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【発明の名称】 人工藻場
【発明者】 【氏名】勝井秀博

【氏名】上野成三

【氏名】片倉徳男

【要約】 【課題】水底環境の変化に左右されることなく、豊富な栄養分を含んだ肥沃な水を海藻類に与え続けることを可能にした人工藻場を提供することを目的とする。

【解決手段】放流管4と、この放流管の先端に形成した放水口41と、この放水口の周囲に被覆材3を堆積して育成基盤2を構築する。放流管を介して放水口から藻類6が必要とする肥沃な水や水温を調節した水を放流し、被覆材の隙間に滞留させながら徐々に育成基盤の表面へ供給するようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】水底に藻を人工的に育成する人工藻場であって、放流管と、前記放流管の先端に形成した放水口と、前記放水口の周囲に被覆材を堆積して構築した育成基盤と、からなり、前記放流管を介して放水口から藻類が必要とする肥沃な水や水温を調節した水を放流し、前記被覆材の隙間に滞留させながら徐々に育成基盤の表面へ供給するようにしたことを特徴とする人工藻場。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水底に藻を人工的に育成する人工藻場に関するものである。
【0002】
【従来の技術】海藻類などが繁茂している場所は藻場と呼ばれ、魚類などの産卵の場となっており、極めて重要で価値のある場所である。近年、各地の海域では海の砂漠とも呼ばれている磯焼け現象が生じており、海藻類の死滅問題となっている。磯焼けの原因は、水質の急激な変化、水温の急激な変化、海藻類を食べる貝類の大増殖が原因とされているが、いまだに未解明な部分が多い。藻場を人工的に造りだすためには、海藻類が必要とする豊富な栄養分を含む水を与えることが効果的であると考えられている。従来、藻場を人工的に造りだす方法としては、海藻類が付着する基盤に薬剤を塗布したり、コンクリート漁礁表面に凹凸をつけて苗床(育成基盤)を移植する藻礁製造技術などが開発されている。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した従来の人工藻場造成技術にあっては、次のような問題点がある。
<イ>自然海域では、潮汐、流れなどにより豊富な栄養分を含んだ肥沃な海水を海藻類に与え続けることは困難で、海藻類を育成する良質な藻場を造成しにくい問題がある。
<ロ>また、潮汐、流れなどの水底環境の変化に左右されるので、藻場の生育を人工的に管理するのが困難である。
【0004】
【本発明の目的】本発明は上記したような従来の問題点に鑑みてなされたもので、水底環境の変化に左右されることなく、豊富な栄養分を含んだ肥沃な水を海藻類に与え続けることを可能にした人工藻場を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記のような目的を達成するために、本発明の人工藻場は、水底に藻を人工的に育成する人工藻場であって、放流管と、前記放流管の先端に形成した放水口と、前記放水口の周囲に被覆材を堆積して構築した育成基盤と、からなり、前記放流管を介して放水口から藻類が必要とする肥沃な水や水温を調節した水を放流し、前記被覆材の隙間に滞留させながら徐々に育成基盤の表面へ供給するようにしたことを特徴とするものである。また、本発明の人工藻場は、放水口の周囲を擁壁で囲み、放水口から放流した水を擁壁部分で滞留することができる。また、本発明の人工藻場は、放水口を育成基盤の中心に設置し、育成基盤内に均等に水を分散することができる。また、本発明の人工藻場は、放流管先端の放水口をラッパ状または扇状に形成し、放水口から流速を低減した水を放流することができる。
【0006】
【本発明の実施の形態】以下図面を参照しながら、本発明に係る実施の形態について説明する。
【0007】<イ>人工藻場人工藻場1は、先端に放水口41を形成した放流管4と、この放水口41を内部に設置し、被覆材3を堆積して構築した育成基盤2とからなる。本発明は、放流管4を介して放水口41から藻類6が必要とする肥沃な水や水温を調節した水(以下、肥沃水などという)を育成基盤2に放流し、育成基盤2内に滞留させながら徐々に育成基盤2の表面21へ供給することで、藻類6の付着、成長を促進するものである。
【0008】<ロ>放流管放流管4は、例えば耐食性にすぐれた鋼管などからなり、地上の施設から水底の育成基盤2までの間に設置する。図示していないが、地上の施設には藻類6が必要とする肥沃水などを貯蔵している。放流管4の育成基盤2側先端は開放され、放水口41を形成する。放水口41が育成基盤2内に位置するように放流管4を設置する。放流管4は、図示していないがポンプなどで藻類6が必要とする肥沃水などを放水口41から育成基盤2に送るものである。放水口41の形状をラッパ状または扇状に広げて、放水口41から流速を低減した水を放出するようにしてもよい(図3(a)参照)。放水口41を広げることによって、肥沃水などを流速を低下させながら育成基盤2内の大きな面積に均等に分散して放出することができる。あるいは放水口41を育成基盤2のほぼ中心に位置するように放流管4を設置し、育成基盤2内に均等に肥沃水などを分散するようにしてもよい(図3(b)参照)。また、放流管4を途中から分岐することによって、少ない設備で広い面積の人工藻場1を構築することができる(図2参照)。放流管4及び放水口41には、被覆材3が堆積するので、潰れたり、損傷することがないように剛性の高い鋼管などを使用する。また、深層水などの肥沃水を供給する場合は、放流管4を深層水などが存在する水中から育成基盤2までの間に設置する。
