| 【発明の名称】 |
発根能に優れたユーカリプタス・グロブルスの選抜方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】和泉 公子
【氏名】松田 学
【氏名】清水 卓也
【氏名】村上 章
【氏名】小島 鋭士
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| 【要約】 |
【課題】発根能に優れたE.グロブルスを迅速かつ確実に検出し、選抜する方法を提供する【解決手段】 配列番号1〜7に示すプライマー1〜7を用いて、ユーカリプタス・グロブルスの全DNAを鋳型とするポリメラーゼ連鎖反応を行い、発根能に優れた個体に特異的な、所定の分子量を有するDNA断片の増幅が全て検出される個体を選抜する。
【解決手段】配列番号1〜7に示すプライマー1〜7を用いて、ユーカリプタス・グロブルスの全DNAを鋳型とするポリメラーゼ連鎖反応を行い、発根能に優れた個体に特異的な、所定の分子量を有するDNA断片の増幅が全て検出される個体を選抜する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 配列番号1〜7に示すプライマー1〜7を用いて、ユーカリプタス・グロブルスの全DNAを鋳型とするポリメラーゼ連鎖反応を行い、以下の分子量を有するDNA断片の増幅が全て検出される個体を選抜することを特徴とする、発根能に優れたユーカリプタス・グロブルスの選抜方法。 プライマー1:分子量690bpプライマー2:分子量585bp、651bp、691bpプライマー3:分子量702bp、797bp、1149bpプライマー4:分子量832bp、1120bp、1343bp、1819bpプライマー5:分子量2482bpプライマー6:分子量2454bpプライマー7:分子量705bp、1415bp、1692bp【請求項2】 増幅されたDNA断片の分離及びその分子量の同定を電気泳動法にて行う、請求項1に記載の発根能に優れたユーカリプタス・グロブルスの選抜方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、発根能に優れたユーカリプタス・グロブルス(Eucalyptus globulus(以下、E.グロブルスと略記する。))を迅速に検出し、選抜する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】E.グロブルスは豪州タスマニアを原産とする高木の常緑木本植物で、パルプ、建材、薪炭用材等として高い商業価値を有している。そのため、現在では豪州の他、広く世界各地で植林が行われ、また、これらE.グロブルスの性質をさらに改良すべく、育種も盛んに試みられている。 【0003】植林を行うにしろ、育種を行うにしろ、目的に適った形質を持つ均質な苗を大量に増殖するステップは、必ず要求される。このとき苗の大量増殖手段として有用なのが、伝統的な挿し木法や、近年のバイオテクノロジーの発達により生まれた組織培養法である。これらの方法によれば、単に、苗の大量増殖ができるばかりではなく、同一の遺伝的性質を有する植物個体、即ちクローン苗を大量かつ迅速に増殖することができる。 【0004】挿し木法においては、増殖しようとする植物個体から枝や、場合によっては芽、葉等を切取って挿し穂とし、これを適当な培養土に挿し付けて発根させ、苗を生産する。一方、組織培養法において木本植物を大量増殖しようとする場合には、多芽体や苗条原基を経由することが多い。具体的には、増殖しようとする植物個体から芽や茎頂点等を切取って培養し、多芽体や苗条原基を発生させ、これらからシュートを得て、このシュートを適当な支持体に挿し付けて発根させる。つまり、いずれの方法を用いてクローン苗を生産するにしても、最終的には発根という過程を経ることとなる。しかし、上記したE.グロブルスの挿し穂やシュートの発根能は個体差が激しく、しかも、発根能に優れた個体よりも、劣った個体の方が大多数を占める。このため、この樹種は、ある形質に優れた個体を見出したとしても、発根能に劣ることからクローン苗の大量増殖が困難である場合が多く、これが、植林や育種にあたっての大きな障害となる。 【0005】そこで、E.グロブルスにおいてクローン苗の大量増殖を試みる場合には、目的とする形質の他、まず、発根能に優れた個体を探索して選抜し、これを親とする必要がある。