |
DNaseII遺伝子機能欠損貧血症モデル非ヒト動物 |
| 【発明者】 |
【氏名】長田 重一
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| 【要約】 |
【課題】その発症機構を解明するための適切な病態モデルが存在しておらず、治療方法の開発が遅れている貧血症の治療の道を拓く貧血症モデル非ヒト動物や、これを用いた貧血症治療薬のスクリーニング方法を提供すること。
【解決手段】DNase II遺伝子の全部又は一部を含むフラグメントを、ネオマイシン耐性遺伝子カセットに置換し、また、ポリオーマウイルスのエンハンサー由来のジフテリアトキシンAフラグメントをコードするDNAフラグメントをDNase II遺伝子の下流に挿入することによりターゲットベクターを構築し、該ターゲッティングベクターを胚幹細胞に導入し、DNase II遺伝子機能を欠損したESクローンをマウスの胚盤胞中にマイクロインジェクションし、仮親の子宮に戻すことによって赤血球形成に欠陥を有する貧血症モデルマウスを作製する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 DNase II遺伝子機能が染色体上で欠損したことを特徴とする赤血球形成に欠陥を有する貧血症モデル非ヒト動物。 【請求項2】 非ヒト動物が、非ヒト動物胚であることを特徴とする請求項1記載の赤血球形成に欠陥を有する貧血症モデル非ヒト動物。 【請求項3】 非ヒト動物が、DNase II遺伝子機能が染色体上でコンディショナルに欠損した非ヒト動物であることを特徴とする請求項1記載の赤血球形成に欠陥を有する貧血症モデル非ヒト動物。 【請求項4】 非ヒト動物が、齧歯目動物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の赤血球形成に欠陥を有する貧血症モデル非ヒト動物。 【請求項5】 齧歯目動物が、マウスであることを特徴とする請求項4記載の赤血球形成に欠陥を有する貧血症モデル非ヒト動物。 【請求項6】 DNase II遺伝子機能が染色体上で欠損した貧血症モデル非ヒト動物に被検物質を投与し、該非ヒト動物の赤血球形成の程度を評価することを特徴とする赤血球形成の促進剤又は抑制剤のスクリーニング方法。 【請求項7】 非ヒト動物が、非ヒト動物胚であることを特徴とする請求項6記載の赤血球形成の促進剤又は抑制剤のスクリーニング方法。 【請求項8】 非ヒト動物が、DNase II遺伝子機能が染色体上でコンディショナルに欠損した非ヒト動物であることを特徴とする請求項6記載の赤血球形成の促進剤又は抑制剤のスクリーニング方法。 【請求項9】 DNase II遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物と野生型非ヒト動物の場合とを比較・評価することを特徴とする請求項6〜8のいずれか記載の赤血球形成の促進剤又は抑制剤のスクリーニング方法。 【請求項10】 野生型非ヒト動物が、DNase II遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物と同腹の野生型非ヒト動物であることを特徴とする請求項9記載の赤血球形成の促進剤又は抑制剤のスクリーニング方法。 【請求項11】 非ヒト動物が、マウス又はラットであることを特徴とする請求項6〜10のいずれか記載の赤血球形成の促進剤又は抑制剤のスクリーニング方法。 【請求項12】 請求項6〜11のいずれか記載の赤血球形成の促進剤又は抑制剤のスクリーニング方法により得られる赤血球形成の促進剤又は抑制剤。 【請求項13】 請求項12記載の赤血球形成の促進剤を有効成分とすることを特徴とする貧血治療用組成物。 【請求項14】 検体からDNase II遺伝子を抽出し、その遺伝子異常の有無を調べることを特徴とするDNase IIに起因する貧血症の診断法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、デオキシリボヌクレアーゼII(DNase II)遺伝子機能が染色体上で欠損した赤血球形成に欠陥を有する貧血症モデル非ヒト動物、及び該貧血症モデル非ヒト動物を用いた赤血球形成の促進剤又は抑制剤のスクリーニング方法等に関する。 【0002】 【従来の技術】DNase IIは、DNAに特異的に作用し、ホスホジエステル結合を加水分解して3′末端にリン酸基をもつオリゴヌクレオチドを生じるタイプのエンドヌクレアーゼであり、金属イオンを要求しない酸性条件が至適条件のリソソーム酵素(G.Bernardi, in The Enzymes P. D. Boyer, Ed.