| 【発明の名称】 |
局所送風によるストール上牛体の暑熱環境緩和法 |
| 【発明者】 |
【氏名】早坂 貴代史
【氏名】増淵 敏彦
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| 【要約】 |
【課題】フリーストール牛舎のストール前方端部の上方位置に送風管を配設し、ストール周辺の暑熱環境を感知する温度認識装置により送風量を周波数制御してストール周辺の暑熱環境を緩和する。
【解決手段】■.フリーストール1牛舎内に並列されるストール1の前方端部の上方位置に、風量を調節可能にした送風装置6が接続された中空送風管3を配設し、該送風管3の下方部に、ストール1側に風を送り出す複数の送風口4を開口し、ストール1周辺の温度に応じて前記送風装置6を制御してストール1周辺の暑熱環境を緩和する。■.フリーストール1牛舎内に、該ストール1周辺の暑熱環境を感知する温度認識装置を配設し、この温度認識装置により送風装置6を周波数制御してストール1周辺の暑熱環境を緩和する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 フリーストール牛舎内に並列されるストールの前方端部の上方位置に、風量が調節可能の送風装置が接続された中空送風管を配設し、該送風管の下方部に、ストール側に風を送り出す複数の送風口を開口し、ストール周辺の温度に応じて前記送風装置を制御して牛舎内の暑熱環境を緩和するようにしたことを特徴とする局所送風によるストール上牛体の暑熱環境緩和法。 【請求項2】 フリーストールの近傍に、該ストール周辺の暑熱環境を感知する温度認識装置を配設し、この温度認識装置により送風装置を周波数制御してストール周辺の暑熱環境を緩和することを特徴とする請求項1記載の局所送風によるストール上牛体の暑熱環境緩和法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、フリーストール牛舎のストール前方端部上方位置に送風管を配設し、ストール側への送風量を制御して牛舎内の暑熱環境を緩和するようにした局所送風によるストール上牛体の暑熱環境緩和法に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、規模拡大と省力を目指して、ウシのフリーストール(以下、FSと略す)飼養が増えている。FSとは、牛群を舎内で放し飼いにして、各個体が通路を自由に移動して採食、飲水などができるほか、その中に設置されているストール(牛床ベッド)で横臥休息することができる飼養法である。本発明は、このような構造をもつ牛舎での利用を主たる目的とする。 【0003】畜舎内におけるウシへの暑熱対策として、冷房設備、屋根などの断熱、大型扇風機、ビニールダクト(あるいはスポットクーラ)による送風、牛体への散水、細霧システム、などが提唱され、飼養条件により利用されている。これらの手段は、密閉型構造のつなぎ飼い牛舎での利用を主たる目的としており、ウシが自由に行動できる,開放型(側壁のない)構造のFS牛舎では必ずしも適当でない。冷房設備は、設備費や使用経費が高い問題があり、また、開放型FS牛舎での使用は不可である。【0004】大型扇風機の利用は、斜めあるいは水平上方から床面に向けて送風が行われ、屋根に断熱材を使用していない牛舎では、舎内天井付近の温かい空気が送風されることになり、体感温度の低減効果が減少する。つなぎ飼い牛舎で床面に設置して横方向から送風する場合は、風上の牛体自体が防風効果を示すことが問題となる。【0005】FS牛舎では、大型扇風機は天井から懸垂(架)されて使用され、送風による暑熱対策の他に、牛舎での強制換気、通路上の糞尿の乾燥促進、肢蹄病対策のための泥ねい化防止などの機能を併せ持つ。そのため、通路上方空間のみに設置するとウシはストールよりも涼しい通路で佇立あるいは横臥休息する可能性が増す。このことは、通路上の牛体による送風遮蔽による通路表面の乾燥促進の低下、さらには排泄糞尿のある通路での佇立時間の増加による肢蹄病の可能性の増加が推察される。 【0006】一方、ストールに大型扇風機による適正な送風が行われないと、ストール上の敷き料の種類(オガクズなど)によっては、空気中に飛散して浮遊粉塵が増加し、空気汚染の懸念がある。また、大型扇風機の使用は、ストールによって送風量が異なるために、ウシは送風量の多い好適なストールを選択するようになり、ストールの均一かつ効率的な利用が図れない可能性がある。 【0007】ビニールダクト(あるいはスポットクーラー)による送風方式は、つなぎ飼い牛舎を対象に開発された方式で、ダクトの吹き出し口を介して、佇立時の牛体の肩上部から送風するが、ウシが横臥して吹き出し口から遠くなると効果が低下する。FS牛舎に使用する場合は、自由に行動するウシによるビニールダクトの損傷を防止するために、設置位置を高くしなければならず、大風量の送風機を使用することになり、設備費が高くなる。また、スポットクーラーによる冷送風は、施設費が高いことが問題である。牛体への散水は、舎内での床面が濡れるので不適当である。また、細霧システムは、開放式構造のFS牛舎では適当でない。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】夏季暑熱環境下のFS牛舎の乳牛は、■.