| 【発明の名称】 |
ユーカリプタス・ダニアイの形質転換方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】山口 善紀
【氏名】土肥 敬悟
【氏名】近藤 啓子
【氏名】河津 哲
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| 【要約】 |
【課題】本発明はユーカリプタス・ダニアイまたはその交雑種を遺伝子組み替えにより形質転換するにあたり、苗条原基を苗化する際の苗化率を向上することを課題とする。
【解決手段】ユーカリプタス・ダニアイ(Eucalyptus dunnii)またはこれを片親とする交雑種から不定苗条を誘導し、不定苗条の組織片にアグロバクテリウム菌を感染させることにより形質転換カルスを形成し、カルスから苗条原基を誘導し、該苗条原基を培地で苗化するユーカリ属植物の形質転換する際に、苗条原基を培地で苗化する前に苗化誘導処理を施すことにより苗化率を向上する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ユーカリ属植物の外植体から不定苗条を誘導し、該不定苗条の組織片にアグロバクテリウム菌を感染させることにより形質転換カルスを形成し、カルスから苗条原基を誘導し、該苗条原基を培地で苗化するユーカリ属植物の形質転換方法において、(1)ユーカリ属植物がユーカリプタス・ダニアイ(Eucalyptus dunnii)またはこれを片親とする交雑種であり、(2)苗条原基を培地で苗化する前に苗化誘導処理を施す、ことを特徴とするユーカリプタス・ダニアイの形質転換方法。 【請求項2】 苗化誘導処理が、植物ホルモンを含有する液体培地で苗条原基を竪型回転培養することにより行われることを特徴とする請求項1に記載のユーカリプタス・ダニアイの形質転換方法。 【請求項3】 培地1リットルに対してオーキシン類植物ホルモンを0.01〜2mg、および、サイトカイニン類植物ホルモンを0.01〜2mg含有する液体培地で苗化誘導処理を行うことを特徴とする、請求項2に記載のユーカリプタス・ダニアイの形質転換方法。 【請求項4】 オーキシン類植物ホルモンがナフタレン酢酸であり、サイトカイニン類植物ホルモンがベンジルアデニンであることを特徴とする、請求項3に記載のユーカリプタス・ダニアイの形質転換方法。 【請求項5】 不定苗条が多芽体であり、該多芽体の誘導は、培地1リットルに対して0.01〜0.05mgのオーキシン類植物ホルモン及び0.01〜0.05mgのサイトカイニン類植物ホルモンを含有する固体培地で培養して行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のユーカリプタス・ダニアイの形質転換方法。 【請求項6】 オーキシン類植物ホルモンがナフタレン酢酸であり、サイトカイニン類植物ホルモンがベンジルアデニンであることを特徴とする請求項5に記載のユーカリプタス・ダニアイの形質転換方法。 【請求項7】 不定苗条が早生分枝であり、該早生分枝の誘導は、培地1リットルに対して0.001〜0.01mgのサイトカイニン類植物ホルモンを含有する液体培地で竪型回転培養して行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のユーカリプタス・ダニアイの形質転換方法。 【請求項8】 サイトカイニン類植物ホルモンがベンジルアデニンであることを特徴とする請求項7に記載のユーカリプタス・ダニアイの形質転換方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ユーカリ属植物であるユーカリプタス・ダニアイに由来する不定苗条にアグロバクテリウム菌を感染させて、形質転換植物を作出する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】ユーカリ属植物(Eucalyptus spp.)は、オーストラリアを中心とするオセアニア地域に500種以上が自生する多種属植物である。このユーカリ属植物の多くが、成長性に優れること、様々な環境に対する適応性があること、深刻な害虫被害が少ないこと、更に産業的には木材生産、パルプ生産、薪炭材の生産に適していることから、世界各地でユーカリ属植物の植林がなされている。