| 【発明の名称】 |
アツモリソウ属植物の培養方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】小山田 智彰
【氏名】菊池 純
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| 【要約】 |
【課題】発芽率を向上させ、また、発芽後の培養中の褐変死の発生を抑えて生存率を高め一度に大量の苗を生産することができるようにする。
【解決手段】種子選別工程と、種子を培養液に混合して培地に播種する無菌播種工程と、発芽するまで培養する発芽培養工程と、発芽し器官分化したものを培地を替えて継代培養する継代培養工程と、継代培養工程で生育した培養苗を低温の環境下にさらす低温処理工程と、その後、用土に植え替える鉢上げ工程とを備えた。上記培養液を、当該培養液1000ml中に添加物として、サッカロース0〜10gと、木酢液0.1〜2.0mlと、ビタミン類8〜45mgと、植物活性剤0.1〜1.0mlとを含有して構成し、上記培地を当該培地用水溶液1000ml中に添加物として、窒素,リン及びカリウムを含有する肥料1〜3gと、ぺプトン1〜3gと、糖類10〜30gと、植物活性剤0.2〜1.0mlと、ビタミン類16〜70mgとを含有して構成した。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アツモリソウ属植物を種子から培養するアツモリソウ属植物の培養方法において、選別して使用する種子を得る種子選別工程と、得られた種子を培養液に混合して無菌的に固形培地に播種する無菌播種工程と、播種後、発芽するまで培養する発芽培養工程と、発芽培養工程において発芽し器官分化したものを培地を替えて継代培養する継代培養工程と、継代培養工程で生育した培養苗を低温の環境下にさらす低温処理工程と、低温処理終了後、用土に植え替える鉢上げ工程とを備えたことを特徴とするアツモリソウ属植物の培養方法。 【請求項2】 上記培養液を培地とは異なる組成の培養液とすることを特徴とする請求項1記載のアツモリソウ属植物の培養方法。 【請求項3】 上記発芽培養工程において、播種した培地を暗黒下において培養することを特徴とする請求項1または2記載のアツモリソウ属植物の培養方法。 【請求項4】 上記発芽培養工程において、播種した培地を10〜25℃の環境において培養することを特徴とする請求項1,2または3記載のアツモリソウ属植物の培養方法。 【請求項5】 上記継代培養工程において、培地に培養液を添加することを特徴とする請求項1,2,3または4記載のアツモリソウ属植物の培養方法。 【請求項6】 上記継代培養工程において、培地を10〜25℃の環境において培養することを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載のアツモリソウ属植物の培養方法。 【請求項7】 上記低温処理工程において、低温処理期間を30〜90日としたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6記載のアツモリソウ属植物の培養方法。 【請求項8】 上記低温処理工程において、低温処理期間を60日±5日としたことを特徴とする請求項7記載のアツモリソウ属植物の培養方法。 【請求項9】 上記低温処理工程において、低温処理温度を0〜10℃としたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7または8記載のアツモリソウ属植物の培養方法。 【請求項10】 上記低温処理工程において、低温処理温度を3〜5℃としたことを特徴とする請求項9記載のアツモリソウ属植物の培養方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ラン科のアツモリソウ属植物を大量に増殖させ、生育させるためのアツモリソウ属植物の培養方法に関する。 【0002】 【従来の技術】一般に、アツモリソウ属植物とは、ラン(蘭)科の一種で、シプリペジュウム属とも言われ、例えば、その種類として、アツモリソウ,ホテイアツモリソウ,レブンアツモリソウ,カラフトアツモリソウ等が知られている。アツモリソウ属植物は幻の山野草と言われ、特にアツモリソウは、乱獲のため、絶滅の危機に瀕していて絶滅のおそれのある野生動植物の譲渡の規制等に関する法律によって希少野生動植物に登録されている植物である。