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【発明の名称】 病害抵抗性植物及びその作出方法
【発明者】 【氏名】高倉 由光

【氏名】井上 康宏

【氏名】桑田 茂

【氏名】堤 史樹

【氏名】石田 祐二

【要約】 【課題】適切な防御反応を引き起こすように形質転換された病害抵抗性を有する植物、及びその作出方法を提供すること。

【解決手段】構成的、誘導的、器官特異的又は時期特異的に遺伝子を発現させることができるプロモーター及び該プロモーターにより制御されるエリシタータンパク質をコードする遺伝子を含む発現カセットを用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 構成的、誘導的、器官特異的又は時期特異的に遺伝子を発現させることができるプロモーター及び該プロモーターにより制御されるエリシタータンパク質をコードする遺伝子を含む発現カセットを用いて形質転換され、防御反応を誘導するために有効な量のエリシタータンパク質を、構成的、誘導的、器官特異的又は時期特異的に発現しうる、病害抵抗性形質転換植物。
【請求項2】 構成的、誘導的、器官特異的又は時期特異的に遺伝子を発現させることができるプロモーター及び該プロモーターにより制御されるエリシタータンパク質をコードする遺伝子が、ゲノムに組み込まれている、請求項1に記載された病害抵抗性形質転換植物。
【請求項3】 エリシタータンパク質が、病害微生物に対する過敏感反応を誘導する活性を有するタンパク質である、請求項1又は2に記載された病害抵抗性形質転換植物。
【請求項4】 過敏感反応を誘導する活性を有するタンパク質が、次のいずれかである、請求項3に記載された病害抵抗性形質転換植物:(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列表の配列番号2において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質;又は(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質。
【請求項5】 エリシタータンパク質をコードする遺伝子が、次のいずれかのDNAからなる遺伝子である、請求項2に記載された病害抵抗性形質転換植物:(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA;
(b)配列表の配列番号1において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA;
(c)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイズリダイズし、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA;又は(d)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAと少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA。
【請求項6】 次の工程を含む、防御反応を誘導するために有効な量のエリシタータンパク質を、構成的、誘導的、器官特異的又は時期特異的に発現しうる病害抵抗性形質転換植物を作出する方法:(a)構成的、誘導的、器官特異的又は時期特異的に遺伝子を発現させることができるプロモーター及び該プロモーターにより制御されるエリシタータンパク質をコードする遺伝子を含む発現カセットを用いて、組換え植物細胞を得る工程;並びに(b)該植物細胞を植物体に再生させる工程。
【請求項7】 防御反応を誘導するために有効な量のエリシタータンパク質を、構成的、誘導的、器官特異的又は時期特異的に発現しうる病害抵抗性形質転換植物を作出するための、少なくとも次のものを含む発現カセット:(a)構成的、誘導的、器官特異的又は時期特異的に遺伝子を発現させることができるプロモーター;及び(b)該プロモーターにより制御されるエリシタータンパク質をコードする遺伝子。
【請求項8】 エリシタータンパク質が、病害微生物に対する過敏感反応を誘導する活性を有するタンパク質である、請求項7に記載された発現カセット。
【請求項9】 過敏感反応を誘導する活性を有するタンパク質が、次のいずれかである、請求項8に記載された発現カセット:(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列表の配列番号2において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質;又は(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質。
【請求項10】 エリシタータンパク質をコードする遺伝子が、次のいずれかのDNAからなる遺伝子である、請求項7に記載された発現カセット:(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA;
(b)配列表の配列番号1において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA;
(c)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイズリダイズし、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA;又は(d)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAと少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA。
【請求項11】 全身獲得性の病害抵抗性形質転換植物を作出するための、請求項7〜10のいずれか1項に記載された発現カセット。
【請求項12】 防御反応を誘導するために有効な量のエリシタータンパク質が、病害微生物感染時特異的に発現される、請求項7〜11のいずれか1項に記載された発現カセット。
【請求項13】 構成的プロモーター又は器官特異的若しくは時期特異的プロモーターを含む、請求項12に記載された発現カセット。
【請求項14】 請求項7〜13のいずれか1項に記載された発現カセットを含む、組換えベクター。
【請求項15】 次のいずれかのDNAからなる遺伝子:(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA;
(b)配列表の配列番号1において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質をコードするDNA;
(c)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイズリダイズし、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA;又は(d)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAと少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA。
【請求項16】 次のいずれかのタンパク質をコードする遺伝子:(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列表の配列番号2において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質;又は(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも97%以上の相同性を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質。
【請求項17】 次の何れかのタンパク質:(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;
(b)配列表の配列番号2において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質;又は(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも97%以上の相同性を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質。
【請求項18】 構成的又は誘導的プロモーターを含む発現カセットを用いて形質転換され、うどんこ病耐性形質転換タバコである、請求項1〜5のいずれか1項に記載された病害抵抗性形質転換植物。