ストールでの横臥時間が低下し、佇立時間が増加する、■.ストールに横臥せずに、ウシの移動、排泄場所である通路に横臥するウシの割合が増加する、■.暑熱ストレスによって、乳牛においては乳生産などが低下する、等の問題が認められる。 【0009】上記■.の原因として、ウシは体温を一定に維持する機能を有しているため、暑熱環境下では横臥よりも佇立して体表面積を増加させて蒸散、対流による放熱量を増加させる行動をとる傾向にある。この事実は、佇立による消費エネルギーの増加や横臥不足によるストレスの増加をもたらすことになる。■.の通路横臥牛は、通路にある糞尿が蒸発する際、蒸発潜熱が奪われるため、通路床面の温度が低下することが知られており、できるだけ涼しい場所での横臥休息を求め、ストールよりも通路を選定するウシが出現し、牛体や乳房が糞尿で汚れ、乳房炎発症や乳頭洗浄に時間がかかる傾向がある。また、通路表面はコンクリートで硬く、糞尿で濡れていれば、横臥時間の低下、床ずれや起臥動作時の肢蹄の故障などが生じ、搾乳室移動に時間がかかる原因となり、ウシの廃用につながりやすい。FS牛舎では、通路のみに大型扇風機を設置すると通路横臥牛を増やす原因になりうる。 【0010】■.に関連して、ホルスタイン種泌乳牛の高温側の臨界温度は24〜25℃といわれ、これ以上では、体温上昇、採食量や乳生産量の顕著な低下が認められている。これらの問題を解決するには、ストール内の暑熱環境である微気象を改善し、ストールヘの横臥欲求を高め、通路横臥を防止するとともに、ウシの暑熱ストレスを軽減し、乳生産の低下を防止する必要がある。具体的には、乳牛のストール上の横臥位置への局所送風法の検討が必要である。本発明は、上記の問題点を解消するためになされたもので、局所送風によるストール上牛体の暑熱環境緩和法を提供することを目的とする。 【0011】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本発明は、牛舎内の暑熱環境の程度に応じて局所送風し、牛体周辺の暑熱環境を改善する自動制御機構を開発し、以下の手段を有することを特徴としている。 【0012】A.フリーストール牛舎内に並列されるストールの前方端部の上方位置に、風量が調節可能の送風装置が接続された中空送風管を配設し、該送風管の下方部に、ストール側に風を送り出す複数の送風口を開口し、ストール周辺の温度に応じて前記送風装置を制御して牛舎内の暑熱環境を緩和するようにした。 B.フリーストールの近傍に、該ストール周辺の暑熱環境を感知する温度認識装置を配設し、この温度認識装置により送風装置を周波数制御してストール周辺の暑熱環境を緩和する。 【0013】 【作用】上記の手段により本発明の局所送風によるストール上牛体の暑熱環境緩和法は、以下の作用を行う。 イ)送風口からの送風は、横臥中のウシの頭部、頸部に直接あたり、後部の体表面へ流れる。 ロ)暑熱時の通路横臥するウシを減らす可能性が期待できる。ハ)乳生産量の低下を抑える(表1参照)。 ニ)送風時には牛体表面に寄生するハエ類の数が減少する(表1参照)。 ホ)ストールヘの送風を常時実施すると、乳牛の1日の横臥時間が明らかに長くなり、ストール環境が暑熱時の乳牛に好まれる。また、採食時間が増加する一方、通路での佇立・移動時間が減少する(表2参照)。 【0014】 【発明の実施の形態】以下、本発明による局所送風によるストール上牛体の暑熱環境緩和法の実施の形態を、図面及び表に基づいて詳細に説明する。図1〜5において、符号1はウシ(乳牛)Cを飼養する牛舎内に設けられたFSで、通路2に面して通路面から20〜25cm高に並列されている。この並列されたFS1の床前方端部上方の位置に、硬質中空パイプ(ダクト)3を、100〜130cmの高さで牛体Cの横臥方向と直交するように固設している。この中空パイプ3の下方部(厳密には斜め下方部)に、ストール(牛体C)側に風を送り出す複数の送風口4を等間隔に開口している。その際、局所送風の送風口4の風向きが、熱放散の高いといわれる牛体Cの肩部、頸部周辺に直接当たるように配置し、ストールに横臥あるいはストールを利用しているウシCに送風する。 【0015】中空パイプ3の始端部には、温度センサを有するインバータ5を備える電動送風機6の送風管が接続され、中空パイプ3の終端はキャップにより閉鎖されている。電動送風機6の送風量は、温度センサで牛舎内(特にFS1の周辺)の温度をモニタリングを行い、インバータ5により電動送風機6の回転数を周波数制御して自動制御する。そして、温度センサによりストール周辺の温度を検知し、その検知温度に応じて電動送風機6の回転数を自動制御して牛舎内、特にFS1内の暑熱環境を緩和する。 【0016】 【実施例】FS1に送風を行う硬質中空パイプ3は、鉄管等を用いて加工し、通常のストールに設置してあるネックレール7に替えて設置する。ネックレール7は、ウシが立ち上がった時、ストールから後ずさりさせること(これにより排糞尿がストールに落ちにくくなる)と、ストール内であまり前方に行き過ぎないように制御するパイプからなる横棒で、ス卜ール後端からおよそ170cm、ストール面高さ100〜130cmに設置され、トレーニングレールともいう。この既存のネックレール7を利用する場合は、図5に示すように、中空パイプ3を硬質塩化ビニール管等を使用して、取付け金具8でネックレール7に固定する。