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【発明の名称】 釣 竿
【発明者】 【氏名】高松 伸秋

【氏名】岡本 寿久

【氏名】内藤 秀行

【氏名】黒川 智弘

【要約】 【課題】比剛性を高くしつつ層間剥離を防止して強度を高めた竿杆を有する釣竿を提供する。

【解決手段】繊維強化樹脂製竿杆の層の中で、強化繊維の殆どが概ね軸長方向に指向した炭素繊維である軸長方向層12Bを有し、該層は1層又は半径方向に重合する2つ以上の層12b1,12b2,12b3から構成されており、この中の1つの層又は2つ以上の層12b2が、一方のピッチ系の炭素繊維を、縦弾性率が概ね70×9.8×10N/mm以上、概ね100×9.8×10N/mm以下の範囲から選択して有し、該層の中に、他方のパン系の炭素繊維を、縦弾性率が概ね40×9.8×10N/mm以上、概ね65×9.8×10N/mm以下の範囲から選択して有し、夫々の種類の繊維は、竿杆における軸長方向繊維全体に対して少なくとも5体積%以上含有させると共に、該軸長方向繊維全体の平均縦弾性率が65×9.8×10N/mmを超えるようにし、マトリックス樹脂をエポキシ樹脂とし、前記軸長方向層の樹脂比率を15〜28重量%とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 繊維強化樹脂製竿杆の層の中で、強化繊維の殆どが概ね軸長方向に指向した炭素繊維である軸長方向層を有し、該層は1層又は半径方向に重合する2つ以上の層から構成されており、この中の1つの層又は2つ以上の層が、一方のピッチ系の炭素繊維を、縦弾性率が概ね70×9.8×10N/mm以上、概ね100×9.8×10N/mm以下の範囲から選択して有し、該層の中に、他方のパン系の炭素繊維を、縦弾性率が概ね40×9.8×10N/mm以上、概ね65×9.8×10N/mm以下の範囲から選択して有し、夫々の種類の繊維は、竿杆における軸長方向繊維全体に対して少なくとも5体積%以上含有させると共に、該軸長方向繊維全体の平均縦弾性率が65×9.8×10N/mmを超えるようにし、マトリックス樹脂をエポキシ樹脂とし、前記軸長方向層の樹脂比率を15〜28重量%としたことを特徴とする竿杆を有する釣竿。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エポキシ樹脂をマトリックスとし、軸長方向指向の強化繊維の殆どがピッチ系とパン系の両種類の炭素繊維を有する軸長方向層を備える繊維強化樹脂製竿杆を有する釣竿に関する。
【0002】
【従来の技術】繊維強化樹脂製竿杆として、エポキシ樹脂をマトリックスとし、炭素繊維を主たる強化繊維として使用した竿杆が多く製造されている。特に、軸長方向繊維としての強化繊維を炭素繊維で構成しているといえる。これは縦弾性率が大きく、重量を同じにした場合、他のガラス繊維等に比べて格段に撓み剛性の向上が図れ、比剛性を格段に大きくできることによる。従って、更に比剛性を向上させるには、より高い縦弾性率を有する炭素繊維を使用すればよいことになる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】然しながら、竿杆に使用する限り、所定の強度を必要とし、そうした強度を有する炭素繊維はパン系の炭素繊維である。こうした強度を備えたパン系炭素繊維の現在の最大縦弾性率は概ね65×9.8×10N/mmであり、それ以上の縦弾性率を求めるとピッチ系炭素繊維となる。然しながら、撓み荷重の作用する竿杆等に用いた場合、ピッチ系炭素繊維の繊維方向の圧縮強度は、パン系炭素繊維に比べて大きく低下し、単独では竿杆の軸長方向の主たる強化繊維としては使用が困難である。こうした理由で、特開平5−304860号公報では、軸長方向指向のピッチ系炭素繊維を使用した層と、パン系炭素繊維を使用した層とを重合させた層構造を開示している。然しながら、1つの層の全体(全周)においてパン系又はピッチ系の何れか一方が使用されており、両種類の炭素繊維は繊維径が大きく異なるため、竿杆が大きな撓みを受けた際に、層間剥離が生じ易い。層間剥離が生じたのでは竿杆の実際的強度が向上しない。依って本発明は、比剛性を高くしつつ層間剥離を防止して強度を高めた竿杆を有する釣竿の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的に鑑みて本発明は請求項1において、繊維強化樹脂製竿杆の層の中で、強化繊維の殆どが概ね軸長方向に指向した炭素繊維である軸長方向層を有し、該層は1層又は半径方向に重合する2つ以上の層から構成されており、この中の1つの層又は2つ以上の層が、一方のピッチ系の炭素繊維を、縦弾性率が概ね70×9.8×10N/mm以上、概ね100×9.8×10N/mm以下の範囲から選択して有し、該層の中に、他方のパン系の炭素繊維を、縦弾性率が概ね40×9.8×10N/mm以上、概ね65×9.8×10N/mm以下の範囲から選択して有し、夫々の種類の繊維は、竿杆における軸長方向繊維全体に対して少なくとも5体積%以上含有させると共に、該軸長方向繊維全体の平均縦弾性率が65×9.8×10N/mmを超えるようにし、マトリックス樹脂をエポキシ樹脂とし、前記軸長方向層の樹脂比率を15〜28重量%としたことを特徴とする竿杆を有する釣竿を提供する。