【請求項19】 構成的プロモーターを含む発現カセットを用いて形質転換され、いもち病耐性形質転換イネである、請求項1〜5のいずれか1項に記載された病害抵抗性形質転換植物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、病原体に抵抗性の植物を作出する方法、病原体に抵抗性の植物を作出する遺伝子発現カセット及びそれらにより作出された病害抵抗性形質転換植物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】植物は、動物に見られるような免疫機構を保有していないが、植物に特有の機構で自らを病原体から防御している。高等植物の過敏感反応(hypersensitiveresponse, HR)は、感染部位の植物細胞が速やかに自殺し病原体を局所的に封じ込めるという、病原体侵入に対する植物側の動的な抵抗性反応である。この反応は、非親和的な宿主―病原体相互作用、及び非宿主−病原体相互作用の結果として生じることが知られている。またここに見られる細胞の自殺は局所的なプログラム細胞死として捉えることが出来る(Dangl et al.:Plant Cell 8:1793-1807(1996))。HRを引き起こす機構に加え、活性酸素種の生成、細胞壁の強化、ファイトアレキシンの生産、PRタンパク質などの防御関連タンパク質の生合成といった、他の防御反応も誘導される(Hammond-Kosack and Jones:Plant Cell 8:1773-1791(1996))。この様な局所的な防御応答に加えて、多くの場合、植物の非感染部分にもPRタンパク質の蓄積などの防御反応が拡大し、結果として植物全体が抵抗性になる。これは全身獲得抵抗性(systemic acquiredresistance, SAR)と呼ばれ、数週間又はそれ以上持続し、植物全体が二次感染に対して抵抗性となる(Sticher et al.:Annu Rev Phytopathol 35:235-270(1997))。
【0003】以上のような高度に組織化された防御反応のスイッチをオンにする植物側の最初の反応は、侵入病原体から直接、あるいは間接的に生成される「エリシター」と呼ばれる分子の認識である。そしてその後の急激な活性酸素種の生成や、可逆的なタンパク質リン酸化といった複雑なシグナルカスケードが防御応答の初期反応として重要であると考えられている(Yang et al.:Genes Dev 11:1621-1639(1997))。エリシターの種類は多岐に渡っており、多くの菌類の細胞壁成分であるキチン・キトサンやグルカンの分解産物であるオリゴ糖類、あるいは植物の細胞壁由来のオリゴガラクツロン酸などの、いわゆる非特異的エリシターと、AVR9など病原菌側の非病原性遺伝子産物(Avr遺伝子産物)などの品種特異的なエリシター、あるいはエリシチンなどその中間の特異性をもつタイプのエリシターがある(Boller:Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol 46:189-214(1995))。
【0004】Harpinは、非宿主植物に過敏感細胞死を誘導する細菌由来のタンパク質性エリシターである(Wei et al.:Science 257:85-88(1992)、He et al.:Cell 73:1255-1266(1993))。Harpin(harpinEa)は、セイヨウナシやリンゴの病原菌であるErwinia amylovora Ea321株、及びそのhrp遺伝子クラスターを含むコスミドで形質転換された大腸菌から、細菌由来の最初のHR誘導性タンパク質として精製され、それをコードするhrpN遺伝子もクローニングされた(Weiet al.:Science 257:85-88(1992))。その後マメの病原菌であるPseudomonas syringae pv. syringae 61株からも、大腸菌発現ライブラリーのタバコ葉にHRを誘導する活性を指標としたスクリーニングにより、hrpZ遺伝子にコードされたharpinpssが同定、特徴づけされた(He et al.:Cell 73:1255-1266(1993)、及び特表平8-510127)。これら2つのharpinの相同性は低く、22アミノ酸に比較的高い相同性が見られるにすぎない。またharpinの病原性における役割は分かっていない。これらの他に第3のタンパクとしてトマトの病原菌であるPseudomonas solanacearum GMI1000株から、非宿主であるタバコにHRを誘導するタンパク質としてPopAタンパク(PopAにコードされている)が同定されている(Arlat et al.:EMBO J 13:543-553(1994))。PopA遺伝子はhrpNやhrpZとは異なりhrpクラスターの外側に位置しているが、hrpレギュロンの制御下にある点が一致している。以上3つのタンパク質は、グリシンリッチで、熱に安定なタンパク質で、非宿主であるタバコにHRを誘導し、少なくともin vitroでHrpタンパク質依存的に細胞外に分泌される。なおこれらの他に、同様な機能を有するタンパクとしてPseudomonas syringae pv. tomato DC3000株からHrpWタンパク(Charkowski et al.:J Bacteriol 180:5211-5217(1998))が、またharpinpssホモログとして、HrpZpst、HrpZpsgタンパク質(Prestonet al.:Mol Plant-Microbe Interact 8:717-732(1995))が、harpinEaホモログとしてharpinEch(Bauer et al.:Mol Plant-Microbe Interact8:484-491(1995))やHrpNEccタンパク(Cui et al.:Mol Plant-MicrobeInteract 9:565-573(1996))がそれぞれ報告されている。
【0005】Harpinによる局部壊死斑形成は、harpinの細胞毒性によるいわゆるnecrosisではなく、植物側の積極的な応答の結果としての細胞死であることが各種代謝阻害剤研究から明らかとなっており(He et al.:Mol Plant-Microbe Interact7:289-292(1994)、及びHe et al.:Cell 73:1255-1266(1993))、この過敏感細胞死は、プログラム細胞死の一つであると考えられている(Desikan et al.:Biochem J 330:115-120(1998))。Harpinpssをアラビドプシス培養細胞に加えると、病害抵抗性反応の初期反応として重要なオキシダティブバーストを担うと考えられているNADPH オキシダーゼの一構成要素であるgp91-phoxのホモログ(J Exp Bot 49:1767-1771(1998))や、mitogen-activated protein (MAP) キナーゼ(Desikan et al.:Planta 210:97-103(1999))を誘導する。さらにharpinは植物に全身獲得抵抗性(SAR)を付与することができる。例えば、harpinEaを植物細胞に人工的に注入することにより、サリチル酸やNIM遺伝子を介するSARをアラビドプシス植物に誘導することができ(Dong et al.:The Plant J. 20:207-215(1999))、またharpinpssは、キュウリにSARを誘導し、菌類、ウイルス、細菌に対し広いスペクトラムの抵抗性を付与することができる(Strobel et al.:Plant J 9:431-439(1996))。
【0006】このように、これまで精製harpinを植物に人工的に注入又は噴霧し、過敏感細胞死や、獲得抵抗性反応の誘導を解析した報告例は存在する(特表平11-506938、Strobel et al.:Plant J 9:431-439(1996)、及びDong et al.:The Plant J. 20:207-215(1999))。しかしながら、harpin等のエリシタータンパク質をコードする遺伝子を植物に導入し、形質転換植物を作出し、そしてそれを解析した例は未だ報告されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】harpin等のエリシタータンパク質をコードする遺伝子を導入されると、植物は、病原の存在しない通常の状態であっても一定量以上のエリシタータンパク質を発現してしまい、あるいは、病害に侵された器官以外の器官で一定量以上のエリシタータンパク質を発現してしまい、結果、意図しない種々の反応が生じて正常に生育できないと予想された。本発明は、適切な防御反応を引き起こすように形質転換された病害抵抗性を有する植物、及びその作出方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意研究を行った結果、Pseudomonas syringae pv syringae LOB2-1株のhrpZ遺伝子を導入した形質転換タバコが、うどんこ病菌(Erysiphe cichoracearum)接種に対して過敏感反応様の局部壊死斑を生じ抵抗性になることを発見し、本発明を完成した。驚くべきことに、細胞死を誘導するharpinを、全身の細胞で発現するような構成的プロモーター(カリフラワーモザイクウイルス35SRNA遺伝子プロモーター)を用いて発現させても、植物は正常に生育した。しかも過敏感細胞死様の反応は病原菌の接種以降にのみ誘導された。さらに本発明者らは、同hrpZ遺伝子を導入した形質転換イネがイネいもち病(Magnaporthe grisea)に抵抗性になることを見出し、本アプローチの汎用性を示した。
【0009】本発明は、構成的、誘導的、器官特異的又は時期特異的に遺伝子を発現させることができるプロモーター及び該プロモーターにより制御されるエリシタータンパク質をコードする遺伝子を含む発現カセットを用いて形質転換され、防御反応を誘導するために有効な量のエリシタータンパク質を、構成的、誘導的、器官特異的又は時期特異的に発現しうる、病害抵抗性形質転換植物を提供する。