しかし、これまでは、実際に、挿し木なり組織培養なりを行ってみないと、その植物個体の発根能の優劣は知ることができなかった。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】ところが、挿し木法では、光、温度、湿度等の環境要因を完全に制御することが難しいため、挿し木法において、ある個体に由来する挿し木が優れた発根能を示したとしても、それがその個体の特性によるものであるのか、環境要因によるものであるのかを簡単には判別できない。また、挿し木法で発根能を確かめるためには、広い圃場が必要とされる。一方、組織培養法においてシュートの発根能を知るためには長期間を要する。シュートの発根能を調べるには、ある植物個体から芽等の組織を組織培養系に取りこみ、多芽体や苗条原基を経由してシュートを得、これを発根させるというルートが確立していなければならないが、このルートを確立するためには、各過程において培地組成や光、温度等の培養条件を定める必要があり、これらの条件が全て定まるまで、通常は2〜3年の期間を要するからである。 【0007】本願発明は、かかる問題点に鑑み、発根能に優れたE.グロブルスを迅速かつ確実に検出し、選抜する方法を提供することを目的としてなされたものである。 【0008】 【課題を解決するための手段】本願発明者らは鋭意検討の結果、プライマーを変えてE.グロブルスの全DNAにつきポリメラーゼ連鎖反応(以下、PCRと略記する。)を行い、それぞれのプライマーにより増幅されるDNA断片を分離、検出し、その分子量を同定することにより、上記目的が達成されることを見出し、本願発明を完成した。 【0009】即ち、本願発明は、配列番号1〜7に示すプライマー1〜7を用いて、E.グロブルスの全DNAを鋳型とするPCRを行い、以下の分子量を有するDNA断片の増幅が全て検出される個体を選抜することにより、上記目的を達成するものである。 【0010】プライマー1:分子量690bpプライマー2:分子量585bp、651bp、691bpプライマー3:分子量702bp、797bp、1149bpプライマー4:分子量832bp、1120bp、1343bp、1819bpプライマー5:分子量2482bpプライマー6:分子量2454bpプライマー7:分子量705bp、1415bp、1692bp【0011】 【発明の実施の形態】以下に、本願発明を詳細に説明する。 【0012】本願発明の対象となるE.グロブルスの生育地や樹齢等は問わない。また、本願発明の対象は、E.グロブルスの組織培養物であっても構わない。本願発明は、E.グロブルス全てに適用することができる。換言すれば、世界中のどこに、どのような状態で生育しているE.グロブルスであっても、E.グロブルスであれば、配列番号1〜7に示すプライマー1〜7を用いて全DNAについてPCRを行い、前記分子量を有するDNA断片の増幅の有無を調べることにより、発根能に優れた個体を選抜することができる。 【0013】E.グロブルスからの全DNAの抽出は、公知の方法、例えば、CTAB法やSDS法等又はこれらの方法を適宜改良した方法を用いて行うことができる。最近では、全DNA抽出のためのキットも市販されているので、この市販キットを利用することも、もちろん構わない。このようなキットとしては、例えば、キアゲン(株)から販売されているDNeasy Plant Mini Kitがある。なお、全DNAを抽出するための組織は何であってもよい。本願発明においては、E.グロブルスであれば、芽、葉、シュート等、どのような組織でも全DNAの抽出に用いることができる。もっとも、一般に、全DNAの抽出には、ポリフェノール成分の少ない組織が適している。従って、本願発明において全DNAを抽出する場合にも、ポリフェノール成分の少ない幼若組織を使用することが望ましい。 【0014】E.グロブルスから抽出された全DNAは、次いで、PCRに供される。このときプライマーとして、配列番号1〜7に示すプライマー1〜7を用いる。これらのプライマーは、DNAシンセサイザー等で合成することもできるが、オペロン社より市販されているOPERON 10MER KITS中の、OPC−8(プライマー1)、OPG−17(プライマー2)、OPH−05(プライマー3)、OPH−18(プライマー4)、OPJ−12(プライマー5)、OPK−19(プライマー6)及びOPP−15(プライマー7)として容易に入手することができるので、これらを用いるのが便利である。 