【0009】<ハ>被覆材被覆材3は、岩塊、礫、リサイクルコンクリート材などを砕いたコンクリート塊などである。被覆材3の表面は育成基盤2の表面21でもあるので、藻類6の胞子が付着して発芽し、藻類6が成長するのにしたがって根の部分が適宜巻きつくように細かい凹凸を形成するのが好ましい。
【0010】<ニ>育成基盤育成基盤2は、海、湖沼などの水底に被覆材3を堆積して構築する。育成基盤2を構築する場所は、太陽光が差し込む水深数メートルから20メートル程度のところが好ましい。被覆材3を放水口41の周囲に堆積し、全体の垂直断面形状をほぼ台形とした箱状または円盤状に形成した育成基盤2を構築する。被覆材3を堆積するだけでよいので、容易に育成基盤2を構築することができる。人工藻場1は、例えば海域においては、水深15メートル付近までの場所に構築する。このような水深15メートル付近は、台風時などの波浪の影響を受けやすい。そこで出願人は、人工藻場1を構築する3箇所の水深、即ち水深7メートル、水深10メートル、水深15メートルで育成基盤2全体が台風などの影響を受けることなく、安定するために必要な被覆材3の重量を算出した。この結果、水深7メートルでは、被覆材3の所要重量は1個当り12.23トンであり、水深10メートルでは、1個当り3.38トンであり、水深15メートルでは、1個当り1.5トンであった。この所要重量から被覆材3が球形の岩塊31であると仮定した場合の大きさを算出すると、水深7メートルでは、岩塊31の直径がほぼ2メートルであり、水深10メートルでは、ほぼ1.4メートルであり、水深15メートルでは、ほぼ1メートルとなる。したがって、例えば水深15メートル付近までの海域において人工藻場1を設置する場合、直径1メートルから2メートル程度の岩塊31を堆積して育成基盤2を構築することで、安定した人工藻場1の設置が可能である。
【0011】本発明では、藻類6が必要とする肥沃水などを育成基盤2に放流し、育成基盤2内に滞留させながら徐々に育成基盤2の表面21へ供給することが大きな特徴である。そのため、育成基盤2内に肥沃水などを効果的に滞留することができるように、例えば放水口41の周囲をコの字形に擁壁5で囲むことも有益である(図1、図2参照)。または擁壁5をロの字形に囲み、擁壁5の一部に放水口41が通り抜ける開口部を設けてもよい。広い面積の人工藻場1を構築した場合で、放流管4を途中で分岐した場合は、放流管4の夫々の放水口41の周囲を個別に擁壁5で囲む(図2参照)。擁壁5で囲むことよって、放水口41から放出した肥沃水などを擁壁5部分で滞留することができる。なお、擁壁5で囲む場合は、擁壁5を構築してから被覆材3で被覆する。即ち、放水口41及び擁壁5全体に岩塊31などの被覆材3を堆積して育成基盤2を構築する。
【0012】次に、以上のごとく構成した人工藻場1の作用について説明する。
【0013】<イ>肥沃水などの供給地上の施設より放流管4を介して放水口41から藻類6が必要とする肥沃水などを育成基盤2に放流する。放流管4を途中で分岐した広い面積の人工藻場1の場合は、分岐した各放流管4の放水口41から藻類6が必要とする肥沃水などを育成基盤2に放流する。放水口41の形状をラッパ状または扇状に広げた場合は、肥沃水などは、流速を低下させながら育成基盤2内の大きな面積に均等に分散して放流される。また放水口41を育成基盤2のほぼ中心に位置させた場合は、肥沃水などは、育成基盤2内に均等に分散して放流される。
【0014】<ロ>肥沃水などの滞留育成基盤2内に放流された肥沃水などは、水中で一度に拡散することなく、岩塊31などの隙間に滞留する。擁壁5を構築した場合は、擁壁5によってさらに確実に肥沃水などを滞留する。また育成基盤2内に放流された肥沃水などは、擁壁5によって沿岸流と直接接触することがないため、拡散しにくい状態となっている。
【0015】<ハ>育成基盤表面へ放出育成基盤2内に一旦滞留された肥沃水などは、徐々に岩塊31などの隙間を通って均等の流速で育成基盤2の表面21へ放出する。その際、岩塊31などが外部と接触する育成基盤2の表面21付近は、常に一定の放出水が透過し、藻類6の栄養分の供給、適正水温を保つことが可能となり、育成基盤2の表面21付近に人工藻場1を造成することになる。即ち、育成基盤2内に滞留する肥沃水などを栄養源として人工的に藻場1が形成される。
【0016】
【本発明の効果】本発明の人工藻場は、以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<イ>放水口の周囲に岩塊などの被覆材を堆積して育成基盤を構築したものであるから、藻類が必要とする肥沃な水や水温を調節した水を水中で拡散することなく、育成基盤内に滞留させることができ、藻類の付着、育成を促進することができる。特に放水口の周囲を擁壁で囲んだ場合は、より効果的に滞留させることができる。
<ロ>藻類が必要とする肥沃な水や水温を調節した水を放流管で育成基盤まで送るようになっているので、これら水の調整を簡単に行うことができ、水底環境の変化に左右されることなく、人工的管理が可能となる。
<ハ>放水口を育成基盤の中心に設置した場合や、放水口をラッパ状または扇状に形成した場合は、育成基盤内に均等に放出水を分散し、育成基盤全体に藻類が必要とする水温、水質の水を分散させ、育成基盤全体に人工的な藻場を構築することができる。
【出願人】 【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
【出願日】 平成13年6月1日(2001.6.1)
【代理人】 【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生 (外2名)
【公開番号】 特開2002−354952(P2002−354952A)
【公開日】 平成14年12月10日(2002.12.10)
【出願番号】 特願2001−166508(P2001−166508)