| 【発明の名称】 |
ケナガチビコハナバチを用いた作物の採種方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】郷原 匡史
【氏名】伊藤 涼子
【氏名】土屋 由紀
【氏名】郷右近 勝夫
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| 【要約】 |
【課題】
【解決手段】ケナガチビコハナバチを利用することを特徴とするキク科タンポポ亜科に属する作物の採種方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ケナガチビコハナバチを利用することを特徴とするキク科タンポポ亜科に属する作物の採種方法。 【請求項2】 キク科タンポポ亜科に属する作物が野菜類及び花卉類からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の採種方法。 【請求項3】 キク科タンポポ亜科に属する作物がチコリ、エンダイブ、レタス、キクゴボウ、バラモンジン、カタナンケ(ルリニガナ)及びモモイロタンポポからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の採種方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ケナガチビコハナバチLasioglossum villosulumを用いた作物の採種方法に関し、ケナガチビコハナバチをキク科タンポポ亜科作物の交配に利用することによって採種量を向上させるという方法に関する。 【0002】 【従来の技術】キク科タンポポ亜科の作物のうち経済的に重要なものとしてチコリ、エンダイブ、レタスの3種類の野菜が挙げられる。キク科タンポポ亜科にはこれら以外にもキクゴボウ、バラモンジンなどの野菜類やカタナンケ(ルリニガナ)、モモイロタンポポなどの花卉類が含まれる。これらの作物の多くは自家不和合性を示し、交配・採種するためには何らかの花粉媒介手段が必要となる。一方、自家和合性を示すレタスでは基本的に花粉媒介手段は必要とされない。しかし、レタスでも雄性不稔性を利用したF1採種を想定した場合には花粉媒介手段が不可欠となる。 【0003】これらの作物の花粉媒介手段としては、手交配又は送粉昆虫の利用が考えられる。交配・採種コストを考慮すると送粉昆虫の利用が好ましく、実際にチコリ、エンダイブなどでは送粉昆虫としてセイヨウミツバチApis melliferaが利用されている。キク科タンポポ亜科作物では多数の訪花昆虫が記録されているが、交配・採種するためにセイヨウミツバチ以外の送粉昆虫を積極的に導入・利用したという報告は見つからない。更に、現在までに主要な野菜類の大半ではF1品種化が進んでいるが、レタスの場合、有効な送粉昆虫が開発されていないことが原因で、未だにF1品種化が遅れている。 【0004】ケナガチビコハナバチはユーラシア大陸に広く分布する体長約6mmの小型の野生ハナバチである。日本ではその東アジア産亜種となるLasioglossum villosulum trichopseが北海道から南西諸島にまで分布することが確認されている。しかし、生息数が比較的少ない小型のハナバチであり、その詳細な生態は最近まで未知であった。最近になってようやくキク科タンポポ亜科植物の狭食性ハナバチとしての訪花性を示す報告があり(郷原匡史・土屋由紀・堀越英夫、東北昆虫No.34、14頁(1996))、他の多くの本邦産ハナバチ類とは顕著に異なる訪花日周性を有することが明らかにされた(郷原匡史・前田泰生、日本昆虫学会第60回大会講演要旨51頁(2000))。これらの報告で明らかなようにケナガチビコハナバチは、その特異的な訪花習性が原因で自然状態での捕獲さえ稀な部類に入るハナバチである。上述の理由で、ケナガチビコハナバチを送粉昆虫として利用することは、全く考慮されていなかった。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】送粉昆虫をタンポポ亜科作物の交配・採種に利用する場合に限って起こる特有の問題点として植物(開花習性)側では次のことが挙げられる。■タンポポ亜科植物が午前中早い時間帯に開花し、数時間後には閉花する開花習性をもつため、送粉可能な時間が短く限定されている。■タンポポ亜科植物は曇天や小雨のような天候の日にも開花しやすい。このような日には柱頭の伸長が不十分で、花粉放出量も減少する。特に、1日花をつけるタイプのチコリ、エンダイブ、レタスなどではこのような悪天候日に開花した場合には受粉率が激減する。 