【0010】本発明はまた、防御反応を誘導するために有効な量のエリシタータンパク質を、構成的、誘導的、器官特異的又は時期特異的に発現しうる、病害抵抗性形質転換植物の作出方法をも提供する。この方法は:(a)構成的、誘導的、器官特異的又は時期特異的に遺伝子を発現させることができるプロモーター及び該プロモーターにより制御されるエリシタータンパク質をコードする遺伝子を含む発現カセットを用いて、組換え植物細胞を得る工程;並びに(b)該植物細胞を植物体に再生させる工程を含む。
【0011】本発明はまた、病害抵抗性形質転換植物の作出のために用いうる、発現カセットをも提供する。この発現カセットは少なくとも:(a)構成的、誘導的、器官特異的又は時期特異的に遺伝子を発現させることができるプロモーター;及び(b)該プロモーターにより制御されるエリシタータンパク質をコードする遺伝子を含む。
【0012】エリシターとは、植物に防御反応を引き起こさせる物質の総称であり、タンパク質の他、重金属イオン、病原菌や植物の細胞壁成分等を含む。本明細書でエリシターというときは、特別な場合の除き、たんぱく質性のエリシターを意味する。
【0013】本発明でいうエリシタータンパク質は、形質転換しようとする植物において適切な防御反応を引き起こすことができるタンパク質であればよく、好ましくは病害微生物に対する過敏感反応を誘導する活性を有するタンパク質である。これにはharpin及びharpinと同様の機能を有するharpin様タンパク質が含まれる。harpinは、タイプIII分泌機構によりhrp遺伝子依存的に植物へ注入されることが想定されているタンパク質であり、例えば、harpinpss(He et al.:Cell 73:1255-1266(1993)、及び特表平8-510127)以外にも、harpinEa(Wei et al.:Science 257:85-88(1992)、及び特表平11-506938)、PopA(Arlat et al.:EMBO J 13:543-553(1994))、hrpWタンパク質(Charkowski et al.:J Bacteriol 180:5211-5217(1998))が含まれる。そして、過敏感反応を誘導する活性を有するタンパク質は、例えば(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;(b)配列表の配列番号2において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質;又は(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%以上(好ましくは、80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは97%以上)の相同性を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質であってもよい。配列番号2に記載されたアミノ酸配列を有するタンパク質は新規である。したがって本発明は、次のいずれかのタンパク質:(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質;(b)配列表の配列番号2において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質;又は(c)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも97%以上の相同性を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質をも提供する(ただし、本発明の範囲からは、公知のタンパク質自体は除かれる)。
【0014】本明細書でアミノ酸配列について「相同」というときは、比較される配列間において、各々の配列を構成するアミノ酸残基の一致の程度の意味で用いている。このとき、ギャップの存在及びアミノ酸の性質が考慮される(Wilbur, Proc,Natl. Acad. Sci. USA 80:726-730(1983)等)。相同性の計算には、市販のソフトであるBLAST(Altschul:J. Mol. Biol. 215:403-410(1990))、FASTA(Peasron:Methods in Enzymology 183:63-69(1990))等を用いることができる。
【0015】また本明細書でアミノ酸配列について「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加又は挿入」というときは、部位特異的突然変異誘発法等の周知の技術的方法により、又は天然に生じうる程度の数のアミノ酸が置換等されていることを意味する。数個は、例えば10個以下、好ましくは3〜5個以下である。
【0016】本発明の発現カセットに用いられるエリシタータンパク質をコードする遺伝子は、当業者によく知られた方法により容易に単離することができる。エリシタータンパク質をコードする遺伝子は、例えば(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA;(b)配列表の配列番号1において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA;(c)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイズリダイズし、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA;又は(d)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAと少なくとも50%以上(好ましくは、80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは97%以上)の相同性を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNAであってもよい。配列番号1に記載された塩基配列を有するDNAは新規である。したがって本発明は、次のいずれかのDNAからなる遺伝子:(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA;(b)配列表の配列番号1において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加若しくは挿入された塩基配列を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質をコードするDNA;(c)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイズリダイズし、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNA;又は(d)配列表の配列番号1に記載の塩基配列を有するDNAと少なくとも50%以上の相同性を有し、かつ過敏感反応誘導活性を有するタンパク質をコードする塩基配列からなるDNAをも提供する(ただし、本発明の範囲からは、Pseudomonas syringae pv. syringae61株のhrpZ遺伝子等の公知の遺伝子自体は除かれる)。なお、塩基配列に関する相同性の計算には、市販のソフトを用いることができる。
【0017】本明細書で塩基配列について「1若しくは数個の塩基が欠失、置換、付加又は挿入」というときは、部位特異的突然変異誘発法等の周知の技術的方法により、又は天然に生じうる程度の数の塩基が置換等されていることを意味する。数個は、例えば10個以下、好ましくは3〜5個以下である。本明細書でいうストリンジェントな条件とは、温度約40℃以上、塩濃度約6×SSC(1×SSC=15mMクエン酸ナトリウム緩衝液;pH7.0;0.15M塩化ナトリウム;0.1%SDS)、好ましくは約50℃以上、更に好ましくは約65℃以上でのハイブリダイズ条件をいう。
【0018】本発明に用いられるプロモーターは、形質転換すべき植物においてエリシタータンパク質をコードする遺伝子のプロモーターとして機能することのできるものであればよい。本発明には、構成的、誘導的、器官特異的又は時期特異的に遺伝子を発現させるプロモーターを用いることができる。
【0019】構成的に遺伝子を発現させるプロモーター(「構成的プロモーター」ということもある。)とは、遺伝子の転写に関し、器官特異性及び/又は時期特異性が高くないものをいう。構成的プロモーターには、例えば、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター、ユビキチンプロモーター(Cornejo et al.:PlantMol Biol 23:567-581(1993))、アクチンプロモーター(McElroy et al.:Plant Cell 2:163-171(1990))、アルファチューブリンプロモーター(Carpenter et al.:Plant Mol Biol 21:937-942(1993))、Scプロモーター(Schenk et al.:Plant Mol Biol 39:1221-1230(1999))等が含まれる。形質転換された植物において、エリシタータンパク質を構成的に発現させるような発現カセットは、例えば構成的プロモーターとして知られる既知のプロモーターを含むものである。
