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【発明の名称】 フェースギヤ及びその製造方法
【発明者】 【氏名】天野 誠之

【氏名】三好 正敏

【氏名】菊地 浩二

【氏名】堤 わたる

【要約】 【課題】主として魚釣用スピニングリールに用いられているフェースギヤにおいて、精度の高いフェースギヤを提供することを目的とする。

【解決手段】本発明は、オフセットした状態で直交する二軸間で動力を伝達させるに際して用いられるフェースギヤ10であって、このフェースギヤの歯部をNCフライス盤にて形成したことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 オフセットした状態で直交する二軸間で動力を伝達させるに際して用いられるフェースギヤであって、このフェースギヤの歯部をNCフライス盤にて形成したことを特徴とするフェースギヤ。
【請求項2】 オフセットした状態で直交する二軸間で動力を伝達させるに際して用いられるフェースギヤであって、フェースギヤ用の歯部がNCフライス盤にて形成された金型、もしくは、フェースギヤ用の歯部がNCフライス盤にて形成された金型製作用電極を用いることで製造されたことを特徴とするフェースギヤ。
【請求項3】 オフセットした状態で直交する二軸間で動力を伝達させるに際して用いられるフェースギヤを製造するにあたり、前記フェースギヤの歯部、又はフェースギヤを成形するために用いられる金型の歯部、又はフェースギヤ成形用の金型を製作するための金型製作用電極の歯部を、NCフライス盤にて形成したことを特徴とするフェースギヤの製造方法。
【請求項4】 オフセットした状態で直交する二軸間で動力を伝達させるに際して用いられるフェースギヤであって、このフェースギヤの歯面の裏側に傾斜面を形成すると共に、少なくとも歯部の真裏近傍を歯面と平行な平面状に形成したことを特徴とするフェースギヤ。
【請求項5】 前記フェースギヤの歯面の裏側に傾斜面を形成すると共に、少なくとも歯部の真裏近傍を歯面と平行な平面状に形成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフェースギヤ、及びフェースギヤの製造方法。
【請求項6】 前記フェースギヤは魚釣用リールの巻取り駆動機構に用いられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のフェースギヤ、及びフェースギヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として、魚釣用スピニングリールに代表される魚釣用リールに用いられるフェースギヤ、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般的に魚釣用スピニングリールは、ハンドルの回転駆動力をロータに伝達するための駆動力伝達機構(巻取り駆動機構)が設けられている。そして、この駆動力の伝達は、ハンドル軸に設けられたギヤと、ロータが取り付けられたギヤが噛合することで成される。
【0003】ところで、上記したハンドル軸とロータの回転中心軸は、オフセットした状態で直交するという特殊性があり、上記した駆動力を伝達するに際しては、ハンドル軸にフェースギヤを取り付けると共に、ロータの回転中心部分にピニオンギヤを取り付け、両者を噛合させる、という形態が取られる。
【0004】この種のフェースギヤは、魚釣用スピニングリールやヘリコプターの後方回転翼部分等、用途が非常に限られており、通常、亜鉛の鋳造やアルミ合金の鋳造・鍛造、ステンレスの鋳造(MIM;メタルインジェクションモールド)等で形成されており、これらは、いずれも金型を必要とする成形方法である。
【0005】通常、このようなフェースギヤを成形するための金型は、ホブと呼ばれる刃物によってピニオンカッターを作成しておき、次いで、このピニオンカッターを銅材に押し付けてフェースギヤのギヤ部分に対応した歯形を備えた金型用電極を作成し、そして、この電極を金型鋼に対して放電加工することで作成されている。
【0006】あるいは、このようなフェースギヤの成形方法とは異なり、切削加工を用いる方法が行なわれている。これは、ギヤシェイパーと呼ばれる機械で切削加工することでフェースギヤを形成する方法であり、具体的には、金型を用いることなく、ホブによってピニオンカッターを作成しておき、このピニオンカッターと、フェースギヤ素材とを同期回転させながら、一歯づつ切削加工する方法である。
【0007】そして、上記したいずれの方法においても、最終的に、作成されたフェースギヤの歯部に、ラッピングピニオンで仕上げ加工を施すことで滑らかな歯面を形成する、いわゆるラッピング処理が施される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記した方法によって作成されたフェースギヤでは、以下の問題がある。
