トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業




【発明の名称】 ダイズ不定胚の分化誘導方法
【発明者】 【氏名】保田 みゆき

【氏名】長澤 秋都

【要約】 【課題】発芽可能なダイズ不定胚を従来より高頻度に得るための方法を提供すること。

【解決手段】0.5(W/V)%〜2(W/V)%の寒天を含む発生培地上でダイズの球状型胚を培養することを特徴とするダイズ不定胚の分化誘導方法、等。
【特許請求の範囲】
【請求項1】0.5(W/V)%〜2(W/V)%の寒天を含む発生培地上でダイズの球状型胚を培養することを特徴とするダイズ不定胚の分化誘導方法。
【請求項2】0.5(W/V)%〜2(W/V)%の寒天を含む発生培地上でダイズの球状型胚を培養することにより、子葉型胚を形成させる工程を含むことを特徴とするダイズ不定胚の調製方法。
【請求項3】0.5(W/V)%〜2(W/V)%の寒天を含むダイズ不定胚発生培地。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ダイズ不定胚の分化誘導方法に関する。
【0002】
【従来の技術】不定胚形成を利用した植物の大量増殖技術は、単一の遺伝形質を有する植物体を短期間で多数得ることができるため、品種改良や種苗の市場安定供給に有利であることから、種々の植物について検討されている。ところが、ダイズにおいては、不定胚を再分化させてダイズ個体を得るための効率の良い方法が未だ確立されておらず、とりわけ、不定胚からの発芽率が極めて低いという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そこで、発芽可能なダイズ不定胚をより高頻度に得るための方法の開発が切望されていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる状況の下、鋭意検討した結果、ダイズの球状型の不定胚を、約0.5(W/V)%〜約2(W/V)%の寒天を含む発生培地上で培養することにより、発芽能力を有する子葉型の不定胚への分化を誘導し得ることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、1)0.5(W/V)%〜2(W/V)%の寒天を含む発生培地上でダイズの球状型胚を培養することを特徴とするダイズ不定胚の分化誘導方法、2)0.5(W/V)%〜2(W/V)%の寒天を含む発生培地上でダイズの球状型胚を培養することにより、子葉型胚を形成させる工程を含むことを特徴とするダイズ不定胚の調製方法、3)0.5(W/V)%〜2(W/V)%の寒天を含むダイズ不定胚発生培地を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の方法に用いることのできるダイズの球状型胚は、例えば、ダイズの未熟子葉から得ることができる。未熟子葉とは、開花後約2週間以内のダイズの若いさやに含まれる未熟胚から得られる子葉である。未熟胚から胚軸および幼根部を取り除いて得られる子葉部を、オーキシンを含む培地上で培養することにより球状型胚が得られる。未熟子葉から球状型胚を得るための培養に用いることのできる培地としては、オーキシンが添加された無機塩培地をゲル化剤で固化した培地をあげることができ、約1(W/V)%〜約10(W/V)%程度のスクロースが添加されていてもよい。オーキシンとしては、例えば、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(以下、2,4-Dと記す。)、β−インドール酢酸、α−ナフタレン酢酸などをあげることができる。オーキシンの使用量はその種類等によって適宜選択され、例えば、2,4-Dでは約0.1μM〜約200μM程度が一般的である。無機塩培地としては、例えば、ムラシゲとスクーグ(Murashige-Skoog)の培地(以下、MS培地と記す。)、ホワイト(White)の培地、ガンボーグ(Gamborg)の培地などの植物組織培養に用いられる種々の基本培地を使用することができる。また、ゲル化剤としては、例えば、ゲルライト、寒天などを挙げることができる。ゲル化剤の使用量は、ゲル化剤の種類等によって適宜選択され、例えば、ゲルライトでは、約0.2(W/V)%程度が一般的である。未熟子葉から球状型胚を得るための培養に用いる培地の具体例としては、180μMの2,4-Dと30g/Lのスクロースとが添加されpH7.0に調整されたMS培地に、0.2(W/V)%のゲルライトを加えて固化した培地などをあげることができる。