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【発明の名称】 人工藻場・魚礁
【発明者】 【氏名】西堀 貞夫

【氏名】中村 雄一郎

【氏名】白井 真紀

【氏名】丸山 洋

【氏名】近藤 隆重

【要約】 【課題】海藻・海藻を食害から守り、集魚効果を高め着生を容易とする。

【解決手段】熱可塑性樹脂の連続線条及び/又は短線条のランダムなループ又はカールの隣接する線条相互を接触絡合集合して成る三次元スプリング構造体を成し、前記三次元スプリング構造体内に鉄片を内包させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱可塑性樹脂の連続線条及び/又は短線条のランダムなループ又はカールの隣接する線条相互を接触絡合集合して成る三次元スプリング構造体を成し、前記三次元スプリング構造体内に鉄片を内包したことを特徴とする人工藻場・魚礁。
【請求項2】 熱可塑性樹脂の連続線条及び/又は短線条のランダムなループ又はカールの隣接する線条相互を接触絡合集合して成る三次元スプリング構造体を成し、高空隙率に形成された粗密部と、前記粗密部よりも低空隙率に形成された高密部から成り、前記三次元スプリング構造体内に鉄片を内包すると共に、前記粗密部と高密部の平均空隙率を30%〜98%としたことを特徴とする人工藻場・魚礁。
【請求項3】 前記平均空隙率は、好ましくは、50%〜95%、より好ましくは70%〜80%である請求項2記載の人工藻場・魚礁。
【請求項4】 前記人工藻場・魚礁は、その外周に開口する、前記線条の形成されていない空間を備えて成ることを特徴とする請求項1又は2記載の人工藻場・魚礁。
【請求項5】 前記空間に、鉄好ましくは鋳鉄製の鉄片を挿着して成る請求項4記載の人工藻場・魚礁。
【請求項6】 前記三次元スプリング構造体を既設の人工漁礁、離岸堤又は消波ブロック・ケイソンなど海中構築施設に固定したことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の人工藻場・魚礁。
【請求項7】 前記三次元スプリング構造体の外側縁又は底辺に高密部又はシート部を形成し、前記三次元スプリング構造体内にコンクリートを充填固化して成る請求項1〜4いずれか1項記載の人工藻場・魚礁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、人工藻場・魚礁に関し、海洋汚染を惹起することなく、長期的に使用することが出来、しかも優れた集魚効果をも発揮する人工藻場・魚礁及びその製造方法に関する。
【0002】現在、世界各地において、海藻、海草が枯死して不毛となり、これを餌とする魚介類が消滅する現象が発生している。所謂、磯焼けと呼ばれ、海藻の繁茂していた岩礁地帯が、何らかの原因でその海藻が枯死・消滅し、それに替わって石灰藻と呼ばれる紅藻類サンゴモ科エゾイソゴロモに海底が占有されて、岩盤が白色または黄色・ピンク色を呈する現象を指すが、北海道で磯焼けが確認されてから40年以上が経過しているにも関わらず、未だに発生原因を究明するに至っていないのが現状である。
【0003】これまで、その原因として、海況異変説、淡水注入説、河川氾濫説、栄養塩不足説、異常気象説、水質汚染説、森林伐採説、藻食動物説など諸説が挙げられているが、なかでも鉄イオン不足、食害が注目されている。
【0004】鉄イオンは、海藻類が栄養塩を体内に取り込む際と、光合成を行う色素の生合成に必要な成分である。食害とは、海藻・海草の幼葉体が貝・ウニ等の魚介類に食べられてしまうことである。
【0005】
【従来の技術】このような、海草・海藻の枯死防止対策として、コンクリート製および鋼鉄製人工漁礁が主に挙げられるが、有効に機能している例は少ない。
【0006】現在存在する漁礁はコンクリート製と鉄鋼製が主流である。
【0007】
【発明が解決すべき課題】上記コンクリート製と鉄鋼製の藻場・魚礁には以下の課題が残っている。
【0008】コンクリート製漁礁コンクリートはph10〜13と強アルカリ性であるために海藻が着生するまで2〜3年かかり、即効的な効果は期待できない。また、着生した海藻・海草の根がアルカリに侵され立ち枯れる場合があるほか、藻食魚介類からの幼葉体の食害が大きく、海苔、ワカメ等の種付けが出来ないなどである。
【0009】鋼鉄製漁礁表面が滑らかな為、着生率が悪く、集魚効果が低い。また、海苔、ワカメ等の種付けが出来ないなどの問題点を有する。
【0010】本願発明は、安価で易施工性な藻人工藻場・漁礁を提供するものである。