【0006】上述の植物側の問題点と対応した送粉昆虫側の問題点として、次のことが挙げられる。■送粉昆虫の多くは日中に長時間にわたって採餌活動を行うタイプの訪花日周性をもち、午前中の短時間だけに集中して採餌活動させることは困難である。■ほとんどの送粉昆虫では、曇天や小雨のような天候の日には採餌活動量が激減する。これらの理由からタンポポ亜科作物の交配・採種では、他の他家受粉性作物で送粉昆虫を利用した場合と比べて、送粉効果が劣りやすい。 【0007】レタスの雄性不稔性を利用したF1採種を想定した場合には次のような問題点も挙げられる。■花冠サイズが小さすぎるため、中型の送粉昆虫では花上に止まることができたとしても正常な採餌活動を行えないこと。■雄性不稔株に対する訪花頻度が低いため、F1採種量が少なくなること。■については、セイヨウミツバチでは体長約13mmであるのに対してレタス(タマチシャ)の花冠サイズは約11mmと小さいため、セイヨウミツバチはレタスを餌資源植物としてほとんど認識しない。■については雄性不稔性利用F1採種を行っている作物の多くで認められている現象で、これは社会性昆虫であるセイヨウミツバチの採餌分業システム(採餌蜂が採蜜バチ・採花粉バチに分けられること)とも関係している。 【0008】キク科タンポポ亜科作物で使われる唯一の送粉昆虫であるセイヨウミツバチには送粉昆虫としての一般的問題点として次のことが挙げられる。■採餌行動が自家受粉や同系交配を助長すること(特に異系交配を必要とする場合に問題となる)。■環境条件や送粉対象作物の種類によって訪花しない場合があること。■飛翔能力が高いため、開放系では雑交防止作業の労力が多大となる場合があること。■巣群によって送粉効果のばらつきがあること。■刺害や糞害を引き起こすこと。 【0009】キク科タンポポ亜科作物を効率的に交配・採種するためには、前記の■、■の問題点に対応できる送粉昆虫を探索・育成する必要がある。またレタスの雄性不稔性を利用したF1採種を可能にするためには、前記の■、■の問題点にも対応していることが必要である。更にセイヨウミツバチ利用時にみられる■〜■の問題点についても、解消できる、あるいは軽減できることが好ましい。しかし、これまでに実用化されてきた送粉昆虫のなかには、これらの条件を兼ね備えたものは皆無であった。従って本発明の目的は、これまでに実用化されている送粉昆虫とは訪花特性を異にする新たな送粉昆虫を探索・育成し、キク科タンポポ亜科作物の効率的な交配・採種を可能にすることにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の課題を解決するために、従来から利用されている送粉昆虫の利用技術を改良するのではなく、課題を解決できそうな新たな送粉昆虫の探索を行った。このときミツバチ類のような社会性ハナバチではなく単独性ハナバチを探索対象とすることによって、前記■の問題点とセイヨウミツバチ利用時にみられる前記■〜■の問題点に対処しようとした。更に、タンポポ亜科作物の交配・採種に限って起こる特有の問題点■、■を解消するために、タンポポ亜科に対して狭食性を示すハナバチ類が存在することに着目し、探索対象を絞り込んだ。それと同時にレタスの雄性不稔性を利用したF1採種も可能にするために、レタスの花冠サイズより体長が小さいことを最も重要な探索条件とした。また、送粉昆虫として実用化するためには飼育・増殖が容易でなければならない。この点も考慮して、探索・収集した送粉昆虫の飼育・増殖試験と放飼・採種試験を繰り返し行い、タンポポ亜科作物における送粉能力を評価してきた。そして8年間の長期にわたって、探索・選抜を重ねてきた結果、本発明を完成するに至った。 【0011】即ち、本発明は、ケナガチビコハナバチを利用することを特徴とするキク科タンポポ亜科に属する作物の採種方法である。本発明の対象は、キク科タンポポ亜科に属し、交配・採種が行われる作物であり、例えば、野菜類としては、チコリ、エンダイブ、レタス、キクゴボウ、バラモンジンなどが挙げられ、花卉類としては、カタナンケ(ルリニガナ)、モモイロタンポポなどが挙げられる。 【0012】本発明において、「ケナガチビコハナバチ」とは日本に分布する東アジア産亜種Lasioglossum villosulum trichopseだけでなく、ユーラシア大陸に広く分布するLasioglossum villosulum全体を指す。villosulumという種のなかには訪花性に若干の変異がみられるものの、キク科タンポポ亜科に対して非常に強い選好性を示すことがvillosulum種群としての基本的性質である。したがって、タンポポ亜科作物の交配・採種に利用する時に亜種、地域個体群が違ったとしても同等の効果が得られる。 