1990年の国連食料農業機関の調べでは、世界中で推計1千万ヘクタール、熱帯林地域の人工林面積の約1/4にユーカリ属植物が植栽されている。 【0003】特に、ユーカリプタス・ダニアイ(Eucalyptus dunnii)はオーストラリアのニューサウスウエールズ州の北東を原産とする高木で、年間降水量1000-1500mmの湿潤で肥沃な地域に自然分布している。また、この樹種はブラジル、南アフリカ等に植林され、高成長ユーカリとして注目されている。さらに、この樹種の特性として耐霜性を有することに加えて、産業上の利点としては容積重が高いことから、パルプ資源として特に期待されている。ただし、自然分布が限られることから種子の供給が追いつかず、世界中に植林されるまでには至っていない。 【0004】ユーカリ属植物の生産性の向上は、精英樹の選抜とその交雑によってなされてきたが、近年では遺伝子組換えによる有用遺伝子の導入育種が試みられている。これまでユーカリプタス・グロブルス(Eucalyptus globulus)でアグロバクテリウム菌による遺伝子導入に成功したことが報告されているが、形質転換植物の再分化が行われていない〔Landre et al. Plant Sci. 127:81-91(1997)、Serrano et al. J. Exp. Botany 47:285-290(1996)〕。また、ユーカリプタス・カマルドレンシス(Eucalyptus camaldulensis)でもアグロバクテリウム菌による形質転換に成功していることが報告されているが、形質転換率が低いことから、安定的な形質転換系になるには至っていない〔Mullins et al.Plant Cell Rep.16:787-791(1997)〕。更に、同じユーカリプタス・カマルドレンシスで胚軸を形質転換の材料とするため、特定の成木に対して形質転換することはできない〔Ho et al.Plant Cell Rep. 17:675-680(1998)〕。 【0005】一方、成木の形質転換を目的として、特表2000−510325号公報にはユーカリ属植物として、ユーカリプタス・グランディス(Eucalyptus grandis)、ユーカリプタス・グロブラス(Eucalyptus globulus)、ユーカリプタス・ニテンス(Eucalyptus nitens)、ユーカリプタス・ダニアイ、ユーカリプタス・サリグナ(Eucalyptus saliga)、ユーカリプタス・カマルドレンシス、ユーカリプタス・ユーロフィラ(Eucalyptus urophylla)、ユーカリプタス・レグナンス(Eucalyptus regnans)、ユーカリプタス・シトリオドラ(Eucalyptus citriodora)、ユーカリプタス・フラキシノイデス(Eucalyptus fraxinoides)およびこれらのハイブリッドの外植体を取り出し、これを組織培養して得た組織培養物に形質転換する方法が提案されている。 【0006】一方、本発明者らはユーカリ属植物の子葉あるいは胚軸に対してアグロバクテリウム菌を用いて形質転換する方法(特開平7-203790号公報、特開平8-89113号公報)、さらに、ユーカリ属植物の成木に由来する不定苗条にアグロバクテリウム菌を感染させて、形質転換されたユーカリ属植物を作出する方法(特開平2000-316403号公報)を出願している。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】以上のような従来技術ではユーカリ属植物を形質転換することは可能になったが、形質転換カルスの形成率とそれに続く形質転換植物の再分化の効率が十分ではなかった。本発明者らの研究によれば、特に、前記した種々の利点を有するユーカリプタス・ダニアイまたはそれを片親とする交雑種は、形質転換後のカルスから誘導される苗条原基の苗化率が悪く、有用遺伝子の導入の阻害にもなっている。本発明はユーカリプタス・ダニアイまたはそれを片親とする交雑種から不定苗条を誘導し、その不定苗条に対してアグロバクテリウム菌の感染を行い、形質転換カルスから苗条原基を形成させて、得られた苗条原基を苗化するユーカリプタス・ダニアイの形質転換方法において、苗化率を向上することを課題とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。