(Academic Press, New York andLondon, 1971), vol. 3, pp. 271)で、さまざまな組織で発現することが知られている(Gene 215, 281, 1998、J. Biol. Chem. 273, 2610, 1998)。最近、線虫(Caenorhabditis elegans)のアポトーシス細胞のDNAの分解に寄与するNuc-1が、哺乳類のDNase IIの相同体として同定された(Genes Dev. 14, 536, 2000)。アポトーシスの過程にDNase IIが関与することは示されたが、哺乳類におけるDNase IIの生理学的な役割は未だ明らかにされていない。 【0003】他方、遺伝子操作における有効なツールとして、バクテリオファージP1のCre−lox組換えシステム(J.Mol.Biol. 150,467-486, 1981)や酵母サッカロミセス・セレビッシェのFLP−FRT組換えシステム(J.Mol.Biol. 284,363-384, 1998)が知られている。例えば、リコンビナーゼ(組換え酵素)Creは、2つのloxP配列間において相互の部位特異的組換えを誘導し、同一DNA分子上に同方向の2つのloxP配列が存在する場合は、その間に挟まれたDNA配列が切り出されて環状分子となり(切出し反応)、またその逆に、異なるDNA分子上に2つのloxP配列が存在し、その一方が環状DNAである場合は、loxP配列を介して環状DNAが他方のDNA分子上に挿入される(挿入反応)。この挿入反応を利用すると、loxPが既に存在する動植物細胞の染色体に所望の遺伝子を挿入することができるが、リコンビナーゼCreの切出し−挿入反応の平衡は切出し反応側に偏っていることが知られている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】DNase IIが貧血症に関与する研究や貧血症の治療法の開発に有効な動物モデルは現在まで知られていない。本発明の課題は、その発症機構を解明するための適切な病態モデルが存在しておらず、治療方法の開発が遅れている貧血症の治療の道を拓く貧血症モデル非ヒト動物や、これを用いた貧血症治療薬のスクリーニング方法を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、DNase IIの生理的機能の解明について鋭意研究を進め、DNaseII遺伝子機能が染色体上で欠損したマウス、すなわちDNase IIノックアウトマウスの系を確立したところ、該DNase IIが欠損したノックアウトマウスの17.5日胚が最終的な赤血球形成に欠陥を有し、激しい貧血症の徴候を示すことを見い出し、本発明を完成するに至った。 【0006】すなわち本発明は、DNase II遺伝子機能が染色体上で欠損したことを特徴とする赤血球形成に欠陥を有する貧血症モデル非ヒト動物(請求項1)や、非ヒト動物が、非ヒト動物胚であることを特徴とする請求項1記載の赤血球形成に欠陥を有する貧血症モデル非ヒト動物(請求項2)や、非ヒト動物が、DNase II遺伝子機能が染色体上でコンディショナルに欠損した非ヒト動物であることを特徴とする請求項1記載の赤血球形成に欠陥を有する貧血症モデル非ヒト動物(請求項3)や、非ヒト動物が、齧歯目動物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の赤血球形成に欠陥を有する貧血症モデル非ヒト動物(請求項4)や、齧歯目動物が、マウスであることを特徴とする請求項4記載の赤血球形成に欠陥を有する貧血症モデル非ヒト動物(請求項5)に関する。 【0007】また本発明は、DNase II遺伝子機能が染色体上で欠損した貧血症モデル非ヒト動物に被検物質を投与し、該非ヒト動物の赤血球形成の程度を評価することを特徴とする赤血球形成の促進剤又は抑制剤のスクリーニング方法(請求項6)や、非ヒト動物が、非ヒト動物胚であることを特徴とする請求項6記載の赤血球形成の促進剤又は抑制剤のスクリーニング方法(請求項7)や、非ヒト動物が、DNase II遺伝子機能が染色体上でコンディショナルに欠損した非ヒト動物であることを特徴とする請求項6記載の赤血球形成の促進剤又は抑制剤のスクリーニング方法(請求項8)や、DNase II遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物と野生型非ヒト動物の場合とを比較・評価することを特徴とする請求項6〜8のいずれか記載の赤血球形成の促進剤又は抑制剤のスクリーニング方法(請求項9)や、野生型非ヒト動物が、DNase II遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物と同腹の野生型非ヒト動物であることを特徴とする請求項9記載の赤血球形成の促進剤又は抑制剤のスクリーニング方法(請求項10)や、非ヒト動物が、マウス又はラットであることを特徴とする請求項6〜10のいずれか記載の赤血球形成の促進剤又は抑制剤のスクリーニング方法(請求項11)や、請求項6〜11のいずれか記載の赤血球形成の促進剤又は抑制剤のスクリーニング方法により得られる赤血球形成の促進剤又は抑制剤(請求項12)や、請求項12記載の赤血球形成の促進剤を有効成分とすることを特徴とする貧血治療用組成物(請求項13)や、検体からDNase II遺伝子を抽出し、その遺伝子異常の有無を調べることを特徴とするDNase IIに起因する貧血症の診断法(請求項14)に関する。 【0008】 【発明の実施の形態】本発明において、DNase II遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物とは、DNase IIをコードする非ヒト動物の内在性遺伝子が破壊・欠損・置換等の遺伝子変異により不活性化され、DNase IIを発現する機能を失なった非ヒト動物をいう。また本発明における非ヒト動物としては、マウス、ラット等の齧歯目動物を具体的に挙げることができるが、これらに限定されるものではない。 【0009】本発明における野生型の非ヒト動物とは、上記DNase II遺伝子機能が欠損した非ヒト動物と同種の動物を意味し、中でも同腹の動物を好適に例示することができる。また上記DNase II遺伝子機能が欠損した非ヒト動物としては、メンデルの法則に従い出生してくるものが、DNase II欠損型と同腹の野生型を得ることができ、これらを用いて正確な比較実験をすることができる点で好ましい。そして上記のように、DNase II遺伝子機能欠損貧血症モデル非ヒト動物の好適例としては、DNase IIノックアウトマウスを、野生型マウスとしては該ノックアウトマウスと同腹の野生型マウスを、それぞれ具体的に挙げることができる。以下、非ヒト動物がマウスの場合を例にとって説明する。 【0010】DNase IIノックアウトマウスの作製法としては、DNase IIを発現する機能を失ったノックアウトマウスを作製することができるものであればどのような作製法でもよいが、例えば、マウス遺伝子ライブラリーからPCR等の方法により得られた遺伝子断片を用いて、DNase II遺伝子をスクリーニングし、スクリーニングされたDNase II遺伝子を、プラスミドベクター等を用いてサブクローンし、DNAシーケンシングにより特定し、このクローンのDNase II遺伝子の全部又は一部を含むフラグメントをネオマイシン耐性遺伝子カセット等に置換することによって、ターゲットベクターを作製する方法を挙げることができる。 【0011】この線状化されたベクターをエレクトロポレーション(電気穿孔)法等によってES細胞に導入し、G―418などの薬剤に抵抗性の細胞の中から相同的組換えを行ったES細胞を選択し、その細胞のクローンをマウスの胚盤胞中にマイクロインジェクションし、かかる胚盤胞を仮親のマウスに戻し、キメラマウスを作製する。このキメラマウスを野生型のマウスとインタークロスさせると、ヘテロ接合体マウス(DNase II+/-)を得ることができ、また、このヘテロ接合体マウスをインタークロスさせることによって、DNase IIノックアウトマウス(DNase II-/-)を得ることができる。 【0012】また、DNase IIノックアウトマウスは激しい貧血症状を呈し、生存状態で生まれてこないので、コンディショナルなDNase IIノックアウトマウスを作製することもできる。コンディショナルDNase IIノックアウトマウスの作製法としては、例えば、マウス遺伝子ライブラリーからPCR等の方法により得られた遺伝子断片を用いて、DNase II遺伝子をスクリーニングし、スクリーニングされたDNaseII遺伝子をプラスミドベクター等を用いてサブクローンし、DNAシーケンシングにより特定する。このクローンのDNase IIエキソンとその周囲のイントロンを含むフラグメントを、2つのloxP配列間に挟まれたDNase II遺伝子とその下流にネオマイシン耐性遺伝子等のマーカー遺伝子が連結された配列に置換することによって、ターゲットベクターを作製する。 