また、アツモリソウ属植物は、増殖しにくい植物であり、その理由のひとつに発芽率が低いということが挙げられる。自然界での発芽率は、10万分の1とも言われる。これは、普通の草花では、葉や根に成長する部分や発芽に必要な栄養分が含まれる胚乳が存在しているが、アツモリソウの種子にはそれらがなく、胚があるのみで、この種子の構造から発芽率が低いと考えられている。そのため、近年、このアツモリソウ属植物の種の保存を図るため、バイオテクノロジー技術を利用して発芽率を向上させて増殖させる研究が行なわれている。尚、国の許可を受けアツモリソウの培養に取り組んでいる研究施設は、現在の所、国内で12カ所ある。 【0003】従来、アツモリソウ属植物の培養方法としては、例えば、無菌播種により、寒天質の培地上に滅菌水を流し込み種子を散らすという方法が知られている。滅菌水としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウムを添加した水溶液等が知られている(例えば、特開平5−148115号公報掲載)。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】ところで、このような従来のアツモリソウ属植物の培養方法にあっては、必ずしも満足できる発芽率を達成できていないという問題があった。本願発明者らは、平成7年から研究に取り組んでおり、その間、100数種類前後の培地を用い、これらの培地上に上記の次亜塩素酸ナトリウムを添加した滅菌水を使用して種子を広げて試験を行なったが、発芽率が延びないことが分かった。また、このアツモリソウ属植物では発芽しても苗に育つ前に植物が褐変死する確率が高いという問題もあった。褐変死は、植物体が黒色に変化したフェノール物質を出して褐変して死んでしまう現象である。従って、従来の培養方法,培地,培養液では発芽率の向上は難しく、また、発芽しても培養中に植物が褐変死することが多く大きな問題となっている。 【0005】本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、発芽率を向上させ、また、発芽後の培養中の褐変死の発生を抑えて生存率を高め一度に大量の苗を生産することができるアツモリソウ属植物の培養方法を提供することを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】このような課題を解決するため本願発明者らは、播種する際、培地上に種子を広げるために使っていた滅菌水の代替用として栄養素を含んだ培養液を用いることを研究し、その開発に取り組み、褐変の発生を抑え、発芽率を向上させることのできる以下のアツモリソウ属植物用培養液,アツモリソウ属植物用培地及びアツモリソウ属植物の培養方法を開発した。 【0007】本発明のアツモリソウ属植物の培養方法は、アツモリソウ属植物を種子から培養するアツモリソウ属植物の培養方法において、選別して使用する種子を得る種子選別工程と、得られた種子を培養液を用いて無菌的に固形培地に播種する無菌播種工程と、播種後、発芽するまで培養する発芽培養工程と、発芽し器官分化したものを培地を替えて継代培養する継代培養工程と、培養苗がある一定の大きさに生育したら低温の環境下にさらす低温処理工程と、低温処理終了後、用土に植え替える鉢上げ工程とを備えた構成とした。これにより、培地に種子を播種した後、プロトコームが形成され発芽率が驚異的に向上する。培地に種子を播種して無菌播種から栄養、温度、湿度等の条件を理想的な状態で生育して苗まで成長させたアツモリソウ属植物を自然の栽培環境に移す鉢上げ前に低温処理が行なわれ、苗が環境の変化に対して丈夫になり順化が順調に行なわれる。 【0008】そして、必要に応じ、上記培養液を培地とは異なる組成の培養液とする構成とした。このことにより、培地の成分による要素だけでなく、培養液の成分の要素も加わるので栄養が豊富となり、発芽を促進させることができる。また、必要に応じ、上記発芽培養工程において、播種した培地を暗黒下において培養する構成とした。アツモリソウ属植物は光に敏感で、光に当てると褐変が発生して褐変死してしまう。また、必要に応じ、上記発芽培養工程において、播種した培地を10〜25℃の環境において培養する構成とした。アツモリソウ属植物の培養において最適な温度であり、25℃より高いと褐変が発生して褐変死してしまう。また、10℃に満たない温度では、生育が遅く、褐変も発生して褐変死してしまう。 