【0020】誘導的に遺伝子を発現させるプロモーター(「誘導的プロモーター」ということもある。)とは、光、病害、障害、エリシターとの接触等の物理的又は化学的刺激により転写誘導のかかるプロモーターをいう。誘導的プロモーターには、例えば、エンドウPALプロモーター、Prp1プロモーター(特表平10-500312)、hsr203Jプロモーター(Pontier et al.:Plant J5:507-521(1994))、EAS4プロモーター(Yin et al.:Plant Physiol 115:437-451(1997))、PR1b1プロモーター(Tornero et al.:Mol Plant Microbe Interact 10:624-634(1997))、tap1プロモーター(Mohan et al.:Plant Mol Biol 22:475-490(1993))、AoPR1プロモーター(Warner et al.:Plant J 3:191-201(1993))等が含まれる。形質転換された植物において、エリシタータンパク質を誘導的に発現させうる発現カセットは、例えば、誘導的プロモーターとして知られる既知のプロモーターを含むものである。
【0021】器官特異的に遺伝子を発現させるプロモーター(「器官特異的プロモーター」ということもある。)とは、遺伝子の転写に、葉、根、茎、花、雄蕊、雌蘂等の器官的な特異性を与えるものをいう。器官特異的プロモーターには、例えば、PPDK(Matsuoka et al.:Proc Natl Acad Sci USA 90:9586-9590(1993))やPEPC(Yanagisawa and Izui:J Biochem 106:982-987(1989)、及びMatsuoka et al.:Plant J 6:311-319(1994))、Rubisco(Matsuokaet al.:Plant J 6:311-319(1994))といった光合成関連遺伝子の緑色器官で遺伝子を高発現させるようなプロモーター等が含まれる。形質転換された植物において、エリシタータンパク質を器官特異的に発現させる発現カセットは、例えば器官特異的プロモーターとして知られる既知のプロモーターを含むものである。
【0022】時期特異的に遺伝子を発現させるプロモーター(「時期特異的プロモーター」ということもある。)とは、転写に生育初期、中期、後期など時期的な特異性を与えるものをいう。時期特異的プロモーターには、例えば、SAG12プロモーター(Gan and Amasino:Science 270:1986-1988(1985))といった老化葉で特異的に発現するプロモーターなどが含まれる。
【0023】本発明の発現カセットの構成要素となる各DNA断片をサブクローニングするためのベクターは、簡便には当業界において入手可能な組換え用ベクター(プラスミドDNA)に所望の遺伝子を常法により連結することによって調製することができる。用いられるベクターとしては、具体的には、大腸菌由来のプラスミドとして、例えば、pBluescript、pUC18、pUC19、pBR322などが例示されるがこれらに限定されない。
【0024】本発明の発現カセットを目的とする植物に導入するためのベクターは、植物形質転換用ベクターが有用である。植物用ベクターとしては、植物細胞中で当該遺伝子を発現し、当該タンパク質を生産する能力を有するものであれば特に限定されないが、例えば、pBI221、pBI121(以上Clontech社製)、及びこれらから派生したベクターが挙げられる。また、特に単子葉植物の形質転換には、pIG121Hm、pTOK233(以上Hieiら,Plant J.,6,271-282(1994))、pSB424(Komariら, Plant J.,10,165-174(1996))、スーパーバイナリーベクターpSB21及びこれらから派生したベクターなどが例示される。これらの公知のベクターへ、当業者には周知の手順を用いてエリシタータンパク質をコードする遺伝子を導入する(必要であれば、プロモーター領域を組み換える)ことにより、本発明の発現カセットを有する組換えベクターを構築することができる。例えば、スーパーバイナリ―ベクターpSB21にhrpZ遺伝子を組み込むことにより、構成的プロモーターとhrpZ遺伝子とを含む発現カセットを有する組換えベクターを構築することができる。この組換えベクターから、既存のプロモーターを除去し、誘導的プロモーターを組み込むことにより、誘導的プロモーターとhrpZ遺伝子とを含む発現カセットを有する組換えベクターを構築することができる。
【0025】植物形質転換用ベクターは、少なくともプロモーター、翻訳開始コドン、所望の遺伝子(本願発明のDNA配列又はその一部)、翻訳終始コドン及びターミネーターを含んでいることが好ましい。また、シグナルペプチドをコードするDNA、エンハンサー配列、所望の遺伝子の5’側及び3’側の非翻訳領域、選抜マーカー領域などを適宜含んでいてもよい。マーカー遺伝子の例としては、テトラサイクリン、アンピシリン、又はカナマイシン若しくはネオマイシン、ハイグロマイシン又はスペクチノマイシン等の抗生物質耐性遺伝子等の他、ルシフェラーゼ遺伝子、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ(GUS)、グリーンフルオレッセンスプロテイン(GFP)、β−ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)等が挙げられる。
【0026】植物への遺伝子導入法としては、アグロバクテリウムを用いる方法(Horschet al.,Science,227,129(1985)、Hiei et al.,Plant J.,6,271-282(1994))、リーフディスク法(Horsch et al.,Science,227,1229-1231(1985))、エレクトロポレーション法(Fromm et al.,Nature,319,791(1986))、PEG法(Paszkowski et al.,EMBO J.,3,2717(1984))、マイクロインジェクション法(Crossway et al.,Mol.Gen.Genet.,202,179(1986))、微小物衝突法(McCabe et al.,Bio/Technology,6,923(1988))などが挙げられるが、所望の植物に遺伝子を導入する方法であれば特に限定されない。これらの導入法の中で好ましくは、ベクターを接合操作等を利用してアグロバクテリウム内に移し、このアグロバクテリウムを植物に感染させることによる。感染させるための方法も、当業者には周知である。例えば、植物体の一部を傷つけ、そこに細菌を感染させる方法、植物体の胚組織(未熟胚を含む。)に細菌を感染させる方法、カルスに感染させる方法、プロトプラストと細菌を共培養する方法、又は葉組織の小片を細菌とともに培養する方法(リーフディスク法)がある。
【0027】得られた形質転換細胞は、適当なマーカーを指標とするか、又は所望の形質を発現しているか否かによって他の細胞から選択することができる。形質転換細胞をさらに従来技術を利用して分化させることにより、目的の形質転換植物体とすることができる。
【0028】得られた形質転換体の解析は、当業者に周知の種々の方法を用いて行うことができる。例えば、導入した遺伝子のDNA配列を基にオリゴヌクレオチドプライマーを合成し、これを用いたPCRにより形質転換植物の染色体DNAを解析することができる。また、導入した遺伝子に対応するmRNAや、タンパク質の発現の有無により解析することができる。さらには、植物体の外観(例えば、局部壊死斑を生じうるタンパク質をコードする遺伝子を導入した場合は、局部壊死斑の有無、又は局部壊死斑の大きさ、数等)、病害抵抗性(例えは、病原菌と接触させた場合の抵抗性の有無、又その程度)等によっても解析することができる。
【0029】本発明の形質転換植物においては、防御反応を誘導するために有効な量のエリシタータンパク質を、構成的、誘導的、器官特異的又は時期特異的に発現しうる。防御反応を誘導するために有効な量とは、発現したエリシタータンパク質が、植物に、少なくとも局所的に防御関連反応(例えば、過敏感細胞死(局所壊死)の誘導)を引き起こさせることができる量をいう。好ましくは、局所のみならず、防御反応が全身に拡大し、結果として植物全体が抵抗性(全身獲得抵抗性)になる量である。また、好ましくは、局部壊死斑が非常に大きくなった結果、壊死斑の生じた局所組織が枯死してしまう量には満たない量である。
【0030】また、本発明の形質転換植物においては、エリシタータンパク質は、通常は発現していないか発現していたとしても少量であるため植物の生育を著しく妨げることはなく、病原菌の侵入等の刺激があったときに、防御反応を誘導するために有効な量で発現されることが好ましい。例えば、エリシタータンパク質としてharpinpssを用いた場合に、通常、harpinpssは発現していないか発現していたとしてもその器官が枯死するほどには局部壊死斑が生じない程度であり、病原菌が侵入したときに過敏感反応を生じる量で発現されるのが好ましい。さらには、病原菌が侵入し、harpinpssが蓄積しても、局部壊死斑は肉眼ではほとんど観察されないが、全身的に抵抗性となる量で発現されるのが好ましい。
【0031】このような適切な防御反応を生じさせるためには、例えば、誘導的に遺伝子を発現させることができるプロモーターを用いることである。したがって、本発明の一つの実施の形態においては、誘導的プロモーターと、harpin遺伝子とが組み合わせられる。