【0015】PCRは、PCR反応用緩衝液中で、これらのプライマー1〜7のいずれか1種類、dNTP(dATP、dTTP、dGTP、dCTPの総称。)及びDNAポリメラーゼと、E.グロブルスから抽出された全DNAとを混合し、この混合物を適当な温度サイクルで繰返し反応させることにより行なう。PCRの詳細な条件は、このとき、発根能に優れたE.グロブルスに特異的に増幅されるはずの前記分子量のDNA断片(以下、発根能特異的DNA断片という。)が、確実に増幅されるよう適宜設定すればよい。通常は、E.グロブルスから抽出された全DNA20〜200ng、プライマーをそれぞれ0.2〜1μM、dNTP20〜200μM、DNAポリメラーゼ1〜2.5Uを混合した1×PCR反応用緩衝液(全量25〜100μl)を、次に示すような温度サイクルで反応させた場合に、良好な結果を得ることができる。PCR反応用緩衝液、dNTP及びDNAポリメラーゼについては市販されているので、これを用いることができる。 【0016】本願発明の実施に適したPCR温度条件ステップ1:94〜96℃ 約5〜7分→35〜36℃ 約0.5〜1分→70〜74℃ 約1〜2分1サイクルステップ2:94〜96℃ 約1〜1.5分→35〜36℃ 約0.5〜1分→70〜74℃約1〜2分38〜43サイクルステップ3:94〜96℃ 約1〜1.5分→35〜36℃ 約0.5〜1分→70〜74℃約5〜10分1サイクル【0017】PCRにて増幅されたDNA断片は、公知の方法により分離し、その分子量を同定する。なかでも電気泳動法は、簡易な、そして良く知られた核酸の分離・分析法であり、DNA断片の分離とその分子量の同定という、この目的に最も適う方法でもある。 【0018】電気泳動法によれば、PCR後の反応液について電気泳動を行うことにより、PCRにて増幅されたDNA断片を、その分子量に応じて分離することができる。電気泳動法としては、ゲル電気泳動法、キャピラリー電気泳動法等、各種の電気泳動法を使用することができる。泳動条件は、発根能特異的DNA断片をクリアに分離するよう、適宜設定すればよい。例えば、ゲル電気泳動法を本願発明に適用する場合には、担体としてゲル濃度0.5〜1.5w/v%のアガロースゲル又はゲル濃度3.5〜5w/v%のポリアクリルアミドゲル、緩衝液としてTBE緩衝液(89mM Tris-borate、2mM EDTA)を用い、室温の下、アガロースゲルを用いた場合には電圧70〜150V、ポリアクリルアミドゲルを用いた場合には電圧100〜200Vで泳動を行なえばよい。 【0019】また、電気泳動法によれば、DNA断片の分子量の同定も、その分離と同時に行うことができる。つまり、PCR反応液の電気泳動と同時に、分子量既知のDNA断片についても電気泳動を行い、泳動後、分離されたDNA断片の移動度を互いに比較すればよい。このように電気泳動法によれば、PCRにて増幅されたDNA断片の分離と、その分子量の同定とを1段階で行うことができる。 【0020】なお、分離されたDNA断片は、エチジウムブロマイド法等の定法により検出し、その移動度を算出することができる。例えば、前記のようにしてゲル電気泳動法にて分離されたDNA断片は、電気泳動後のゲルを、エチジウムブロマイド0.5〜2μg/mlを含むTBE緩衝液(同前)に10〜20分間浸漬してから、256nm付近の紫外線を照射することにより、ゲル上の、蛍光を発する帯状領域(バンド)等として検出することができる。 【0021】本願発明においては、以上の結果、発根能特異的DNA断片の増幅が全て検出された個体を、発根能に優れたE.グロブルスとして選抜する。即ち、その全DNAを鋳型とし、配列番号1に示すプライマー1を用いてPCRを行った場合には分子量690bpのDNA断片が、配列番号2に示すプライマー2を用いてPCRを行った場合には分子量585bp、651bp及び691bpのDNA断片が、配列番号3に示すプライマー3を用いてPCRを行った場合には分子量702bp、797bp及び1149bpのDNA断片が、配列番号4に示すプライマー4を用いてPCRを行った場合には分子量832bp、1120bp、1343bp及び1819bpのDNA断片が、配列番号5に示すプライマー5を用いてPCRを行った場合には分子量2482bpのDNA断片が、配列番号6に示すプライマー6を用いてPCRを行った場合には分子量2454bpのDNA断片が、そして配列番号7に示すプライマー7を用いてPCRを行った場合には分子量705bp、1415bp及び1692bpのDNA断片が増幅されるE.