【0009】そして、必要に応じ、上記継代培養工程において、培地に培養液を添加する構成とした。種子や発芽直後の植物体及び幼い苗において乾燥に耐えることができず死んでしまう危険性が高いが、培養液を添加することにより乾燥することなく、また、液体のため栄養素を吸収し易く、更には発芽後の培養中の褐変死の発生を抑えて生存率を高めることができる。また、必要に応じ、上記継代培養工程において、培地を10〜25℃の環境において培養する構成とした。アツモリソウ属植物の培養において最適な温度であり、25℃より高いと褐変が発生して褐変死してしまう。また、10℃に満たない温度では、生育が遅く、褐変も発生して褐変死してしまう。 【0010】そして、必要に応じ、上記低温処理工程において、低温処理期間を30〜90日とした構成とした。この場合、望ましくは、上記低温処理工程において、低温処理期間を60日±5日としたことが有効である。アツモリソウ属植物において、培養によって順調に生育した苗を自然環境においても生育させるために低温下に置く春化処理が90日以上必要とされている。しかし、本発明の培養方法では、60日±5日程度の低温処理工程において春化処理と同様の効果が得られる。 【0011】更にまた、必要に応じ、上記低温処理工程において、低温処理温度を0〜10℃とした構成とした。0℃より低温であると、幼苗が凍り、壊死してしまう。また、10℃より温度が高くなると、低温処理の効果が見られず順調に成長しない。この場合、望ましくは、上記低温処理工程において、低温処理温度を3〜5℃としたことが有効である。 【0012】次に、本発明のアツモリソウ属植物の培養方法の研究過程で開発され、この培養方法に有用なアツモリソウ属植物用培養液について挙げる。このアツモリソウ属植物用培養液は、アツモリソウ属植物を種子から培養する際に用いられ水に添加物を添加してなるアツモリソウ属植物用培養液において、当該培養液1000ml中に、添加物として、糖類0〜10gと、木酢液0.1〜2.0mlと、ビタミン類8〜45mgと、植物活性剤0.1〜1.0mlとを含有した構成とした。ここで、植物活性剤は、粗タンパク質0.05〜0.15重量%、粗脂肪0.3〜0.5重量%、無機質として、Na35〜45mg/l、Ca30〜35mg/l、Fe1.5〜2.0mg/l、Mg3.0〜4.0mg/l、Si7.0〜8.0mg/l、N90〜100mg/lを備えている。この培養液を無菌播種に用いると、木酢液,ビタミン類及び植物活性剤の相互作用によって、種子が栄養分を吸収し易くなり、プロトコーム形成の促進が図られ、発芽率が大幅に向上させられる。また、発芽後の継代培養中に添加することにより植物体の褐変の発生が抑えられ、褐変死させることが抑制され、更に植物体が栄養分を良く吸収して順調に生育させられ、生存率が大幅に向上させられる。また、植物活性剤の添加により、栄養バランスが良く、発芽を促進させる効果を発揮させる。 【0013】そして、必要に応じ、上記培養液をpH5.5〜6.0とすることが有効である。pHをアツモリソウの自生地のpHに近い値にすることにより、発芽及び培養の環境を最適にでき、発芽率の向上と生育良好とすることができる。また、必要に応じ、上記添加物として糖類を併用した構成とした。この場合、上記培養液1000ml中に糖類を1〜10g含有したことが有効である。そして、必要に応じ、上記糖類をサッカロースとした。 【0014】そしてまた、必要に応じ、上記ビタミン類を塩酸チアミンとした構成とした。また、上記ビタミン類を、塩酸チアミンを1〜10mg含有して構成したことが有効である。また、必要に応じ、上記ビタミン類をニコチン酸とした構成とした。また、上記ビタミン類を、ニコチン酸を1〜5mg含有して構成したことが有効である。また、必要に応じ、上記ビタミン類を塩酸ピリドキシンとした構成とした。また、上記ビタミン類を、塩酸ピリドキシンを1〜10mg含有して構成したことが有効である。更にまた、必要に応じ、上記ビタミン類をミオイノシトールとした構成とした。また、上記ビタミン類を、ミオイノシトールを5〜20mg含有して構成したことが有効である。ラン科植物の培養ではビタミン類が培養を促進させる効果があることが多く、その選択は重要であるが、上記のビタミンを添加することにより、発芽及び継代培養中、植物体にビタミンがバランス良く有効に作用する。 【0015】次に、本発明のアツモリソウ属植物の培養方法の研究過程で開発され、この培養方法に有用なアツモリソウ属植物用培地について挙げる。