即ち、本発明の第1は、「ユーカリ属植物の外植体から不定苗条を誘導し、該不定苗条の組織片にアグロバクテリウム菌を感染させることにより形質転換カルスを形成し、カルスから苗条原基を誘導し、該苗条原基を培地で苗化するユーカリ属植物の形質転換方法において、(1)ユーカリ属植物がユーカリプタス・ダニアイ(Eucalyptusdunnii)またはこれを片親とする交雑種であり、(2)苗条原基を培地で苗化する前に苗化誘導処理を施す、ことを特徴とするユーカリプタス・ダニアイの形質転換方法」である。 【0009】 本発明の第2は、前記第1発明において、苗化誘導処理が、植物ホルモンを含有する液体培地で苗条原基を竪型回転培養することにより行われることを特徴とするユーカリプタス・ダニアイの形質転換方法である。 【0010】 本発明の第3は、前記第2発明において、培地1リットルに対してオーキシン類植物ホルモンを0.01〜2mg、および、サイトカイニン類植物ホルモンを0.01〜2mg含有する液体培地で苗化誘導処理を行うことを特徴とするユーカリプタス・ダニアイの形質転換方法である。 【0011】 本発明の第4は、前記第3発明において、オーキシン類植物ホルモンがナフタレン酢酸であり、サイトカイニン類植物ホルモンがベンジルアデニンであることを特徴とするユーカリプタス・ダニアイの形質転換方法である。 【0012】 本発明の第5は、前記第1〜第4発明のいずれかにおいて、不定苗条が多芽体であり、該多芽体の誘導は、培地1リットルに対して0.01〜0.05mgのオーキシン類植物ホルモン及び0.01〜0.05mgのサイトカイニン類植物ホルモンを含有する固体培地で培養して行われることを特徴とするユーカリプタス・ダニアイの形質転換方法である。 【0013】 本発明の第6は、前記第5発明において、オーキシン類植物ホルモンがナフタレン酢酸であり、サイトカイニン類植物ホルモンがベンジルアデニンであることを特徴とするユーカリプタス・ダニアイの形質転換方法である。 【0014】 本発明の第7は、前記第1〜第4発明のいずれかにおいて不定苗条が早生分枝であり、該早生分枝の誘導は、培地1リットルに対して0.001〜0.01mgのサイトカイニン類植物ホルモンを含有する液体培地で竪型回転培養して行われることを特徴とするユーカリプタス・ダニアイの形質転換方法である。 【0015】 本発明の第8は、前記第7発明においてサイトカイニン類植物ホルモンがベンジルアデニンであることを特徴とするユーカリプタス・ダニアイの形質転換方法である。 【0016】以下、本明細書では、培地1リットルに対するmg数を「mg/l」と表示する。また、本明細書では光のエネルギーに対応する量として、光の粒子である光量子(光子)の個数で表示し、1molは6.02×1023を示す。即ち、単位面積(m2)単位時間(秒)あたりの光量子の数をμmol/(m2・s)で表わす。一般的にはμmolm-2s-1と表示されることが多いが、本明細書では読みやすさのため、μmol/(m2・s)と表示する。そして、前記した本発明で使用する光量μmol/(m2・s)は、竪型回転培養器の場合には上から光をあてた時の上辺における受光量であり、静置培養の場合には植物体の位置における受光量である。 【0017】 【発明の実施の形態】以下、本発明のユーカリプタス・ダニアイまたはその交雑種の形質転換方法について詳しく説明する。本発明においては、基本的には、ユーカリ属植物の外植体から不定苗条を誘導し、該不定苗条の組織片にアグロバクテリウム菌を感染させることにより形質転換カルスを形成し、カルスから苗条原基を誘導し、該苗条原基を培地で苗化するという、公知のユーカリ属植物の形質転換方法を採用する。 【0018】不定苗条とは、例えば以下に説明する早生分枝や多芽体のように、組織培養によって得られる茎頂、葉、茎を有する植物組織である。早生分枝は、既に提案している木本性植物のクローン増殖法(特開平10-304785号公報)に従って、ユーカリより無菌的に成長点を含む組織を摘出し、無機塩類、炭素源及びビタミン類を含有する人工液体培地を使用して、光照射下で竪型回転培養によって作出できる。多芽体は、ユーカリより茎頂を含む組織を摘出し、無機塩類、炭素源及びビタミン類、ホルモン類を含有する人工固体培地に置床することによって得られる。不定苗条の組織片をアグロバクテリウム菌による感染材料として用いる方法は、他の方法より形質転換効率が良い。