【0032】また適切な防御反応は、誘導的プロモーターを用いた場合のみならず、構成的プロモーターを用いた場合であっても達成可能である。したがって、本発明の他の形態においては、構成的プロモーターとharpinとが組み合わせられる。このような場合、適切な防御反応が生じる機序としては、例えば、harpinpss等のエリシタータンパク質は、植物細胞の細胞膜外側又は細胞壁で認識されているために、細胞質に蓄積しているharpinpss等は、菌の侵入による細胞の崩壊が起こるまで植物細胞に認識されず、結果として病原菌接種の後に過敏感反応が生ずる、あるいはharpinpss等のエリシター活性には病原菌接種に起因する他の何らかの因子が介在すると推論される。
【0033】本発明の形質転換植物は、構成的又は誘導的プロモーター、該プロモーターにより制御されるharpinpss等のエリシタータンパク質をコードする遺伝子を含む発現カセットを用いて形質転換された、うどんこ病耐性形質転換タバコ、あるいは構成的プロモーター、該プロモーターにより制御されるharpinpss等のエリシタータンパク質をコードする遺伝子を含む発現カセットを用いて形質転換された、いもち病耐性形質転換イネを含む。
【0034】本発明は、後述の実施例に記載されているタバコ、イネ以外の植物にも適用可能であると考えられる。このような植物として、農作物ではコムギ、オオムギ、ライムギ、トウモロコシ、サトウキビ、ソルガム、ワタ、ヒマワリ、ピーナッツ、トマト、ジャガイモ、サツマイモ、エンドウ、ダイズ、アズキ、レタス、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、カブ、ダイコン、ホウレンソウ、タマネギ、ニンジン、ニンニク、ナス、カボチャ、キュウリ、リンゴ、ナシ、メロン、イチゴ、ブドウなどが、観賞用植物としてはシロイヌナズナ、ペチュニア、キク、カーネーション、セントポーリア、ヒャクニチソウなどが挙げられる。また、本明細書で「形質転換植物」というときは、本発明の方法により組換え植物細胞を得て、該植物細胞を植物体に再生させることにより得た形質転換植物(T0世代)のみならず、該形質転換植物より得られた後代(T1世代等)の植物をも、その病害抵抗性の形質が維持されている限り含む。また、本明細書で「植物」というときは、特に明記した場合を除き、植物体(個体)の他、種子(発芽種子、未熟種子を含む)、器官又はその部分(葉、根、茎、花、雄蕊、雌蘂、それらの片を含む)、植物培養細胞、カルス、プロトプラストを含む。
【0035】次の実施例において解析した病害はタバコうどんこ病とイネいもち病であるが、タバコの他の病害として野火病、立枯れ病、TMVなどが、イネの他の病害として紋枯病、白葉枯病などが挙げられ、本発明の病害抵抗性植物の作出方法によりこれら病害にも抵抗性を付与できる可能性は充分にあると考えられる。
【0036】
【実施例】実施例1.HrpZ遺伝子のクローニング既報のPseudomonas syringae pv. syringae61株のhrpZ遺伝子(He et al.:Cell 73:1255-1266(1993)、及び特表平8-510127)の塩基配列を参考に、そのオープンリーディングフレームを増幅させるための一組のプライマーHrp1:AAA ATC TAG AAT GCA GAG TCT CAG TCT TAAHrp2:AAA AGT CGA CTC AGG CTG CAG CCT GAT TGCを合成した。これらのプライマーを用いて、ライラック枝枯細菌病菌(Pseudomonas syringae pv. syringae LOB2-1)由来のhrpクラスターを含むコスミドクローン(Inoue and Takikawa:J. Gen. Plant Pathol.66:238-241(2000))のDNAを鋳型として、PCRを行った。PCRは反応溶液の量を20μlとし、プライマー各0.5μM、dNTP 0.2mM、1(ExTaqバッファー、ExTaq DNAポリメラーゼ(宝酒造社)1U、反応条件は95℃で5分を1回行った後、94℃で30秒、60℃で30秒、72℃で2分を30回、72℃で10分間を1回行った。PCR産物を、Takara ligation kit(宝酒造)を用いてベクターpCR2.1(invitrogen社)にライゲーションし、大腸菌TB1株に形質転換した。PCR産物の全塩基配列を決定した結果、全長1029bpから成り、既報のhrpZ遺伝子よりも3塩基(1アミノ酸分)長く、DNAで96.7%、アミノ酸で96.5%の相同性を示した。両者の塩基配列が全く同一にならないのはpathovar内の変異であると考えられた。クローニングしたhrpZ遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号1に、そこから得られるアミノ酸配列を配列番号2にそれぞれ示す。
【0037】実施例2.大腸菌内発現と抗体の作成pCR2.1にhrpZ遺伝子が組み込まれた上記プラスミドを制限酵素BamHI、SalIで消化、0.7%アガロースで電気泳動して約1.1kbの断片を切り出した。この断片を同じ酵素で消化した発現ベクターpQE31(キアゲン社)とライゲーションさせ、大腸菌M15株に形質転換した。こうして得られた大腸菌をLB培地中で1mMのIPTG存在下で37℃で培養を行うと、harpinpssが不溶性画分に蓄積する。ところがこのタンパク質はニッケルレジンの担体に吸着性が悪かったことからharpinpssの精製は次の手順で行った。HrpZ遺伝子がpQE31に組み込まれたベクターを有する大腸菌M15を100mg/lのアンピシリン、25mg/lのカナマイシンを含む2mlのLB培地で37℃で一晩培養し、更に250mlのLB培地に移して3時間程度培養後、1mMのIPTGを加えて更に37℃で4時間培養を行った。遠心分離で集菌し、不溶性画分溶出バッファー(8M尿素、0.1Mリン酸二水素ナトリウム、0.01M Tris、pH 8.0)4mlで溶解し、遠心分離で上清を得、0.1%のSDSを含む12.5%のアクリルアミドゲルで電気泳動後、クーマシーブリリアントブルーで染色し、40kDa付近に現れるバンドを切り出した。ゲルを細片化し、溶出バッファー(1% SDS、0.02MTris-HCl、pH 8.0)をゲルの容積の10倍量加え3日間振盪した。上清を分画分子量6-8,000の透析膜に移し、外液を80%アセトンとして透析を4時間で1回、一晩1回行った。透析チューブ内のものをすべてエッペンドルフチューブに移し、遠心して上清を捨て、ペレットをスピードバックで乾燥させて精製されたharpinpssを得た。精製したharpinpss 3mg相当をサワディ・テクノロジー社に送付し、抗体作成(ウサギ抗harpinpss血清)を依頼した。
【0038】実施例3.遺伝子構築と植物の形質転換pCR2.1に組み込まれたhrpZ遺伝子を制限酵素XbaI、SacI(宝酒造社)消化によってベクターから切り出した。一方スーパーバイナリ―ベクターpSB21(35S−GUS−NOS,Komari et al.:Plant J.10:165-174(1996))を同酵素で消化、GUS遺伝子を除去し、ここへhrpZ遺伝子を組み込んだ。以上の手順で、コンストラクト35S-hrpZ(35Sプロモーター-hrpZ遺伝子-NOSターミネーター)を構築した。カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターは構成的な高発現プロモーターであり、本コンストラクトで形質転換されたイネ、タバコは全身にhrpZ遺伝子産物であるharpinpssを蓄積することが予想される。
【0039】pSB21を制限酵素HindIII、XbaI消化し35Sプロモーターを除去し、ここへトウモロコシPPDKプロモーター0.9kb断片(Taniguchi et al.:Plant Cell Physiol 41:42-48(2000))を組み込んだ。完成したプラスミドをXbaI、SacI消化し、GUS遺伝子を除去した後、先述のhrpZ XbaI-SacI断片を挿入した。こうしてPPDK-hrpZ (PPDKプロモーター-hrpZ遺伝子-Nosターミネーター)を構築した。トウモロコシPPDKプロモーターは葉肉細胞など光合成器官で強発現をするプロモーターであり(Taniguchi et al.:Plant Cell Physiol 41:42-48(2000))、本コンストラクトで形質転換されたイネは緑色器官(葉)にhrpZ遺伝子産物であるharpinpssを蓄積することが予想される。
