| 【発明の名称】 |
シマイサキによる寄生虫駆除方法及び漁獲量向上方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】重田 利拓
【氏名】薄 浩則
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| 【要約】 |
【課題】飼育魚の体表面に付着する寄生虫を効果的に駆除する方法の開発及び漁獲量向上方法の開発を課題とする。
【解決手段】シマイサキを用いて、魚類体表面に付着した寄生虫を駆除することができること及び漁獲量の向上を図ることができることを見出した。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シマイサキを用いて、魚類体表面に付着した寄生虫を駆除することを特徴とする魚類寄生虫駆除方法。 【請求項2】 魚類がマダイ、クロダイ、キチヌ、ボラ、メナダ又はシマイサキであることを特徴とする請求項1記載の魚類寄生虫駆除方法。 【請求項3】 シマイサキを放流することにより、漁獲量の向上を図ることを特徴とする漁獲方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、シマイサキを用いて、魚類体表面に付着した寄生虫を駆除すること、並びに漁獲量向上方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、飼育魚の体表面に付着する寄生虫を駆除する方法として、海水魚では淡水浴による方法や薬による方法(薬浴)が開発されている。しかしながら、淡水浴では生簀の移動や淡水により飼育魚にストレスが加わること、移動の際にできる魚体のスレが新たな感染症を引き起こす原因となること、さらには多くの人手を必要とすることなど、効果はあがっていない。 【0003】一方、薬浴ではトリクロロホンやホルマリン等が駆虫効果があるとされて使用されているが、いずれも生物毒性が極めて高く、例えばブリに寄生する寄生性カイアシ類の駆除に使用されるディプテレックス(トリクロロホンを主成分とする農薬)は、100ppm、50秒浴でほぼ100%駆虫することができるものの、ブリ自体に対する毒性も極めて高く、わずか100ppm、3分浴で仮死状態となることが報告されている。 【0004】また、薬剤によっては、飼育魚体内で残留する危険性が指摘されている。現場では、これら薬剤は生簀自体をシートで囲んで大量に投与するが、使用後はシートを取り除きそのまま海へ投棄しており、深刻な環境汚染が懸念されている。このように寄生虫の駆除については、効果的な治療法が開発されておらず、抜本的な解決が望まれていた。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】飼育魚の体表面に付着する寄生虫を効果的に駆除する方法の開発及び漁獲量向上方法の開発を課題とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】熱帯・亜熱帯地域では、ホンソメワケベラ(ベラ科)がハタ等に付着した寄生虫をクリーニングすることが知られているが、日本周辺の温帯の地域では、これまでクリーニングを行う魚の存在は知られていなかった。ところが、本発明者は、広島県大野町塩屋漁港内で、大型のクロダイ(タイ科)やボラ(ボラ科)が全長10cmのシマイサキ幼魚(シマイサキ科)によりクリーニングを受けているのを発見した。 【0007】本発明はこの発見に基づいてなされたものである。すなわち、(1) シマイサキを用いて、魚類体表面に付着した寄生虫を駆除することを特徴とする魚類寄生虫駆除方法、(2) 魚類がマダイ、クロダイ、キチヌ、ボラ、メナダ又はシマイサキであることを特徴とする(1)記載の魚類寄生虫駆除方法、(3) シマイサキを放流することにより、漁獲量の向上を図ることを特徴とする漁獲方法に関する。 【0008】ホンソメワケベラ等のクリーナーは、クリーニングステーションと呼ばれるクリーニングを行うための決まった場所を形成し、クライアントはクリーニングの必要がある時、その場所を訪れてクリーナーにクリーニングを要求する。クリーナーはクライアントの体表、口腔内あるいは鰓腔内に寄生する寄生虫(寄生性カイアシ類、等脚類等)、体表の粘液、剥がれかけた鱗などを採餌し、それを重要な餌資源としている。 【0009】一方、クライアントのほうは、クリーナーを襲うことはせず、自ら除去できない寄生虫などを駆除してもらうことにより、不快感を取り除き自らの健康状態を維持している。このような関係を「相利共生の関係」にあるという。今回発見したシマイサキがクリーニングを行うという生物現象を利用し、養殖場や水族館等の飼育魚と混ぜて飼育することにより、養殖魚や観賞魚の寄生虫を環境汚染なく効果的に駆除することを可能ならしめた。 【0010】 【発明の実施の形態】シマイサキは、スズキ目シマイサキ科に属し、体長25cmに達する。中部日本以南から台湾、フィリピンに分布している。内湾、沿岸浅瀬や河口の汽水域に多く、全長12〜13cm程度になる10月上旬までは漁港内で多数見受けられるが、それ以上の個体は港外へ移動し水深10m程度の沿岸で産卵親魚が採集された。 