更に、アグロバクテリウム菌による感染培地に用いるホルモン条件の検討、感染前の感染誘導として早生分枝あるいは多芽体を無機塩類、炭素源及びビタミン類、ホルモン類を含有する人工固体培地に移植し、遮光条件下で培養することにより、効率的にユーカリプタス・ダニアイの形質転換を可能とする。以下、本発明の実施に関する操作の一例を、具体的な例を挙げて説明する。 【0019】<アグロバクテリウム菌を感染させるための多芽体の作出>多芽体は、ユーカリの種子を無菌播種して得られる実生苗の茎頂、あるいは、無菌的に誘導された早生分枝の茎頂を5〜10mmに切り出した外植体、または屋外に生育しているユーカリ成木の当年枝の茎頂あるいは腋芽を含む5〜20mmの外植体を材料として誘導される。即ち、前記外植体を、通常の殺菌方法を用いて殺菌調製の後、例えばWPM、B5、MS基本培地等に、植物ホルモンであるオーキシン類としてナフタレン酢酸(NAA)、インドール酪酸(IBA)、インドール酢酸(IAA)等を0〜1mg/l 、更に好ましくは0.01〜0.05mg/l、及びサイトカイニン類としてベンジルアデニン(BA)、1-(2-クロロ-4-ピリジル)-3-フェニル尿素(4-PU)、1-フェニル-3-(1,2,3-チアジアゾル-5-イル)尿素(TDZ)等を0.01〜1mg/l 、更に好ましくは0.01〜0.05mg/l含有し、更に炭素源として、例えばショ糖1〜3%、支持体材として寒天0.3〜0.6%あるいはゲランガム0.15〜0.3%を含有する多芽体誘導培地に植え付けて誘導される。 【0020】植物ホルモンの添加としてもっとも好ましい組合せと量は、培地1リットルに対してナフタレン酢酸0.01〜0.05mg及びベンジルアデニン0.01〜0.05mgである。 【0021】培養条件は、光量10〜120μmol/(m2・s)、温度15〜35℃の条件があげられる。以上の条件で20〜50日間培養することによって、多芽体を得ることが可能である。なお、得られた多芽体は一部の茎頂を含む組織片を継代することにより増殖を繰り返し行うことが可能である。 【0022】<アグロバクテリウム菌を感染させるための早生分枝の作出>早生分枝は、ユーカリの種子を無菌播種して得られる実生苗の茎頂、あるいは無菌的に誘導された多芽体の茎頂を5〜10mmに切り出した外植体、または屋外に生育しているユーカリ成木の当年枝の茎頂あるいは腋芽を含む5〜20mmの外植体から誘導される。前記外植体を、通常の殺菌方法を用いて殺菌調製の後、例えばWPM〔Loyd & McCown Proc. Int. plant Prop.Soc.30:421-427(1980)〕、B5〔Gamborg et al.Exp. Cell Res. 50:151-158(1968)〕、MS〔Murashige & Skoog Physiol.Plant15:473-497(1962)〕基本培地等に、植物ホルモンであるサイトカイニン類としてベンジルアデニン(BA)、1-(2-クロロ-4-ピリジル)-3-フェニル尿素(4-PU)、1-フェニル-3-(1,2,3-チアジアゾル-5-イル)尿素(TDZ)等を0〜1mg/l、更に好ましくは0〜0.1mg/l含有し、必用に応じてオーキシン類植物ホルモンとしてナフタレン酢酸(NAA)、インドール酪酸(IBA)、インドール酢酸(IAA)等を0〜1mg/l、更に好ましくは0〜0.1mg/l、及び、更に炭素源として、例えばショ糖を1〜3%加えた液体培地の中に竪型回転培養を行う。培養条件は1〜10rpmの回転速度、回転培養器の上辺の光量200〜500μmol/(m2・s)、15〜35℃の温度とし、竪型回転培養することにより、30〜50日で早生分枝が得られる。なお、得られた早生分枝の茎頂を含む一部の組織片を継代することにより増殖と繰り返し行うことが可能である。 【0023】植物ホルモンはユーカリ樹種、不定苗条の種類などにより効果が異なるので注意を要する。本発明が対象としているユーカリプタス・ダニアイもしくはその交雑種では、外植体から始めに早生分枝を誘導する際には植物ホルモンを使用せず、次に培地1リットルにサイトカイニン類植物ホルモン、特に好ましくはベンジルアデニンを0.001mg〜0.01mg含有する増殖培地に移して増殖すると、早生分枝の数が増加するという傾向が確認された。