| 【発明の名称】 |
生物のクローズドシステムによる増殖配布制御方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】小野 正人
【氏名】綾部 斗清
【氏名】干場 英弘
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| 【要約】 |
【課題】生物による授粉を利用しての植物栽培における外来種ポリネーター導入に原因するマイナスの影響を抑制・低減する。
【解決手段】植物栽培においてポリネーターを閉鎖コロニー内に隔離し、一倍体のオスと二倍体のメスとの近親交配により同一種の性決定遺伝子を持つ二倍体のオスを作出せしめ、該二倍体のオスと二倍体のメスとの交配により実質的に不妊性の三倍体のメスを作出せしめ、該三倍体のメスを作出するコロニーを使用者に配布する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 一倍体のオスと二倍体のメスという性決定メカニズムを有している生物の増殖・配布プロセスにおいて、該生物を閉鎖コロニー内に隔離し、一倍体のオス個体と二倍体のメス個体との近親交配により同一の性複対立遺伝子を持つ二倍体のオス個体を作出せしめ、該二倍体のオス個体と二倍体のメス個体との交配により実質的に不妊性の三倍体のメス個体を作出せしめ、該三倍体のメス個体を使用者に配布することを特徴とする生物のクローズドシステムによる増殖配布制御方法。 【請求項2】 一倍体のオスと二倍体のメスという性決定メカニズムを有している生物の増殖・配布プロセスにおいて、該生物を閉鎖コロニー内に隔離し、一倍体のオス個体と二倍体のメス個体との近親交配により同一の性複対立遺伝子を持つ二倍体のオス個体を作出せしめ、該二倍体のオス個体と交配した該二倍体のメス個体を使用者に配布することを特徴とする生物のクローズドシステムによる増殖配布制御方法。 【請求項3】 前記の生物がマルハナバチであることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【産業上の利用分野】この発明は生物のクローズドシステムによる増殖配布制御方法に関するものであり、より詳しくは例えばトマトの栽培などにポリネーター(花粉媒介者)として利用されるマルハナバチの増殖および使用者(農家)への配布システムの改良に係るものである。 【0002】なお以下の記載においては代表的なポリネーターであるマルハナバチを例にとってこの発明を説明するが、この発明は一倍体のオスと二倍体のメスというような性決定メカニズムを有しておりしかもその増殖がなんらかの負の影響を有した生物一般に応用できるものであり、ハチの他にもアリなどがその例として挙げられる。 【0003】この明細書中において「一倍体」とは1個の個体中に1種の性決定遺伝子を有するものを言い、「二倍体」とは1個の個体中に2種の性決定遺伝子を有するものを言い、「三倍体」とは1個の個体中に3種の性決定遺伝子を有するものを言う。マルハナバチの場合には、一倍体は通常オスに見られ、二倍体は通常メスに見られる。 【0004】 【従来技術】一般農家における植物栽培に際しては、人手による植物間授粉に代えて、ハチの採餌行動の結果として行われる植物間授粉を利用することが、近時広く実施されている。代表的なものとしてはトマト栽培農家によるマルハナバチの利用があり、労働の軽減、収穫物の品質向上および低農薬栽培などの観点から高く評価されている。 【0005】ところで上記のようなマルハナバチ利用の植物栽培システムにおいては一般に、配蜂業者が工場でマルハナバチを増殖して、巣箱の形で栽培農家に配布し、栽培農家はこの巣箱(コロニー)にマルハナバチを飼育する。マルハナバチはコロニーから飛翔して採餌(授粉)、交配を行う。 【0006】ところが最近では、在来種のマルハナバチよりも外来種(Bombus terrestris:セイヨウオオマルハナバチ)の方が飼育増殖が容易であり繁殖力も強いので、配蜂業者が外来種を導入し増殖して栽培農家に配布するようになってきた。 【0007】一般にマルハナバチは近親交配を本能的に嫌うので、コロニーから遠くに離れて飛翔する習性がある。当然この過程において他のコロニーからのマルハナバチとの交配が行われる。 【0008】マルハナバチの交配形態にはスイッチポイントと呼ばれる季節的な変態点がある。つまり通常は女王バチは交配の結果多数のメス(受精卵)を作出するが、スイッチポイントの経過後は主にオス(無精卵)を作出するようになる。