| 【発明の名称】 |
成熟種子胚軸を用いた遺伝子導入方法および遺伝子導入植物の作出方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】日高 操
【氏名】吉田 泰二
【氏名】寺内 英貴
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| 【要約】 |
【課題】遺伝子導入植物を簡便かつ効率的に得るため方法の提供。
【解決手段】成熟種子を水に浸漬し、該成熟種子の胚軸を切断して胚軸切片を作製し、得られた胚軸切片にアグロバクテリウム属の微生物を接種し、さらに接種後の胚軸切片を共存培養用培地で共存培養することを含む、植物への遺伝子導入方法、ならびに該方法により作出された植物。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 成熟種子胚軸を用いることを特徴とする、植物への遺伝子導入方法。 【請求項2】 以下(a)〜(d)の工程を含む、請求項1記載の遺伝子導入方法; (a)成熟種子を水に浸漬する工程、(b)水に浸漬した成熟種子の胚軸を切断して胚軸切片を作製する工程、(c)胚軸切片にアグロバクテリウム属の微生物を接種する工程、(d)接種後の胚軸切片を共存培養用培地で共存培養する工程。 【請求項3】 胚軸切片が0.5〜1.5mmの長さである、請求項2記載の遺伝子導入方法。 【請求項4】 胚軸切片が1mmの長さである、請求項3記載の遺伝子導入方法。 【請求項5】 胚軸切片が子葉節切断面を含む胚軸切片である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の遺伝子導入方法。 【請求項6】 植物がマメ科植物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の遺伝子導入方法。 【請求項7】 マメ科植物がダイズである、請求項6記載の遺伝子導入方法。 【請求項8】 成熟種子胚軸を用いることを特徴とする、遺伝子導入植物の作出方法。 【請求項9】 以下(a)〜(f)の工程を含む、請求項8記載の遺伝子導入植物の作出方法; (a)成熟種子を水に浸漬する工程、(b)水に浸漬した成熟種子の胚軸を切断して胚軸切片を作製する工程、(c)胚軸切片にアグロバクテリウム属の微生物を接種する工程、(d)接種後の胚軸切片を共存培養用培地で共存培養する工程、(e)共存培養後の胚軸切片を栄養培地上で培養して芽を再分化させる工程、(f)再分化した芽を栄養培地上で発達させて植物体を作出する工程。 【請求項10】 胚軸切片が0.5〜1.5mmの長さである、請求項9記載の遺伝子導入植物の作出方法。 【請求項11】 胚軸切片が1mmの長さである、請求項10記載の遺伝子導入植物の作出方法。 【請求項12】 工程(e)において、胚軸切片が子葉節切断面を含む胚軸切片であり、該胚軸切片の種皮側が下になるように、該胚軸切片を栄養培地に埋める、請求項9〜11のいずれか1項に記載の遺伝子導入植物の作出方法。 【請求項13】 工程(e)において、胚軸切片が子葉節切断面を含む胚軸切片であり、該胚軸切片の根側が下になるように、該胚軸切片を栄養培地に置く、請求項9〜11のいずれか1項に記載の遺伝子導入植物の作出方法。 【請求項14】 工程(e)において、胚軸切片が子葉節切断面を含まない胚軸切片であり、該胚軸切片の根側が上になるように、該胚軸切片を栄養培地に置く、請求項9〜11のいずれか1項に記載の遺伝子導入植物の作出方法。 【請求項15】 工程(e)において、胚軸切片が子葉節切断面を含まない胚軸切片であり、該胚軸切片の根側が下になるように、該胚軸切片を栄養培地に置く、請求項9〜11のいずれか1項に記載の遺伝子導入植物の作出方法。 【請求項16】 工程(d)において、胚軸切片を共存培養用培地に埋めて培養する、請求項9〜11のいずれか1項に記載の遺伝子導入植物の作出方法。 【請求項17】 工程(e)において、胚軸切片を軸に対して垂直に2つに切断した後、元の切断面が栄養培地に接するように該培地上に置く、請求項16記載の遺伝子導入植物の作出方法。 【請求項18】 遺伝子導入植物がマメ科植物である、請求項9〜17のいずれか1項に記載の遺伝子導入植物の作出方法。 【請求項19】 マメ科植物がダイズである、請求項18載の遺伝子導入植物の作出方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、成熟種子胚軸を用いて植物に遺伝子を導入する方法、および成熟種子胚軸から遺伝子導入植物を作出する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】遺伝子組み換えダイズはすでに未熟種子(Christou,P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.,86,7500-7504(1989);McCabe,D.E.ら、Bio/technology,6, 923-926(1988);Parrot,W.A.ら、Plant Cell Reports,7,615-617(1989);Sato,S.ら、Plant CellReports,12,408-413(1993))、未熟種子由来カルス(Finer,J.ら、In Vitro Cell. Dev. Biol.,27P,175-182(1991);Liu,W.ら、Plant Cell, Tissue and OrganCulture,47,33-42(1996);Samoylov,V.M.ら、Plant Cell Reports,18,49-54(1998);Sato,S.ら(上掲);Stewart,C.N.ら、Gene.Plant Physiol.,112,121-129(1996))および発芽種子(幼植物体または苗ともいう)の子葉節(Chee,P.P.ら、Plant Physiol.,91,1212-1218(1989);Di,R.ら、Plant Cell Reports,15,746-750(1996);Meurer,C.A.ら、Plant Cell Reports,18,180-186(1998))を用いて作出されている。しかし、未熟種子由来カルスおよび発芽種子子葉節からの植物体については、各種の変異が発生していることが報告されている(Barwale,U.B.ら、Plant CellReports,6,365-368(1987);Graybosch,R.A.ら、Crop Sci,27(803-806)(1987);Hawbaker,M.S.ら、Theor.Appl.Genet.,87,49-53(1993);Amberger,L.A.ら、CropSci.,32,1103-1108(1992))。