【0040】PALプロモーターは次の様にクローニングした。PSPAL1(Yamada et al.:Plant Cell Physiol 35:917-926(1994)、及びKawamata et al.:PlantCell Physiol 38:792-803(1997))を含むコンストラクト(PSPAL1プロモーター-GUS遺伝子-NOSターミネーター)を有するアグロバクテリウムLBA4404株(岡山大学、白石教授より譲受)よりプラスミドDNAを抽出した。一方、既報のPSPAL1プロモーターの塩基配列(Patent:JP 1993153978-A 1 22-JUN-1993;TAKASAGO INTERNATL CORP)を元にreverseプライマーPALRVXba:GGG GTC TAG AAT TGA TAC TAA AGT AAC TAA TG及び2つのForwardプライマーPALFFHin:TTG GAA GCT TAG AGA TCA TTA CGA AAT TAA GGPALFSHin:CTA AAA GCT TGG TCA TGC ATG GTT GCT TCを設計した。PALRVXbaとPALFSHinの組み合わせでは翻訳開始点上流およそ0.45kb(転写開始点上流およそ0.35kb)のプロモーター領域(PAL-S)が、PALRVXbaとPALFFHinの組み合わせではおよそ1.5kbのプロモーター領域(PAL-L)が増幅される。こられのプライマーを用いて上述のアグロバクテリウムのプラスミドDNAを鋳型にPCRを行った。PCRの反応条件は、反応溶液の量を50μlとし、プライマー各0.5μM、dNTP 0.2mM、1(ExTaqバッファー、ExTaq DNAポリメラーゼ(宝酒造社) 1U、反応条件は94℃で3分を1回行った後、94℃で1分、50℃で1分、72℃で2分を30回、72℃で6分間を1回行った。PCR産物はベクターpCRII(invitrogen社)にクローニングした。
【0041】PsPAL1プロモーターは翻訳開始点から142bp上流にHindIII部位を持つので、PAL-Sを制限酵素XbaIで完全消化した後、HindIIIで部分消化し、0.45kb断片をpCRIIから抜き出した。上述のpSB21をHindIII、XbaIで消化し、35Sプロモーターを除去し、ここへPAL-Sを組み込んだ。なおここで用いたpSB21のベクターの骨格部分に存在する唯一のPvuII部位は除去され、代わりに唯一のEcoRI部位(Nosターミネーターの直後)へPvuIIリンカーが配置されている。PAL-Sが組み込まれたプラスミドをさらにXbaI、SacIで消化し、GUS遺伝子を除去した後、上述のhrpZ XbaI-SacI1.1kb断片を挿入した。以上の手順でPALS-hrpZを構築した。次にpCRIIに組み込まれたPAL-Lを制限酵素XhoI、XbaIで消化し、1.45kb PALプロモーターを抜き出し、同酵素で二重消化したベクターpSB11(Komari et al.:PlantJ. 10:165-174(1996))に組み込んだ。完成したプラスミドをXbaI、SmaI消化し、ここへPALS-hrpZのXbaI-PvuII断片(hrpZ-Nosターミネーター)を挿入した。こうしてPALL-hrpZを作成した。PALプロモーターは構成的に低レベルの発現をするが、病原菌や傷害で強く誘導されるプロモーターであり(Yamada etal.:Plant Cell Physiol 35:917-926(1994)、及びKawamata et al.:Plant Cell Physiol 38:792-803(1997))、PALS-hrpZやPALL-hrpZで形質転換されたタバコはこれらのストレスが生じた時に、その場所に、より多くのharpinpssが蓄積するものと予想される。この場合、PALLの方がPALSに比べてより多くのharpinpssが蓄積するものと予想される。
【0042】以上のように作成した4つのコンストラクト35S-hrpZ、PALS-hrpZ、及びPALS-hrpZ、PALL-hrpZ(図1にまとめた)を含む大腸菌LB392株と、選抜マーカー遺伝子の組み込まれたベクターpSB4U(トウモロコシユビキチンプロモーター-ハイグロマイシン抵抗性遺伝子(hptII)-NOSターミネーター)を含むアグロバクテリウムLBA4404株、さらにヘルパープラスミドpRK2013を含む大腸菌HB101株を三菌系接合によりhrpZを含むコンストラクトを相同性組換えを利用してアグロバクテリウムへ導入した。
【0043】タバコの形質転換はリーフディスク法(Horsch et al.:Science 227:1229-1231(1985))により行った。温室で育成したタバコ品種SR1の葉を、70%エタノールで30秒間、5倍に希釈したアンチホルミンで5分間滅菌処理し、滅菌水で2度洗浄後およそ1cm角に切り、これにアグロバクテリウム懸濁液を接種した。形質転換シュートの誘導・選抜時、及び発根時のハイグロマイシン濃度は、それぞれ50又は100mg/ml、0又は50mg/mlとした。イネの形質転換はHiei et al.:Plant J. 6:271-282(1994))の方法に従い、アグロバクテリウムを用いて水稲品種月の光、コシヒカリの未熟胚由来カルスを形質転換した。
【0044】実施例4.形質転換体の解析(1)形質転換タバコ35S-hrpZから15個体、PALS-hrpZから10個体、PALL-hrpZから16個体の再分化植物を得た。各コンストラクト間で際立った形質転換効率の差異は見られなかった。形質転換当代(T0)でウェスタン分析を実施し、形質転換自殖次世代(T1)でウェスタン分析及び病害のアッセイを行った。
【0045】1)T0世代のウェスタン分析4〜5葉期の形質転換タバコ、非形質転換タバコ(SR1)の葉2x2cmを、0.1M HEPES-KOHpH7.5バッファー中で乳鉢を用いてすり潰した。15000gで10分間遠心した後の上清をタンパクサンプルとした。タンパク質量はBio-Rad Protein Assay kit (BIO-RAD社)により定量した。およそ20μgのタンパク質をLaemmniらの方法(Nature 227:680-685(1970))に従い、SDS-PAGE法により分画した。ゲルは12.5% PAGEL(ATTO社)を使用した。泳動後、ゲル中のタンパク質をPVDF膜(millipore社)に転写した。PVDF膜は0.5%スキムミルクを含む1xTBSバッファー中で30分間処理した後、抗harpinpss血清を1/1000(v/v)含む同バッファー中で室温で一晩振とうした。二次抗体としては、ヤギ抗ウサギIgGコンジュゲートペルオキシダーゼ標識(MBL社)若しくはヤギ抗ウサギIgGアルカリフォスファターゼコンジュゲート(BIO-RAD社)を1/1000(v/v)の濃度で使用した。発色系は、それぞれHRP Color Development Reagent(BIO-RAD社)、alkaline phosphatase substrate kit II(Vector laboratories社)を用いた。発現タンパク量は、濃度の分かっているharpinpssサンプルの発色度合いと、デンシトメーター(モデルGS-670、BIO-RAD社)を用いて比較することにより算出した。T0世代のウェスタン分析結果の一部を図2に示し、全結果を表1にまとめた。
【0046】発現量は、4段階(+++、++、+、-)で示し、それぞれ総可溶性タンパク質の0.1%以上(+++)、0.05〜0.1%(++)、0.05%以下(+)、検出限界以下(-)を表している。これは、後述する表2、3及び4においても同様である。
【0047】
【表1】

【0048】PALプロモーターを有するコンストラクトの場合、8割以上の個体でharpinpssの蓄積が検出された。また予想通りPALLの方がPALSに比べて高発現個体(++)の割合が多かった。一方、35Sプロモーターを有するコンストラクトの場合は、15個体中、6個体でharpinpssが全く蓄積していなかったものの、半数近くの7個体において高発現個体が得られた。しかもうち6個体で非常に高い発現(+++)を示した。興味深いことにこれら高発現個体の葉や茎、根あるいは花の器官における形態的変化は観察されず、また種子稔性もほとんどのもので正常であった。
【0049】2)T1世代のウェスタン分析と病害抵抗性検定T0世代でharpinpssの蓄積量が高かったKH1-2(PALS-hrpZ)、KC6-7(PALL-hrpZ)、KC8-1(PALL-hrpZ)、KK1-1(35S-hrpZ)、KK3-8(35S-hrpZ)、KK4-2(35S-hrpZ)、KK4-3(35S-hrpZ)、KK7-6(35S-hrpZ)の計8系統について、うどんこ病菌(Erysiphe cichoracearum)に対する反応を解析した。
【0050】T0世代でharpinpssが高レベルに蓄積したタバコ個体を選抜し、その自殖後代(T1)の種子を得た。この種子を播き約2ヶ月間観察を続けたが、この期間に目に見える形態的な変化は特に生じず、T0世代と同様に正常に生育し、葉の表面に過敏感反応は見られなかった。その後4〜5葉期の形質転換タバコのT1世代に対してうどんこ病菌の噴霧接種を行い、病害抵抗性検定を試みた。1.4(106 spores/mlのうどんこ病菌胞子懸濁液約2Lを244個体の組換え体及び41個体の原品種に対して噴霧接種した。その結果、接種後4、5日で形質転換体の下位葉に過敏感反応様の局部壊死斑が誘導された(図3A,B)。驚くべきことにPAL-hrpZのみならず、構成的プロモーターを用いている35S-hrpZコンストラクトの場合においても、病原菌感染後に特異的な局部壊死斑が誘導された(図3B)。菌接種後5日目の局部壊死斑の出現頻度は、非形質転換体で5%程度であったのに対し、35S-hrpZではその6〜14倍(30〜71%)、PAL-hrpZでは4〜5倍(20〜27%)であった(表2)が、その後PAL-hrpZ の場合、局部壊死斑数が徐々に増加した。これはPsPAL1プロモーターがErysiphe cichoracearumに反応したためであろうと推察された。harpinpssの蓄積量と局部壊死斑の形成度合いは、正の相関の傾向にあった(表3)が、形質転換体の中にはharpinpssの蓄積が少なくとも我々の実施したウェスタン分析では検出されなかった個体でも局部壊死斑の生じたものが例外的に存在した。
