| 【発明の名称】 |
低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラス及びその作出方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】原田 久富美
【氏名】杉田 紳一
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| 【要約】 |
【課題】相対的な硝酸態窒素濃度の違いに基づくイタリアンライグラス植物の選抜、及び交配によって得られる低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラス及びその作出方法。
【解決手段】■.イタリアンライグラス植物を生育させ、硝酸態窒素濃度が相対的に低い植物体を選抜して交配させることにより得られる低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラス。■.イタリアンライグラス植物の遺伝的変異を利用して、硝酸態窒素濃度を低減させる低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラス。■.硝酸塩を十分に与えてイタリアンライグラス植物を生育させた後、その植物体中の硝酸態窒素濃度を測定し、硝酸態窒素濃度が相対的に低い植物体を選抜し、交配させることにより、硝酸態窒素濃度の低い植物を得る低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラスの作出方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 イタリアンライグラス植物を生育させ、硝酸態窒素濃度が相対的に低い植物体を選抜して交配させることにより得られる低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラス。 【請求項2】 イタリアンライグラス植物の遺伝的変異を利用することを特徴とする低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラス。 【請求項3】 硝酸塩を十分に与えてイタリアンライグラス植物を生育させた後、その植物体中の硝酸態窒素濃度を測定し、硝酸態窒素濃度が相対的に低い植物体を選抜し、交配させることにより、硝酸態窒素濃度の低い植物を得ることを特徴とする低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラスの作出方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、相対的な硝酸態窒素濃度の違いに基づくイタリアンライグラス植物の選抜、及び交配、または遺伝的変異の利用によって得られる低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラス及びその作出方法に関する。 【0002】 【従来の技術】畜産経営における大規模化に起因する家畜ふん尿の余剰を背景にして、家畜ふん尿が多量に自給飼料畑に還元されることが認められるようになった。ふん尿が多量還元された圃場では、土壌の窒素供給力が高まるので、このような圃場で飼料作物を生育させた場合には、作物体中に硝酸態窒素が蓄積される。作物中の硝酸態窒素は反すう家畜の硝酸中毒を引き起こすので、その濃度ができる限り低いことが望ましい。 【0003】夏作飼料作物の基幹作物であるトウモロコシ、ソルガムにおいては、硝酸態窒素濃度において、遺伝子型による違いが認められており、品種選択が重要な硝酸態窒素の低減法であるばかりでなく、交配等の従来手法による品種開発の可能性が示唆されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】ところが、冬作飼料作物の基幹作物であるイタリアンライグラスにおいては、これまでに品種間差の存在は明確ではなく、遺伝的改良の可能性は明らかではない。本発明では、イタリアンライグラスにおいて硝酸態窒素濃度について変異の存在を発見し、その変異が遺伝的形質であることを突き止め、交配による、低硝酸態窒素という新しい特徴を持ったイタリアンライグラス及びその作出方法発明した。そして、手法的にも、幼植物時における選抜という、より簡便な方法が可能であることから、硝酸態窒素の蓄積能力の低いイタリアンライグラスの選抜方法の提示、及び硝酸態窒素濃度の低いイタリアンライグラスの作出方法を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本発明は、以下の手段を有することを特徴としている。 【0006】A.イタリアンライグラス植物を生育させ、硝酸態窒素濃度が相対的に低い植物体を選抜して交配させることにより得られる低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラス。 B.イタリアンライグラス植物の遺伝的変異を利用することによる低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラス。 【0007】C.硝酸塩を十分に与えてイタリアンライグラス植物を生育させた後、その植物体中の硝酸態窒素濃度を測定し、硝酸態窒素濃度が相対的に低い植物体を選抜し、交配させることにより、硝酸態窒素濃度の低い植物を得る低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラスの作出方法。 【0008】 【作用】上記A.ないしC.(請求項1ないし3)の手段により本発明の低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラス及びその作出方法は、以下の作用を行う。硝酸態窒素を含む培養液で生育されたイタリアンライグラスの幼植物における硝酸態窒素濃度を指標として、低硝酸態窒素濃度個体の選抜を行うことにより、低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラスを育成する方法を確立した。また、硝酸態窒素濃度の遺伝的変異をを利用することにより、硝酸態窒素濃度の低いイタリアンライグラスの生産を可能とした。そして、これにより低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラスを作成し得た。 