このアツモリソウ属植物用培地は、アツモリソウ属植物を種子から培養する際に用いられ、水に添加物を添加した水溶液をゲル状にしたアツモリソウ属植物用培地において、上記水溶液1000ml中に添加物として、窒素,リン及びカリウムを含有する肥料1〜3gと、ぺプトン1〜3gと、糖類10〜30gと、植物活性剤0.2〜1.0mlと、ビタミン類16〜70mgとを含有している。ここで、植物活性剤は、粗タンパク質0.05〜0.15重量%、粗脂肪0.3〜0.5重量%、無機質として、Na35〜45mg/l、Ca30〜35mg/l、Fe1.5〜2.0mg/l、Mg3.0〜4.0mg/l、Si7.0〜8.0mg/l、N90〜100mg/lを備えている。この培地を無菌播種に用いることにより、プロトコーム形成の促進を図るので発芽率を向上させることができる。また、植物活性剤の添加により、栄養バランスが良く、発芽を促進させる効果を発揮させる。また、必要に応じ、上記植物活性剤の替わりにポテトキューブを培地50ml中0.5〜1.5g添加する構成とした。そして、必要に応じ、上記水溶液をpH5.5〜6.0とする構成とした。pHをアツモリソウの自生地のpHに近い値とすることにより、発芽及び培養の環境を最適にでき、発芽率の向上と生育良好とすることができる。 【0016】また、必要に応じ、上記糖類をサッカロースとした構成とした。そして、必要に応じ、上記ビタミン類を塩酸チアミンとした構成とした。また、上記ビタミン類を、塩酸チアミンを5〜20mg含有して構成したことが有効である。そしてまた、必要に応じ、上記ビタミン類をニコチン酸とした構成とした。また、上記ビタミン類を、ニコチン酸を1〜10mg含有して構成したことが有効である。更にまた、必要に応じ、上記ビタミン類を塩酸ピリドキシンとした構成とした。また、上記ビタミン類を、塩酸ピリドキシンを5〜20mg含有して構成したことが有効である。また、必要に応じ、上記ビタミン類をミオイノシトールとした構成とした。また、上記ビタミン類を、ミオイノシトールを5〜20mg含有して構成したことが有効である。ラン科植物の培養ではビタミン類が培養を促進させる効果があることが多く、その選択は重要であるが、上記のビタミンを添加することにより、発芽及び継代培養中、植物体にビタミンがバランス良く有効に作用する。 【0017】そして、必要に応じ、上記ゲル化剤としてゲランガムを用いた構成とした。このことにより、発芽及び発育に効果がある。また、必要に応じ、上記水溶液中に添加物として活性炭を併用した構成とした。活性炭を添加することにより、発芽後の継代培養中において植物体の褐変の発生を抑えるので褐変死させることなく生育させて生存率を高めることができる。この場合、上記活性炭を0.5〜3g含有したことが有効である。 【0018】即ち、本発明の培養方法において用いる培養液及び培地としては、上述の培養液及び培地を用いることが望ましい。この場合、発芽率が80%以上になり、発芽後の生存率も70%以上となり、アツモリソウ属植物の大量増殖が可能となり、鉢上げ後の苗を供給できる。 【0019】 【発明の実施の形態】以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係るアツモリソウ属植物の培養方法を説明する。 【0020】本発明の実施の形態に係るアツモリソウ属植物の培養方法は、図1乃至3に示すように、選別して使用する種子を得る種子選別工程(1)と、得られた種子を無菌的に固形培地に播種する無菌播種工程(2)と、播種後、発芽するまで培養する発芽培養工程(3)と、発芽し器官分化したものを培地を替えて継代培養する継代培養工程(4)と、培養苗がある一定の大きさに生育したら低温の環境下にさらす低温処理工程(5)と、低温処理終了後、用土に植え替える鉢上げ工程(6)からなる。以下に各工程を詳しく説明する。 【0021】(1)種子選別工程先ず、無菌播種に使用する培養に適した優良なアツモリソウの種子を以下のようにして得る。 ■人工交配開花から30日以内、望ましくは開花から1週間以内までの花を選び花粉を採取して交配先となる株の受精先に花粉を受粉させ交配を完了させる。 ■さやの保護人工交配終了後、交配が確認できたら直ちに病害虫による被害から防ぐためさや全体を袋で覆う。また、袋で覆わない場合には、定期的に殺菌剤をさやにかける。 ■さやの採取時期人工交配終了後、40〜120日までのさや、望ましくは、60〜80日のさやを採取し無菌播種の材料として使用する。