【0011】本願発明においては、三次元スプリング構造体に内包されている鋳鉄から、鉄イオンが海中に生育する海藻類や植物性プランクトン等に供給できる為、海藻類の増殖に有効である。また、コンクリートや鉄との複合化が容易であり、施工が容易である。さらに、三次元スプリング構造体が三次元であるため、三次元スプリング構造体内部に根付いた幼葉体を藻食魚介類による食害から守ることができる。さらに、魚道が自由に製造できるため、集魚効果を高めることができると共に、海苔、ワカメ等の胞子を着生することができるという効果を奏する。
【0012】
【課題を解決するための手段】本願発明人工藻場・魚礁は、熱可塑性樹脂の連続線条及び/又は短線条のランダムなループ又はカールの隣接する線条相互を接触絡合集合して成る三次元スプリング構造体を成し、前記三次元スプリング構造体内に鉄片を内包したことを特徴とする。
【0013】また、前記三次元スプリング構造体において、高空隙率に形成された粗密部と、前記粗密部よりも低空隙率に形成された高密部から成り、前記三次元スプリング構造体内に鉄片を内包すると共に、前記粗密部と高密部の平均空隙率を30%〜98%とすれば、海藻・海草の着生率を効果的にすることができる。
【0014】また、前記平均空隙率は、好ましくは、50%〜95%、より好ましくは70%〜80%とすれば、より効率的な着生率を得られる。
【0015】前記三次元スプリング構造体の外周に開口する、前記線条の形成されていない空間を設け、この空間に、鉄好ましくは鋳鉄製の鉄片を挿着して鉄イオンの海草類への供給により、増殖を図ることができ、さらに、前記三次元スプリング構造体を既設の人工漁礁、離岸堤又は消波ブロック・ケイソンなど海中構築施設に固定することもでき、容易に施工できる。
【0016】前記三次元スプリング構造体の外側縁又は底辺に高密部又はシート部を形成して、前記三次元スプリング構造体内に例えば、モルタル又はモルタル及びコンクリートを充填固化して、自重により、海底に設置することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態につき添付図面を参照しながら以下説明する。
【0018】三次元スプリング構造体30に鉄を内包させ、さらに三次元スプリング構造体30の一部をコンクリート等の既存構造物に付設し、またはコンクリートと三次元スプリング構造体30を一体成形が可能な藻場増殖材・人工漁礁とする。
【0019】本漁礁は、海藻・海草を着生させる役割を持つ三次元スプリング構造体30と、鉄イオンを放出する鉄片60、錘となるコンクリート40から構成される。
【0020】(三次元スプリング構造体)本発明の三次元スプリング構造体30は、海藻・海草の生育を妨げない空隙率に形成されると共に、長期にわたる水中での使用及び成長した海藻・海草の重量にも耐え得る強度を備えるものであり、熱可塑性樹脂の連続線状及び/又は短線状のランダムなループ又はカールの隣接する線状相互を接触、絡合、集合して成る所定の密度の隙間を備えてなるスプリング状の三次元構造を備える樹脂成形品である。
【0021】この三次元スプリング構造体30は、例えば熱可塑性エラストマーを複数のノズルより所定押出速度において溶融押し出し、後述の引き取り機により引き取り、600〜90,000デニール、好ましくは3,000〜30,000デニール、より好ましくは6,000〜10,000デニールの無垢又は中空の連続線条を形成し、溶融状態の線条に、例えば直径1〜10mm、好ましくは直径1〜5mmのループを形成させ、隣同士の線条と水中で接触絡合させることによりランダムなループを形成しつつ、水中において引き取り機13により任意の間隔で前記引き取り機の引き取り速度を低速に調整して、長手方向長さで5〜10cmの低速引き取り時の嵩密度の大きい部分すなわち、高密部Bとそれ以外の粗の部分、すなわち粗密部Aを有する厚さ20〜30cm、幅1,000mmの三次元スプリング構造を形成することにより製造することができる(図1)。このようにして形成された線条の接触絡合部位の少なくとも一部は、相互に溶融接着される。
【0022】前記連続線条及び/又は短線条は、線条の断面形状が、無垢、中空であって、線径は、(無垢)0.5〜3mm、好ましくは0.7〜2mm。(中空)0.7〜5mm。好ましくは1〜3mmである。又、前記中空線条の中空率は、30〜70%。好ましくは40〜60%である。
【0023】前記連続線条及び/又は短線条は、熱可塑性樹脂全般でよいが、オレフィン系樹脂が好ましい。より好ましくは熱可塑性エラストマーよりなり、例えばポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、PVCのエラストマーより成る。