【0013】この線状化されたベクターをエレクトロポレーション(電気穿孔)法等によってES細胞に導入し、G−418などの薬剤に抵抗性の細胞の中から相同的組換えを行ったES細胞を選択し、その細胞のクローンをマウスの胚盤胞中にマイクロインジェクションし、かかる胚盤胞を仮親のマウスに戻し、キメラマウスを作製する。このキメラマウスを野生型のマウスとインタークロスさせると、ヘテロ接合体マウスを得ることができ、また、このヘテロ接合体マウスをインタークロスさせることによって、コンディショナルDNase IIノックアウトマウスを得ることができる。このコンディショナルDNase IIノックアウトマウスに、アデノウイルスAxCANCre等を用いてリコンビナーゼ(組換え酵素)Creを作用させると、2つのloxP配列間において相互の部位特異的組換えを誘導し、2つのloxP配列の間に挟まれたDNase II遺伝子とマーカー遺伝子との連結DNA配列が切り出されて、激しい貧血症状を呈するDNase IIノックアウトマウスとすることができる。 【0014】本発明の赤血球形成の促進剤又は抑制剤のスクリーニング方法としては、DNase II遺伝子機能が染色体上で欠損した貧血症モデル非ヒト動物に被検物質を投与し、該非ヒト動物の赤血球形成の程度を評価する方法であれば特に制限されるものではなく、例えば貧血症モデル非ヒト動物を懐胎したヘテロ接合体非ヒト動物に被検物質を投与し、DNase II遺伝子機能が染色体上で欠損した貧血症モデル非ヒト動物胚における赤血球形成の程度を同腹の野生型マウスの場合と比較評価することにより、あるいは、コンディショナルDNase IIノックアウト非ヒト動物に被検物質とCre発現ベクターとを投与し、DNase II遺伝子機能が欠損した非ヒト動物における貧血症状の程度を同腹の野生型マウスの場合と比較評価することによりスクリーニングすることができる。 【0015】 【実施例】以下に、実施例を揚げてこの発明を更に具体的に説明するが、この発明の範囲はこれらの例示に限定されるものではない。 実施例1(DNase II遺伝子欠損マウスの作製) マウスのDNase II遺伝子は、2.3kbゲノムDNAの6つのエクソンにコードされている。そこで、図1A記載のエクソン1〜5及びエクソン6の一部をネオマイシン耐性遺伝子(neo遺伝子)に置換したターゲティングベクターを以下のように構築した。マウスDNase IIの遺伝子を129/Sv系統由来のマウスのゲノムライブラリー(Stratagene)からスクリーニングした後、マウスDNaseII遺伝子を有するDNA断片をサブクローニングし、DNase II遺伝子を含む2.3kbのNruI−XmnIのDNA断片を、ホスホグリセレートキナーゼ1遺伝子プロモーターにより発現する1.9kbのneo遺伝子に置換し、また、ポリオーマウイルスのエンハンサーの下流に配置されたジフテリアトキシンAフラグメントをコードするDNAフラグメントをDNase II遺伝子の下流に挿入することによりDNase IIターゲティングベクター(pKODNII)を構築した。 【0016】かかるpKODNIIプラスミド(19μg)をNotIで消化することにより線状化し、エレクトロポレーション法により7.7×106のR1マウス胚幹細胞(ES細胞)に導入した。その後、7日間、150μg/mlのG―418の存在下で培養することにより上記ベクターが導入された細胞を選択し、以下に記載のPCR法によって相同組み換え体を確認し、DNase II遺伝子座に変異を有するG―418耐性のトランスフォーマントを樹立した。樹立した8個のESクローン胚を仮親の雌マウスの胚盤胞中にマイクロインジェクションした(J. Biochem. Biophys. Methods 39, 137, 1999)。4つのクローンから得られたキメラマウスをC57BL/6マウスと交配し、ヘテロ接合体マウス(F1)を作製した。また、ホモ接合体マウス(F2)を得るためにかかるヘテロ接合体マウスをインタークロスさせた。 【0017】上記PCR法は、ESクローンから単離されたゲノムDNAと、4種類のプライマー[プライマー1:5'-TGCACATGAAGCGTCACCTCTGAGTGATCC-3' (5'領域)、プライマー2:5'-ACCTGCGTGCAATCCATCTTGTTCAATGGC-3' (5'領域)、プライマー3:5'-GATTCGCAGCGCATCGCCTTCTATCG-3' (3'領域)、プライマー4:5'-CACCTAGAGTCAGAAGATGACACCAGCTAC-3' (3'領域) ]とを用いてExpand Long Template PCR System(Roche Diagnostics社製)によりPCRを行い、ヘテロ接合型マウス(F1)においてDNase II遺伝子が欠損されているかどうかを確認した(図1B)。かかるヘテロ接合型DNase II+/-マウスは生きており生殖能もあったが、かかるDNase II+/-マウス同士を交配させた子孫(F2)の中に生きている状態のDNaseII-/-マウスは存在しなかった(表1)。また、生存している子孫の遺伝子型はヘテロ接合体の親由来のものであった。DNase II-/-マウスの遺伝子型は胚由来のDNAを用いたPCR解析により決定した。なお、マウス胚が生きているか否かは解剖時に心臓の鼓動があるかどうかで判断した。 【0018】 【表1】