また、発芽種子子葉節を用いた場合、形質転換されていない既存の芽原基から芽が発生し、再生植物体に形質転換細胞と非形質転換細胞が混在すること(キメラ現象)が指摘されている(McCabe,D.E.ら(上掲);Christou.P.ら(上掲);Sato,S.ら(上掲))。また、いずれの方法も、操作が煩雑で、また、形質転換効率が低いこと、形質転換植物体が得られるまで長期間かかることが指摘されている。 【0003】芽原基を含まない胚軸を材料として用いた場合、形質転換植物体がキメラになる率が低いと推測され、形質転換の材料として有力であると考えられる。胚軸を材料として用いた例としては、最近、発芽後14日目の苗の胚軸からの芽形成がサイトカイニンを用いて報告されているが(Kaneda,Y.ら、Plant Cell Reports,17,8-12(1997))、形質転換植物体作出の報告例はない。 【0004】成熟種子を材料に用いた場合、操作が簡便であるが、植物体再生の報告は少ない。例えば、1晩水に浸漬した成熟種子の子葉の基部からの植物体の再生の報告があるが(Mante,S.ら、In Vitro Cellular & Developmental Biology,25(4),385-388(1989))、形質転換植物体の報告例はない。また、子葉の基部は成長点に近い部位であるので既存の芽原基が生長する可能性があり、形質転換の材料に用いた場合、キメラ現象が起こる可能性が推測される。成熟種子胚軸を材料とする植物体再生の報告はない。 【0005】従って、今後、ダイズの形質転換の効率化を図るためには、再分化植物体が変異を含まないこと、キメラ現象を少なくすること、操作が簡便で、短期間で結果が得られることが重要である。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、植物、特にダイズに効率的に遺伝子を導入する方法を提供すると共に、遺伝子導入植物、特に遺伝子導入ダイズを効率的に作出する方法を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、従来は植物体再生が認められなかった成熟種子胚軸を材料として用い、該胚軸を切断して0.5mm〜1.5mm、好ましくは1mmの長さの胚軸切片とすることにより、その切断面から芽が形成されることを見出した。さらに、該胚軸切片の置床条件を検討することにより、芽を再分化させようとする切断面に応じて置床条件を変更することで極めて高い芽形成効果があることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。 【0008】すなわち本発明は、成熟種子胚軸を用いることを特徴とする、植物への遺伝子導入方法である。また本発明は、成熟種子胚軸を用いることを特徴とする、遺伝子導入植物の作出方法である。 【0009】 【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の植物への遺伝子導入方法は、成熟種子胚軸を用いることを特徴とする。また、本発明の遺伝子導入方法は、以下(a)〜(d)の工程を含むことを特徴とする; (a)成熟種子を水に浸漬する工程、(b)水に浸漬した成熟種子の胚軸を切断して胚軸切片を作製する工程、(c)胚軸切片にアグロバクテリウム属の微生物を接種する工程、および(d)接種後の胚軸切片を共存培養用培地で共存培養する工程。 【0010】本発明の遺伝子導入方法に用いる植物は、その成熟種子胚軸が利用可能である限り特に限定されるものではないが、例えば、マメ科植物であるインゲンマメ、エンドウ、ササゲ、ソラマメ、ダイズ、ナンキンマメ、ヒヨコマメ属、ウリ科植物であるカボチャ、メロン属、バラ科植物であるリンゴ、ナシ、サクラ属の植物を挙げることができる。また、限定するものではないが、ダイズ属(Glycine)としては例えばダイズ(Glycine max)を挙げることができる。成熟種子胚軸を利用し得るダイズ品種としては、例えば、おおすず、エンレイ、コスズ、スズカリ、スズユタカ、タチユタカ、タマホマレ、Fayette、Ilosoy、Jack、Lee、Williamsを挙げることができるが、これに限定されない。これらの成熟種子は、必要に応じて農林水産省農業生物資源研究所遺伝資源第2部遺伝資源管理情報科或いは東北農業試験場作物開発部育種工学研究室から分譲により入手することができる。 【0011】以下、各工程について詳しく説明する。 (a)成熟種子を水に浸漬する工程成熟種子を当業者に公知の手法に従い、例えば70%アルコールで30秒、引き続いて10%アンチホルミン(次亜塩素酸ナトリウム溶液有効塩素5%以上、和光純薬工業株式会社)で15分処理して滅菌、水洗する。次に、成熟種子を種子の上面から水面までの幅が5mm程度に水に浸漬する。種子を完全に水中に浸漬することにより、種子の発芽を抑制できる。また、乾燥した種子を浸漬することにより、種子が膨潤し、種子、子葉、幼芽と胚軸の分離および胚軸の切断を容易にすることができる。浸漬する期間は、2時間〜1週間、好ましくは2時間〜3日間とする。長時間の浸漬が雑菌の汚染を招く場合、浸漬時間を2〜6時間とすることができる。 【0012】(b)水に浸漬した成熟種子の胚軸を切断して胚軸切片を作製する工程次に、種皮、子葉、幼芽を取り除いて成熟種子胚軸を得る。この時点で、約6〜7mm長の胚軸が得られる。この胚軸を当業者に公知の手法により、胚軸の軸の方向に対して垂直に切断して、遺伝子導入材料とする胚軸切片を作製する。本発明の遺伝子導入方法において用いる胚軸切片としては、限定するものではないが、0.5〜1.5mm、好ましくは1mmの長さの胚軸切片がその遺伝子導入効率および芽形成能の点から好ましい。また、該胚軸切片は、子葉節からの距離が0〜1mmである(すなわち子葉節切断面を含む)胚軸切片、および子葉節からの距離が1〜2mmである胚軸切片が好ましい。 【0013】(c)胚軸切片にアグロバクテリウム属の微生物を接種する工程胚軸切片へのアグロバクテリウム属の微生物の接種は、当業者に公知のアグロバクテリウム法に従って、例えば、目的とする遺伝子を含むベクターを導入したアグロバクテリウム属の微生物を含む接種用培地に前記胚軸切片を漬け、その後これを培養することにより実施する。 【0014】アグロバクテリウム属の微生物としては、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciences)が好ましく、特にEHA101株(名古屋大学 中村研三博士より、必要に応じて分譲により入手可能)が好ましいが、これに限定されない。アグロバクテリウム属の微生物に導入するベクターとしては、pBI121(Clontech)等の一般的なベクターを用いることができるが、これに限定されない。 【0015】またベクターは、目的とする遺伝子の他に、例えばレポーター遺伝子、選抜マーカー遺伝子、プロモーター遺伝子等の他の遺伝子を含有していてもよい。