【0051】次にうどんこ病菌感染後に生じた局部壊死斑が病害抵抗性に関連しているのか否かを調べるため、接種後11日目のうどんこ病の病徴を調査した。その結果、非形質転換体の中にうどんこ病菌の菌糸の進展が抑えられている個体は存在しなかったのに対し、35S-hrpZで15〜57%、PAL-hrpZで13〜18%の個体は非形質転換体と比較して明らかに軽微な病徴を示した(図4、表2)。局部壊死斑が生じた葉のみならず、生じていない中〜上位葉もうどんこ病の蔓延が抑えられたのは全身獲得抵抗性(SAR)が稼動したためであると考えられた。コットンブルー染色によりうどんこ病菌の菌糸を観察したところ、対照とした原系統であるSR1の罹病葉ではうどんこ病菌の菌糸が旺盛に伸長し葉の表面に広がっていたのに対し、形質転換体では葉の表面に吸器は形成されるものの、菌糸の伸長が抑制され、伸長が途中で停止した。本研究で用いたプロモーターは35S(構成的)とPAL(誘導性)であるが、PALよりも35Sの方を用いた方が、局部壊死斑の出現頻度が高く、しかも少なくとも接種後11日目の調査では、病害抵抗性の強い個体が多く得られた(表2)。ただし、35Sプロモーターを用いた場合、いくつかの個体において病原菌に反応して形成された局部壊死斑が非常に大きくなり(葉面積の10%以上を占める)、結果として下葉が枯死してしまう状況が観察された。また逆にharpinpssが蓄積した個体においても局部壊死斑が肉眼では観察されない場合があったが(表2)、このような個体の中にうどんこ病に抵抗性となるものがあった(表2の局部壊死斑マイナスの個体のうちの、かっこ内の数の個体。harpinpss発現量はすべて++。)。おそらく非常に微細な範囲で過敏感反応が生じたためであろうと考えられるが、このような個体を選抜することで実用性の高い病害抵抗性植物を得られると考えられる。hrpZを構成的プロモーターで転写制御した場合でも病原菌の侵入がないと局部壊死斑が生じないということは、harpinpssが植物細胞の細胞膜外側又は細胞壁で認識されているために、おそらく細胞質に蓄積しているharpinpssが、菌の侵入による細胞の崩壊が起こるまで植物細胞に認識されず、結果として病原菌接種のあとに過敏感反応を生じた、という推論が可能である。あるいはharpinpssのエリシター活性には、病原菌接種に起因する、又は病原菌若しくは植物に由来する他の何らかの因子の存在あるいは誘導が必要であるのかも知れない。
【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】(2)形質転換イネ1)T0世代のウェスタン分析品種月の光にharpinpssを導入した。35S-hrpZから35個体、PPDK-hrpZから26個体の再分化植物を得た。各コンストラクト間で際立った形質転換効率の差異は見られなかった。形質転換当代(T0)でウェスタン分析を実施し、高発現個体を選抜した。
【0055】再分化した形質転換イネ(月の光)から上記のタバコの例と同じ方法でタンパク質を抽出し、ウェスタン分析を実施した。T0世代のウェスタン分析の結果を表4に示す。
【0056】
【表4】

【0057】イネ(月の光)の場合もタバコの場合と同様にharpinpssが高発現する個体が得られた(図2も参照)。35Sプロモーターを有するコンストラクトの場合は、約半数の個体でharpinpssの蓄積が検出され、さらに高発現個体(++)の割合が全体の1/3以上であった。PPDKプロモーターの場合も、およそ2/3の個体でharpinpssの蓄積が検出され、うち4個体で高発現であった。興味深いことにこれら高発現個体の葉、根あるいは花の器官における形態的変化は観察されなかった。また種子稔性もほとんどのもので正常であったので、高発現個体のT1種子を得ることが出来た。
【0058】2)T0世代のウェスタン分析とT1世代の病害抵抗性検定次に日本の最重要品種コシヒカリにharpinpssを導入した。表5にT0におけるウェスタン分析の結果を示す。
【0059】
【表5】

【0060】35S-hrpZが導入されたT0世代の個体のうちharpinpss蓄積量が非常に高かった(表5の+++)個体4つ(hrp5−8、hrp23−5、hrp24−1、hrp42−9)を選び、それらのT1世代におけるイネいもち病に対する罹病度を調査した。選抜された4つの高発現個体の種子稔性は正常で、多くの自殖種子を得ることが出来た。T1種子を培土を入れたシードリングケースに8粒×2列で撒き、温室内で栽培し4.8〜5.2葉期になったところで病害検定に供試した。イネいもち病菌(Magnaporthe grisea)はレース007を用いた。接種にはいもち菌をオートミールスクロース寒天培地上で培養(28℃暗条件)し、菌叢蔓延後、25℃で3日間近紫外光照射して形成させた分生胞子を用いた。いもち菌の接種は、0.02%Tween20で1.5×105個の分生胞子/mlに調整した懸濁液をシードリングケース3つ当たり30ml噴霧接種することにより行なった噴霧接種を行なったイネは接種後24時間加湿恒温器(SLPH-550-RDS、日本医化器械製作所製)内で25℃、100%湿度条件下に保持した後、温室内へ移した。温室の設定条件は、明条件25℃-16時間暗条件22℃-8時間とした。病害抵抗性の評価は接種6日後における接種時の最上位展開葉(第5葉)の進展性病斑数を目視で数えることにより行った。結果についてはMann-Whitney U検定により有意差検定処理を行った。
【0061】その結果、いもち菌接種によって局部壊死斑は観察されなかったものの、harpinpss導入イネ4系統中3系統(hrp5-8、hrp42-9、hrp23-5)において、平均進展性病斑数が対照のコシヒカリに比べ、24-38%減少していた。しかもこの減少は、統計的に有意な減少であった(表6)。以上の結果はharpinpss導入により、イネの病害抵抗性を増強させることが出来ることを示すものである。
【0062】
【表6】

【0063】
【発明の効果】本発明により、harpinをコードする遺伝子を構成的プロモーター又は誘導性プロモーターに接続、植物に導入することにより、その植物に病害抵抗性を付与できることが初めて明らかとなった。このharpin導入植物は、タンパク質性エリシターであるharpinの作用機作を解明する上で、また局部、全身獲得抵抗性の機構を解明する上で役立つと考えられる。また誘導性のプロモーターを用いなければ困難であろうと従来考えられていたharpin導入による抵抗性植物の作出を、構成的プロモーターを用いても充分適用可能であることを示し、本アプローチの適用範囲の拡大を示すことが出来た。HarpinをコードするDNA配列を、植物細胞の中で機能しうる適当な構成的、器官・時期特異的、あるいはストレスや病害虫で誘導されるプロモーター配列と、植物細胞で機能しうるターミネター配列の発現カセットに組み込み、植物細胞に導入、再生個体を得ることにより、病害抵抗性植物を作出するという方法は、もはや遺伝子工学的に可能かつ有効なアプローチであることを本発明は示した。
【0064】
【配列表】
SEQUENCE LISTING<110> Japan Tabacco Inc.<120> <130> 011860<160> 2<210> 1<211> 1029<212> DNA<213> Pseudomonas syringae pv. syringae LOB2-1<400> 1atg cag agt ctc agt ctt aac agc agc tcg ctg caa acc ccg gca atg 48Met Gln Ser Leu Ser Leu Asn Ser Ser Ser Leu Gln Thr Pro Ala Met1 5 10 15gcc ctt gtc ctg gta cgt cct gaa acc gag acg act ggc gcc agt acg 96Ala Leu Val Leu Val Arg Pro Glu Thr Glu Thr Thr Gly Ala Ser Thr 20 25 30tcg agc aag gcg ctt cag gaa gtt gtc gtg aag ctg gcc gag gaa ctg 144Ser Ser Lys Ala Leu Gln Glu Val Val Val Lys Leu Ala Glu Glu Leu 35 40 45atg cgc aat ggt caa ctc gac gac agc tcg cca ttg ggc aaa ctg ctg 192Met Arg Asn Gly Gln Leu Asp Asp Ser Ser Pro Leu Gly Lys Leu Leu 50 55 60gcc aag tcg atg gcc gcg gat ggc aag gca ggc ggc ggt atc gag gat 240Ala Lys Ser Met Ala Ala Asp Gly Lys Ala Gly Gly Gly Ile Glu Asp65 70 75 80gtc atc gct gcg ctg gac aag ctg att cat gaa aag ctg ggt gac aac 288Val Ile Ala Ala Leu Asp Lys Leu Ile His Glu Lys Leu Gly Asp Asn 85 90 95ttc ggc gcg tct