また、働きバチの産卵も起こり無精卵を産み、同様にオスを作出する。これらのオスが他のコロニーからの交配をして新たな女王バチが作出される。この第二世代の女王バチはさらなる自然交配により多数のメスを作出する。つまりこの過程で外来種と在来種との交配により混種が起きて、雑種ひいては外来種が増加して優勢となる。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】このように外来種が増加すると、奪餌抗争により外来種が在来種を徐々に駆逐してゆく結果となる。つまり在来種の衰退により植物への授粉の機会が大きく低減するので、共生関係にある動植物、例えばサクラソウなども衰退する可能性もある。 【0010】また遺伝的混乱により生態系が破壊される懸念が増大する。 【0011】もっとも在来種同士の交配でも、個体の地域的な固有性があるので、上記のような混種は遺伝的な混乱を惹起することになる。 【0012】また栽培農家の飼育傾向もこのような外来種ポリネーター導入のマイナスの影響を助長している。すなわち配蜂業者から配布されるマルハナバチの単価が高いので、経済性の観点から栽培農家はなるべく長い期間に亘ってマルハナバチを飼育しようとする。この結果前記のスイッチポイントを経過した後も飼育を続けるので、オスの作出が多くなり、その交配の結果外来種マルハナバチの数が激増してマイナスの影響を増大することになる。 【0013】かかる現状に鑑みてこの発明の目的は、授粉を利用しての植物栽培における外来種ポリネーター導入に原因するマイナスの影響を抑制・低減することにある。 【0014】 【課題を解決するための手段】かかる目的を達成すべくこの発明においては、植物栽培においてポリネーターを閉鎖コロニー内に隔離し、一倍体のオスと二倍体のメスとの近親交配により同一種の性複対立遺伝子を持つ二倍体のオスを作出せしめ、該二倍体のオスと二倍体のメスとの交配により実質的に不妊性の三倍体のメスを作出せしめ、該三倍体のメスを使用者に配布するか、または上記二倍体のオスと交配した該二倍体のメスを使用者に配布することを要旨とするものである。 【0015】ここで「実質的に不妊性」とは不妊性であること、および妊性が極めて乏しいことを含む概念である。 【0016】 【作用】三倍体のメスは、コロニーから離れて飛翔して他のコロニーからのオスと交配しても実質的に不妊性なので産卵しないかまたは産卵の確率が極めて低い。したがって所謂一代限りで増殖することがないので、ポリネーターとして外来種を導入しても、それによるマイナスの影響が大きく抑制・低減されることになる。 【0017】 【実施例】以下マルハナバチの場合を例にとってこの発明についてさらに詳細に説明する。 【0018】図1に示すのは、スイッチポイント前の自然交配(所謂オープンシステムである)の場合のマルハナバチの交配作出態様の一例である。二倍体のメス個体(ab)と一倍体のオス個体(c)との交配により、二倍体のメス個体(ac)と(bc)とが作出される。 【0019】図2に示すのはスイッチポイント経過後の自然交配の場合のマルハナバチの交配作出態様の一例である。メス個体は無精卵を産み始めるためにオス個体(c)の精子は使われないので、一倍体のオス(a)と(b)が作出される。さらに働きバチ産卵が起きると(a)、(b)に加えて(c)のオスも作出される。 【0020】図3に示すのはスイッチポイント経過後の強制近親交配(所謂クローズドシステムである)の場合のマルハナバチの交配作出態様の一例である。すなわち同一の閉鎖コロニー内において強制的に行われる交配である。二倍体のメス個体(ac)と一倍体のオス個体(a)との交配により、二倍体のメス個体(ac)と二倍体のオス個体(aa)とが作出される。この段階において同種性決定遺伝子を有する二倍体のオスが作出されるのであるが、この発明はこの現象を利用するものである。このオス個体は同一の性複対立遺伝子を持っている。 【0021】ついで図4に示すように、この二倍体のオス個体(aa)を二倍体のメス個体(bc)との強制交配により三倍体のメス個体(aab)と(aac)とが作出される。このメス個体は実質的に不妊性であるから、コロニーを離れて飛翔して他のコロニーからのオス個体と交配しても、増殖に全く参与しないか、少なくとも全んど参与しないのである。 【0022】したがって配蜂業者はこの三倍体のメス個体を作出するコロニーを商品とし栽培農家に配布する。 