レポーター遺伝子としては、例えばGUS遺伝子を挙げることができるが、これに限定されない。選抜マーカー遺伝子としては、例えばカナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を挙げることができるが、これに限定されない。また、プロモーター遺伝子としては、例えばオメガ(Mitsuhara,I.ら、Plant Cell Physiol.,37,49-59(1996))を挙げることができるが、これに限定されない。 【0016】具体的には、本発明の方法で使用するベクターとして、pBE7133GUS(Mitsuhara(1996))のGUS遺伝子をイントロンGUS遺伝子(Ohta(1990))に変えたベクターpBE7133intronGUSを挙げることができる。尚、該ベクターは本発明者らにより構築されたものである。目的とする遺伝子および他の遺伝子の前期ベクターへの組み込み、このベクターのアグロバクテリウム属の微生物への導入は、当業者に公知の手法により実施することができる。 【0017】接種用培地としては、植物細胞を培養するために通常用いられている培地を用いることができるが、遺伝子導入効率を上げるため、アセトシリンゴン等のフェノール化合物を接種用培地に添加することが必要である。 【0018】具体的には、接種用培地として、例えばB5無機塩(Gamborg,O.L.ら、Exp.cell Res.,50,151-158(1968))、MSビタミン(Murashige,T.ら、Physiol.Plant.,15,473-497(1962))、4μMチジアズロン(TDZ)、2%ショ糖および100μMアセトシリンゴンからなる培地(pH5.7)を用いることができるが、これに限定されない。尚、この培地を用いる場合、アセトシリンゴンのみジメチルスルホキシドに溶かし、規定濃度になるようオートクレーブ後に前記培地に加える。 【0019】接種用培地における前記微生物の濃度は、前記微生物により前記胚軸切片に十分に遺伝子導入が行われる濃度であれば特に限定されないが、例えば、接種用培地1mLあたり109個の微生物菌体とすることができる。 【0020】前記接種用培地への胚軸切片の処理方法は、胚軸の活性および芽形成能が低下しない条件であれば特に限定するものではないが、例えば、胚軸切片を5mLの接種用培地の入った50mL試験管中で処理することが好ましい。処理した前記胚軸切片の培養条件は、例えば、22℃、暗黒下で、時々アグロバクテリウム属の微生物と該胚軸切片とがなじむように穏やかに振りながら5〜30分の培養、とすることができるが、これに限定されない。 【0021】(d)接種後の胚軸切片を共存培養用培地で共存培養する工程さらに、接種を確実にするため、上記接種処理の終わった胚軸切片を共存培養用培地で培養する。共存培養は、胚軸切片の遺伝子導入したい切断面を培地上に接するように置くかまたは培地中に埋めることにより行う。 【0022】共存培養用培地は、植物細胞を培養するために通常用いられている培地を用いることができるが、該胚軸のもつ芽形成能を低下させないため、サイトカイニン(例えば、TDZ、べンジルアミノプリン、カイネチン、ゼアチン)を加えることが好ましい。また、遺伝子導入効率の向上のため、アセトシリンゴン等のフェノール化合物を共存用培地に添加することが必要である。 【0023】具体的には、例えばB5無機塩、MSビタミン、4μM TDZ、2%ショ糖、100μMアセトシリンゴン、1.4%寒天、pH5.7からなる培地を用いることができるが、これに限定されない。共存培養条件は、植物培養の際に用いられる条件であれば特に限定されないが、好ましくは温度条件は22℃以下とする。また光条件は0〜3000lux、好ましくは0luxとする。さらに、共存培養の日数は2〜5日、好ましくは3日とすることができるが、これに限定されない。 【0024】以上の操作により、植物(胚軸切片)に遺伝子が導入される。尚、植物に目的とする遺伝子が導入されたか否かは、当業者に公知の手法により、例えば、接種開始3〜6日後のGUSトランジェントアッセイ(GUS遺伝子の発現ベクターの導入された細胞が、青色に呈色する反応を利用して、遺伝子の導入効率を測定する方法で、具体的には、GUS遺伝子導入処理ダイズの胚軸を、反応溶液(1mM X-gluc〔5-Bromo-4-chloro-3-indolyl-β-D-glucuronide Cyclohexylammonium Salt〕、50mMリン酸ナトリウム緩衝液〔pH7.0〕、10mM EDTA、0.1%Triton X-100、0.1%Sarkosyl、10mM2−メルカプトエタノール)に、37℃、24時間浸けた後、遺伝子導入効率を測定する)により確認することができる。この際、遺伝子導入細胞はいずれの切断面でも観察されるが、共存培養用培地に埋まっているか接している切断面での遺伝子導入効率が高く、空気中にある切断面での遺伝子導入効率は低い。また、子葉節切断面(すなわち胚軸において子葉節から0mmの切断面)では全体的に遺伝子導入効率が高いが、特に茎頂分裂組織周辺の組織で高い。一方、子葉節以外の胚軸切断面(例えば、子葉節から1または2mmの距離にある切断面)では、該切断面の周囲部分の遺伝子導入効率が高い。従って、遺伝子導入植物体は子葉節では茎頂分裂組織周辺、子葉節以外の胚軸切断面では該切断面の周囲部分で効率的に得られる。 【0025】本発明の遺伝子導入植物の作出方法は、成熟種子胚軸を用いることを特徴とする。また本発明の遺伝子導入植物の作出方法は、以下(a)〜(f)の工程を含むことを特徴とする; (a)成熟種子を水に浸漬する工程、(b)水に浸漬した成熟種子の胚軸を切断して胚軸切片を作製する工程、(c)胚軸切片にアグロバクテリウム属の微生物を接種する工程、(d)接種後の胚軸切片を共存培養用培地で共存培養する工程、(e)共存培養後の胚軸切片を栄養培地上で培養して芽を再分化させる工程、および(f)再分化した芽を栄養培地上で発達させて植物体を作出する工程。 【0026】本発明の遺伝子導入植物の作出方法により得られる植物は、その成熟種子胚軸が由来する植物である限り特に限定されるものではないが、例えばマメ科植物であるインゲンマメ、エンドウ、ササゲ、ソラマメ、ダイズ、ナンキンマメ、ヒヨコマメ属、ウリ科植物であるカボチャ、メロン属、バラ科植物であるリンゴ、ナシ、サクラ属の植物を挙げることができる。また、限定するものではないが、ダイズ属(Glycine)としては例えばダイズ(Glycine max)を挙げることができる。 【0027】以下、工程(e)および(f)について説明する。尚、工程(a)〜(d)については、本発明の遺伝子導入方法の説明箇所において既に詳述してある。 