電動送風機6等は、ウシCから保護されるように設置する。 【0017】8床のFS1を設けた牛舎に飼養するホルスタイン種泌乳牛7頭を用い、FS1床の前端の上方110cmに設置した中空パイプ3による24時間連続の局所送風(電動送風機6の回転数は常時一定)の有無が、暑熱時のウシの行動などに及ぼす影響を1999年7〜8月に検討した。中空パイプ3としての硬質塩化ビニール送風管(75mm径)がネックレール7に取り付け金具8で固定され、ストールに横臥あるいは利用(佇立,前肢掛け)するウシCに送風される。中空パイプ3の長軸方向におよそ7cm間隔に1cm直径の送風口4(120cm幅の1ストールに12〜13個)が開けられている。風速は送風口4付近で10〜11m/秒、送風口4から60cm付近(牛体C横臥時肩部付近)で1.5〜1.7m/秒、床面付近で0.2〜0.3m/秒である。 【0018】24時間連続局所送風は、7/15〜28を送風期、7/29〜8/4を無送風期とした。調査期間は梅雨明け(7/23)を挟み、局所送風2期と無送風1期の各3日間の環境条件、体温、呼吸数、採食、乳生産、行動などの調査を行った。その結果を表1及び表2に示す。 【0019】3期の環境条件とウシの乳量等を表1に示す。送風期は、梅雨明け前後に、気温、温湿度指数が上がり、呼吸数、直腸温が有意に上昇したが、ウシの採食量(乾物摂取量)、乳量、体重に差はみられなかった。梅雨明け後の送風期と無送風期との間には、気温、温湿度指数、直腸温に差はなかったが、呼吸数が有意に上昇し、乳量、体重が有意に低下した。横臥中のウシに対するハエの寄生数は、無送風区で増加した。 【0020】 【表1】
【0021】3期の1日の行動時間、行動回数、歩行距離を表2に示す。ストールでの横臥時間、同総利用時間(ストール横臥+同佇立+同前肢掛け)は、送風期でも高温になると有意に低下し、無送風期にはさらに有意に低下した。また、無送風期は送風期に比べ、採食時間が低下傾向、通路での佇立・移動時間が有意に長くなった。【0022】 【表2】
【0023】ウシの熱的中性域(適温域)の気温は4〜20℃、呼吸数は20〜35回/分で、直腸温はおよそ38.5℃である。表1の呼吸数、直腸温は、14:30〜15:00と1日の中で最も高い時間帯で測定されたので、1日の平均では低下することを考慮するにせよ、3期はいずれも熱的中性域の数値よりも高く、暑熱温域での結果と判断される。また、熱的中性域で調査されたこのストールでの牛群1日あたりの平均横臥時間は660分であることが明らかにされており、3期の各横臥時間はそれよりも低下している事実は、行動に対する暑熱の影響がみられる。 【0024】局所送風がないと、乳量、体重、横臥時間等の低下が明らかであったが、梅雨明け前後の局所送風期の比較から、送風しても、高温になると、横臥時間の低下が見られる。これは、本調査期の舎外気温が例年に比べ1.5℃程度高く、猛暑であった事実があるにせよ、横臥時のみの局所送風の他に、大型扇風機などの併用が有効と考えられた。 【0025】 【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明による局所送風によるストール上牛体の暑熱環境緩和法は、請求項1及び2の手段を有することにより、以下の作用効果を奏することができる。 【0026】a)暑熱時の乳牛のFSでの横臥休息時間が増加し、暑熱ストレスが緩和されて乳生産性の改善効果が期待できる。b)暑熱時の通路横臥牛を減らすことができる。c)どのストールでもほぼ均一の送風環境が形成され、ウシの好適なストールの選択行動が少なくなり、効率的なストールの利用が期待できる。d)通路上でのウシの滞在時間の低下により、泥ねい化に起因する肢蹄病の発症を減らすことができる。e)本発明の送風装置に大型扇風機を併用すれば、さらなる暑熱緩和効果の増大が期待できる。 f)本発明の送風装置に冷温風発生装置を組み合わせることにより、温熱環境のより精緻な制御が可能となる。 g)本発明は、FS牛舎の基本構造の一部変更により設置できる。 h)本発明は、既設のFS牛舎への設置も可能である。i)本発明による中空パイプの送風口の面積が比較的小さいので、小風量の送風機を効果的に利用できる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】501203344 【氏名又は名称】独立行政法人 農業技術研究機構
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| 【出願日】 |
平成13年1月31日(2001.1.31) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100063565 【弁理士】 【氏名又は名称】小橋 信淳
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| 【公開番号】 |
特開2002−223652(P2002−223652A) |
| 【公開日】 |
平成14年8月13日(2002.8.13) |
| 【出願番号】 |
特願2001−23661(P2001−23661) |
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