グロブルスを選抜する。選抜すべきE.グロブルスは、これらのDNA断片以外に、他の断片の増幅も検出されるものであって構わない。しかし、これらのDNA断片全ての増幅が検出されるものでなくてはならない。発根能特異的DNA断片のうち、一つでも増幅が検出されない個体は、発根能において優れた性質を示さないからである。 【0022】 【作用】挿し穂やシュートからの発根率は、培養条件、環境条件等の外部要因のみならず、その植物個体自身が有している発根能によっても大きく左右される。例えば、組織培養において、外部要因を一定にして、同じ種・品種に属する植物のシュートを発根させる場合でも、異なる個体から由来するシュートの間では、その発根率は異なっているのが普通である。E.グロブルスではこの差が特に大きい。そこで、発根能に優れた個体の探索が、E.グロブルスのクローン苗の大量増殖において重要となる。 【0023】優れた発根能を示す植物個体は、発根に関与する遺伝子中に特定のDNA配列を有していると考えられるので、この特定のDNA配列をマーカー(以下、DNAマーカーという。)として選抜することができれば、同様の発根能を有する植物個体が迅速に選抜できる筈である。しかし、植物の発根能は量的形質とされ、多くの遺伝子が関与してこの能力の優劣を決定している。このため、遺伝子の解析は困難であり、また、発根に関与する遺伝子を幾つか明らかにし、DNAマーカーを見出したとしても、これらがその遺伝子中に存在するというだけで、その植物個体の発根能が優れているとは、到底言うことができない。従って、これまで、植物個体の発根能を特定のDNAマーカーと関連付ける研究は、遺伝的に極めて近似した一つの交配家系を対象とするものに限られていた。 【0024】これに対して、本願発明は、PCRにより増幅されるDNA断片を総合的に検討することにより、E.グロブルスであればその産地・家系、ひいては品種を問わず、発根能に優れた個体の確実な選抜を可能とした。即ち、本願発明においては、予め選択した複数のプライマーそれぞれを用いてE.グロブルスの全DNAにつきPCRを行う。このとき、用いるプライマー毎に、普通は1以上の異なるDNA断片が増幅される。従って、複数のプライマーを用いれば、極めて多くの種類のDNA断片が増幅されるが、これらのDNA断片中、発根能に優れたE.グロブルスに特有のDNA断片16種類全てを有する個体のみを、発根能に優れたものとして選抜する。 【0025】これは、いわば数多くのDNAマーカーを組合わせて利用するのに等しい。単独では発根能を示すものとして役に立たないDNAマーカーであっても、このように数多くのDNAマーカーを組合わせ、その有無を総合的に検討することによって、発根能に優れたE.グロブルスの確実かつ普遍的な選抜が可能となったのである。 【0026】 【実施例】以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。 【0027】[実施例1] I.E.グロブルスの発根能の調査チリ又はオーストラリアに生育するE.グロブルス28個体(表1参照)に由来する、28系統の多芽体から得られたシュートについて、その発根能を調査した。即ち、1系統あたり50本のシュートを、IBA1.0〜1.5mg/lを含む無糖のムラシゲ・スクーグ培地で湿潤させた、空隙率65%の発泡フェノール樹脂成型品に挿し付け、炭酸ガスを300〜3000ppmに制御しつつ、16時間日長、照度3000〜5000ルクス、温度24±1℃、湿度60±10%で4週間培養し、これらのシュートの発根能を調査した。その結果を表1に示す。 【0028】 【表1】
【0029】表1より明らかなように、28系統のうち、VT0007、VT0017、VT0039、FLL2047及びNC536が70%以上の発根率を示した。 【0030】II.E.グロブルス全DNAのPCR上記28系統の多芽体から得られたシュート100mgを液体窒素で凍結させ、粉砕したものにつき、DNeasy Plant Mini Kit(キアゲン(株)より販売)を用いて全DNAの抽出を行い、抽出された全DNAを鋳型として、配列番号1〜7に示すプライマー1〜7を用いてPCRを行った。 