ここで、アツモリソウでは胚の形成が始まる交配後60日前後の種子が最も発芽率が高く、望ましい。交配後40日に満たないと胚が充分に形成されておらず、交配後80日を過ぎると発芽率が低下する。 ■種子選別採取したさやを殺菌処理した後、さやから種子を取出し、顕微鏡にて種子内部にある胚を観察し選別する。種子は、発芽能力が高いものの特徴である胚の形状が丸みを帯びていて、かつ、胚の色が白又は黄色のものを選ぶ。胚の色が白又は黄色のものは、発芽抑制物質の影響を受けていないため、発芽し易い。逆に胚の形状が細く、米状のものは発芽能力が低い。また、胚の色が茶色又は黒っぽいものは発芽能力が極めて低い。 【0022】(2)無菌播種工程選別した種子を培養液に入れて、無菌的に発芽の際に用いる発芽用培地に播種する。培養液中の種子を培地に流し入れて種子が培地全体に広がるように拡散する。このときフラスコ内の種子は約300〜1000個である。 【0023】ここで用いるアツモリソウ属植物用培養液は、サッカロース0〜10gと、木酢液0.1〜2.0mlと、ビタミン類として塩酸チアミン1〜10mg,ニコチン酸1〜5mg,塩酸ピリドキシン1〜10mg及びミオイノシトール5〜20mgと、植物活性剤0.1〜1.0mlとを用い、これらの添加物に蒸留水を加え、0.1Nの塩酸や0.1Nの水酸化ナトリウムを用いてpH5.5〜6.0に調整した培養液1000mlを得た。その後、オートクレーブで高圧殺菌し、無菌室内で放冷する。植物活性剤は、粗タンパク質0.05〜0.15重量%、粗脂肪0.3〜0.5重量%、無機質として、Na35〜45mg/l、Ca30〜35mg/l、Fe1.5〜2.0mg/l、Mg3.0〜4.0mg/l、Si7.0〜8.0mg/l、N90〜100mg/lを備えている。例えば、植物活性剤としては、市販されている商品であるHB101(株式会社フローラ社製)やメネデール(株式会社メネデール化学研究所社製)が用いられる。 【0024】また、ここで用いるアツモリソウ属植物用培地は、窒素が6.5,リン酸が6及びカリウムが19の比率(重量%)で含有されている肥料(市販されている商品名「ハイポネックス」(株式会社ハイポネックス社製))1〜3gと、ペプトン1〜3gと、サッカロース10〜30gと、ビタミン類として塩酸チアミン5〜20mg,ニコチン酸1〜10mg,塩酸ピリドキシン5〜20mg及びミオイノシトール5〜20mgと、植物活性剤0.1〜1.0mlとを用い、これらの添加物に蒸留水を加え、0.1Nの塩酸や0.1Nの水酸化ナトリウムを用いてpH5.5〜6.0に調整して1000mlの水溶液を得る。そして、この水溶液に、ゲル化剤としてゲランガム3〜4gを加え、その後、攪拌しながら加熱してゲランガムを溶かし、フラスコに約50mlずつ分注し、オートクレーブで高圧殺菌して、無菌室内で放冷して、凝固させる。植物活性剤としては、上述したと同様の成分を有し、例えば、市販されている商品であるHB101(株式会社フローラ社製)やメネデール(株式会社メネデール化学研究所社製)が用いられる。尚、培地に含まれるビタミン類は上述した培養液の2倍の重量となる。 【0025】(3)発芽培養工程無菌播種終了後、室温を15〜20℃に設定し暗黒下に置き培養を開始する。尚、培養を暗黒下で行なうのは、光に当たると種子が褐変して死滅してしまうためである。播種後、約2〜3カ月で、PLB(プロトコーム)が見られ発芽する。その後、器官分化が見られるまで、培養する。 (4)継代培養工程発芽し器官分化したものを培地を替えて継代培養する。ここで用いる培地は、発芽用培地に活性炭を0.5〜3.0g加えた組成の継代培養用培地である。活性炭を加えた継代培養用培地にピンセットを使い移して、培地上に培養液を培地50ml中に約0.5〜1.0ml添加した後、暗黒下に置き、室温を10〜25℃に設定して培養を開始する。継代培養は1〜6カ月行なう。この間、培地の植え替えを上記と同様に1〜5回行ない、その際に培養液も添加する。ここで、培養苗の生育を進めたいとき、茎葉部の発生が見られたらごくわずかな光(光量は、0〜2000lux(ルクス))を照射しても差支えない。 【0026】(5)低温処理工程培養苗が約10mm以上に成長したら、温度を3〜5℃に設定して60日以上、低温の環境に置く。アツモリソウ属植物において、培養によって順調に生育した苗を自然環境においても生育させるために低温下に置く春化処理が90日以上必要とされている。