【0028】(e)共存培養後の胚軸切片を栄養培地上で培養して芽を再分化させる工程まず、前述の工程(d)において共存培養した胚軸切片に付着しているアグロバクテリウム属の微生物を除菌し、その後栄養培地を用いて、遺伝子導入した胚軸切片から芽を再分化させる。除菌は、例えば、前記の共存培養培地をカルベニシリン、セフォタキシム等の抗生物質を含んだ液体培地で洗浄することにより実施することができるが、これに限定されない。この洗浄はアグロバクテリウム属の微生物による白濁が見られなくなるまで行う。その後、さらに除菌の効果を上げるため、低速の振とう培養を行うこともできる。この振とう培養は、例えば、1〜3日間程度、3〜4回培地を交換することにより実施できるが、これに限定されない。目安としては、培地が白濁し始めたと同時に培地を交換し、1日以上培養して液が透明な場合のみ次のステップに進むこととする。 【0029】除菌に使用する培地の種類は、植物細胞の培養に通常用いられる培地であって、かつ胚軸切片の芽形成能を低下させない培地であれば特に限定されるものではないが、サイトカイニン、例えば、TDZ、ベンジルアミノプリン、カイネチン、ゼアチン等を加えることが好ましい。具体的には、かかる培地として、例えばB5無機塩、MSビタミン、4μM TDZ、2%ショ糖、500mMカルベニシリン、pH5.7からなる培地を用いることができるが、これに限定されない。 【0030】除菌後、栄養培地を用いて、遺伝子導入した胚軸切片から芽を再分化させる。使用する栄養培地としては、上記同様に、植物細胞の培養に通常用いられる培地であって、かつ胚軸切片の芽形成能を低下させない培地であれば特に限定されないが、サイトカイニン、例えば、TDZ、ベンジルアミノプリン、カイネチン、ゼアチン等を加えることが好ましい。特にTDZを加えることが好ましい。 【0031】さらに、遺伝子導入された組織(胚軸切片)を選抜するために、前記栄養培地中に選抜マーカーを加えることができる。選抜マーカーとして抗生物質を用いる場合、限定するものではないが、例えば、カナマイシン、ハイグロマイシンBを栄養培地中に加える。この場合、栄養培地1L当たりの抗生物質の濃度は、カナマイシンでは50〜150mg/L、ハイグロマイシンBでは20〜30mg/Lとすることが好ましいが、これに限定されない。 【0032】また、アグロバクテリウム属の微生物の増殖を防ぎ、除菌を完全にするため、前記栄養培地にカルベニシリン、セフォタキシム等のアグロバクテリウム除菌用の抗生物質を加えることが望ましい。この場合、栄養培地1L当たりの抗生物質の濃度は、50〜250mg/Lとすることが好ましいが、これに限定されない。 【0033】具体的には、前記栄養培地として、例えばB5無機塩、MSビタミン、4μMTDZ、2%ショ糖、100mg/Lカナマイシン、100mg/Lカルベニシリン、1.4%寒天、pH5.7からなる培地を用いることができるが、これに限定されない。 【0034】胚軸切片の前記栄養培地への置床方法は、芽を再分化させることのできる方法であれば特に限定されないが、例えば、胚軸切片が子葉節切断面を含む胚軸切片である場合には、該胚軸切片の種皮側が下になるようにして栄養培地に埋めるか、または該胚軸切片の根側が下になるようにして栄養培地に置くことが好ましい。種皮側が下になるように栄養培地に埋めた場合、特に該胚軸切片の子葉節切断面から芽が効率的に再分化される。また根側が下になるように栄養培地に置いた場合、該胚軸切片の根側の切断面から芽が効率的に再分化される。あるいは、胚軸切片が子葉節切断面を含まない胚軸切片である場合には、該胚軸切片の根側が上になるようにして栄養培地に置くか、または該胚軸切片の根側が下になるようにして栄養培地に置くことが好ましい。この場合には、それぞれ子葉節側の切断面および根側の切断面から芽が効率的に再分化される。 【0035】さらに、前述の工程(d)において胚軸切片を共存培養用培地に埋めて培養する場合、この胚軸切片を軸に対して垂直に2つに切断した後、元の切断面が栄養培地に接するように該培地上に置くことが好ましい。これは、胚軸切片を培地中に埋めることにより該胚軸切片の両切断面の細胞が遺伝子導入されるからである。 【0036】上記の栄養培地および置床条件を使用して、胚軸切片を、通常の植物細胞の培養条件下で、例えば25℃、3000ルックス(16時間日長)で30日間培養することにより、胚軸切片の切断面から芽が再分化される。再分化された芽は、子葉節切断面では、主に茎頂分裂組織あるいは茎頂分裂組織の周辺組織から形成される。一方、子葉節以外の切断面では、切断面の周囲で芽が形成される。これは、先に述べた高いGUS活性の部位と一致する。 【0037】形成された芽をさらに生育させるため、茎の伸長を促すホルモンを加えた培地に移植する。十分生育させた後、発根に有効なホルモンを加えた培地に移植し発根させることにより、遺伝子導入植物体を得ることができる。 【0038】茎の伸長を促すホルモンとしては、例えばジベレリン酸を挙げることができるが、これに限定されない。また、発根に有効なホルモンとしては、例えば3−インドール酪酸、3−インドール酢酸を挙げることができるが、これに限定されない。芽の生育および発根条件は、それぞれ例えば、培地としてB5無機塩、MSビタミン、1μMジベレリン酸、2%ショ糖、0.4%寒天、pH5.7からなるものを用い、25℃、16時間の日長(3000lux)で培養(芽の生育条件)、および培地としてはB5無機塩、MSビタミン、1μM3−インドール酪酸、2%ショ糖、0.2%ゲルライト、pH5.7からなるものを用い、25℃、16時間の日長(3000lux)で培養(発根条件)とすることができるが、これに限定されない。 【0039】上記操作により得られた遺伝子導入植物体における遺伝子の導入および発現の確認は、当業者に公知の手法に従って、例えば該遺伝子の配列を元に作成したプライマーを用いて、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法またはノーザンハイブリダイゼーション法により実施することができる。さらに、当業者に公知の組織化学的手法、例えばGUS活性測定法(GUS遺伝子の発現ベクターを導入した組織が、青色に呈色する反応を利用して、遺伝子の導入および発現の強弱を測定する方法)によって導入した遺伝子の活性を確認することにより、該遺伝子の発現を確認することができる。 【0040】 【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。 〔実施例1〕成熟種子胚軸からの芽形成条件の検討東北地域の主要奨励ダイズ品種である「おおすず」の成熟種子を70%エタノール液に30秒、10%アンチホルミン液に15分浸け、その後滅菌水で洗浄することにより殺菌し、これを滅菌水で4〜6時間浸漬した。