オーキシン類植物ホルモンであるナフタレン酢酸についても、培地1リットルに対して同様に0.001mg〜0.01mgが好ましい。更に、増殖本数のみでなく、奇形や褐変などについての影響では、これら植物ホルモンを0.02mg/l以上で使用するとかえって悪影響があるという面もあった。 【0024】<アグロバクテリウム菌の調製>アグロバクテリウム菌は、そのTiプラスミドを無毒化したもの、あるいは無毒化していない菌株を用意する。導入する遺伝子は、植物細胞内で発現するように改良した後に、Tiプラスミドベクターあるいはバイナリーベクターに結合し、アグロバクテリウム菌に形質転換して使用する〔Chilton et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4060-4064(1980) 〕、〔Herrera-Estrella et al. Natue 303:209-213 (1983) 〕。上記の方法で得たアグロバクテリウム菌を、ベクターの保有する抗生物質抵抗性遺伝子が規定する適正量の選抜抗生物質を添加したL-液体培地〔Millre Experiments in Molecular Genetics (1972) 〕10mg/l Bact-tryptone、5g/l Bact-yeast extract及び5g/l NaClにて、30℃、一晩でO.D. 600が0.8以上まで培養する。 【0025】<アグロバクテリウム菌の感染>早生分枝あるいは多芽体の植物組織を、0.1%の界面活性剤(Tween-20)で洗浄した後、ナイフで2〜10mmの大きさに切断し、アグロバクテリウム菌の感染培地、例えばWPM、B5、MS基本培地等に、サイトカイニン類として4-PU、BA、TDZあるいはカイネチン等を、またオーキシン類としてNAA、2,4-DあるいはIAA等と、ショ糖、ガラクトース等の糖類、アセトシリンゴン及びアグロバクテリウム菌を添加した液体培地に植え付ける。更に好ましくは、組織をアグロバクテリウム菌培養液に浸けた後に、アグロバクテリウム菌以外を含有する固体培地に着床する。これを20〜30℃の温度、遮光条件下で1〜2日間静置培養し、アグロバクテリウム菌を感染させる。 【0026】<アグロバクテリウム菌の除菌>アグロバクテリウム菌を感染させた組織片を除菌培地、例えばWPM、B5、MS基本培地等に、サイトカイニン類として4-PU、BA、TDZあるいはカイネチン等を、またオーキシン類としてNAA、2,4-DあるいはIAA等と、アグロバクテリウム菌を殺菌するための抗生物質、例えばカルベニシリン、バンコマイシン、クラフォラン等とショ糖を添加した液体培地に植え付ける。これを15〜35℃の温度、回転培養器の上辺の光量0〜25μmol/(m2・s)で3〜14日間竪型回転培養し、アグロバクテリウム菌の除菌を行う。 【0027】<形質転換された苗条原基の形成>アグロバクテリウム菌を完全に除菌した組織片を、基本培地として例えばWPM、B5、MS基本培地等に、植物ホルモンであるサイトカイニン類として4-PU、BA、TDZあるいはカイネチン等を、またオーキシン類としてNAA、2,4-DあるいはIAA等と炭素源、アグロバクテリウム菌を殺菌するための抗生物質、更に形質転換された細胞集塊を選抜するための抗生物質を添加した液体培地の中で竪型回転培養を行う。培養条件は1〜10rpmの回転速度、回転培養器の上辺の光量0〜500μmol/(m2・s)、15〜35℃の温度とする。14〜40日間隔で新鮮培地へ継代して培養を継続すると、形質転換カルスの選抜を始めてから20〜50日で、組織片中に黄白色の形質転換したカルス形成が認められる。得られたカルスを組織片からナイフによって切り離し、更に光照射下で竪型回転培養を行い、選抜開始から40〜120日で形質転換された苗条原基が誘導できる。 【0028】<苗条原基の苗化誘導処理>従来研究されていたユーカリ樹種では、苗条原基は固体培地に植え付けて苗化することができていたが、ユーカリプタス・ダニアイまたはその交雑種では、そのまま植え付けただけでは苗化率が低いため、本発明の苗化誘導処理を行う必要がある。苗化誘導処理は、液体培地中で強い光を当て、苗条原基から極めて微小な苗条を形成する処理工程であり、光量として80μmol/(m2・s)以上が必用である。培養方式としては、静置培養、浸透培養、回転培養のいずれでも良いが、竪型回転培養がもっとも好ましく、以下、竪型回転培養での苗化誘導処理について説明する。 