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【発明の名称】 釣 竿
【発明者】 【氏名】大田 勲

【要約】 【課題】移動ガイドの嵌合部が竿管から剥離するのを防止すると共に、境界部の段差を目立ち難くし、デザイン上の自由度を増大することのできる釣竿を提供すること【解決手段】強化繊維に合成樹脂を含浸したプリプレグシートを巻回して本体層を積層構造に形成した竿管12に、この竿管上を長さ方向に移動可能な移動ガイド20を着脱自在に嵌合する嵌合部26を形成し、この嵌合部は、本体層を形成する最外層30と最内層28との間に位置して本体層の外径を調整する調整層32を有する。

【解決手段】強化繊維に合成樹脂を含浸したプリプレグシートを巻回して本体層を積層構造に形成した竿管12に、この竿管上を長さ方向に移動可能な移動ガイド20を着脱自在に嵌合する嵌合部26を形成し、この嵌合部は、本体層を形成する最外層30と最内層28との間に位置して本体層の外径を調整する調整層32を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 強化繊維に合成樹脂を含浸したプリプレグシートを巻回して本体層を積層構造に形成した竿管に、この竿管上を長さ方向に移動可能な移動ガイドを着脱自在に嵌合する嵌合部を形成した釣竿であって、前記嵌合部は本体層を形成する最外層と最内層との間に位置して本体層の外径を調整する調整層を有することを特徴とする釣竿。
【請求項2】 前記調整層は、前記本体層を形成するプリプレグシートよりも薄肉に形成される請求項1に記載の釣り竿。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、釣り糸用移動ガイドの嵌合部を竿管上に形成した釣竿に関する。
【0002】
【従来の技術及びその課題】例えば振り出し式釣竿のように、元竿側の大径竿管内に順に穂先側の小径竿管を収容した複数の竿管を備える釣竿には、竿管の中央位置でこの竿管の外面に釣り糸が付着するのを防止する外ガイドを移動ガイドとして形成し、この竿管を元竿側の竿管内に収納する際に、収納の邪魔にならない穂先側位置まで移動可能としたものがある。このような釣竿では、穂先側の竿管についてはその外周が先端側と竿尻側とで例えば3/1000程度の比較的大きな勾配を有するため、この径の差を利用して移動ガイドを固定すること可能であるが、しかし、中間位置の竿管については、このような勾配が小さいため、移動ガイドを固定する拡径部を竿管上に設けることが必要である。
【0003】例えば実開平5−39267号は、竿素材の外面に、この竿素材の勾配より急勾配のテーパ状厚肉部を形成し、更に、この厚肉部の外周に、均一の厚さの可撓性の樹脂層を形成することにより、釣り糸用の移動ガイドを固定するための固定部を形成した釣り竿を開示する。この釣り竿の固定部は、移動ガイドを送り込んだときに、樹脂層が弾性的に変形してこの移動ガイドを固定する。
【0004】この従来の釣り竿では、固定部がその厚肉部により、竿素材よりも剛性構造に形成されるため、この固定部と竿素材との剛性差により、この固定部の縁部すなわち固定部と竿素材との境界部で剥離が生じる虞がある。また、この固定部と竿素材との境界部に形成される段差が目立ったものとなるため、外観が損ねられ、デザイン上の自由度が制限される。
【0005】本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、移動ガイドの嵌合部が竿管から剥離するのを防止すると共に、境界部の段差を目立ち難くし、デザイン上の自由度を増大することのできる釣竿を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発明の釣竿は、強化繊維に合成樹脂を含浸したプリプレグシートを巻回して本体層を積層構造に形成した竿管に、この竿管上を長さ方向に移動可能な移動ガイドを着脱自在に嵌合する嵌合部を形成した釣竿であって、前記嵌合部は本体層を形成する最外層と最内層との間に位置して本体層の外径を調整する調整層を有することを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】図1から図4は、本発明の好ましい実施形態による釣竿を示す。本実施形態における釣竿10は、振り出し式釣竿として形成してあり、図1には、例えば穂先側から2番目あるいは3番目の竿管である中間竿管12と、この竿管12を収納可能な元竿側の大径竿管14と、この中間竿管12内に収納可能な穂先側の小径竿管16とを示す。この釣竿10を振り出した状態では、竿管12の基端部12Aの外周が、大径竿管16の先端部14Bの補強されかつ膨出形成された嵌合部の内周に摩擦継合され、小径竿管16の基端部16A外周が、この中間竿管12の先端部12Bの補強されかつ膨出形成された嵌合部の内周に摩擦継合される。