しかし、本発明の培養方法では、60日以上の低温処理工程において90日以上の春化処理と同様の効果が得られる。 (6)鉢上げ工程低温処理終了後、用土に植え替えて鉢上げする。鉢上げは、培地上で生育した培養苗をピンセットを使い取り出し、水又は殺菌剤を加えた水に浸けて苗を充分に湿らせる。次に、予め準備した鉢に用土を加え、その土中に深さ約1cm程度の穴をつくり苗全体が埋没するように(植物体を外に出さないようにする)植えつけて鉢上げする。栽培開始後、土から植物体が伸長し、生育を開始する。 【0027】従って、この実施の形態に係る培養方法によれば、発芽率が著しく高く、また、培養中に褐変の発生を抑えて生育させることができるので生存率も高くアツモリソウ属植物の大量増殖を図ることができる。また、鉢上げ工程を春に行なうように培養を行なうと、アツモリソウの生育サイクルと季節が一致して鉢上げ後もアツモリソウを順調に成長させることができる。 【0028】 【実施例】(A)培養液(「遠野培養液」と命名) 本発明のアツモリソウ属植物の培養方法で用いられるアツモリソウ属植物用培養液は、図4に示すように、サッカロース10gと、木酢液1.0〜2.0mlと、ビタミン類として塩酸チアミン5mg,ニコチン酸2.5mg,塩酸ピリドキシン5mg及びミオイノシトール10mgとを用い、これらの添加物に蒸留水を加えるとともに、植物活性剤としてのHB101(株式会社フローラ社製)を0.1〜1.0ml適宜に滴下し、更に、0.1Nの塩酸や0.1Nの水酸化ナトリウムを用いてpH5.65に調整して、1000mlの培養液を得た。この植物活性剤としてのHB101は、粗タンパク質0.1%、粗脂肪0.4%、無機質として、Na41mg/l、Ca33mg/l、Fe1.8mg/l、Mg3.3mg/l、Si7.4mg/l、N97mg/lを備えている。水素イオン濃度(原液)は、pH4.0である。その後、オートクレーブで高圧殺菌し、無菌室内で放冷した。 【0029】(B)発芽用培地(「遠野培地」と命名) 本発明のアツモリソウ属植物の培養方法で用いられるアツモリソウ属植物用培地は、図5に示すように、肥料として「ハイポネックス」(株式会社ハイポネックス社製)を用いた。ここで、「ハイポネックス」は、窒素が6.5,リン酸が6及びカリウムが19の比率(重量%)で含有されている肥料である。そして、「ハイポネックス」2gと、ペプトン2gと、サッカロース20gと、ビタミン類として塩酸チアミン10mg,ニコチン酸5mg,塩酸ピリドキシン10mg及びミオイノシトール20mgとを用い、これらの添加物に蒸留水を加えるとともに、植物活性剤としてのHB101(株式会社フローラ社製)0.1〜1.0mlを適宜に滴下し、更に、0.1Nの塩酸及び0.1Nの水酸化ナトリウムを用いてpH5.65に調整して、1000mlの水溶液を得た。この状態の水溶液に、ゲル化剤としてゲランガム3〜4gを、攪拌しながら加熱して溶かし、フラスコに約50mlずつ分注し、オートクレーブで高圧殺菌して、無菌室内で放冷して、凝固させる。 (C)継代培養用培地(「遠野培地」と命名) 本発明のアツモリソウ属植物の培養方法で用いられる継代培養用培地は、上記水溶液中に添加物として活性炭を0.5〜3.0g含有させた組成のものを用いた。 【0030】培養方法は、上述した実施の形態に従って行なった。尚、継代培養工程(4)において、継代培養は1〜6カ月で、培地の植え替えを1〜5回行ない、培養苗を約10mm以上に成長させた。そして茎葉部が発生しても光を照射することなく培養した。また、低温処理工程(5)においては、苗を温度を3〜5℃に設定して暗所に60日間、低温の環境に置いた。 【0031】 【実験例】(I−I)発芽用培地の実験先ず、本発明のアツモリソウ属植物の培養方法で用いられるアツモリソウ属植物用培地(B)について比較例とともに以下の実験をした。発芽用培地の比較例として、MS培地,ハイポネックス培地,MT培地,ナドソンB培地,ナドソンC培地,リングマイヤー・スクーグ培地,ホワイト培地,ベーシン・ベント培地,ウインバー培地,Burgeft.H.Eg−1培地,カーチス.J培地,山田培地,バナナ蜂蜜(唐澤)培地,フイツシュ・ソリュブル培地,洋ラン用タマネギ培地,GS培地,京都ソリューション培地,Burgeft N3 F培地,ガンボーグB5培地,ハーバース培地の計20種類の培地を用いた。これらの培地に、アツモリソウの種子を無菌播種した。