【0029】竪型回転培養して得られた形質転換苗条原基を、例えばWPM、B5、MS基本培地等に、オーキシン類としてNAA、IBA、IAA等を0.01〜2mg/l、更に好ましくは0.01〜0.1mg/l、またサイトカイニン類としてBA、4-PU、TDZ等を0.01〜2mg/l、更に好ましくは0.1〜0.5mg/lの濃度で含有し、更に炭素源として、例えばショ糖1〜3%を含有する苗化誘導液体培地に、5〜10mm角程度の大きさにした苗条原基を植え付ける。培養条件は1〜10rpmの回転速度、回転培養器の上辺の光量100〜500μmol/(m2・s)、15〜35℃の温度とする。14〜40日間隔で新鮮培地へ継代して培養を継続する。苗化誘導を始めてから30〜60日で、苗条原基の表面に苗条の伸長が認められる。 【0030】<形質転換植物の再生>苗条原基の苗化誘導処理で得られた表面に苗条の伸長が認められた形質転換苗条原基を、苗条を再生するための培地、例えばB5あるいはMS基本培地等に植物ホルモン類として、例えばNAA、2,4-D、IAA等のオーキシン類、BA、4-PU、カイネチン、ゼラチン、TDZ等のサイトカイニン類及び炭素源、寒天あるいはゲランガム、更に形質転換された細胞集塊を選抜するための抗生物質を添加した苗化培地で培養する。培養は15〜35℃の温度、光量20〜35μmol/(m2・s)で、約40〜80日間行って苗条を再生させ、更に、発根させて完全な形質転換植物を得ることができる。 【0031】 【実施例】以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 <実施例1><供試植物>ユーカリ属植物としてユーカリプタス・ダニアイ(Eucalyptus dunnii)を使用した。 【0032】(1)無菌播種ユーカリプタス・ダニアイの種子を7倍に希釈した次亜塩素酸ナトリウム溶液に、Tween20を0.1%加えた液に40分間浸漬し、次いで、無菌的に70%のエタノールで2分間、さらに5倍に希釈した次亜塩素酸ナトリウム溶液にTween20を0.1%加えた液に30分間浸漬して殺菌後、滅菌水で3回洗浄した。つぎに、無菌的に1%ショ糖および0.6%の寒天を含むB5培地上に種子を置床した。培養条件は、26℃の温度、光量46μmol/(m2・s)、16時間光照射の条件下で行った。播種後、約2週間生育させ試験材料とした。なお試験は異なるユーカリ個体2つ(個体1、個体2)の種子を用いて行った。 【0033】(2)多芽体の作出無菌発芽させた苗条の茎頂を含む組織片をピンセットとナイフを用いて切り出し、B5基本培地に対して0.02mg/l NAA、0.02mg/l BA、1%ショ糖と0.2%ゲランガムを含有する個体培地に植え付けた。培養条件は26℃の温度、光量46μmol/(m2・s)、16時間光照射下で行い、約4週間毎に新鮮培地に継代し、材料の増殖を行った。 【0034】(3)アグロバクテリウム菌の調製アグロバクテリウム菌は、そのTiプラスミドを無毒化したEHA101株〔Hood etal.J.Bacteriology 168:1291-1301(1986)〕を使用した。導入遺伝子としてはいかなる遺伝子であろうとも、そのプロモーターを植物用のプロモーターに置換することによって発現させ得る。ここでは選抜マーカー遺伝子となるハイグロマイシン抵抗性遺伝子とカナマイシン抵抗性遺伝子を有し、更にレポーター遺伝子としてヒマのカタラーゼ遺伝子の第1イントロンを含むβ−グルクロニダーゼ(イントロンGUS)遺伝子をT-DNA領域に有するバイナリーベクターpIG121-Hm〔中村ら、植物バイオテクノロジーII、pp.123-132、現代化学増刊、(1991)〕をアグロバクテリウム菌に形質転換して使用した。上記のイントロンGUS遺伝子を保有するアグロバクテリウム菌EHA101/pIG121-Hmをカナマイシンを50mg/l、ハイグロマイシンを50mg/lの濃度で含有するL液体培地にて、一晩30℃で培養して調製した。 【0035】(4)アグロバクテリウム菌のユーカリプタス・ダニアイ組織への感染誘導した多芽体をナイフで2〜10mmの大きさの組織片に切断した後、前記の方法で調製したアグロバクテリウム菌EHA101/pIG121-Hmの培養液に浸けた。