【0019】上記妊娠時のDNase II-/-マウス胚から調製されたNcoI消化DNAと、図1Aに示される領域からなるプローブ(0.7kb)を用いてサザンハイブリダイゼーションを行ったところ、胚の段階ではほぼメンデルの法則に従いDNase II-/-マウス胚が存在していることがわかった。なお、図1A中の黒及び影付のボックスは、それぞれDNase IIとEKLF遺伝子のエクソンを意味し、太線はサザンブロットにおいて用いられたプローブの領域を、矢印と矢頭はPCR法において用いたプライマーの位置をそれぞれ示している。 【0020】実施例2(野生型及び変異型マウスの胚肝臓における遺伝子発現の解析) 胎生14.5日のDNase II+/+マウス、DNase II+/-マウス、又はDNase II-/-マウスの胚由来の肝臓から全RNA(6μg)を単離し、DNase II、EKLF、マウスβmajorグロビン(βmajor)の各cDNAをプローブとして用い、ノーザンハイブリダイゼーションを行い、メチレンブルーで染色した。なお、コントロールとしてリボゾームRNA(rRNA)を用いた。その結果を図2Aに示す。図2A中の矢頭はそれぞれ28Sと18SのrRNAを示す。これらの結果から、野生型マウス及びDNase II+/-マウスの胚由来の肝臓においてはDNase II遺伝子が発現しており、DNase II-/-マウス胚由来の肝臓ではかかる遺伝子の発現が確認できなかった。また、赤芽球Kruppel様因子(EKLF)は赤芽細胞分化において必須の転写因子であり(Nature 375, 316, 1995、Nature 375, 318, 1995)、EKLF遺伝子はDNase II遺伝子の3.9kb上流に位置している(図1A)ことから、胎生14.5日のDNase II-/-マウス及び野生型マウス胚由来の肝臓におけるEKLF及びβmajグロビンのmRNAの発現を調べたところ、同レベルで発現しているのが確認できた。このことから、EKLFの発現と機能はDNase II-/-マウス胚では正常であることがわかった。 【0021】DLADとXibのような他のDNaseはDNase IIと同様な性質(至適条件が酸性pH及び2価の陽イオンの要求性なし)を持っていることが知られている(Nucleic Acids Res. 27, 4083, 1999、Gene 188, 119, 1997)。そこで、胎生14.5日のDNase II+/+マウス胚(+/+)、DNase II+/-マウス胚(+/−)、及びDNase II-/-マウス胚(−/−)の肝臓からそれぞれ調製した細胞抽出物におけるDNase II活性を調べてみた。文献(J. Biol. Chem. 270, 28579, 1995)記載の方法と同様に、胎生14.5日の上記各マウス胚の肝臓から細胞抽出物を採取し、3種類の濃度(1.0、2.0、3.0μgタンパク質)に調製した。かかる細胞抽出物を、10mMのEDTAを含む10mMTris−HCl緩衝液(pH5.7)300μl中で2μgのプラスミドDNA(pBluescript)といっしょに1時間インキュベートした後、フェノール抽出し、得られたDNAを1%のアガロースゲル電気泳動法で分離し、DNase II活性を測定した。DNase I活性の測定は、10mMのTris−HCl緩衝液(pH7.4)、10mMのCaCl2、及び10mMのMgCl2を含む反応液中で上記と同様に行った。なお、コントロールとして仔牛膵臓由来のDNase I(Boehringer Mannheim社製)及びブタ脾臓由来のDNase II(Worthington 社製)を用いて上記と同様の操作を行った。その結果を図2Bに示す。この結果から、野生型マウス胚(+/+)又はヘテロ接合体マウス胚(+/−)の肝臓由来の細胞抽出物はpH5.7において、実質的にDNase活性を示し、DNase活性はDNase II-/-マウス胚の肝臓由来の抽出物においても検出された。