【0013】 【発明の実施の形態】以下に本発明の実施形態の好ましい一例を示す。ケナガチビコハナバチの生息環境において交配・採種対象となるキク科タンポポ亜科作物を栽培する、あるいは交配・採種対象となるキク科タンポポ亜科作物を栽培している場所にケナガチビコハナバチを導入する。このとき、高い送粉効果を得るためにはタンポポ亜科作物の株数、又はケナガチビコハナバチの個体数を交配時期、作物の種類、採種方法、生育状況、栽培環境(又は周辺環境)によって任意に調整する。例えば、以下のような場合には対象作物の株数を減らしたり、ケナガチビコハナバチの個体数を増やして放飼密度を高く調節する必要がある。即ち、交配時期の天候が悪い場合、レタスのように対象作物の花冠サイズが小型の場合、雄性不稔性を利用した採種ではない場合、対象作物の生育が旺盛な場合、栽培環境に対象作物以外のタンポポ亜科植物が多く生育している場合などである。 【0014】 【実施例】以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。実施例としてキク科タンポポ亜科作物のなかで最も送粉昆虫の利用が困難とされるレタス(タマチシャ)を対象とした例を示す。しかし、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。 【0015】(実施例1)ケナガチビコハナバチを飼養している網室(ハチ放飼区:A)と訪花昆虫が存在しない網室(無放飼区:C)にそれぞれレタスの可稔系統株を導入した。試験期間中のハチが訪花活動を行った日に開花した頭花について全小花数と稔実種子数を調査し、稔実(小花)率を求めた。結果を図1に示した。 【0016】試験に用いたレタスはポット栽培した小株で、さらに試験を行った時期の天候不良も影響して採種量は通常よりかなり少なくなった。それでも図1に示したように、ケナガチビコハナバチが送粉活動を行うことで採種量が少なくなる条件であっても稔実率(採種量)が約3倍向上していた。ただし、レタスは本来、自動自家受粉を行うタイプの植物であり、固定品種の採種を行う場合は送粉昆虫を必要としない。この試験の結果は、たとえ固定品種の場合であっても、ケナガチビコハナバチを利用することによって採種量が向上することを示している。 【0017】(実施例2)レタスの雄性不稔株と可稔株を栽培している2つの網室にそれぞれケナガチビコハナバチとセイヨウミツバチを導入し、F1採種試験を行った。ケナガチビコハナバチの場合、雌成虫を10頭導入し、網室内に定着した5頭のうち3頭が採餌活動を行った。導入から試験開始までの28日間のうちに採餌バチ数は1頭に減少したが、試験開始後13日間採餌活動を行った。セイヨウミツバチの場合、女王が存在し、働きバチ数4200頭の巣箱を導入し、18日間試験を行った。試験の結果を表1に示した。 【0018】 【表1】
【0019】交配試験期間中、レタスへの訪花はケナガチビコハナバチでは確認できた。しかし、セイヨウミツバチではほとんど確認できなかった。ケナガチビコハナバチでは可稔株だけでなく雄性不稔株への訪花も確認できた。実際に表1に示したように、ケナガチビコハナバチを放飼した網室ではF1種子が採れたが、セイヨウミツバチを放飼した網室ではF1種子はまったく採れなかった。 【0020】 【発明の効果】本発明によれば、セイヨウミツバチを使わなくてもレタス以外のキク科タンポポ亜科作物の交配・採種を行うことが可能になる。そして、セイヨウミツバチ利用時にみられた各種の問題点を解消もしくは軽減できる。また、有効な送粉昆虫が存在しなかったレタスにおいては、F1品種の経済的採種を行うことが可能になる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】595017702 【氏名又は名称】株式会社採種実用技術研究所
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| 【出願日】 |
平成13年2月26日(2001.2.26) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100091096 【弁理士】 【氏名又は名称】平木 祐輔 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−247927(P2002−247927A) |
| 【公開日】 |
平成14年9月3日(2002.9.3) |
| 【出願番号】 |
特願2001−50659(P2001−50659) |
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