gcg gac aac gcc tcg ggt acc gga cag cag gac ctg 336Phe Gly Ala Ser Ala Asp Asn Ala Ser Gly Thr Gly Gln Gln Asp Leu 100 105 110atg act cag gtg ctc agt ggc ctg gcc aag tct atg ctc gat gat ctt 384Met Thr Gln Val Leu Ser Gly Leu Ala Lys Ser Met Leu Asp Asp Leu 115 120 125ctg acc aag cag gat ggc ggg gca agc ttc tcc gaa gac gat atg ccg 432Leu Thr Lys Gln Asp Gly Gly Ala Ser Phe Ser Glu Asp Asp Met Pro 130 135 140atg ctg aac aag atc gcg cag ttc atg gat gac aat ccc gca cag ttt 480Met Leu Asn Lys Ile Ala Gln Phe Met Asp Asp Asn Pro Ala Gln Phe145 150 155 160ccc aag ccg gac tcg ggt tcc tgg gtg aac gaa ctc aag gaa gac aac 528Pro Lys Pro Asp Ser Gly Ser Trp Val Asn Glu Leu Lys Glu Asp Asn 165 170 175ttc ctt gat ggc gac gaa acg gct gcg ttc cgc tcg gca ctc gac atc 576Phe Leu Asp Gly Asp Glu Thr Ala Ala Phe Arg Ser Ala Leu Asp Ile 180 185 190att ggc cag caa ctg ggt aat cag cag agt ggc gct ggc ggt ctg gcg 624Ile Gly Gln Gln Leu Gly Asn Gln Gln Ser Gly Ala Gly Gly Leu Ala 195 200 205ggg acg ggt gga ggt ctg ggc act ccg agc agt ttt tct aac aac tcg 672Gly Thr Gly Gly Gly Leu Gly Thr Pro Ser Ser Phe Ser Asn Asn Ser 210 215 220tcc gtg acg ggt gat ccg ctg atc gac gcc aat acc ggt ccc ggt gac 720Ser Val Thr Gly Asp Pro Leu Ile Asp Ala Asn Thr Gly Pro Gly Asp225 230 235 240agc ggc aat agc agt ggt gag gcg ggg caa ctg atc ggc gag ctt atc 768Ser Gly Asn Ser Ser Gly Glu Ala Gly Gln Leu Ile Gly Glu Leu Ile 245 250 255gac cgt ggc ctg caa tcg gta ttg gcc ggt ggt gga ctg ggc aca ccc 816Asp Arg Gly Leu Gln Ser Val Leu Ala Gly Gly Gly Leu Gly Thr Pro 260 265 270gta aac acc ccg cag acc ggt acg gcg gcg aat ggc gga cag tcc gct 864Val Asn Thr Pro Gln Thr Gly Thr Ala Ala Asn Gly Gly Gln Ser Ala 275 280 285cag gat ctt gac cag ttg ctg ggc ggc ttg ctg ctc aag ggc ctt gaa 912Gln Asp Leu Asp Gln Leu Leu Gly Gly Leu Leu Leu Lys Gly Leu Glu 290 295 300gcg acg ctc aag gat gcc ggt caa acc gct acc gac gtg cag tcg agc 960Ala Thr Leu Lys Asp Ala Gly Gln Thr Ala Thr Asp Val Gln Ser Ser305 310 315 320gct gcg caa atc gcc acc ttg ctg gtc agt acg ctg ctg caa ggc acc 1008Ala Ala Gln Ile Ala Thr Leu Leu Val Ser Thr Leu Leu Gln Gly Thr 325 330 335cgc aat cag gct gca gcc tga 1029Arg Asn Gln Ala Ala Ala 340<210> 2<211> 342<212> prt<213> Pseudomonas syringae pv. syringae LOB2-1<400> 2Met Gln Ser Leu Ser Leu Asn Ser Ser Ser Leu Gln Thr Pro Ala Met1 5 10 15Ala Leu Val Leu Val Arg Pro Glu Thr Glu Thr Thr Gly Ala Ser Thr 20 25 30Ser Ser Lys Ala Leu Gln Glu Val Val Val Lys Leu Ala Glu Glu Leu 35 40 45Met Arg Asn Gly Gln Leu Asp Asp Ser Ser Pro Leu Gly Lys Leu Leu 50 55 60Ala Lys Ser Met Ala Ala Asp Gly Lys Ala Gly Gly Gly Ile Glu Asp65 70 75 80Val Ile Ala Ala Leu Asp Lys Leu Ile His Glu Lys Leu Gly Asp Asn 85 90 95Phe Gly Ala Ser Ala Asp Asn Ala Ser Gly Thr Gly Gln Gln Asp Leu 100 105 110Met Thr Gln Val Leu Ser Gly Leu Ala Lys Ser Met Leu Asp Asp Leu 115 120 125Leu Thr Lys Gln Asp Gly Gly Ala Ser Phe Ser Glu Asp Asp Met Pro 130 135 140Met Leu Asn Lys Ile Ala Gln Phe Met Asp Asp Asn Pro Ala Gln Phe145 150 155 160Pro Lys Pro Asp Ser Gly Ser Trp Val Asn Glu Leu Lys Glu Asp Asn 165 170 175Phe Leu Asp Gly Asp Glu Thr Ala Ala Phe Arg Ser Ala Leu Asp Ile 180 185 190Ile Gly Gln Gln Leu Gly Asn Gln Gln Ser Gly Ala Gly Gly Leu Ala 195 200 205Gly Thr Gly Gly Gly Leu Gly Thr Pro Ser Ser Phe Ser Asn Asn Ser 210 215 220Ser Val Thr Gly Asp Pro Leu Ile Asp Ala Asn Thr Gly Pro Gly Asp225 230 235 240Ser Gly Asn Ser Ser Gly Glu Ala Gly Gln Leu Ile Gly Glu Leu Ile 245 250 255Asp Arg Gly Leu Gln Ser Val Leu Ala Gly Gly Gly Leu Gly Thr Pro 260 265 270Val Asn Thr Pro Gln Thr Gly Thr Ala Ala Asn Gly Gly Gln Ser Ala 275 280 285Gln Asp Leu Asp Gln Leu Leu Gly Gly Leu Leu Leu Lys Gly Leu Glu 290 295 300Ala Thr Leu Lys Asp Ala Gly Gln Thr Ala Thr Asp Val Gln Ser Ser305 310 315 320Ala Ala Gln Ile Ala Thr Leu Leu Val Ser Thr Leu Leu Gln Gly Thr 325 330 335Arg Asn Gln Ala Ala Ala 340
【出願人】 【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
【識別番号】593005116
【氏名又は名称】シンジェンタ リミテッド
【出願日】 平成13年9月6日(2001.9.6)
【代理人】 【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫 (外5名)
【公開番号】 特開2002−325519(P2002−325519A)
【公開日】 平成14年11月12日(2002.11.12)
【出願番号】 特願2001−269982(P2001−269982)