【0008】本実施形態の釣竿10は、本体層として、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグ(以下の説明では、単にプリプレグと称する)を周方向、軸方向あるいは軸線に対して適宜角度に傾斜した偏向方向に引き揃えて巻回し、これらの複数の本体層を積層した中空竿管から形成してあるが、このような中空構造に限らず、釣竿を大きく撓ませることが可能な中実構造に形成することもできる。勿論、このような中実構造とした場合には、並継ぎ式あるいは印籠継ぎ式等の他の適宜の継合形式を採用することができる。なお、本明細書中で、本体層とは、剛性および強度等を含めて竿管の全体の調子を整える層をいい、竿管の先端部から基端部まで延在する場合に限らず、基端側から途中の中間部までのみ延在することもある。
【0009】本実施形態では、大径竿管14の先端側に、竿管の外面に釣り糸が付着するのを防止する外ガイドとして固定ガイド18を固定し、中間竿管12の先端側の符号20で示す外ガイドを、この中間竿管12の外周上を軸方向に移動可能な移動ガイドとして形成してある。この移動ガイド20は、滑らかな内周面を有する例えばセラミックあるいは金属等で形成されたガイドリング22を金属あるいは樹脂製のガイドリング支持部24で竿管12上に支えており、実釣時には、中間竿管12上の好適な位置に移動し、この位置でそのガイドリング22を介して釣り糸を案内させる。このため、図2から図4に示すように、中間竿管12の好適位置に、移動ガイド20のガイドリング支持部24を固定するための嵌合部26を形成してある。
【0010】図3に示すように、嵌合部26は、本体層を形成する最内層28と最外層30との間に位置する調整層32を有し、この調整層32により、この嵌合部26の外径を特に嵌合部26の先端側の竿管部分よりも例えば0.3mm程度大径化させる。この調整層32は、嵌合部26の軸方向両端部が先端側および基端側に向けて次第に薄肉化し、したがって、嵌合部26の軸方向両端部の外周面は、段部を形成することなく、それぞれ滑らかなテーパ面を形成する。これにより、移動ガイド20は、ガイドリング支持部24を中間竿管12の先端側から基端側に向けて摺動させつつ移動し、この嵌合部26の先端側から滑らかに嵌合させて、この嵌合部26上に保持することができる。また、嵌合部26の両端部に段部が形成されないため、竿管12の滑らかな外観が維持される。これにより、応力集中を生じ易い角部が形成されず、その滑らかな外観により、デザイン上の自由度が増大する。
【0011】この嵌合部26を大径化する調整層32は、竿管12の外側あるいは内側に露出しない限り複数の本体層間のいずれの位置にあってもよい。調整層32が本体層で覆われることにより、竿管12が撓んでも、調整層32が剥離するのを防止できる。また、この調整層32の厚さは、本体層の各層よりも薄く、積層された本体層の全体の厚さの半分以下に形成し、これにより、調整層32の厚さの増大による嵌合部26の剛性の増大を防止するのが好ましい。調整層32をこのような薄肉構造とすることにより、この嵌合部26と、嵌合部26の軸方向に沿う前後の部分との剛性の差があまり大きくならず、これにより、この嵌合部26の端部すなわち境界部に応力が集中するのを防止することができる。同様に応力集中の発生を防止するため、この調整層32は、本体層と同等あるいはこれよりも低弾性のプリプレグで形成するのが好ましい。また、この調整層32を形成するプリプレグは、この強化繊維を軸方向に揃えた状態で巻回すると、竿管12の弾性に影響を与えるため、竿管12の周方向、又は、竿管12の軸線に対して所定角度を形成する傾斜方向に揃えて巻回するのが好ましい。
【0012】図4に示すように、本実施形態では、移動ガイド20は、合成樹脂で環状構造に形成した竿管取付部24Aをガイドリング支持部24に設けてあり、この竿管取付部24Aの内周面すなわち嵌合部26の外周面と係合する部分には、多数の軸方向の溝あるいは突条を形成してある。これらの突条あるいは隣接する溝間の山部は、移動ガイド20を嵌合部26に圧入して嵌合したときに、弾性変形し、本体層を形成する最外層30を損傷することなく、嵌合部26に確実に嵌合させることができる。一方、嵌合部26の外周面は滑らかな円筒状面に形成してもよく、あるいは、固定ガイド18(図1)を含む他のガイドとそれぞれのガイドリング22を軸方向に整合させるため、例えば小突起あるいは溝等の適宜の整合手段を設けてもよい。このような整合手段を嵌合部26に形成する場合には、移動ガイド20の例えば竿管取付部24Aにも対応した整合手段を設けることが好ましい。
【0013】図5は、このような竿管12を形成する工程を示す。まず、所要の内径を持つ芯材すなわちマンドレルMを回転させつつこの周りに、このマンドレルMのほぼ全長に沿う幅広のプリプレグ38を巻回して最内層28を形成した後、嵌合部26に対応した幅狭のプリプレグ42と、本体層を形成する幅広のプリプレグ40とを巻回して順に調整層32と最外層30とを形成する。これにより、調整層32は、外部に露出することなくその全体が本体層である最内層28と最外層30との間に収容される。符号44は、竿管12の基端部12Aおよび先端部12Bの補強層を形成する幅狭のプリプレグを示す。