培養の条件としては、植物組織培養に用いられる通常の培養条件を適用することができ、具体的には例えば、明期16時間:暗期8時間にて、終日約23〜約25℃で培養する条件をあげることができる。培養期間は、ダイズの品種や培地組成などによって多少異なるが、例えば、約1ヶ月程度をあげることができる。球状型胚は、増殖培地へ移植して培養することにより、増殖させることもできる。かかる増殖培地としては、オーキシンが添加された無機塩培地をゲル化剤で固化した培地をあげることができ、約1(W/V)%〜約10(W/V)%程度のスクロースが添加されていてもよい。オーキシンとしては、例えば、2,4-D、β−インドール酢酸、α−ナフタレン酢酸などをあげることができる。オーキシンの使用量はその種類等によって適宜選択され、例えば、2,4-Dでは約0.1μM〜約200μM程度が一般的である。無機塩培地としては、例えば、MS培地、ホワイトの培地、ガンボーグの培地等の植物組織培養に用いられる種々の基本培地を用いることができる。増殖用培地の具体例としては、90μMの2,4-Dと30g/Lのスクロースが添加されpH5.8に調整されたMS培地に0.2(W/V)%のゲルライトを加えて固化した培地などがあげられる。培養条件としては、植物組織培養に用いられる通常の培養条件を適用することができ、具体的には例えば、明期16時間:暗期8時間にて、終日約23〜約25℃で培養する条件をあげることができる。培養期間は、ダイズの品種や培地組成などにより多少異なるが、例えば、約2週間〜約1ヶ月程度をあげることができる。
【0006】かくして得られた球状型胚を、約0.5(W/V)%〜約2(W/V)%の寒天を含む発生培地上で培養することにより、心臓型胚、次いで魚雷型胚を経て、子葉型胚へと分化を誘導することができる。発生培地としては、例えば、無機塩培地に、寒天を約0.5(W/V)%〜約2(W/V)%となるよう添加して固化したオーキシンを含まない培地をあげることができ、約2(W/V)%〜約10(W/V)%程度のマルトースが添加されていてもよい。無機塩培地としては、MS培地、ホワイトの培地、ガンボーグの培地等の植物組織培養に用いられる種々の基本培地をあげることができる。寒天としては、例えば、植物組織培養用の寒天を用いることができる。なお、植物組織培養用の寒天を約0.5(W/V)%〜約2(W/V)%となるよう添加して得られる固形培地と同等の含水率および強度が得られるのであれば、他のグレードの寒天や他のゲル化剤を替わりに用いることもできる。発芽能力を有する子葉型胚をとりわけ高頻度に得るに適した寒天濃度は、ダイズの品種や、寒天のグレード、ロット等によっても多少異なるが、例えば植物組織培養用の寒天を用いる場合には、約0.8(W/V)%〜約1.2(W/V)%程度をあげることができる。発生培地の具体例としては、60g/Lのマルトースが添加されpH5.8に調整されたMS培地に0.8(W/V)%の寒天(和光純薬製、植物組織培養用)を添加して固化した培地をあげることができる。培養条件としては、植物組織培養に用いられる通常の培養条件を適用することができ、具体的には例えば、明期16時間:暗期8時間にて、終日約23〜約25℃で培養する条件をあげることができる。培養期間は、ダイズの品種や培地組成などにより多少異なるが、例えば、約1ヶ月間〜約3ヶ月間程度をあげることができる。
【0007】上記のようにして得られた子葉型胚は、その後の乾燥処理を必要とせず、直接、発芽培地に移植して培養することにより発芽させることができる。発芽培地としては、無機塩培地をゲル化剤で固化したオーキシンを含まない培地をあげることができ、約1(W/V)%〜約10(W/V)%程度のスクロースが添加されていてもよい。無機塩培地としては、例えば、MS培地、ホワイトの培地、ガンボーグの培地などの植物組織培養に用いられる種々の基本培地をあげることができる。発芽培地の具体例としては、30g/Lのスクロースが添加されpH5.8に調整されたMS培地に0.2(w/v)%のゲルライトを加えて固化した培地などをあげることができる。培養条件としては、植物組織培養に用いられる通常の培養条件を適用することができ、具体的には例えば、明期16時間:暗期8時間にて、終日約23〜約25℃で培養する条件をあげることができる。培養期間は、ダイズの品種や培地組成等によって多少異なるが、約1週間〜約1ヶ月間程度をあげることができる。発芽した子葉型胚をさらに同じ発芽培地上で発根させ、次いで土に馴化することにより、ダイズ個体を得ることができる。