これに対してCa2+とMg2+の存在下で、中性のpHでDNase I活性を測定したところ、DNase II-/-マウス胚の肝臓由来の抽出物におけるDNase I活性は野生型マウス胚のものよりわずかに高いことがわかった。 【0022】実施例3(DNase II+/-マウスからの同腹子の産生) 胎生12.5日の卵黄嚢やかかるマウス胚[DNase II+/+(野生型)マウス胚又はDNase II-/-(KO)マウス胚]における脈構造は正常であった(図3A;参考写真1参照)。また、胎生12.5日のDNase II-/-マウス胚における原始赤血球数は、DNase II+/+マウス胚のものと同じくらいであった。しかし、いくつかのDNase II-/-マウス胚では胎生14.5日目で野生型の胚よりも色が白いことが確認できた。また、DNase II-/-マウス胚の全てが胎生17.5日目で激しい貧血症を伴っていた(図3B;参考写真1参照)。17.5日齢の各マウス胚[DNase II+/+マウス胚(+/+)、DNase II+/-マウス胚(+/−)、又はDNase II-/-マウス胚(−/−)]は1unit/mlのヘパリンを含む生理的食塩水を10ml心臓に流しこむことにより出血させ、全血液細胞数をCoulterカウンターによりカウントした。なお、表2の値は5つの各マウス胚から求め、平均+SDで表した。DNase II-/-マウス胚の末梢血液における成熟型赤血球の数は、同腹子の胎生17.5日の野生型マウスと比べて10分の1以下であった(表2)。また、野生型マウス胚の末梢血液において確認できた好中球や単核白血球などの有核細胞が、DNase II-/-マウス胚の末梢血液中でも同数程度確認できた(図3C;参考写真1参照)。なお、末梢血液細胞はサイトスピン(cytospin)により収集し、ライトギムザ(Wright-Giemsa)で染色し、視覚化した。さらに有核赤血球を含むDNase II-/-マウス胚の末梢血液はエリスロシン(erythrosin)に対して陽性を示す原始赤血球ではなく、除核されていない赤血球であった(図3C;参考写真1参照)。激しい貧血症を除いて胎生17.5日のDNase II-/-マウス胚では脳、腸、心臓、腎臓、指趾間形成において異常がなく、明らかに正常であった。これらの結果から赤血球形成能はDNase II-/-マウス胚において特異的に損なわれていることがわかった。 【0023】 【表2】
【0024】胚における赤血球生成は肝臓や脾臓で行われている。造血細胞に特異的なサイトカインを含むメチルセルロース培地中で、胚肝臓における血球の未熟細胞数を文献(Genes Dev. 12, 1176, 1998、Proc.Natl.Acad. Sci. USA 96, 7265, 1999)記載の方法により測定した。胎生12.5日の野生型マウス胚(野生型)又はDNase II-/-マウス胚(KO)由来の肝臓を細かく切断した後、1mMのEGTAを添加した肝臓perfusion培地(Gibco/BRL)で培養し、さらに肝臓消化培地(Gibco/BRL)で培養した。成熟型赤血球を1.0mMのKHCO3、150mMのNH4Cl、0.1mMのEDTAを含む溶液中で溶解した。細胞(CFU−Eは2×104、BFU−E、CFU−G、及びCFU−Mは1×105)は、最終濃度が1.0%のメチルセルロース、30%のウシ血清胎児、1%のBSA、0.1mMのβメルカプトエタノール、2mMのL−グルタミンになるように添加したMethocult M3231(Stem Cell Technologies)を含む35mm培養皿中で混合した。CFU−E、CFU−G及びG−CSFの分析のため、2units/mlのヒトEPO(中外製薬)、5ng/mlのヒトG−CSF(中外製薬)、及び5ng/mlのヒトM−CSF(森永乳業)を加えた培養液中で、37℃で3日、4日及び7日間培養した。BFU−Eにおいては、2units/mlのヒトEPOと10units/mlのマウスSCF(Pepprotech EC社製)とを添加した培養液で7日間培養した。赤芽細胞コロニーは文献(Exp. Hematol. 15, 85, 1987)記載の方法と同様にDAF(2,7-diaminofluorene)で染色しコロニー数を計測した。その結果を表3に示す。なお、表3の値は3つの各マウス胚から求め、平均+SDで表した。この結果から、胎生12.5日のDNase II-/-マウス胚の肝臓におけるBFU−E、CFU−G、CFU−M、CFU−Eの数は野生型マウス胚におけるものと同じぐらいであることがわかった(表3)。BFU−EとCFU−Eのコロニーの細胞がDAF(2,7-diaminofluorene)によって染色されることは、DNase II-/-マウス由来の赤芽細胞がヘモグロビン産生細胞に分化できることを示唆している。また、野生型マウス(野生型)又はDNase II-/-マウス(KO)胚の肝臓において産生されたCFU−Eのコロニーでは、約10%の細胞で核が取り除かれていた(図3D;参考写真1参照)。 【0025】 【表3】