【0014】本実施形態では、竿管12が先端側に向けて僅かに縮径したテーパ状形状を有するため、本体層を形成するプリプレグ38,40は、竿管12の基端部12A側に長辺を持ちかつ先端部12B側に短辺を持つ台形状に形成し、その強化繊維はそれぞれ周方向および軸方向に配置する。また、調整層32を形成する幅狭のプリプレグ42および補強層を形成するプリプレグ44も台形状の形状を有し、軸方向端側に段部を形成することなく滑らかな傾斜面を形成する。なお、調整層32を形成するプリプレグ42は、上述のように、嵌合部26の剛性が増大するのを防止するため、本体層のプリプレグ38,40よりも薄く、低弾性で、巻回したときに強化繊維が周方向あるいは傾斜方向であるのが好ましい。
【0015】図6は、第2の実施形態による竿管52を示す。なお、以下の実施形態に関する説明では、図中、上述の実施形態と同様な部材は同様な符号を付してその詳細な説明を省略する。この実施形態の竿管52は、本体層が最内層28Aと中間層28Bと最外層30との三層構造に形成してあり、調整層32A,32Bがそれぞれ最内層28Aと中間層28Bとの間、および、中間層28Bと最外層30との間に位置する。最内層28Aと中間層28Bとの間に位置する調整層32Aは、中間層29と最外層30との間に位置する調整層32Bよりも軸方向により幅広に延在し、この嵌合部26の軸方向両端部を滑らかなテーパ面として、更に段差を目立たなくしている。
【0016】この実施形態の竿管52においても、嵌合部26の外径は、2つの調整層32A,32Bにより、その先端側の部分よりも約0.3mm程度大径化しており、したがって、各調整層32A,32Bは上述の実施形態における調整層32よりも薄肉化し、その剛性をそれぞれ隣接する本体層に分散するさせることができる。これにより、嵌合部26と、この嵌合部26の軸方向前後の部分との剛性差が小さくなる。
【0017】このように複数の調整層32A,32Bを有する竿管52を形成する場合は、上述の実施形態について図5を参照しつつ説明したように、各プリプレグを順に巻回する他、本体層を形成する幅広のプリプレグ40の外側に、調整層32A,32Bを形成する幅狭のプリプレグ42をはり合わせておき、これらの2枚のプリプレグを同時に2プライ巻回することにより簡単に形成することができる。この場合には、調整層32A,32Bを形成する幅狭のプリプレグ42の厚さが薄いため、本体層を形成するプリプレグ40の強化繊維の蛇行を防止し易く、したがって、強度の低下を少なくすることができる。
【0018】なお、幅狭のプリプレグ42は、幅広のプリプレグ38とその長さすなわちマンドレルMの周方向に沿う長さが必ずしも同じである必要はなく、プリプレグ38よりも短くあるいは長くてもよい。幅広のプリプレグ38よりも長い場合には、図5で上側に示す巻き始め側縁部を、幅広のプリプレグ38の巻き始め側縁部に整合させるか、あるいは、これよりも下方の位置に整合させる。また、最内層28を形成するプリプレグ38に代えて、最外層30を形成する幅広のプリプレグ40の内面側に、幅狭のプリプレグ42をはり合わせて巻回してもよい。
【0019】図7および図8は、本発明の第3実施形態による竿管62を示す。本実施形態の竿管62では、嵌合部26を大径化する調整層72が本体層を兼ねている。すなわち、調整層72を形成するプリプレグ74は、図8に示すように、最内層および最外層を形成する幅広のプリプレグ38,40と基端側で整合し、その中間位置まで先端側に向けて延び、傾斜した先端側縁部で終端する。本実施形態でも、この調整層72を形成するプリプレグ74は、幅広のプリプレグ38,40と同等あるいは低弾性であるのが好ましく、同等の弾性を持つ場合には、より薄いことが好ましい。
【0020】このような竿管62を形成する場合は、マンドレルMに各プリプレグ38,74,40を順に、例えば2プライずつ巻回し、調整層72を形成するプリプレグ74を幅広のプリプレグ38,40間に配置し、最後に、竿管62の先端部および基端部を補強するプリプレグ44を巻回して完成する。この場合、各プリプレグ38,74,40を順に個別に巻回してもよく、あるいは、調整層72を形成するプリプレグ74を、幅広のプリプレグ38,40の一方の側に予めはり合わせて巻回してもよい。
【0021】この竿管62は、調整層72を形成するプリプレグ74の先端縁部が傾斜しているため、嵌合部26の先端側では、竿管12の外周面がテーパ面に形成され、目立った段部が形成されない。また、調整層72が基端側の補強も兼ねた嵌合部26を形成し、この基端側が竿管62の基端部まで連続した円筒状面を形成するため、更に外観が向上する。
【0022】
【発明の効果】以上明らかなように、本発明の釣竿によれば、移動ガイドの嵌合部が、本体層を形成する最外層と最内層との間に位置して本体層の外径を調整する調整層を有するため、竿管から剥離するのを防止すると共に、境界部の段差を目立ち難くし、デザイン上の自由度を増大することができる。
【出願人】 【識別番号】000002495
【氏名又は名称】ダイワ精工株式会社
【出願日】 平成13年3月27日(2001.3.27)
【代理人】 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外4名)
【公開番号】 特開2002−281868(P2002−281868A)
【公開日】 平成14年10月2日(2002.10.2)
【出願番号】 特願2001−91167(P2001−91167)