成熟種子を水に浸漬することにより、本来は直径8mm前後の大きさの成熟種子が長さ15mm、幅10mm程度にまでふくらんだ。この成熟種子から種皮、子葉、茎頂を取り除いて胚軸を得た。得られた胚軸は長さの平均は6.81mmであった。成熟種子を浸漬することにより、乾燥した成熟種子に比較して、種皮、子葉、茎頂と胚軸の分離および胚軸の切断が容易になった。次に、得られた成熟種子胚軸を、子葉節からの距離が1mmおよび2mmの距離にある所で、胚軸の軸に対して垂直に切断して、2種の胚軸切片(各1mm)を作製した。 【0041】上記2種の胚軸切片を材料として使用し、4μMのチジアズロン(TDZ)を加えたB5改変寒天培地(B5無機塩(Gamborg,O.L.ら、Exp.cell Res.,50,151-158(1968))、MSビタミン(Murashige,T.ら、Physiol.Plant.,15,473-497(1962))、2%ショ糖、1.4%寒天、pH5.7)において、胚軸切片の4種の切断面での芽形成率の違い、および置床方法が該切片の芽形成率に及ぼす影響を調べた。 【0042】まず、子葉節から0〜1mmの胚軸切片の子葉節を含む切断面および根側の切断面をそれぞれCNおよびH1、ならびに子葉節から1〜2mmの胚軸切片の子葉節側の切断面および根側の切断面をそれぞれH2およびH3とした。また、置床方法は、前記胚軸切片の■根側を下に縦向きに培地上に置く、■根側を上に縦向きに置く、■外側(種皮側)を下に横向きに置く、■内側(子葉側)を下に横向きに置く、■根側を下に縦向きに培地中に埋める、■根側を上に縦向きに埋める、■外側を下に横向きに埋める、の7通りとした。培養は25℃、3000lux(白色灯、16時間日長)で7週間実施した。以上の操作を4回反復して行い(各反復10切片)、各芽形成数の平均をとった。得られた結果を下記表1に示す。 【0043】 【表1】
【0044】(結果)CN(子葉節から0〜1mmの切片、子葉節側切断面)では、どの置床条件においても芽形成が認められた。また、特に胚軸切片の外側を下に埋める(■)と効果的であった。一方、H1(子葉節から0〜1mmの切片、根側切断面)、H2(子葉節から1〜2mmの切片、子葉節側切断面)およびH3(子葉節から1〜2mmの切片、根側切断面)では、置床方法により芽の形成率が著しく異なった。すなわち、縦向きに培地に置いた場合(■および■)は、培地に接している切断面のみから芽が形成された。また、横向きにおいた場合(■および■)はH2のみで培地に接した部位から低率で芽形成が認められた。縦向きに埋めた場合(■および■)、培養中に生長し、下の位置の切断面が培地に接するようになり、接した切断面より低率で芽が形成された。さらに、横向きに埋めた場合(■)は、H1〜H3のいずれの切断面においても芽形成は認められなかった。 【0045】〔実施例2〕 チジアズロン(TDZ)の濃度が成熟種子胚軸からの芽形成に及ぼす影響の検討次に、実施例1と同様に調製した胚軸切片(切断面C1、H1〜H3)を、種々の濃度(0, 0.2, 0.4, 1, 2, 4, 10μM)のTDZを加えたB5改変寒天培地に根側切断面を下に向けて置いて、実施例1と同様に培養し、TDZ濃度が成熟種子胚軸の芽形成に及ぼす影響を調べた。結果を下記表2に示す。 【0046】 【表2】
【0047】(結果)CN(子葉節から0〜1mmの子葉節側切断面)では、TDZの濃度に関係なく芽が形成された。また、H1(子葉節から0〜1mmの根側切断面)では、4μMのTDZで高い芽形成率(83%)を示した。一方、H3(子葉節から1〜2mmの根側切断面)では10μMのTDZで芽形成率が向上したものの、23%に留まった。 【0048】〔実施例3〕品種間における芽形成能の比較下記表3に列挙したダイズ品種の成熟種子を用いて実施例1と同様に調製した胚軸切片(切断面C1、H1〜H3)を、それぞれ根側の切断面を下に向けて4μM TDZを加えたB5改変寒天培地に置いた場合に、その芽形成能に品種間差がみられるか否かを調べた。培養は実施例1に記載した通りに行った。結果を下記表3に示す。 【0049】 【表3】
【0050】(結果)CN(子葉節から0〜1mmの子葉節側切断面)では、全ての品種において高率で芽の形成が認められた。一方、H1(子葉節から0〜1mmの根側切断面)およびH3(子葉節から1〜2mmの根側切断面)では、品種間によりその芽形成能に差が認められた。 【0051】〔実施例4〕 胚軸の長さが成熟種子胚軸からの芽形成に及ぼす影響の検討ダイズ品種「おおすず」の成熟種子胚軸上部を、0.57mm、1.14mmおよび2.27mmの長さの切片に切断し、根側切断面を下に向けて4μM TDZを加えたB5改変寒天培地に置き、実施例1と同様に培養し、胚軸の長さが成熟種子胚軸の芽形成に及ぼす影響を調べた。結果を下記表4に示す。 【0052】 【表4】
【0053】(結果)長さ0.57mmの胚軸切片において、子葉節からの距離が1.14mmまでの根側切断面で、62〜42%の芽形成率を示し、長さ1.14mmの胚軸切片において、子葉節からの距離が1.14mmの根側切断面において高い芽形成率(96%)を示した。一方、長さ2.27mmの胚軸切片の根側切断面においては、芽の形成は認められなかった。 【0054】〔実施例5〕 成熟種子の浸漬時間が芽形成に及ぼす影響の検討ダイズ品種「おおすず」を用いて、成熟種子の浸漬時間が芽形成に影響を及ぼすか否かを調べた。浸漬時間は、下記表5に示す通り、2時間〜7日間とした。浸漬後、実施例1と同様にして胚軸を単離し、該胚軸を子葉節からの距離が1mmの所で切断して、胚軸切片(長さ1mm)を作製、根側の切断面を下に向けて4μM TDZを加えたB5改変寒天培地上に置いた。培養は実施例1に記載した通りに行った。結果を併せて下記表5に示す。 【0055】 【表5】