【0009】上記した金型を用いてフェースギヤを成形する方法では、ピニオンカッターから電極を作成し、そして、この電極を金型鋼に対して放電加工することで金型を作成するため、最終的に得られるフェースギヤの歯面の精度が悪く、加えて、鋳造、もしくは鍛造工程において引けが発生することから金型転写性も悪い。このため、成形後に修整加工が必要になると共に、仕上げ工程に時間がかかり、さらには、最終成形品のばらつきが大きく、不良品の発生率が高いという問題が生じる。
【0010】また、金型によって歯面の形状が決定されてしまうため、歯面の形状修整を行なう場合、金型を修整しなければならず、容易に歯面や歯筋の修整を行なうことが困難であり、さらには、金型内の流動性や成形加工性を考慮すると(鋳造の場合、低融点・湯流れの良い素材、鍛造の場合、軟質性の素材等)、使用できる材料が特定されてしまうという問題もある。
【0011】一方、上記したギヤシェイパーによる作成方法では、加工方向が一定となってしまうことからバリが発生しやすく、しかもギヤシェイパーではバリ取りや面取りの加工ができないので、再度、修整加工が必要となってしまう等、製造工程が複雑となり一個当たりの製造コストが高くなってしまう。また、歯面の形状がピニオンカッターの形状で決定されるため、ギヤ比、歯形の変更を行なう毎に異なるカッターが必要とされ、歯形や歯面の修整が難しいと共に、ピニオンカッターで切削する関係上、切削抵抗が大きく高強度材料を使用することには適さない。
【0012】この発明は、上述した問題に基づいて成されたものであり、主として魚釣用スピニングリール等に用いられているフェースギヤにおいて、精度の高いフェースギヤを提供することを目的とする。
【0013】また、本発明は、そのようなフェースギヤを、材料に限定されること無く、容易、かつ安定して製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記した課題を解決するために、本発明に係るフェースギヤは、その歯部をNCフライス盤にて形成したことを特徴とする。
【0015】また、上記課題を解決するために、本発明に係るフェースギヤは、フェースギヤ用の歯部がNCフライス盤にて形成された金型、もしくは、フェースギヤ用の歯部がNCフライス盤にて形成された金型製作用電極を用いることで製造することを特徴とする。
【0016】また、上記した課題を解決するために、本発明に係るフェースギヤの製造方法は、フェースギヤの歯部、又はフェースギヤを成形するために用いられる金型の歯部、又はフェースギヤ成形用の金型を製作するための金型製作用電極の歯部をNCフライス盤にて形成したことを特徴とする。
【0017】上記したように、フェースギヤの歯面は、NCフライス盤にて切削加工されるため、あらかじめ歯形形状を解析しておくことで、様々な形状の歯面が容易に製造できると共に、NCフライス盤の工具で切削加工を行なうことから、任意の材料のフェースギヤを形成することが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】図1は、本発明に係るフェースギヤを備えたオープンフェースタイプの魚釣用スピニングリールを後方から見た部分断面図である。
【0019】最初に、この魚釣用スピニングリールの構成、及び動作について説明する。魚釣用スピニングリール1は、釣竿に装着するための脚部2aが形成されたリール本体2と、リール本体前方に回転可能に配されたロータ3と、ロータ3の回転運動と同期して前後動可能に配されたスプール(図示せず)とを有している。
【0020】リール本体2内には、軸受4を介してハンドル軸5が回転可能に支持されており、その突出端部には、ハンドル7が取り付けられている。ハンドル軸5には、巻取り駆動機構が係合しており、この巻取り駆動機構は、ハンドル軸5に取り付けられるフェースギヤ10と、このフェースギヤ10に噛合すると共に、ハンドル軸5と直交する方向に延出し、内部に軸方向に延出する空洞部が形成されたピニオン12とを備えている。
【0021】ピニオン12は、前記ハンドル軸5に対して、オフセットした状態で直交するように、軸受を介してリール本体内に回転可能に支持されている。このピニオン12の空洞部には、ハンドル軸5と直交する方向に延出し、先端側にスプールを取り付けたスプール軸15が軸方向に移動可能に挿通されている。