【0031】PCRは、抽出された全DNA25ng、配列番号1〜7に示すプライマー1〜7を各反応ごとにそれぞれ10pmol、2.5mM dNTP2μl、DNAポリメラーゼ(宝酒造(株)製『TaKaRa EX taq』)1.25U、PCR反応用緩衝液(宝酒造(株)製『10×ExTaq Buffer』)2.5μl、及び、PCR反応溶液の着色と比重づけのためタートラジンとフィコールを混合した後、滅菌超純水で全液量が25μlとなるように希釈したものについて、STRATAGENE社の「Robocycler GRADIENT40」を用い、次に示すような温度サイクルで反応させることにより行った。なお、タートラジン及びフィコールは、PCR反応液中の濃度が、それぞれ1mM、2w/v%となるように添加した。 【0032】 ステップ1:94℃7分→36℃1分→72℃ 2分 1サイクルステップ2:94℃1分→36℃1分→72℃ 2分 43サイクルステップ3:94℃1分→36℃1分→72℃10分 1サイクル【0033】III.PCR増幅産物の分析上記IIのPCRにて増幅されたDNA断片を、PCR後の反応液について、担体としてゲル濃度1w/v%、ゲルサイズ20cm×20cmのアガロースゲル(BioWhittaker Molecular Applications社製DNAタイピング用アガロース『I.D.NA Agarose』を使用して作成。)、緩衝液としてTBE緩衝液(同前)を用い、室温の下、定電圧130Vで約4〜5時間ゲル電気泳動を行うことにより、分離した。なお、このとき、分離されるDNA断片の分子量を同定するため、分子量既知のDNA断片の混合物(日本バイオラッドラボラトリーズ(株)製『EZ Load PCR Molecular Ruler』)をPCR反応液と共に電気泳動に供した。 【0034】電気泳動により分離されたDNA断片の検出は、電気泳動後、担体として用いたゲルを、エチジウムブロマイド0.5〜2μg/mlを含むTBE緩衝液(同前)に10〜20分間浸漬してから、これに256nm付近の紫外線を照射することにより行った。IIにおいて増幅されたDNA断片の分子量の同定は、こうして検出されたDNA断片について、その移動度を、これと同時に電気泳動を行った分子量既知のDNA断片の移動度とその分子量との関係から求められる式に内挿することにより行った。 【0035】この結果、Iにおいて70%以上の発根率を示した系統VT0007、VT0017、VT0039、FLL2047及びNC536の全DNAの増幅産物として、配列番号1に示すプライマー1を用いてPCRを行った場合には分子量690bp(M1)のDNA断片が、配列番号2に示すプライマー2を用いてPCRを行った場合には分子量585bp(M2)、651bp(M3)及び691bp(M4)のDNA断片が、配列番号3に示すプライマー3を用いてPCRを行った場合には分子量702bp(M5)、797bp(M6)及び1149bp(M7)のDNA断片が、配列番号4に示すプライマー4を用いてPCRを行った場合には分子量832bp(M8)、1120bp(M9)、1343bp(M10)及び1819bp(M11)のDNA断片が、配列番号5に示すプライマー5を用いてPCRを行った場合には分子量2482bp(M12)のDNA断片が、配列番号6に示すプライマー6を用いてPCRを行った場合には分子量2454bp(M13)のDNA断片が、そして配列番号7に示すプライマー7を用いてPCRを行った場合には分子量705bp(M14)、1415bp(M15)及び1692bp(M16)のDNA断片が共通して検出された。一方、発根率70%未満の系統において、これらのDNA断片が全て検出されたものは見出せなかった。従って、これらのDNA断片M1〜M16は、発根能に優れたE.グロブルス全DNAに特異的に存在するDNA断片であると考えられた。 【0036】[実施例2]日本国・岩国市に生育する発根能未知のE.グロブルス3個体(WR13、WR21、WR33)に由来する、3系統の多芽体から得られたシュートについて、実施例1のII、IIIと同様に全DNAの抽出、PCR、PCR増幅産物の分離と分子量の同定を行った。 【0037】その結果、抽出された全DNAはいずれも、DNA断片M1〜M16をPCR増幅産物として与え、これらの系統WR13、WR21、WR33が優れた発根能を有していることが示唆された。 【0038】そこで、これら3系統の多芽体から得られたシュートについて、実施例1のIと同様にして発根能を調査したところ、WR13は90%、WR21は94%、WR33は80%と、高い発根能を有していることが明らかとなった。 