【0005】平均縦弾性率とは、一方の種類の各炭素繊維の断面積にその縦弾性率を掛けて足し合わせ、他方の種類の炭素繊維に対しても同様に算出し、これらを合計した値を、2つの種類の炭素繊維の総断面積で除した値である。一般に竿杆は薄肉であるため、両種類の併存(混在)ではなくてその平均縦弾性率を有する仮想的な1種類の強化繊維を軸長方向繊維として使用した場合に、竿杆の撓み剛性に対して、実際の併存(混在)の場合と概ね同等に寄与する。上記5体積%は、好ましくは10体積%であり、更に好ましくは、両種類の炭素繊維が概略同量になるように、即ち、夫々、30〜70体積%(50±20体積%)の範囲内に併存(混在)使用するとよい。また、平均縦弾性率は、好ましくは70×9.8×10N/mmを超えるようにするとよい。
【0006】縦弾性率が概ね70×9.8×10N/mm以上、概ね100×9.8×10N/mm以下の範囲のピッチ系炭素繊維は、縦弾性率が概ね65×9.8×10N/mm以下、概ね40×9.8×10N/mm以上のパン系炭素繊維に比較して、圧縮強度が大きく低下し、単独では高い比剛性と所定の比強度を有する竿杆として使用し難いという事実がある。比剛性とは、単位重量当りの撓み剛性であり、例えば、重量を変えないで竿杆の撓み剛性を向上させれば比剛性が向上したことになる。比強度とは、単位重量当りの強度である。そこで、2つの種類の炭素繊維から、夫々適宜量選択し、両種類の繊維を使用して平均縦弾性率が65×9.8×10N/mmを超えるようにした場合、縦弾性率が概ね70×9.8×10N/mm以上、概ね100×9.8×10N/mm以下の範囲の前記一方の炭素繊維であって、前記の併存(混在)させて得られた平均縦弾性率に近い現実の縦弾性率を有するピッチ系繊維のみを軸長方向強化繊維とする場合よりも比強度が向上する。しかも、ピッチ系繊維を有する層には、パン系繊維をも有するため、該層全体がピッチ系繊維の場合よりも、隣接した層間における境界剥離が生じ難く、竿杆強度が向上する。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を添付図面に示す実施形態例に基づき、更に詳細に説明する。図1は本発明に係る釣竿に使用している一本の竿杆10であり、その横断面を図2に示す。竿杆10は、繊維強化樹脂製竿杆であり、エポキシ樹脂をマトリックスとし、炭素繊維を主たる強化繊維として強化している。この例での竿杆10は5層構造であり、最外層12Aと最内層12Bとは、夫々、主たる強化繊維の炭素繊維等が概ね円周方向に指向している薄い円周方向層であり、他の3層12b1,12b2,12b3は、主たる強化繊維としての炭素繊維が概ね軸長方向に指向した軸長方向層12Bである。
【0008】図3は図2の一部を更に拡大した図であり、軸長方向層12Bの中の第2層12b2は軸長方向強化繊維としてパン系炭素繊維PNと、ピッチ系炭素繊維PTとを概ね同体積ずつ円周方向に交互に配設している。また、第1層12b1と第3層12b3とは、軸長方向強化繊維として主にパン系炭素繊維を使用している。主にとは、他の種類の強化繊維が幾分か混入していることは妨げないという意味である。単位長さの竿杆で考え、各層12b1,12b2,12b3内の各総繊維体積は概ね同じであり、ピッチ系炭素繊維の縦弾性率が95×9.8×10N/mm、パン系炭素繊維は65×9.8×10N/mmの場合、軸長方向層12B全体での平均縦弾性率は70×9.8×10N/mmとなる。更には、ここでは軸長方向層12Bの樹脂比率を概ね20(15〜28)重量%としている。
【0009】従って、パン系炭素繊維のみでは得られない平均縦弾性率となり、竿杆の撓み剛性(比剛性)が向上する。更には、第2層12b2には、隣接している第1、第3の各層のパン系炭素繊維と同じ(或いは同種の)炭素繊維PNを有しているため、既述公報に開示のように、ピッチ系炭素繊維PTのみで構成されている場合と比較して、隣接している第1、第3の各層との境界における剥離が防止され、高強度になる。
【0010】図4は、他形態の層構造の例であり、図3の場合と異なるのは、軸長方向層12Bが4層からなり、ピッチ系炭素繊維PTを有する層が隣接した2層12b2,12b4で構成されていることである(必ずしも隣接する必要は無い)。なお、各層の厚さは図3の場合と同じというわけではない。更には、該2層の各層のピッチ系炭素繊維群の円周方向位置は、層同士で互いにずれているため、半径方向においても、パン系炭素繊維群と隣接している。即ち、1つのピッチ系炭素繊維群について見れば、その周囲をパン系炭素繊維によって囲まれている。このため、ピッチ系炭素繊維に対して圧縮作用が生じた場合に、隣接しており、圧縮強度の強いパン系炭素繊維によって補助(補強)される効果がある。また、層間剥離に対しては、全周に亘って全てがピッチ系炭素繊維の場合と比較して剥離し難い。
【0011】図5は、図3の第2層12b2のパン系とピッチ系の炭素繊維を概ね均等になる形態で併存(混在)させた層12b2’とした場合の形態例であり、こうすれば、より境界剥離が防止できる。その他は図3の場合と同様である。
【0012】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明によれば、比剛性を高くしつつ層間剥離を防止して強度を高めた竿杆を有する釣竿が提供できる。
【出願人】 【識別番号】000002495
【氏名又は名称】ダイワ精工株式会社
【出願日】 平成13年2月21日(2001.2.21)
【代理人】 【識別番号】100101421
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 俊郎
【公開番号】 特開2002−238405(P2002−238405A)
【公開日】 平成14年8月27日(2002.8.27)
【出願番号】 特願2001−44622(P2001−44622)