【0022】また、前記ピニオン12には、スプール軸を前後動させるオシレート機構が係合している。このオシレート機構は、リール本体内に回転可能に支持され、スプール軸15と平行に延出するウォームシャフト17と、このウォームシャフト17の一端部に取り付けられ、前記ピニオン12と噛合するギヤ18とを備えている。そして、スプール軸15の他端部には、ウォームシャフト17の螺旋溝と係合する摺動子(図示せず)が取り付けられており、ウォームシャフト17がギヤ18によって回転駆動されることで、スプール軸15は、摺動子を介して前後方向に往復動される。
【0023】上記した構成により、ハンドル7を巻取り操作することで、ロータ3が巻取り駆動機構を介して回転駆動され、かつスプールがオシレート機構を介して前後動されるので、釣糸は、ロータ3に設けられた釣糸案内部3aを介してスプールに対して均等に巻回される。
【0024】次に、上記した構造の魚釣用スピニングリールにおいて、ハンドル軸5に設けられるフェースギヤ10について詳細に説明する。
【0025】本実施の形態では、フェースギヤ10は、ハンドル軸5と一体的に成形されており、そのようなフェースギヤを作成するに当たり、まず、図2(a)に示すような構造体30を、鋳造、鍛造、切削加工等によって作成しておく。この場合、構造体は、円板部31と、円板部31の中心において直交するように延出する軸部32とを備えており、円板部31が以下のように加工されることで、上記したハンドル軸と一体化したフェースギヤが形成される。なお、円板部31の縁部には、輪帯状の突部31aが形成されており、その突部の平坦面31bに、以下のようにして歯部31cを形成することでフェースギヤ10が形成される。また、軸部32は、そのままハンドル軸5となる。
【0026】あるいは、上記した構成以外にも、例えば、フェースギヤ軸とフェースギヤ歯面を備えた円盤部とを別体で、一体的に取付け固定する構成も可能である。
【0027】上記した構造体は、図2(a)に示すように、軸部32の一端がチャック50によって固定されると共に、他端が押圧部51によって押圧されて、芯出しが成された状態で前加工が施される。この前加工は、輪帯状の突部31aの裏面側に周縁に向かって下降するように傾斜する傾斜部31d、及びその傾斜部の途中から周縁側に平坦面31bと平行になるような平面部31eが形成されるよう切削するものである。具体的には、最初に、図2(a)の上側に示すように、傾斜部31dが形成されるよう切削加工が施され、その後、下側に示すように、傾斜部31dの途中から周縁側に平面部31eが形成されるよう切削加工が施される。なお、このような前加工を行なう理由、及び効果については後述する。また、傾斜部31dや平面部31eは、構造体と共に予め形成しておいても良い。
【0028】ただし、鋳造や鍛造の場合、前記のような前加工は金型の精度が高ければ、必要ないことは言うまでもなく、その際は、平坦部を予め金型に形成しておけば良い。
【0029】そして、このような前加工が施された構造体30は、突部31aの略真裏部分がNCフライス盤の作業台60に載置され、図2(b)、図3及び図4に示すように、突部31aの平坦面31bが工具65によって切削加工される。
【0030】NCフライス盤に結合されている数値制御装置には、予め解析されたフェースギヤのための歯形形状が入力されており、この入力された情報に基づいて歯部の切削が行なわれる。この場合、工具65が歯筋方向に沿って移動しながら切削を行なうことで図3及び図4に示すように、歯部31cが平坦面31bに形成され、最終的にフェースギヤ10が作成される。
【0031】以上のように、NCフライス盤を用いて、フェースギヤ10の歯部を直接加工するため、従来のように、ホブでピニオンカッターを作成する工程、銅材にピニオンカッターを押し付け、フェースギヤの歯形を備えた電極を作成する工程、この電極を用いてフェースギヤ用の金型を作成する工程が不要となる。すなわち、1回の加工で成形品が出来上がるため、製造工程時における誤差が発生し難く、精度の高い製品を安定して生産することができ、その製造工程も簡略化される。
【0032】また、このようなフェースギヤが用いられる魚釣用スピニングリールは、魚が掛かった際の巻取り時に、フェースギヤの部分に大きな負荷がかかるという特徴があるため、強度や耐摩耗性が大きい素材を用いることが望ましいが、従来の製法では、上述したように、素材が限定されることから、歯面が損傷したり摩耗して回転性能が低下するという問題、及び、金型による成形時に、引けやエッジ部分が崩れる等、金型転写性が悪いという問題があった。ところが、上記したように、NCフライス盤による加工法によれば、素材が限定されないため、高強度で、耐摩耗性のある素材を用いることができるようになり、また、転写によって歯部を形成するのではなく、直接切削して歯部を形成するため、歯部のばらつき等が無くなり、回転性能の低下を防止することができる。