組織片に付着した培養液を濾紙で拭き取った後、組織片をB5基本培地に2mg/l NAA、0.2mg/l 4-PU、1mMガラクトース、10μMアセトシリンゴン、3%ショ糖と0.2%ゲランガムを含有する感染培地に置床し、26℃の温度、遮光条件下で2日間静置培養して、アグロバクテリウム菌を感染させた。 【0036】(5)アグロバクテリウム菌の除菌アグロバクテリウム菌を感染させた組織片のアグロバクテリウム菌を殺菌するために、B5基本培地に対して2mg/l NAA、0.2mg/l の4-PU、3%ショ糖、更にアグロバクテリウム菌を殺菌するための抗生物質である500mg/lカルベニシリンを含有する除菌培地に移植した。これを26℃の温度、遮光条件下、2rpmの回転速度で7日間竪型回転培養して、アグロバクテリウム菌の除菌を行った。 【0037】(6)形質転換された苗条原基の形成アグロバクテリウム菌を完全に除菌した組織片を、B5基本培地に0.02mg/l NAA、0.2mg/l 4-PU、3%ショ糖、及び抗生物質ハイグロマイシンを10mg/lで含有する液体培地に、1本の試験管に対し5片の割合で植え付けた。26℃の温度、遮光条件下で7日間、更に回転培養器の上辺の光量420μmol/(m2・s)、2rpmの回転速度で1か月間竪型回転培養することによって、組織片中に黄白色で2〜3mmの形質転換したカルス形成が認められた。得られたカルスを30日間隔で新鮮培地へ継代して培養を継続した。光照射下で竪型回転培養をはじめてから60日で形質転換された苗条原基が得られた。 【0038】(7)苗条原基の苗化誘導処理竪型回転培養して得られた形質転換苗条原基を、B5基本培地に0.02mg/l NAA、0.2mg/l BA、1%ショ糖及び10mg/lハイグロマイシンを含有する苗化誘導培地に5〜10mm角程度の大きさにした苗条原基を植え付ける。そして、26℃の温度、回転培養器の上辺の光量420μmol/(m2・s)、2rpmの回転速度で6週間竪型回転培養することによって、表面に苗条の伸長が認められた。 【0039】(8)形質転換植物の再生更に、苗条を再生させるためにB5基本培地に0.02mg/l NAA、0.2mg/l BA、1%ショ糖、0.2%ゲランガム及び10mg/l ハイグロマイシンを含有する苗化培地に5〜10mm角程度の大きさにした苗条原基を移植した。そして、26℃の温度、光量45.6μmol/(m2・s)、16時間光照射下で培養した結果、移植後1か月後には苗条の再生が認められた。得られた苗条は1/4に希釈したB5基本培地に0.1mg/l IBA、1%ショ糖、0.4%寒天及び10mg/lハイグロマイシンを含有する発根培地に移植することによって、1か月後には発根が認められ完全な植物体となった。すなわち、本方法の場合、組織片への感染から形質転換植物の作出まで約6か月を要した。 【0040】以上の結果を表1に示すが、2つの個体の平均値として、苗化率は44.7%であった。 【0041】(9)形質転換植物における導入遺伝子の存在確認抗生物質による選抜によって得られてきた個体について、PCR法を用いて導入遺伝子の存在を確認したところ、全個体において導入遺伝子が確認された。このことより本方法によるユーカリ属植物の形質転換が有効であることが証明された。 【0042】(10)形質転換植物における導入遺伝子の発現確認PCR法によって導入遺伝子の存在が確認された個体につて、イントロンGUS遺伝子の発現を組織染色〔Kosugi et al. Pant Science 70:133-140(1990)〕によって調べたところ、葉の周囲、根端及び根毛において強いイントロンGUS遺伝子の発現が確認された。 【0043】<比較例1>本発明の苗化誘導処理(7)を行わなかった他はすべて実施例1と同様の方法で行った。結果は表1に示すが、苗化誘導処理を行わなかった場合、平均で13.3%の苗化率であった。このことにより本発明の苗化誘導処理が苗化率の向上に効果があることが明らかになった。 【0044】 【表1】