【0056】(結果)種子の浸漬時間が2時間から3日間の場合、芽形成率は78〜95%と高率であった。種子の浸漬時間が5日間の場合、芽形成率35%に留まった。 【0057】〔実施例6〕遺伝子導入ダイズの作出ダイズ品種「Williams 82」の成熟種子を、70%エタノールで30秒、10%アンチホルミン(次亜塩素酸ナトリウム溶液、有効塩素5%以上、Wako品名コード197-02206)で15分表面を滅菌した。滅菌処理は直径90mm高さ20mmのシャーレ(TERUMO品名コードSH-20S)を用いて行い、滅菌水で成熟種子を4回以上洗い、滅菌液を完全に取り除いた。その後、種子を滅菌水で3時間、室温で浸漬した。次に、種皮、子葉、茎頂を、ピンセットを用いて取り除いて胚軸(長さ約6mm)を得た。次に、得られた胚軸を、メスを用いて、胚軸上部の子葉節からの距離が約1mmのところで切断し、子葉節部分を含む約1mmの切片を作製し、遺伝子導入ダイズを作出するための材料として用いた。 【0058】まず、pBE7133GUS(Mitsuhara(1996))のGUS遺伝子をイントロンGUS遺伝子(Ohta,S.ら、Plant Cell Physiol.,31,805-813(1990))に変えたベクターpBE7133intronGUSを構築した。次に、このベクターを電気融合装置(BIO-RAD Gene Pulser)でアグリバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciences) EHA101株(名古屋大学 中村研三博士より分譲により入手)に導入した。 【0059】この菌株を、50mg/Lのカナマイシンと50mg/LのハイグロマイシンBとを含む1.2%バクトアガー(DIFCO品名コード214010)を加えたLB培地(DAIGO、Wako品名コード396-00871)上で25℃で2〜3日間培養し、耐性菌を得た。さらに、PCRによりベクターの導入が確認された菌を−80℃で保存し、以下の操作に用いた。導入の確認は、コロニーPCR法により、カナマイシン抵抗性遺伝子を検出するためのプライマーセット(kan1:5'-GCACAACAGACAATCGGCT-3' [配列番号1]、kan2:5'-AAGAAGGCGATAGAAGGCG-3' [配列番号2])をPremix Taq(Ex Taq,、TaKaRa、品名コードRR003A)に加えて反応し、アガロース電気泳動を行って、約700bpの増幅DNAの有無により判定した。PCR条件は、変性:94℃,1分、アニーリング:55℃,1分、伸長:72℃,1分で30サイクルであった。 【0060】次に、上記で得られた菌を、更に50mg/Lのカナマイシンと50mg/LのハイグロマイシンBとを含むLB培地で、120spm(毎分120往復)、25℃、暗黒下で一昼夜培養した。その後、培地を毎分3000回転(TOMY LC06)で遠心して菌を沈殿させ、接種用培地に該培地1mLあたり109個の細胞となるように混ぜた。尚、接種用培地は、B5無機塩(Gamborg,O.L.ら、Exp.cell Res.,50,151-158(1968))、MSビタミン(Murashige,T.ら、Physiol.Plant.,15,473-497(1962))、4μM TDZ、2%ショ糖および100μMアセトシリンゴンからなるものであった(pH5.7)。アセトシリンゴンのみジメチルスルホキシドに溶かし、規定濃度になるようオートクレーブ後に前記培地に加えた。 【0061】胚軸切片への接種には50mL試験管を用い、前記培地10mLに50個の胚軸切片を入れた。接種処理は、時々菌と切片がなじむように緩やかに振り、15分行った。操作は温度が22℃になるよう調節したクリーンベンチ(TABAI Cleartron)内で行った。 【0062】接種処理後、胚軸切片を濾紙上に置き、軽く接種用培地を除いた。次に、前記接種用培地にさらに1.4%寒天を加えた共存培養用培地20mLを直径90mm高さ20mmのシャーレ中に入れ、該培地に前記胚軸切片50個を胚軸を横向きに埋め、3日間、22℃で暗黒下で培養した。 【0063】次に、胚軸切片を上記培地から取り出し、除菌用培地(B5無機塩、MSビタミン、4μM TDZ、2%ショ糖および500mg/Lのカルベニシリン、pH5.7)を用いて、洗浄液が透明になるまで洗浄した。この洗浄処理は、前記胚軸切片を、前記除菌用培地を7.5mL入れた直径60mmのシャーレ(IWAKIコード3010-060)に3回移し変えることにより行った。 【0064】さらに前記と同じ除菌用培地を用い、直径60mmのシャーレに該培地を7.5mL、胚軸切片30個を入れ、3日間、毎分40回転で旋回培養することで除菌を継続した。この際、培養条件は25℃、2000lux(白色灯、16時間日長)とした。培地は1日1回交換した。 【0065】3日間の培養後、胚軸切片をさらに横に2つに切断し、元の切断面が選抜用培地(B5無機塩、MSビタミン、4μM TDZ、2%ショ糖、1.4%寒天、pH5.7に、250mg/Lのカルベニシリンと100mg/Lのカナマイシンを加えたもの)に接する様にして該培地上に置いた。この際、直径90mm高さ20mmのシャーレに前記培地を20mL入れ、20個の胚軸切片(さらに横に2つに切断したもの)を置いて培養した。カルベニシリンおよびカナマイシンについては、培地温度が固化直前になるまで低下した後、規定濃度になる様に培地に加えた。培養条件は25℃、3000lux(白色灯、16時間日長)とした。3週間後、同じ培地に移植し、同じ条件下でさらに3週間培養した。 【0066】選抜用培地に胚軸切片を移してから6週間後には、10.2%(147切片の内、15切片)の切片の子葉節切断面と7.5%(147切片の内、11)の切片の根側切断面とに緑色の球状体あるいは芽が認められた。 【0067】これらの内の一部において、X-Gluc (5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロン酸)を用いた組織化学的な方法(GUS遺伝子導入処理ダイズの葉を1mmの切片に切断し、反応溶液(1mM X-gluc gluc 〔5-Bromo-4-chloro-3-indolyl-β-D-glucuronide Cyclohexylammonium Salt〕、50mMリン酸ナトリウム緩衝液〔pH7.0〕、10mM EDTA、0.1%Triton X-100、0.1%Sarkosyl、10mM2−メルカプトエタノール)に、37℃、24時間浸けた。GUS遺伝子が導入されている場合のみ、葉は青色を呈するのでGUS遺伝子の導入を確認できる)でβ−グルクロニダーゼ活性(GUS活性)が認められ、GUS遺伝子が導入された組織であることが確認された。 【0068】GUS活性が確認された緑色部位あるいは芽の生長を促すため、直径90mm高さ20mmのシャーレに伸長用培地20mLを入れ、該培地に緑色部位あるいは芽が形成された胚軸切片5〜6個をやや埋めるようにして移植した。伸長用培地としては、B5無機塩、MSビタミン、1μM ジベレリン酸、2%ショ糖、0.4%寒天、pH5.7に100mg/Lのカルベニシリンを加えた培地を用いた。カルベニシリンは培地温度が固化直前になるまで低下した後、規定濃度になる様に培地に加えた。培養は、培養は、25℃、3000ルックス(白色灯、16時間日長)で行った。 【0069】1ヶ月後、1cm以上に生長した芽を胚軸切片から丁寧に単離し、発根用培地に移植した。発根用培地としては、B5無機塩、MSビタミン、1μM3−インドール酪酸、2%ショ糖、0.2%ゲルライト、pH5.7からなるものを用いた。直径90mm高さ20mmのシャーレに前記培地を20mL入れ、単離した5〜6個の芽をやや埋めるようにして移植し、培養した。培養は、25℃、3000ルックス(白色灯、16時間日長)で行った。 