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【発明の名称】 水生生物付着防止能を有する繊維構造体
【発明者】 【氏名】中村 知基

【氏名】池田 裕一郎

【氏名】高橋 茂

【要約】 【課題】環境汚染の恐れがなく、藻、フジツボ或いは寄生虫などのあらゆる水生生物に対する付着防止能及びその持続性に優れた繊維構造体を提供すること。

【解決手段】ロープ状、シート状又は網状の繊維構造体であって、該繊維構造体には光触媒が含有及び/又は固着されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ロープ状、シート状又は網状の繊維構造体であって、該繊維構造体には光触媒が含有及び/又は固着されていることを特徴とする水生生物付着防止能を有する繊維構造体。
【請求項2】 ロープ状の繊維構造体が係船用ロープである請求項1記載の水生生物付着防止能を有する繊維構造体。
【請求項3】 ロープ状の繊維構造体が延縄又はのり網保持用ロープである請求項1記載の水生生物付着防止能を有する繊維構造体。
【請求項4】 網状の繊維構造体が魚網である請求項1記載の水生生物付着防止能を有する繊維構造体。
【請求項5】 網状の繊維構造体が養殖網である請求項1記載の水生生物付着防止能を有する繊維構造体。
【請求項6】 養殖網が陸上養殖用の養殖網である請求項5記載の水生生物付着防止能を有する繊維構造体。
【請求項7】 養殖網が海面養殖用の養殖網である請求項5記載の水生生物付着防止能を有する繊維構造体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水生生物の付着防止能を有する繊維構造体に関するものであり、さらに詳しくは、光触媒が含有及び/又は固着されていることにより、藻・フジツボ・寄生虫等の付着が防止でき、汚濁防止シート、魚網、養殖網、係船用ロープ、延縄用ロープ、のり網保持用ロープ等に好適に使用できる繊維構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ロープ、網などの繊維構造体を水中で使用するとき、その表面には種々の水生生物が付着する。例えば、空港や橋梁の建設工事等、水中で土木工事を行う際に周囲の海域を汚濁から守るために使用される汚濁防止シートにおいては、数週間でシートの全面に藻が付着し、付着した藻を落とすため数ヶ月に一回の洗浄が必要となっている。
【0003】また、近年では、従来の海面養殖に加えて、陸上養殖と呼ばれる、陸上に設置したプールでの養殖も盛んに行なわれているが、海面および陸上養殖に用いる養殖網には、藻およびフジツボが大量に付着するため、養殖網内の水の流れが妨げられ、養殖網中の水質が急速に悪化するという問題があった。また、養殖魚の寄生虫のなかには、養殖網に卵を産み付け繁殖するものもいる。
【0004】さらに、海面付近で使用するロープ類にも、藻と同時にフジツボが付着する。フジツボが付着したロープは、作業者が負傷する原因となる上、ロープ巻き上げ用のウインチを痛めるため、通常はそのまま放棄される。
【0005】これら水生生物の付着を防止するため、従来は繊維構造体へ毒性物質を付着させる方法が採用されていたが、該繊維構造体が水中で使用されるため、毒性物質が繊維構造体より容易に流出し、流失した毒性物質により環境が汚染されるという問題があった。
【0006】例えば、従来、防藻ならびにフジツボの付着防止のため、広く用いられてきた有機スズ化合物は、水中に流出後、環境ホルモンとして作用し、貝類に異型を生じさせることが指摘されている。
【0007】一方、フジツボの付着防止については、静岡工業試験所等より微細加工された繊維構造体が提案されているが、ロープの巻き上げ時に微細部分が脱落するため、付着防止効果の持続性がないという欠点があった。