【0033】なお、フェースギヤの素材としては、アルミ、真鍮、SUS、チタン、チタン合金、銅合金等、又、前記の材料に限定されること無く各種の材料を用いることができるが、魚釣用スピニングリールの場合、これに噛合するピニオンギヤの回転数が高いため、ピニオンギヤに用いられる素材よりも強度が低いものを用いることが好ましい。また、フェースギヤとして高強度材料を用いることで、歯数の数を増やして小モジュール化することが可能となり(m≦0.6)、これによりかみ合い率を上げて滑らかな回転特性が得られると共に、リールボディの小型化が図れるようになる。
【0034】また、歯形形状を解析し、そのプログラムデータを入力することによって、歯部が形成されるため、歯筋の修整や、ギヤ比の変更については入力データを変更するだけで対応できるようになり、異なるフェースギヤを容易に製造することができる。また、バリ取りに関してもデータの初期入力で対応することができるため、一工程で歯面の仕上げが可能となり、精度の高い製品が容易に得られるようになる。また、フェースギヤとしての完成品の精度が従来よりも高いので、ラッピング仕上げに関する時間を大幅に削減でき、製造工程が簡素化される。
【0035】なお、上述したNCフライス盤による切削加工によれば、例えば、図4に示すように、歯部31cの各表面は、歯筋に沿って複数の段差(引き目)が形成されるようになる。この場合、上記したようなラッピング仕上げによって、段差を潰すことにより、その表面を硬化させることができ、耐久性、耐摩耗性の向上が図れる。
【0036】さらに、魚釣用スピニングリールでは、リールのボディ形状をコンパクトにする等の理由から、特に、フェースギヤの歯面の真裏部分に、外周縁に向けて下降する傾斜面を形成することが一般的に行なわれている(図2(a)の傾斜部31d参照)。
【0037】ところが、このような傾斜面を形成すると、上記したような歯面加工時において、歯部を支える部分の面積が減少してフェースギヤが撓み、加工面が歪んだり、切削された歯部の深さが異なってしまう等の不具合が発生する。また、このような不具合は、一般的な鋳造や鍛造による加工の後に行なわれるラッピング時においても発生し、結果として歯面の精度が低下するという問題が生じてしまう。
【0038】これに対し、上述した構成のように、輪帯状の突部31aの裏面側に、歯面と平行な平面部31eが形成されるよう前加工を施しておくことで、図2(b)に示すように、歯部形成工程時、あるいはラッピング工程時の証となって安定した状態で切削工程を行なうことができるようになり、歪みの発生をなくして歯面の精度の向上が図れるようになる。なお、このような平面部31eは、最終的に、図2(c)に示すように切削加工して、傾斜部31d´としても良い。
【0039】以上説明した実施形態では、フェースギヤ10を作成するに際して、その歯部をNCフライス盤で形成したが、フェースギヤを、鋳造、鍛造によって成形する場合においても、その金型の歯部をNCフライス盤で形成しておくことが好ましい。
【0040】すなわち、図5に示すように、ハンドル軸5を有するフェースギヤ10を成形するための金型70,71において、フェースギヤの歯部を成形する部分(歯部71a)を、図6に示すように、NCフライス盤にて形成しておいても良い。
【0041】このようにすることで、歯形を形成するに際しての転写回数が減るため(ホブでピニオンカッターを作成する工程、このピニオンカッターで金型用電極を作成する工程がないため)、最終的に形成される歯部の精度を向上することが可能となる。
【0042】あるいは、金型製作用電極の歯部をNCフライス盤で形成しておいても、歯形を形成するに際しての転写回数が減るため(ホブでピニオンカッターを作成する工程がないため)、最終的に形成される歯部の精度の向上が図れる。
【0043】なお、上記したフェースギヤ以外のギヤや、オープンフェースタイプの魚釣用スピニングリール以外のフェースギヤ、例えばクローズドフェースタイプの魚釣用スピニングリールのフェースギヤ等にも適用することが可能である。
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、主に魚釣用スピニングリールに用いられているフェースギヤに関し、歯部の精度の高いものが得られるようになる。また、本発明によれば、精度の高いフェースギヤを、容易、かつ安定して製造することが可能になる。
【出願人】 【識別番号】000002495
【氏名又は名称】ダイワ精工株式会社
【出願日】 平成13年2月1日(2001.2.1)
【代理人】 【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司 (外1名)
【公開番号】 特開2002−223673(P2002−223673A)
【公開日】 平成14年8月13日(2002.8.13)
【出願番号】 特願2001−25800(P2001−25800)