【0023】 【実験例】上記したようなこの発明の効果を確認するために、出願人らはつぎのような確認実験を行った。 【0024】オスと女王バチの入手方法。1匹のオスハチと交配させたマルハナバチの受精女王バチ(以下「女王バチ」と呼ぶ)とを営巣開始用飼育箱(以下「営巣開始箱と呼ぶ」)に入れ、餌として花粉と蔗糖水とを与えるように設定した。このような設定状態を温度と相対湿度とを一定に保った閉鎖環境内に設置した。営巣開始時には、繭あるいは小型の働きバチ(メス)をヘルパーとして導入して置いた。 【0025】経過。女王バチは花粉を摂食して受精卵の産卵を開始し、孵化、蛹化から羽化と順次発育が進んで、雌の働きバチが誕生した。女王バチは受精卵を生み続け、働きバチの数は徐々に増加したが、その数が10匹前後に至った段階で、営巣開始箱中で発達中のコロニー全体を大型の巣箱に移植した。女王バチの産卵は盛んとなり、働きバチの数が急増したが、やがてスイッチポイントを経過すると女王バチは受精卵から無精卵の産卵に切り換えた。無精卵はオスとなるので、やがて多数のオスが誕生してきた。一方メスの幼虫には多量の餌が与えられ、大型のメスすなわち新女王バチが多数育てられた。やがて働きバチの生産は止まり、母親としての女王バチは死に、その後コロニーは衰退の一途を辿った。 【0026】二倍体のオスの作出方法。同じ巣箱(同じコロニー)で育ったオスハチと女王バチとを、約50cm立方の網籠に入れて人為的(強制的)に近親交配をさせた。その近親交配女王バチを5℃に保持された低温恒温インキュベーター内で約4ヵ月保存し、前記と同様な方法で巣を作らせた。近親交配女王バチは活発に産卵を開始したが、それらはすべて受精卵である(スイッチポイント前)にも拘わらず、その約50%がオスとなってしまった。これは、近親交配の場合には、父方と母方を期限とする各々のゲノムを構成する18本の染色体(n=18)のいずれかに存在する性決定遺伝子(性複対立遺伝子)がホモ結合になってしまう場合があるから、と考えられた。 【0027】三倍体個体の作出方法。人為的な近親交配で作出された二倍体のオス個体を通常の交配により得られた新女王バチと前記の要領で交配させて、その二倍体のオス個体と交配させた女王バチを前記の要領で低温処理し、前記と同じ方法で巣を作らせた。二倍体オス個体と交配させた女王バチの中には、正常に産卵を開始した個体もおり、その子孫の染色体数を調べると54本であり、三倍体(3n=54)であることが判明した。 【0028】三倍体個体の妊性確認方法。二倍体のオス個体と交配させた女王バチからなるコロニーより選られた三倍体の新女王バチを通常の一倍体のオス個体と交配させて、前記と同様な方法で営巣させたところ子孫が得られず、不妊性であることが確認された。また三倍体の働きバチを飼育箱に導入し産卵を起こさせてその妊性の確認も試みたが、同様に不妊性であることが確認された。 【0029】 【発明の効果】この発明により作出されたメス個体が栽培農家に配布され、コロニーから飛翔して他のコロニーからのオス個体と自然交配しても次世代が増殖されることが大きく抑制低減される。したがって生態系を破壊することもなく、一方本来の授粉行動は行うのでポリネーターとしての役割は充分に果たすのである。すなわち授粉に依存する植物栽培のメリットは活かしながらも、それによるディメリットは大幅に抑制低減できる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】593171592 【氏名又は名称】学校法人玉川学園
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| 【出願日】 |
平成13年2月27日(2001.2.27) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100073128 【弁理士】 【氏名又は名称】菅原 一郎
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| 【公開番号】 |
特開2002−253085(P2002−253085A) |
| 【公開日】 |
平成14年9月10日(2002.9.10) |
| 【出願番号】 |
特願2001−52254(P2001−52254) |
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