【0009】 【発明の実施の形態】以下、本発明による低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラスの作出方法の実施の形態を、図面及び表に基づいて詳細に説明する。図1はイタリアンライグラス(品種名・ニオウダチ)の幼植物における硝酸態窒素濃度を示すグラフ、図2は幼植物時と成植物時の硝酸態窒素濃度の関係を示すグラフ、図3は低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラス育成過程の概略を示す行程図、図4は幼植物時の硝酸態窒素濃度における累積選抜圧と選抜効果の関係を示すグラフ、図5は3年間にわたり、市販のイタリアンライグラス品種について圃場で栽培試験を行い、硝酸態窒素濃度を測定した結果を示すグラフである。表1はイタリアンライグラス幼植物における硝酸態窒素濃度と生育量についての相関係数(n=96)を示す。 【0010】■.低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラスの作出方法1)イタリアンライグラス(品種名・ニオウダチ)種子を発芽させた後、96個体を選抜基礎集団とする。 2)播種後2〜4週間程度の幼植物を、50mM程度の硝酸塩を含む培養液を十分に与えて数日間生育させた後、植物体中の硝酸態窒素濃度を測定する。 3)硝酸態窒素濃度が相対的に低い個体を選抜し、交配させ、採種する。 4)選抜率は約7%程度とする。 5)上記2)から4)のステップを3回繰り返すことにより、硝酸態窒素濃度の蓄積能力の低い集団(HS3系)を得る。 【0011】■.低硝酸態窒素イタリアンライグラスの測定法6)一方、幼植物時の硝酸態窒素濃度ばかりでなく窒素多量施用条件(3〜6g/m2 )における成植物の硝酸態窒素濃度も測定する。 7)植物体中の硝酸態窒素濃度の測定は、乾燥させた植物体に純水を加えて硝酸態窒素を抽出した後、10μL以下の一定量を5%サリチル酸−硫酸40μLと室温で20分間反応させた後、1mLの2N水酸化ナトリウムを添加し、反応液が室温に下がるのを待ってから、410nmにおける吸光度を測定して行う。 【0012】その結果は、以下の通りである。イタリアンライグラスの幼植物の個体別に乾物当たりの硝酸態窒素濃度を調べたところ、χ自乗検定により正規分布していた(p<0.01)。また、最大値と最小値では3倍以上の違いが認められた(図1参照)。このとき、硝酸態窒素濃度と生育量との関係を調べると、乾物生産量とは有意な相関関係は認めらず、乾物率とも低い相関係数しか得られなかった(表1参照)。従って、幼植物の硝酸態窒素濃度に認められたばらつきは、主として個体別の硝酸態窒素蓄積能力の違いに起因するという仮説が成立する。 【0013】次に、硝酸態窒素濃度の高位、中位、低位のグループを選び、圃場に移植後、窒素多量施用条件における成植物時の硝酸態窒素濃度を調べたところ、幼植物時の硝酸態窒素濃度と成植物時の硝酸態窒素濃度には有意な相関関係が認められた。すなわち、幼植物時に硝酸態窒素濃度の低い植物個体を選抜することにより、成植物時の硝酸態窒素濃度の低い個体を選抜できる。 【0014】 【表1】
【0015】幼植物時の硝酸態窒素濃度について選抜を行い作成した集団の硝酸態窒素濃度は、選抜基礎集団の硝酸態窒素濃度よりも低くなることが示された(図3及び図4参照)。第1世代の選抜反応は低かったが、第2世代では向上し、第1,2世代間における実現遺伝率は0.84であった。 【0016】以上の実験結果は、イタリアンライグラスの硝酸態窒素蓄積能力においては個体別に違いがあることを立証するばかりでなく、硝酸態窒素蓄積能力が遺伝形質であることも示している。 【0017】図5に示すように、3年間にわたり、市販のイタリアンライグラス品種について圃場で栽培試験を行ったところ、ワセアオバとワセホープIIでは硝酸態窒素濃度において分散分析により有意差(p<0.05)が認められた。従って、品種選定によっても、即ち、遺伝的変異を利用しても、硝酸態窒素濃度の低減が可能である。 【0018】 【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明による低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラス及びその作出方法は、請求項1ないし3の手段を有することにより、以下の作用効果を奏することができる。 【0019】硝酸態窒素を含む培養液で生育されたイタリアンライグラスの幼植物における硝酸態窒素濃度を指標として、低硝酸態窒素濃度個体の選抜及び交配を複数回繰り返すことにより、低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラスを育成することができた。また、イタリアンライグラスの硝酸態窒素濃度を評価することにより、硝酸態窒素の高くなりにくいイタリアンライグラスを同定し、イタリアンライグラスにおける硝酸態窒低減法としての利用を可能とした。そして、これにより低硝酸態窒素濃度のイタリアンライグラスを作成することができた。
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| 【出願人】 |
【識別番号】501203344 【氏名又は名称】独立行政法人 農業技術研究機構 【識別番号】501091224 【氏名又は名称】原田 久富美 【識別番号】501091040 【氏名又は名称】杉田 紳一
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| 【出願日】 |
平成13年3月6日(2001.3.6) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100063565 【弁理士】 【氏名又は名称】小橋 信淳
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| 【公開番号】 |
特開2002−262688(P2002−262688A) |
| 【公開日】 |
平成14年9月17日(2002.9.17) |
| 【出願番号】 |
特願2001−61891(P2001−61891) |
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