【0008】
【実施例】以下に実施例で本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
参考例1 球状型胚の調製ダイズ(品種;FayetteおよびJack)のさやを1%次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸して殺菌処理した後、未熟種子を取り出した。この種子の種皮を剥離して長径2mm〜5mmの未熟胚を取り出し、得られた未熟胚の胚軸部をメスで切除して未熟子葉を調製した。この未熟子葉を2枚の子葉部に分け、各子葉部をそれぞれ不定胚誘導培地に置床した。不定胚誘導培地は、180μMの2,4-Dと30g/Lのスクロースとが添加されpH7.0に調整されたMS培地に、0.2(W/V)%のゲルライトを加えて固化した培地である。置床から1ヶ月後に、形成された球状型胚を増殖培地に移植した。増殖培地は、90μMの2,4-Dと30g/Lのスクロースとが添加されpH5.8に調整されたMS培地に、0.2(W/V)%のゲルライトを加えて固化した培地である。以後、2週間〜3週間の間隔で5回〜8回、球状型胚を新しい増殖培地に移植した。上記の不定胚誘導培地または増殖培地を用いた培養の条件は、いずれも、明期16時間:暗期8時間、終日23〜25℃とした。
【0009】実施例1参考例1で得られた品種Fayetteの球状型胚17塊を発生培地に置床し、明期16時間:暗期8時間、終日23〜25℃で4週間培養した。発生培地は、60g/Lのマルトースが添加されpH5.8に調整されたMS培地に0.8(W/V)%の寒天(和光純薬、植物組織培養用)を添加して固化した培地である。その結果、子葉型胚が50個得られた。これらの子葉型胚を発芽培地に移植して2週間培養した。発芽培地は30g/Lのスクロースが添加されpH5.8に調整されたMS培地に0.2(w/v)%のゲルライトを加えて固化した培地である。その結果、発芽して本葉を展開し発根が認められた個体が3個体得られた。
【0010】比較例1参考例1で得られた品種Fayetteの球状型胚をFinerらの方法(In Vitro Cell.Dev. Boil. 27P:175-182, 1991)に準じて培養し、子葉型胚を調製した。すなわち、球状型胚28塊を発生培地に移植し、明期16時間:暗期8時間にて、終日23〜25℃で4週間培養した。発生培地は、60g/Lのマルトースが添加されpH5.8に調整されたMS培地に0.2(W/V)%のゲルライト(和光純薬、植物組織培養用)を添加して固化した培地である。その結果、子葉型胚が70個得られた。これらの子葉型胚を空のシャーレに移して蓋をし、クリーンベンチ内で3日間放置した(乾燥処理)。その後、発芽培地に移植して2週間培養し、発芽の有無を調査した。発芽培地は30g/Lのスクロースが添加されpH5.8に調整されたMS培地に0.2(w/v)%のゲルライトを加えて固化した培地である。その結果、いずれの子葉型胚についても発芽が認められなかった。
【0011】実施例2参考例1で得られた品種Fayetteの球状型胚12塊および品種Jackの球状型胚8塊を、それぞれ発生培地に置床し、明期16時間:暗期8時間、終日23〜25℃で4週間培養した。発生培地は、60g/Lのマルトースが添加されpH5.8に調整されたMS培地に、それぞれ0.4(W/V)%、0.6(W/V)%、0.8(W/V)%、1.0(W/V)%、または1.2(W/V)%の寒天(和光純薬製、植物組織培養用)を添加して固化した培地である。得られた子葉型胚の数を表1に示す。これらの子葉型胚を発芽培地に移植して2週間培養した。発芽培地は30g/Lのスクロースが添加されpH5.8に調整されたMS培地に0.2(w/v)%のゲルライトを加えて固化した培地である。発芽して本葉が展開し発根が認められた個体の数を表1に示す。
【0012】
【表1】

【0013】
【発明の効果】本発明により、発芽可能なダイズ不定胚を従来より高頻度に得ることが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学工業株式会社
【出願日】 平成13年3月29日(2001.3.29)
【代理人】 【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆 (外2名)
【公開番号】 特開2002−291361(P2002−291361A)
【公開日】 平成14年10月8日(2002.10.8)
【出願番号】 特願2001−96090(P2001−96090)