【0070】培養後、発根した小植物体をフロリライト222(旭テクノグラス(株)品名コードFL0222)を4個入れた角型培養瓶(容量655mL)に移植した。フロリライトには、塩濃度とビタミン濃度およびショ糖濃度をいずれも1/2にしたB5改変培地(1/2塩濃度のB5無機塩、1/2濃度のMSビタミン、1%ショ糖)を規定量(25.6mL/4個フロリライト)含ませた。この段階までの培養は無菌状態で行った。 【0071】発根個体を十分生育させた後、クレハ園芸培土(呉羽化学(株))に移植した。この際、フロリライト、培地等は洗い流さず、フロリライトがついた状態でそのまま移植した。最初は大きめのビーカー等と寒冷紗で保護し、徐々に温室の条件(温度が17〜25℃)に馴らし、さらに生育させてダイズ植物体を得た。得られたダイズ植物体を以後遺伝子導入処理ダイズと称する。 【0072】次に、得られた遺伝子導入処理ダイズのDNAに遺伝子が導入されていることを確認するためにPCR法による解析を行った。まず、GUS遺伝子導入処理ダイズ、非遺伝子導入処理ダイズ(対照)、およびGUS遺伝子導入形質転換タバコ(ポジティブコントロール)の各個体の本葉約0.1gからDNA抽出キットPHYTOPURE(Amersham、品名コードRPN8510) を用いてDNAを抽出した。抽出DNA(約100ng)を鋳型として、GUS遺伝子の断片(668bp)を検出するためのプライマーセット(Forward Primer:5'-GCAACGTCTGGTATCAGCGC-3' [配列番号3]、Reverse Primer: 5'-ACGGTTTGTGGTTAATCAGG-3' [配列番号4])を含む反応液(1xGold PCR Buffer、2mM MgCl2、200μM dNTPs、0.5μM Forward Primer、0.5μM Reverse Primer、0.05units Ampli taq Gold〔Applied Biosystems、品名コード4311806〕)を用いてPCRを行った。PCRは、95℃で10分間処理した後、94℃での変性1分間、57℃でのアニーリング1分間、72℃での伸長1分間の反応を30サイクル行った(最終サイクルの伸長反応は2分間延長した)。PCR終了後、アガロースゲル電気泳動法によりGUS遺伝子の増幅の確認を行った。結果を図1aに示す。 【0073】(結果)遺伝子導入処理ダイズからは約700bpの易動度のバンドが検出され、予想されたPCR産物の易動度(668bp)と一致していた(レーン1)。また、ポジティブコントロールとして使用した形質転換タバコ(レーン2)および遺伝子導入に用いたプラスミド(レーン4)から増幅されたPCR産物の易動度とも一致した。また、非遺伝子導入処理ダイズ(C)およびネガティブコントロールの滅菌蒸留水(レーン3)からは、バンドは検出されなかった。この結果から遺伝子導入処理ダイズにGUS遺伝子が導入されていることが確認された。 【0074】さらに、サザンハイブリダイゼーションによりGUS遺伝子の導入を確認した。遺伝子導入処理ダイズと非遺伝子導入処理ダイズ(対照)の本葉から、超遠心法によりそれぞれゲノムDNAを抽出した。抽出したゲノムDNA(5μg)を制限酵素EcoRI(TaKaRa、品名コード1040A)で消化し、1%アガロースゲルで電気泳動を行った。ゲル中のDNAをエチジウムブロマイド染色によって確認した後、Hybond-N+(Amersham、品名コードRPN303B)にアルカリブロッティングした。プローブの標識、ハイブリダイゼーションおよびシグナルの検出はDNA検出キットAlkphosDirect(Amersham、品名コードRPN3680)の説明書に従った。ブロッティングが終了したメンブレンはハイブリダイゼーション溶液に浸し、57℃で3時間プレハイブリダイゼーションをした後、アルカリホスファターゼで標識したDNAプローブ(GUS遺伝子)を加えて57℃で18時間ハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション終了後、メンブレンはPrimary wash buffer(2M Urea、50mM Na-phosphate〔pH7.0〕、150mM NaCl、1mM MgCl2、0.1%SDS、0.2%Blocking reagent)で20分間(57℃)3回の洗浄を行った後、Secondary wash buffer(50mM Tris-base 100mM NaCl、pH10.0)で5分間(室温)2回振盪した。洗浄終了後、Detection reagent(Amersham、品名コードRPN3682)をメンブレン上で5分間反応させ、メンブレンをサランラップに包んで3時間オートラジオグラフィーを行った。結果を図1bに示す。 【0075】(結果)非遺伝子導入処理ダイズ(C)では検出されない3本のバンドが遺伝子導入処理ダイズ(レーン1)において検出された。これは遺伝子導入処理ダイズのゲノムDNA上にGUS遺伝子が3箇所以上導入されていることを示している。この結果より、遺伝子導入処理ダイズのゲノムDNAにGUS遺伝子が確実に導入されていることが確認された。 【0076】また、ノーザンハイブリダイゼーションにより、遺伝子導入処理ダイズの植物体中においてGUS遺伝子からRNAが転写されていることを確認した。まず、遺伝子導入処理ダイズ、非遺伝子導入処理ダイズ(対照)、およびGUS遺伝子を導入した形質転換タバコ(ポジティブコントロール)の各個体の本葉25mgからTRIZOLReagent(GIBCO BRL、品名コード15596-018)を用いてRNAを抽出した。全量の抽出RNAにRNA溶液の2.7倍容量の変性溶液(69%ホルムアミド、24%ホルマリン、6.9%10×MOPS〔0.2Mモルホリノプロパンスルホン酸、50mM酢酸ナトリウム、10mM EDTA・2Na、pH7.0〕)を加え65℃で20分間処理し、冷却後エチジウムブロマイドと50%グリセロールを含む色素(ブロモフェノールブルー)液を加えた後、22%ホルマリン、1×MOPSを含む1%アガロースゲルで電気泳動を行った。ゲル中のRNAをUV照射で確認した後、RNAをHybond-N+(Amersham 、品名コードRPN303B)にアルカリブロッティングした。