【0024】三次元スプリング構造体の嵩密度は、粗の部分で、0.009〜0.280g/cm、好ましくは、0.027〜0.210、特に0.045〜0.09、密の部分で0.45〜1.25g/cm、好ましくは、0.54〜1.17、特に0.63〜1.10である。
【0025】三次元スプリング構造体の空隙率は、粗の部分で、80〜99%、好ましくは、85〜97%、特に90〜95%、密の部分で40〜90%、好ましくは、70〜90%、特に75〜85%である。海藻類の着生部となる全体の平均空隙率は、30〜98%、好ましくは、50%〜95%、より好ましくは70%〜80%である。
【0026】(三次元スプリング構造体の製造方法)前記三次元スプリング構造体は、図1に示すように、押出機10のホッパー11より、原料樹脂として例えばポリプロピレンのエラストマーを投入し、溶融混練して、成型ダイ12に設けた所定径の多数の射出口より押し出し、バス15内の引き取り機13の引き取りロール14,14間で厚さ及び嵩密度が設定され、カール又はループ状にランダムに成形されながら、水中で固化し、巻き取りロール16,16によりスプリング構造を有する樹脂成形品たる三次元スプリング構造体30として取り出される。この三次元スプリング構造体30を構成する線条の押し出しに使用する成型ダイ12の一例を図2〜図6に示す。
【0027】図2に示すように、前記三次元スプリング構造体30を成す線条を押し出すための成型ダイ12は、合成樹脂の線条が押し出される多数のノズル21を備えており、このノズル21より押し出された樹脂材料が固化して線条を形成する。
【0028】本実施形態にあっては、この成型ダイ12の射出方向に突出する幅方向の断面を矩形状と成す中子体22を設け、この中子体22の部分において、鉄パイプ等の鉄片の挿入部、また魚道としての役割を持つ線条の存在しない空間31が三次元スプリング構造体30内に形成されるよう構成されている。
【0029】このようにして中子体22により形成された線条のない空間31は、河川等内にこの三次元スプリング構造体30を配置した際に、魚類等の生物の住処となり、または魚道等のこれらの生物の通り道と成る。
【0030】なお、本実施形態にあっては、図2及び図3に示すように、この中子体を幅方向の断面において矩形状に形成しているが、この中子体22の形状は、前述のように生物の住処や魚道等と成り得る空間31を三次元スプリング構造体30内に形成し得るものであれば、前記ノズルの一部を閉塞したり、前述矩形に代えて、円柱状、その他如何なる形状とすることもでき、この空間31を設けない場合には成型ダイ12には中子体22を設けず、もしくは、ノズルの一部を閉塞する必要がない。
【0031】以上の三次元スプリング構造体30は同一の三次元スプリング構造体の中に、以下の作用的部位が共存し構成されている。
【0032】海中に露出させる海藻海草の着生部(略全体)
鉄片またはコンクリートの挿入や、魚道として使用される空間31コンクリートを遮蔽する高密部B又はシート部43コンクリートが充填される低密部Aそして、前記着生部位の平均空隙率は、30〜98%。好ましくは50〜95%。より好ましくは70〜80%。30%以下では、表面が平滑になり、海藻・海草の着生率が低下する。98%以上では、三次元スプリング構造体の表面積が少なく、着生率が低下する。また、着生した海藻・海草をウニ貝等魚介類の食害から守れない。
【0033】また、生コンクリート遮蔽部位となる高密部又はシート部の空隙率は、0〜70%。好ましくは、30〜50%。70%以上であると、生コンクリートを遮蔽できない。生コンクリートを充填し埋設する部位の空隙率は、70〜98%。70%以下では生コンクリートが充填されない。98%以上では線条が少なく、三次元スプリング構造体とコンクリートが一体化されない。
【0034】さらに、この三次元スプリング構造体30は、コンクリート40と一体成形し三次元スプリング構造体の一部を埋設する際、高密部Bにより生コンクリート40が遮蔽されるように、異密度に構成される。すなわち、厚さ方向垂直面を境に一方の部位を高密度、他方の部位を低密度に上下異密度成形する。
【0035】高密部の製造はノズル21の間隔を狭くし、低密部の製造はノズル12の間隔を広くすることにより製造できる(図5)。