【0011】クリーニングを観察できたのは、広島県大野町塩屋漁港内にいたシマイサキで、7月から10月までは全長6〜12cm、平均10.3cm(n=20)の個体がクリーニングを行うのを観察した。10月以降は全長5cm程度の新規着底群が多数観察され、これらの個体も盛んにクリーニングを行うのが観察された。つまり、漁港内では周年シマイサキによるクリーニングが行われている。 【0012】漁港内に棲息する魚類は、6目、16科、26種であり、このうち全長20cm以上で漁港内において出現頻度の高い魚類は、クロダイ、ボラ、メナダ(ボラ科)、ウグイ(コイ科)の5種であった。これまでにシマイサキのクリーニングに集まるクライアントは、マダイ、クロダイ、キチヌ(タイ科)、ボラ、メナダ、シマイサキの6種が観察されており、これらはクリーナーに対しクリーニング請求ポーズをとることが確認された。このうちシマイサキのクリーニングを実際受けているところを観察できたのは、マダイ、クロダイ、ボラ、メナダ、シマイサキの5種であった。 【0013】クリーニング行動は、一般的にクライアントがクリーナーを認識し、そこでクリーナーに対してそれぞれのクライアントに特徴的なクリーニング請求ポーズをとり、クリーナーがクリーニングを開始することにより構成される。マダイやクロダイの場合、移動中にシマイサキを発見すると、遊泳方向をシマイサキのいる方向へ急に変える。シマイサキの幼魚には体側に特徴的な4本の黒色縦帯がある。0.5〜3mの距離からシマイサキを発見し接近していく。クロダイはシマイサキの鼻先へ回り込み、定位して自分の体の前側面をシマイサキに見せる。次に頭部を前方方向に少し傾け、左右両胸鰭を大きく広げ、シマイサキがクリーニングするまで待つ。 【0014】シマイサキは、普通は砂底に棲息する底生生物を採餌しており、シマイサキがクリーニングをしてくれるまで、その方向が変化するたびにクロダイも位置を変化させ、クリーニングの請求を続ける。クロダイの場合、最も長くて4分間程度クリーニングを待つが、それでもクリーニングをしてもらえない時はあきらめて泳ぎ去る。 【0015】ボラ、メナダの場合も比較的類似した行動をとるが、クリーニングをしてもらえるまで底層に敷石状に並び、およそ30分間も待つケースがあった。クリーニングは基本的にシマイサキ1個体がクライアント1個体にクリーニングすることから始まる。しばらくするとそれを見た他の個体も集まり始める。(図1)クロダイの場合、全長10〜50cmの個体がわずか0.49〜2.25m2(平均1.37m2)の範囲に平均15.9個体も集まる。これは5.7〜30個体/m2(平均13.9個体/m2)で、平時のクロダイの棲息密度0.46個体/m2のおよそ30倍の高密度となる。 【0016】この習性を利用して、漁獲量の向上を図ることも可能である。すなわち、クロダイの棲息しているところにシマイサキを放ち、シマイサキにクリーニングをしてもらいたくて、クロダイが集まってくるところを漁獲すれば、30倍の収穫が期待できる。クリーニングの行われる場所は、常にシマイサキの採餌探索経路に沿った、水深0.4〜2.7m(平均0.92m)の砂泥底あるいはコンクリート底上に形成されていた。 【0017】漁港内は干満の差があり、クリーニングは潮汐の動きが激しくない、満潮過ぎと干潮時にのみ観察された。シマイサキがクライアントの体表をクリーニングする際は、注意深く体表を覗き込み、特徴のある先の尖った口でクライアントの体表をつつく。口内の歯もクライアントを傷つけないような、微小なものとなっている。良い餌がいない時は次々にクライアントを移っていく。シマイサキのクロダイ体表のつつき頻度は4.9回/30秒で、頭部、尾部上部、腹部後部付近を好むようであった。ボラ、メナダの場合は、鰓蓋から胸鰭付近を中心に、頭部、尾部上部をつつくのが観察された。 【0018】 【発明の効果】本発明の、シマイサキを養殖場や水族館等の飼育魚と混ぜて飼育することにより、養殖魚や観賞魚の寄生虫を環境汚染なく効果的に駆除することを可能ならしめると同時に、シマイサキを放流することにより漁獲量の向上が可能となる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】501168814 【氏名又は名称】独立行政法人水産総合研究センター
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| 【出願日】 |
平成13年3月28日(2001.3.28) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100091096 【弁理士】 【氏名又は名称】平木 祐輔 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−281858(P2002−281858A) |
| 【公開日】 |
平成14年10月2日(2002.10.2) |
| 【出願番号】 |
特願2001−93313(P2001−93313) |
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