ブロッティングが終了したメンブレンはハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC〔75mMクエン酸ナトリウム、750mM NaCl、pH7.0〕、0.1%N-ラウロイルサルコシンナトリウム、0.02%SDS、2%Blocking reagent〔ロシュ・ダイアグノスティックス、品名コード1096176〕)に浸し、68℃で3時間プレハイブリダイゼーションをした後、DIG RNA Labeling Mix (ロシュ・ダイアグノスティックス、品名コード1277073)を用いて標識した標識RNAプローブ(GUS遺伝子のアンチセンス鎖)を用いて68℃で16時間ハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション終了後、メンブレンは洗浄液1(2×SSC、0.1%SDS)で5分間(室温)2回洗浄した後、さらに洗浄液2(0.1×SSC、0.1%SDS)で20分間(68℃)4回洗浄した。次にメンブレンを洗浄液3(0.3%Tween-20を含むバッファー1〔0.1Mマレイン酸、0.15M NaCl、pH7.5〕)で5分間(室温)処理した後、ブロッキングバッファー(Blocking reagent:バッファー1=1:9)で1時間30分間(室温)処理しブロッキングを行った。ブロッキング終了後、メンブレンはAnti-Digoxigenin-.AP.Fab fragments(ロシュ・ダイアグノスティックス、品名コード1093274)をブロッキングバッファーで1/20000に希釈した抗体液中で30分間(室温)反応させた。抗体反応終了後、メンブレンを洗浄液3で25分間(室温)4回洗浄し、さらにバッファー4(0.1M Tris-HCl、0.1M NaCl、50mM MgCl2、pH9.5)中で5分間(室温)振盪した。続いてバッファー3で1/10に希釈した基質CDP-Star(ロシュ・ダイアグノスティックス、品名コード1685627)と5分間反応させた後、サランラップに包んで1時間オートラジオグラフィーを行った。結果を図1cに示す。 【0077】(結果)非遺伝子導入処理ダイズ(C)では検出されないバンドが遺伝子導入処理ダイズ(レーン1)において検出された。また、このバンドの易動度はポジティブコントロールとして使用した形質転換タバコ(レーン2)から検出された、バンドの易動度と一致していた。この結果から、遺伝子導入処理ダイズ植物体中においてGUS遺伝子から確実にRNAが発現されていることが確認された。 【0078】さらに、組織化学的な方法により、GUS遺伝子の導入を確認した。具体的には、遺伝子導入処理ダイズの葉を1mmの切片に切断し、反応溶液(1mM X-gluc gluc 〔5-Bromo-4-chloro-3-indolyl-β-D-glucuronide Cyclohexylammonium Salt〕、50mMリン酸ナトリウム緩衝液〔pH7.0〕、10mM EDTA、0.1%Triton X-100、0.1%Sarkosyl、10mM2−メルカプトエタノール)に、37℃で24時間浸けた。 【0079】(結果)遺伝子導入処理ダイズの葉は青色を呈した。これはすなわち、遺伝子導入処理ダイズの葉においてβ−グルクロニダーゼ活性(GUS活性)が認められたことを意味し、遺伝子導入処理ダイズ組織に確実にGUS遺伝子が導入されていることが更に確認された。(データは示さず)。これらのことから、本発明の手法により、目的の遺伝子が植物に導入され、さらに形質が発現していることが証明された。 【0080】 【発明の効果】本発明の遺伝子導入方法および遺伝子導入植物の作出方法によれば、所望の遺伝子が導入された植物を簡便かつ迅速に作出することができる。 【0081】 【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Tohoku National Agricultural Experiment Station, Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries ; Japan Science and Technology Corporation<120> Method for plant transformation by using hypocotyls of mature seeds and production of transgenic plants<130> P00-0958<160> 4 <170> PatentIn Ver. 2.0<210> 1<211> 20<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: Primer kan1.<400> 1gcacaacaga caatcggct 19 <210> 2<211> 19<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: Primer kan2.<400> 2aagaaggcga tagaaggcg 19 <210> 3<211> 20<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: Forward primer used to detect the fragment of GUS gene.<400> 3gcaacgtctg gtatcagcgc 20 <210> 4<211> 20<212> DNA<213> Artificial Sequence<220> <223> Description of Artificial Sequence: Reverse primer used to detect the fragment of GUS gene.<400> 4acggtttgtg gttaatcagg 20 【0082】 【配列表フリーテキスト】配列番号3:GUS遺伝子の断片を検出するために使用したフォワードプライマー。 配列番号4:GUS遺伝子の断片を検出するために使用したリバースプライマー。
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| 【出願人】 |
【識別番号】501203344 【氏名又は名称】独立行政法人 農業技術研究機構 【識別番号】396020800 【氏名又は名称】科学技術振興事業団
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| 【出願日】 |
平成13年2月28日(2001.2.28) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100091096 【弁理士】 【氏名又は名称】平木 祐輔
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| 【公開番号】 |
特開2002−253070(P2002−253070A) |
| 【公開日】 |
平成14年9月10日(2002.9.10) |
| 【出願番号】 |
特願2001−54433(P2001−54433) |
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