【0026】F2胚由来の肝臓細胞を、致死照射したB6.SJLマウスに移植した。胚肝臓細胞を移植する際、胎生12.5日の野生型マウス胚又はDNase II-/-マウス胚(各7〜8胚)の肝臓から調製した単細胞浮遊物を回収し、137Cs源により致死的に照射(900cGy)された3ヶ月齢の仮親B6.SJLマウスに、1×106の胚肝臓細胞を静脈中に注射した。抗生物質水溶液(1000unit/mlの硫酸ポリミキシンBと1.1mg/mlの硫酸ネオマイシン)を飲料水に加えることによって上記マウスを維持した。その結果を図3E(参考写真1参照)に示す。なお、コントロール1及びコントロール2は、それぞれHbbsとHbbdハプロタイプのヘモグロビンを電気泳動した結果を示し、βs、βdmaj(βdmajor)、及びβdmin(βdminor)は各β−グロビンのバンドを、αはα−グロビンのバンドを、n.s.は非特異的なバンドをそれぞれ示す。照射のみしたコントロールマウスは3週間しか生きられなかったが、野生型マウス胚あるいはDNase II-/-マウス胚の肝臓細胞のマウスは少なくとも4週間生き延びた。宿主B6.SJL株におけるHbbdハプロタイプはホモ接合体で、一方129/SvのES細胞はハプロタイプでホモ接合体である(Ann N. Y. Acad. Sci. 241, 25, 1974)。図3Eに示すように、野生型マウス又はDNase II-/-マウスの胚肝臓細胞を移植したマウスのβ−グロビンの30〜50%は移植後3週間でHbbdハプロタイプを示した。これらの結果はDNase II-/-マウス赤芽細胞が成熟細胞に発達することができ、DNase II-/-マウスの赤血球形成においては欠陥がないことを示唆している。 【0027】実施例4(DNase II-/-胚の肝臓における異常な病巣) (A)胚肝臓の組織学的解析DNase II-/-マウス胚の肝臓について次に示すように組織学的に解析を行った。野生型とDNase II-/-(KO)の胎生14.5日の胚をヘマトキシリンとエオシン(H&E)又はFeulgenで染色し、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.2)において4%パラホルムアルデヒド/4%ショ糖で固定し、パラフィン包埋し4μmの切片にした。胎生12.5日胚の細胞切片(5μm)でライトギムザ染色が行われた。倍率は上段が400倍、下段が100倍である。正常な胎生12.5〜17.5日の胚肝臓は分化のさまざまなステージの赤芽細胞で構成されている(図4A;参考写真2参照)。胎生14.5日のDNase II-/-肝臓の細胞数は正常な肝臓と比べてわずかに少なかった。しかし多数の異常な大きさの病巣がDNase II-/-胚の肝臓において観察された。病巣にはFeulgen反応又はDAPIにおいて陽性である多数の小粒子がみうけられた。しかし、ヘマトキシリン−エオシン染色よりもよく染まらなかった。このことは異常な病巣はDNAで構成されていることを示唆している。同じようなFeulgen陽性の病巣が胎生17.5日の胚の脾臓でも観察された。 【0028】(B)胚肝臓部分の電子顕微鏡写真胎生14.5日のDNase II-/-胚からの肝臓組織について透過型顕微鏡で解析を行った。胎生14.5日胚の肝臓は0.1Mリン酸緩衝液(pH7.2)において2%グルタルアルデヒド/2%パラホルムアルデヒドで固定し、さらに1%OsO4で固定しEpon812で包埋した。切片(1μm)はクエン酸鉛及び酢酸ウラニルにより染色し、Hitachi H−7100電子顕微鏡で倍率6000倍で観察した。図4B(参考写真2参照)記載の略称について以下に示す。マクロファージ核:MN:macrophage nuclei、網状赤血球:RE:reticulocytes、赤芽球:EB:erythroblast、赤芽細胞核:N:erythroid nuclei、赤血球:E:erythrocyte.図4Bに示すように、各焦点の中央部で多くのゆるくパックされた核様構造物を含むマクロファージ様細胞が見うけられた。これらの核様構造物はDNAと思われる繊維状の物質を含んでいた。また、新たに貪食された核と思われる濃縮した物質を含んでいるケースが見受けられた。マクロファージ様細胞はしばしば分化の各段階の赤芽細胞(赤芽球、網状赤血球、成熟型赤血球)によって囲まれていた。 