【0008】さらに、寄生虫に対しては、大量の抗生物質の投与により対応しているのが現状であり、水生生物の付着防止能及びその持続性に優れた繊維構造体が強く望まれている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は上記従来技術の有する問題点を解消し、環境汚染の恐れがなく、藻、フジツボ或いは寄生虫などのあらゆる水生生物に対する付着防止能及びその持続性に優れた繊維構造体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記問題を解決するために先ず繊維構造体に付着する水生生物の行動様式に着目した。即ち、水中で使用される繊維構造体に付着する生物の代表である藻ならびにフジツボは、微細な生物体として海中を漂ったのち、繊維構造体に付着し、繊維構造体上で成長していく。例えば藻類は胞子状態で繊維構造体に付着後、そこで発芽、成長していく。一方、甲殻類であるフジツボはプランクトンとして繊維構造体に付着した後、変体し、その後は、構造体に付着したまま一生を終える。そして、藻類およびフジツボは、光が十分存在する場所でないと成長しない。その理由は、藻類の成長には光合成を行うための光が必要であり、フジツボの成長にはフジツボが海面上へ露出することが必要だからである。
【0011】また、現在の養殖は、経済的な理由により、光が充分に差し込む比較的浅い海で行なわれており、養殖網に産み付けられた寄生虫の繁殖も光が十分に存在する場所で起こっているものと思われる。
【0012】従って、繊維構造体への藻類、フジツボ或いは寄生虫の付着を防止するには、光が十分存在する条件下で、繊維構造体の表面に強い殺菌力を持たせればよいことになる。
【0013】本発明者らはこのような、光の存在下で殺菌効果を示す物質について鋭意検討した結果、光触媒が水生生物の付着防止に理想的な物質であることを究明し、本発明に到達した。
【0014】すなわち本発明によれば、ロープ状、シート状又は網状の繊維構造体であって、該繊維構造体には光触媒が含有及び/又は固着されていることを特徴とする水生生物付着防止能を有する繊維構造体が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明に使用する光触媒としては、二酸化チタン、三酸化タングステン、酸化亜鉛、三二酸化鉄、チタン酸ストロンチウムなどの金属酸化物や、硫化カドミウム、硫化亜鉛、硫化インジウム等の金属硫化物や、セレン酸カドミウム、セレン化亜鉛などの金属セレン化物、リン化ゲルマニウム、リン化インジウムなどの金属リン化物など、およびこれらの光触媒に白金、ロジウム、ルテニウム、ニオブ、銅、鉄などの金属および金属酸化物を担持したもの、など公知のものをあげることができる。中でも、触媒活性、安全性、価格などの面から、酸化チタン、チタン酸ストロンチウムなどが好ましい。
【0016】上記の光触媒による殺菌機構は、光により光触媒の表面に付着した水がラジカル化され、このラジカルによりごく近傍の生物を殺傷させるものである。従って、光触媒による殺菌においては、光が殺菌のエネルギー源であり、理論的には効果が永久に続く。また、発生したラジカルは直ちに近傍の物質と反応し、無害な物質に戻るため、一般的な毒性物質とは異なり、環境に対する負荷が格段に小さい。
【0017】本発明に用いる繊維構造体としては、水中での土木工事の際に使用する汚濁防止シートなどのシート状構造体、係船または延縄ならびにのり網保持に用いられるロープ、魚網や養殖網のような網状の構造体などが好ましく例示される。シート状構造体は、織物の他、編物、不織布から構成されるものであってもよい。養殖網としては、陸上養殖用のもの、或いは海面養殖用のものが光触媒の機能を十分に発揮できるために特に好ましい。
【0018】本発明に用いる繊維構造体の材質は、特に限定されるものではないが、水中作業時の取り扱い性の面より、合成繊維であることが好ましく、なかでもポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどからなるポリエステル繊維、ポリエチレン、ポリプロピレンなどからなるポリオレフィン繊維、ナイロン6、ナイロン66などからなるポリアミド繊維、フッ素繊維などが特に好ましい。
【0019】本発明において、光触媒を繊維構造体に含有及び/又は固着させる手段としては、光触媒を含むポリマーを紡糸して得た繊維を用いて繊維構造体を製造する方法、紡糸時に溶融したポリマーに光触媒をブレンドして得た繊維を用いて繊維構造体を製造する方法、繊維に光触媒を固着させた後繊維構造体を製造する方法、光触媒を含まない繊維を用いて繊維構造体を製造した後、該繊維に光触媒を固着させる方法、光触媒を含む繊維にさらに光触媒を固着させた後繊維構造体を製造する方法、光触媒を含む繊維を用いて繊維構造体を製造した後さらに該繊維構造体に光触媒を固着させる方法、及び光触媒を含む繊維に光触媒を固着させた後繊維構造体を製造しさらにこれに光触媒を固着させる方法などが例示されるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】光触媒を固着させる場合の光触媒量は、少なすぎると十分な機能が発現できず、また、多すぎると繊維構造体が硬くなってしまうため、繊維構造体に対し、0.01%〜30重量%の範囲であることが好ましく、光触媒を含有させる場合の光触媒量は、繊維構造体に対し、0.01%〜20重量%の範囲であることが好ましい。