【0036】また、成型ダイ12において、シート部43を作成したい部位を、スリット幅0.2〜3mm、好ましくは、0.7〜1.5mmのスリット41にする(図6)ことにより、コンクリートと一体成形し三次元スプリング構造体の一部を埋設する際、中央面のシート部43により生コンクリートが遮蔽されるように厚さ方向垂直面をシート状に形成することができる。
【0037】そして、前記三次元スプリング構造体に、鉄片60を内包させる。鉄片60は、ミネラルの一種である珪素、カルシウム、マンガンを含み、海藻海草の生育に有利であることに加え、炭素含有量が多く、海水による腐食が低減できる等の利点があり、鋳鉄製が好ましい。前述空間31に円筒状、矩形あるいは、パイプなど鉄片60を挿入することができる他、三次元スプリング構造体成形装置において、成型ダイ12と水中に備わる引取機13の間にパーツフィーダーの投入口を設け、溶融線条が硬化する直前に任意形状の鉄製ブロックを線条に絡ませる(図示省略)ことにより鉄片を線条間に挟持させ内包させることができる。
【0038】また、三次元スプリング構造体を多層構造にすることにより、その中間部、上部もしくは下部に鉄を挟み込むなどの方法でもよい。
【0039】コンクリート40は、海底に鉄60を内包した三次元スプリング構造体30を海中に定置させる錘の役割をするもので、三次元スプリング構造体とコンクリートを一体化する方法としては、コンクリートを新規に作成する場合の一体化は、三次元スプリング構造体30において隣り合う高密部Bの間に粗密部Aを設け粗密部Aに生コンクリートを注入し、硬化させる。高密部で生コンクリートは遮蔽されるため、三次元スプリング構造体の一部をコンクリート40に埋設することができる(図7)。
【0040】また、スリット41を有する成形ダイ12で製造した三次元スプリング構造体内部のシート部43を境界として、片側に生コンクリートを注入し硬化させる。シート部43によりコンクリートが遮蔽され三次元スプリング構造体の一部をコンクリートに埋設することができる。(図8)【0041】さらに、表面に露出したい部分を低密度に成形しておき、エアモルタルを注入し硬化させた後、生コンクリートを注入する。生コンクリート硬化後エアモルタルを水の高圧噴射洗浄等で取り除くなどの方法の他、既存のコンクリート体に穴をあけ鉄入り三次元スプリング構造体に貫通穴を設けアンカー等で固定することにより錘としてもよい。
【0042】上記実施形態のほか、施工例として任意形状の消波ブロックの少なくとも一部に、これと一体に鉄が内包された三次元スプリング構造体を露出させて施工できる。
【0043】消波・護岸ブロックとして製造する場合は、型枠42内に三次元スプリング構造体を配置した後に、生コンクリート40を型内に注入し製造すれば、三次元スプリング構造体の一部がコンクリートに埋設され、一体成形が可能である(図7)。
【0044】既設の人工漁礁、離岸堤又は消波ブロック・ケイソンなど海中構築施設などに三次元スプリング構造体を接合する事も可能である。その場合、消波護岸ブロック等表面に穴をあけ三次元スプリング構造体密部の貫通穴を通してアンカー止め等で接合できる。
【0045】海底に立設した支柱に、鉄を内包した三次元スプリング構造体密部に成形した穴部を貫通させる。この際、浮きをつけ三次元スプリング構造体を水位変化に対応して上下に移動可能としてバランスをとるように構成し、もしくは、スプリング構造体を支柱に固定することができる。
【発明の効果】三次元スプリング構造体の中に挿入した鋳物が発するイオンが昆布の光合成に役立ち、昆布の繁茂に寄与させることができ、海中で鋳鉄が溶出イオン化し、海藻や植物性プランクトンの栄養源となる。
【0046】三次元スプリング構造体に繁茂した海藻および植物性プランクトン、海藻類の光合成によって酸素が放出され魚介類養殖の生態系、海洋環境を整え、又、春先に育つ全ての魚介類の資源増大、安定効果がある。
【0047】さらに、富栄養化の要因となる栄養塩を吸収すると共に、クッション構造により、ウニ・貝などの内部の幼葉体までの侵入するのを防ぐことができ、産卵漁礁効果、陰影効果、飼料効果、集魚効果、幼稚仔保護効果を有する。
【出願人】 【識別番号】390022909
【氏名又は名称】アイン・エンジニアリング株式会社
【出願日】 平成13年3月28日(2001.3.28)
【代理人】 【識別番号】100081695
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 正明
【公開番号】 特開2002−281860(P2002−281860A)
【公開日】 平成14年10月2日(2002.10.2)
【出願番号】 特願2001−93906(P2001−93906)