【0029】(C)胚肝臓の免疫組織学的解析。 胚肝臓の免疫組織学的解析は次の方法で行われた。胎生12.5日の野生型マウス胚(野生型)とDNase II-/-マウス胚(KO)の肝臓細胞切片(5μm)を、F4/80(緑)に対するモノクローナル抗体(Genes Dev. 14, 549, 2000)で染色した。F4/80はマクロファージ特異的な抗原である。図4C(参考写真2参照)に示すように多くのF4/80陽性マクロファージは野生型マウス胚の肝臓に存在していた。これらのマクロファージは赤芽球によって囲まれており、血島の中心部にあることを示している(J. Exp. Med. 162, 993, 1985)。また図4C中の右のパネルではFeulgen(赤)で対比染色し、F4/80で染色されているものが含まれていた。 【0030】(D)AChE活性のための胚肝臓染色胎生12.5日のDNase II-/-マウス胚由来の肝臓細胞切片(8μm)を標準プロトコルに基づき、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)活性により染色した。右のパネルでは同じ部分がDAPIでさらに染色されている。野生型マウス胚の肝臓とくらべるとDNase II-/-マウス胚の肝臓のF4/80陽性マクロファージの数は明らかに減少しており、Feulgen陽性の異常な病巣はF4/80陽性マクロファージの内側に存在していた。また、AChE陽性巨核球は胚肝臓において散在していたが、DNase II-/-胚肝臓においては核様構造をもつ巨核球は観察されなかった(図4D;参考写真2参照)。 【0031】 【発明の効果】本発明によると、貧血症モデル非ヒト動物や、これを用いた抗貧血症治療薬のスクリーニング方法を提供することができるので、その発症機構を解明するための適切な病態モデルが存在しておらず治療方法の開発が遅れている貧血症の治療の道を拓くことができる。 【0032】 【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> JAPAN SCIENCE AND TECHNOLOGY CORPORATION<120> Anemic model non-human animals due to DNase II gene deficient<130> A131P08<140><141><160> 4 <170> PatentIn Ver. 2.1<210> 1<211> 30<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence:Primer 1<400> 1tgcacatgaa gcgtcacctc tgagtgatcc 30 <210> 2<211> 30<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence:Primer 2<400> 2acctgcgtgc aatccatctt gttcaatggc 30 <210> 3<211> 26<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence:Primer 3<400> 3gattcgcagc gcatcgcctt ctatcg 26 <210> 4<211> 30<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence:Primer 4<400> 4cacctagagt cagaagatga caccagctac 30 |
| 【出願人】 |
【識別番号】396020800 【氏名又は名称】科学技術振興事業団
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| 【出願日】 |
平成13年4月13日(2001.4.13) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100107984 【弁理士】 【氏名又は名称】廣田 雅紀
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| 【公開番号】 |
特開2002−306022(P2002−306022A) |
| 【公開日】 |
平成14年10月22日(2002.10.22) |
| 【出願番号】 |
特願2001−116050(P2001−116050) |
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