【0021】また、本発明に用いられる繊維構造体は、目的に応じて、染色しても良いし、光触媒を固着させる際に顔料等の着色剤を併用しても良い。
【0022】
【実施例】以下実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。尚、実施例中の物性は下記の方法により測定した。
【0023】(1)水生生物の付着試験■水中での水生生物付着試料を木製の板に固定し、港の浮き桟橋の東側面に、試料の上面が水面下50cmとなるように固定し、経時による生物の付着状況を調べた。
【0024】■間潮帯での水生生物付着試料を木製の板に固定し、港の浮き桟橋の東側面に、試料の上面が満潮時と干潮時の平均海面となるように固定し、経時による生物の付着状況を調べた。
【0025】[実施例1]
(加工液の調整)アクリル系バインダー(大和化学工業製、バインテックスA6410)50gを水850gに溶解し、ついで酸化チタン光触媒水分散体(石原テクノ製、STS−21、酸化チタン濃度40%)100gを添加し、光触媒を4%含む加工液を調整した。
【0026】(布帛への加工)1メートルあたり120ターンの実撚が付与された、1670dtex、250フィラメントのポリエステルマルチフィラメントを用いて常法により製織して得た、織密度:23×23本/インチ、目付け:333g/m2の平織物をA4大に切断し、上記加工液に浸漬後、マングルにて余分な加工液を絞り取った後、熱風乾燥機を用いて130℃で5分間乾燥し、続いてピンセッターを用いて180℃で1分間のキュアーを施した。
【0027】キュアー後の織物に対する加工剤の付着率は3重量%、光触媒の固着率は1.5重量%であった。該織物を水生生物付着試験に供したところ、水中での水生生物付着、間潮帯での水生生物付着ともに観測されず、良好な水生生物付着防止能を有していた。結果を表1に示す。
【0028】[比較例1]実施例1で使用したものと同じ平織物をA4大に切断し、加工液に浸漬することなく水生生物付着テストに供したところ、水中では2週間後より藻の付着が始まり、4週間後に最大になった。その後、藻の付着は若干減少したものの、16週間のテスト終了まで、シート状布帛の全面に藻が付着したままであった。また、間潮帯では、4週間後にフジツボおよび若干の藻の付着が見られ、その後、時間の経過と共に付着したフジツボの数が増加した。結果を表1に示す。
【0029】[実施例2]1670dtex、250フィラメントのポリエステルマルチフィラメントを180本収束し、3本撚り合わせて得たロープを実施例1と同様の加工液に浸漬した後、風乾し、さらに熱風乾燥機を用いて130℃で5分間乾燥した。
【0030】乾燥後のロープに対する加工剤の付着率は2重量%、光触媒の固着率は1重量%であった。該ロープを水生生物付着試験に供したところ、水中での水生生物付着、間潮帯での水生生物付着ともに観測されず、良好な水生生物付着防止能を有していた。結果を表1に示す。
【0031】[比較例2]実施例2で使用したものと同じロープを、加工液に浸漬することなく水生生物付着テストに供したところ、水中では2週間後より藻並びにフジツボの付着が始まったが、その後、藻の付着が増加するに従って、フジツボが減少していき、8週目以降では藻のみが付着していた。また、間潮帯では、2週間後にフジツボの付着が始まり、その後、時間の経過と共に付着したフジツボの数が増加していった。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【出願人】 【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
【出願日】 平成12年11月6日(2000.11.6)
【代理人】 【識別番号】100077263
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 純博
【公開番号】 特開2002−136246(P2002−136246A)
【公開日】 平成14年5月14日(2002.5.14)
【出願番号】 特願2000−337064(P2000−337064)