表の数値は、「苗化した苗条原基数/移植した苗条原基数」を示す。表の括弧内は、苗化率(%)=苗化した苗条原基数/移植した苗条原基数×100を示す。 【0045】<実施例2〜4><供試植物>ユーカリ属植物としてユーカリ・ダニアイ(Eucalyptus dunnii)を使用した。 (11)早生分枝の作出ユーカリ・ダニアイの種子(3個体)を実施例1と同様に無菌発芽させた苗条の茎頂を含む組織片を切り出し、早生分枝誘導の材料とした。この切り出した茎頂を含む組織片を、B5基本培地に対して1%ショ糖を含有する液体培地に移植し、26℃の温度、回転培養器の上辺の光量160μmol/(m2・s)、2rpmの回転速度で竪型回転培養にて早生分枝を誘導した。 【0046】(12)早生分枝の増殖上記で誘導した早生分枝を安定的に増殖させるため、B5基本培地に対して0.005mg/l BA、1%ショ糖を含有する液体培地に移植し、竪型回転培養にて3週間培養し、早生分枝を安定的に増殖した。これを実施例2とする。ベンジルアデニンの量を0.002mg/lとしたものを実施例3、ベンジルアデニンを使用しなかったものを実施例4とする。 【0047】以上の実施例2〜4について、この段階で移植した早生分枝の本数に対して増殖した早生分枝の本数を計測し、表2に示す。この結果、例えば個体2について、ホルモン無添加の場合10本中で増殖したものは7本であるが、0.005mg/l添加の場合10本中10本が増殖した。増殖に成功した各1本の早生分枝からは複数本の早生分枝が発生しており、その平均数を測定し表の( )内に記載した。例えば、個体2について見ると、ホルモン無添加で増殖に成功した各1本の早生分枝からは平均で2.8本発生しており、0.005mg/l添加の場合は平均で6.1本となっていることを示す。このことにより得られた早生分枝を、0.005mg/l BAを添加した液体培地で竪型回転培養することで効率的に安定した感染材料の作出に効果があることが明らかになった。 【0048】 【表2】
表の数値は、「増殖した早生分枝の数/移植した早生分枝の数」を示す。表の( )内は、「1本の苗条を移植し5mm以上伸長増殖した腋芽の平均本数」を示す。 【0049】以上のうち、個体2のホルモン(ベンジルアデニン)0.005mg/lを添加して増殖した早生分枝について、ナイフで2〜10mmの大きさの組織片に切断し、以後は実施例1と同様に(4)のアグロバクテリウム感染から(6)の苗条原基作成までを行った。 【0050】<苗条原基の苗化誘導処理>竪型回転培養して得られた形質転換苗条原基を、B5基本培地に0.02mg/l NAA、0.2mg/l BA、1%ショ糖及び10mg/lハイグロマイシンを含有する苗化誘導培地に5〜10mm角程度の大きさにした苗条原基を植え付ける。そして、26℃の温度、回転培養器の上辺の光量420μmol/(m2・s)、2rpmの回転速度で6週間竪型回転培養することによって、表面に苗条の伸長が認められた。 【0051】苗化誘導処理された10本の苗条原基を実施例1と同様に苗化を行い、苗化率を測定した所、5本が苗化しており、苗化率は50%であった。 【0052】<比較例2>前記において苗化誘導処理を行わなかったものを比較例2とする。苗化誘導処理を行わなかった場合、苗化率は10%であった。以上の結果をまとめて表3に記載する。 【0053】 【表3】
表の数値は、「苗化した苗条原基数/移植した苗条原基数」を示す。表の括弧内は、苗化率(%)=苗化した苗条原基数/移植した苗条原基数×100を示す。 【0054】 【発明の効果】本発明によって、産業上有用なユーカリプタス・ダニアイにおいて、効率的かつ安定的に形質転換植物の作出が可能になった。従って、従来育種法である選抜や交雑によって作出されたプラス木に対して有用遺伝子の導入ができることから、従来よりも短期間にしかも安価で有用遺伝形質を保有する新品種を供給することが可能になった。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000122298 【氏名又は名称】王子製紙株式会社
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| 【出願日】 |
平成13年4月2日(2001.4.2) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2002−291360(P2002−291360A) |
| 【公開日】 |
平成14年10月8日(2002.10.8) |
| 【出願番号】 |
特願2001−102917(P2001−102917) |
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