【0039】以上より、本願発明のPCRにおいて増幅されるDNA断片M1〜M16は、少なくとも70%以上の発根能を有する、E.グロブルスの全DNAに特異的なDNA断片であることは明らかである。このことは、本願発明の方法に従い、これらのDNA断片M1〜M16の増幅を指標として選抜を行えば、発根能70%以上のE.グロブルスが選抜されることを意味する。 【0040】ちなみに、植林や育種を目的としてクローン苗を大量増殖する場合には、挿し木やシュートの発根能は少なくとも70%以上であることが望ましいとされ(Wilson、P.J.、AFOCEL-IUFRO Symposium、Vol I、379-386、1992)、このため、これらのクローン苗の親となる個体の選抜にあたっても、発根能70%以上であることが選抜基準の一つとなる。従って、本願発明の方法は、植林や育種の効率・経済性を保証できる発根能を備えたE.グロブルスの選抜を可能とするものと言える。 【0041】 【発明の効果】本願発明によれば、DNAレベルの分析によって、発根能70%以上を示すE.グロブルスを確実に選抜することができる。また、そのために特別な装置等を用いる必要がない。 【0042】従って、本願発明によれば、世界中のどこに、どのような状態で生育しているE.グロブルスであっても、発根能70%以上を示す個体を確実・迅速、そして簡易に選抜することができる。 【0043】即ち、本願発明は、E.グロブルスにおいて、挿し木法や組織培養法によるクローン苗の大量増殖の効率・経済性を、ひいては、その植林や育種にあたっての効率・経済性を、対象となる個体の発根能の点から保証するものである。 【配列表】 <110> 日本製紙株式会社Nippon Paper Industries Co.,Ltd.<120> 発根能に優れたユーカリプタス・グロブルスの選抜方法<130> 57−BIOJO<160> 7<210> 1<211> 10<212> DNA<213> Artificial Sequence<220><223> primer for PCR<400> tggaccggtg<210> 2<211> 10<212> DNA<213> Artificial Sequence<220><223> primer for PCR<400> tcgaccgaca<210> 3<211> 10<212> DNA<213> Artificial Sequence<220><223> primer for PCR<400> agtcgtcccc<210> 4<211> 10<212> DNA<213> Artificial Sequence<220><223> primer for PCR<400> gaatcggcca<210> 5<211> 10<212> DNA<213> Artificial Sequence<220><223> primer for PCR<400> gtcccgtggt<210> 6<211> 10<212> DNA<213> Artificial Sequence<220><223> primer for PCR<400> cacaggcgga<210> 7<211> 10<212> DNA<213> Artificial Sequence<220><223> primer for PCR<400> ggaagccaac |
| 【出願人】 |
【識別番号】000183484 【氏名又は名称】日本製紙株式会社
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| 【出願日】 |
平成13年1月18日(2001.1.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100074572 【弁理士】 【氏名又は名称】河澄 和夫
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| 【公開番号】 |
特開2002−209461(P2002−209461A) |
| 【公開日】 |
平成14年7月30日(2002.7.30) |
| 【出願番号】 |
特願2001−9710(P2001−9710) |
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