尚、播種の際に種子の拡散のために用いたのは滅菌水のみであり、他の工程は、上述した培養方法と同様である。結果を図6に示す。この結果、本培地は調整が比較的簡易に行なうことができ、発芽,生育ともに良好であった。 【0032】(I−II)発芽用培地及び継代培養用培地の実験各培地による発芽と生育の違いを調べるため、本発明のアツモリソウ属植物の培養方法で用いられるアツモリソウ属植物用培地(B)及び(C)について比較例とともに以下の実験をした。発芽用培地及び継代培養用培地の比較例として、本培地の成分を1/2にして作成した培地(本培地の濃度の1/2の培地),ハーバース培地,MT培地,MS培地の計4種類の培地にアツモリソウの種子を無菌播種した。尚、播種用培地、継代培養用培地以外は、上述した培養方法と同様に行なった。そして、播種から2カ月後,4カ月後,6カ月後の生育した苗の高さを測定した。結果を図7及び8に示す。本培地(B)及び(C)を順に使用した最終の発芽率は82.6%と最も高く、本培地の成分を1/2にして作成した培地の発芽率は71.0%,ハーバース培地の発芽率は70.5%,MT培地の発芽率は1.4%,MS培地の発芽率は0.6%であった。また、図8において、播種から2カ月後,4カ月後,6カ月後の生育した苗の高さは、苗20〜30個の平均の値である。この結果、本培地で培養したアツモリソウの苗は播種から6カ月後に平均値で50mmとなり、他の培地で培養した苗の平均値より生育したことが分かる。 【0033】(II)培養液の実験各培養液による発芽と生育の違いを調べるため、本発明のアツモリソウ属植物の培養方法で用いられるアツモリソウ属植物用培養液について比較例とともに以下の実験をした。 ■滅菌水とサッカロースにHB101を添加した液,■滅菌水とサッカロースに木酢液を添加した液,■滅菌水とサッカロースにHB101と木酢液を添加した液,■滅菌水とサッカロースに木酢液とビタミンを添加した液の培養液を用いて、培養を行なった。また、■の液においてHB101の添加濃度を変えた液でも調べてみた。尚、培養液以外は、上述した培養方法と同様に行なった。結果を図9に示す。この結果から、滅菌水とサッカロースにHB101と木酢液とビタミンを添加した本培養液が最も褐変の発生を抑え、生育が良好であった。 【0034】(III)培養温度の実験各培養温度による影響を調べるため、本発明の実施例に係る培養方法の発芽培養工程(3)において、培養温度を変えた比較例として以下の実験をした。培養は、10℃,15℃,20℃,25℃,30℃の各温度で行ない、各温度の試験数は50個として、培養中に褐変が発生して発芽しない割合(褐変死率)を調べた。尚、培養温度以外は、上述した培養方法と同様に行なった。結果は図10に示すように、25℃の培養では約70%、30℃の培養では約95%が褐変して死んでしまい、播種後の培養温度は10〜20℃で行なうことが最適であることが分かった。 【0035】(IV−I)低温処理の効果を調べる実験低温処理の効果を調べるため、本発明の実施例に係る培養方法と低温処理を行なわない比較例として以下の実験をした。低温処理を行なわないで20℃の暗所で60日間置いて鉢上げした苗と20℃の明所で60日間置いて鉢上げした苗の生存率を調べた。実施例において低温処理は、苗を3〜5℃の暗所で60日間であるが、この低温処理工程において明所においた場合の苗の鉢上げした後の生存率及びその後の生育も調べた。尚、低温処理以外の条件は上述した培養方法と同様に行なった。低温処理を行なわないで鉢上げしたときの苗の生存率の結果は、図11に示すように、暗所での生存率が7%でかなり低く、明所でも13%で生存率が低い。これに対し、低温処理したものは、暗所、明所ともに80%以上の高い生存率であり、わずかに明所での生存率が高かった。また、低温処理の暗所と明所のその後の生育の結果は、図12に示すように、暗所は明所と比較して生育は劣るが褐変は発生せず、明所では、茎葉部の色が薄くなったが生育は進んだ。しかし明所ではわずかに褐変が発生した。 【0036】(IV−II)低温処理を行なうアツモリソウの成長状態の実験次に、低温処理を行なうアツモリソウの成長状態を調べるために、本発明の実施例に係る培養方法と低温処理を行なわない比較例として以下の実験をした。実施例では、苗が10mm以上に成長した状態で低温処理を行なった。比較例では、発芽直後のプロトコーム,苗が5mm程度に成長した状態で低温処理を行なった後の状態及びその後の生育を調べた。低温処理以外の条件は上述した培養方法と同様に行なった。結果は図12に示すように、プロトコームでは生育が止まり褐変死したものが見られ、5mm程度の植物体では生育に変化が見られず、10mm以上の植物体(苗)では生育が順調に進んだ。 【0037】(IV−III)低温処理を行なう期間の実験次に、低温処理を行なう期間を調べるために、本発明の実施例に係る培養方法と低温処理を行なわない比較例として以下の実験をした。本発明の実施例では60日間低温処理を行なったが、比較例として、15日,30日,60日,90日の各期間、約10mmの植物体(苗)を暗所で3〜5℃で低温処理を行なった。結果は図13に示すように、60日間,90日間の低温処理を行なった苗の生育が良好であったことから、60日以上行なうと低温処理の効果が見られる。 【0038】上記低温処理に関する各実験から、低温処理は10mm以上に生育した苗を3〜5℃で60日以上行なうことが最適であり、明るさは、暗所、明所どちらでも構わないということが分かった。 【0039】尚、上記実施の形態において、培地に植物活性剤を添加したが、植物活性剤を添加することなく、ポテトキューブを用いても良い。 【0040】 【発明の効果】以上説明したように、本発明のアツモリソウ属植物の培養方法によれば、選別して使用する種子を得る種子選別工程と、得られた種子を培養液に混合して無菌的に固形培地に播種する無菌播種工程と、播種後、発芽するまで培養する発芽培養工程と、発芽培養工程において発芽し器官分化したものを培地を替えて継代培養する継代培養工程と、継代培養工程で生育した培養苗を低温の環境下にさらす低温処理工程と、低温処理終了後、用土に植え替える鉢上げ工程とを備えたので、プロトコームを形成させることができ発芽率が驚異的に向上する。 【0041】そして、培養液を培地とは異なる組成の培養液とした場合には、培地の成分による要素だけでなく、培養液の成分の要素も加わり、種子の発芽に刺激を与え発芽を促進させることができる。また、発芽培養工程において、播種した培地を暗黒下において培養する場合には、褐変の発生による種子の死滅を抑えるので、発芽率を向上させることができる。また、発芽培養工程において、播種した培地を10〜25℃の環境において培養する場合には、褐変の発生による種子の死滅を抑えるので、発芽率を向上させることができる。 【0042】そして、継代培養工程において、培地に培養液を添加する場合には、発芽後の培養中の褐変死の発生を抑えて生存率を高めることができる。また、継代培養工程において、培地を10〜25℃の環境において培養する場合には、褐変の発生による死滅を抑えるので、順調に生育させることができる。 【0043】更にまた、低温処理工程において、低温処理温度を0〜10℃とした場合には0℃より低温であると、幼苗が凍り、壊死してしまう。また、10℃より温度が高くなると、順調に成長しない。この場合、望ましくは、低温処理工程において、低温処理温度を3〜5℃としたことが有効である。そして、低温処理工程において、低温処理期間を30〜90日とした場合には、従来90日以上必要とされていた期間を短縮しても、苗が環境の変化に対して丈夫になり順化が順調に行なわれ、生存率が向上する。更には、アツモリソウを大量増殖させることができ、苗を自然環境に供給することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】390025793 【氏名又は名称】岩手県 【識別番号】500118182 【氏名又は名称】遠野市
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| 【出願日】 |
平成12年3月14日(2000.3.14) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100093148 【弁理士】 【氏名又は名称】丸岡 裕作
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| 【公開番号】 |
特開2002−335785(P2002−335785A) |
| 【公開日】 |
平成14年11月26日(2002.11.26) |
| 【出願番号】 |
特願2002−143340(P2002−143340) |
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