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【発明の名称】 野菜移植機におけるマルチフィルム孔開装置
【発明者】 【氏名】石原 幸信

【氏名】坂垣内 貴保

【要約】 【課題】マルチフィルムに対して円形の植え付け孔を正確に孔開けすることができる野菜移植機におけるマルチフィルム孔開け装置を提供すること。

【解決手段】野菜移植機の機体1に装着されほぼ鉛直方向に昇降しマルチフィルムMを溶融して孔M−1開けする加熱ヘッド9を備えるマルチフィルム孔開装置であって、加熱ヘッド9には、機体1の走行方向に斜め上がりに形成した傾斜面を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 野菜移植機の機体に装着されほぼ鉛直方向に昇降しマルチフィルムを溶融して孔開けする加熱ヘッドを備えるマルチフィルム孔開装置であって、前記加熱ヘッドは、前記機体の走行方向に斜め上がりに形成した傾斜面を備えていることを特徴とする野菜移植機におけるマルチフィルム孔開装置。
【請求項2】 前記傾斜面は、前記機体の走行方向と前記加熱ヘッドの上昇による合成軌跡に沿う傾斜としたことを特徴とする請求項1記載の野菜移植機におけるマルチフィルム孔開装置。
【請求項3】 前記傾斜面は前記加熱ヘッドの外郭に形成したテーパ面であることを特徴とする請求項1記載の野菜移植機におけるマルチフィルム孔開装置。
【請求項4】 前記テーパ面は円弧状の同一外径の横断面形状を持つことを特徴とする請求項3記載の野菜移植機におけるマルチフィルム孔開装置。
【請求項5】 野菜移植器の機体に装着されほぼ鉛直方向に昇降しマルチフィルムを溶融して孔開けする加熱ヘッドを備えるマルチフィルム孔開装置であって、前記加熱ヘッドは、前記機体の走行と当該加熱ヘッドの上昇による合成軌跡に沿う傾斜とした軸線を持つ円柱状としたことを特徴とする野菜移植機におけるマルチフィルム孔開装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、野菜移植機に係り、特にマルチフィルムを移植に適した形状に正確に孔開けすることができる野菜移植機におけるマルチフィルム孔開装置に関する。
【0002】
【従来の技術】圃場の畝には凍結防止のためのマルチフィルムが敷設される。このようなマルチフィルムを備える畝に1株分のポット苗を植え付けるための野菜移植機には、マルチフィルムの孔開装置が備えられる。この孔開装置は発熱体を上下に昇降させてマルチフィルムを溶融により孔開けして植え付け孔とするもので、この植え付け孔を通して苗が植え付けられる。
【0003】このようなマルチフィルムの孔開装置としては、たとえば実用新案登録第2590090号公報に記載のものがある。この公報に記載の孔開装置は円柱状の押圧部材を発熱体の一部として備えたもので、押圧部材を高温に設定することによりマルチフィルムを溶融して孔開けすることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、高温となる押圧部材は円柱状なので、マルチフィルムに開けられる孔は長孔状となったり開口縁が引きずり上げられたりする。すなわち、孔開け装置は野菜移植機の走行と同時に昇降動作して孔開けするので、走行方向と昇降方向の合成により押圧部材は進行方向に向けて斜め上がりに上昇する。このため、押圧部材が最下端まで下降して上昇するときには、孔開けした開口の縁を上向きに引きずり上げるようになり、円が好ましい植え付け孔が長孔状となったり開口縁部が上に引きずり上げられて変形してしまう。したがって、マルチフィルムは苗の移植に必要なだけの開口面積よりも大きく孔開けされてしまうことになり、畝土の凍結防止が損なわれ、ひいては苗の生育にも影響することになる。
【0005】このように従来の孔開け装置では、発熱体の押圧部材が円柱状であるため、野菜移植機の走行と押圧部材の上昇動作の合成により斜め上に押圧部材が上昇することにより、マルチフィルムに対して適正な孔開け作業ができないという問題がある。
【0006】本発明は、マルチフィルムに対して円形の植え付け孔を正確に孔開けすることができる野菜移植機におけるマルチフィルム孔開け装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、野菜移植機の機体に装着されほぼ鉛直方向に昇降しマルチフィルムを溶融して孔開けする加熱ヘッドを備えるマルチフィルム孔開装置であって、前記加熱ヘッドは、前記機体の走行方向に斜め上がりに形成した傾斜面を備えていることを特徴とする。
【0008】このような構成において、前記傾斜面は、前記機体の走行方向と前記加熱ヘッドの上昇による合成軌跡に沿う傾斜とすることができる。
【0009】また、前記傾斜面は前記加熱ヘッドの外郭に形成したテーパ面とすることができる。この場合、前記テーパ面は円弧状の同一外径の横断面形状を持つ構成とすることができる。
【0010】更に、本発明は、野菜移植器の機体に装着されほぼ鉛直方向に昇降しマルチフィルムを溶融して孔開けする加熱ヘッドを備えるマルチフィルム孔開装置であって、前記加熱ヘッドは、前記機体の走行と当該加熱ヘッドの上昇による合成軌跡に沿う傾斜とした軸線を持つ円柱状としたことにも特徴を有する。
【0011】
【発明の実施の形態】機体に設けたマルチフィルム孔開け装置の加熱ヘッドはほぼ鉛直方向に昇降し、下降するときに畝に敷設したマルチフィルムに接触押圧して溶融することによりマルチフィルムに植え付け孔を開けることができる。この孔開けの後に加熱ヘッドが上昇するときには機体の走行と加熱ヘッドの上昇の合成軌跡となり、この軌跡は機体の走行方向に向けて斜め上がりを描く。したがって、加熱ヘッドに機体の走行方向に向け斜め上がりの傾斜面を形成することで、孔開した後にマルチフィルムが加熱ヘッドにあと引きされるようなことがなく、適正な形状に孔開けすることができる。
【0012】また、機体の走行と加熱ヘッドの合成軌跡に沿う傾斜とした傾斜面を設けることで、加熱ヘッドはマルチフィルムから速やかに上に抜けていくので、マルチフィルムに開ける孔が長孔状となったり開口縁が引き上げられることがなく、加熱ヘッドの横断面に相当する大きさの孔を確実に開けることができる。このため、マルチフィルムに開ける植え付け孔が不要に大きくなったりすることがなく、苗周りの畝の凍結を防止して苗の生育を促すことができる。
【0013】加熱ヘッドに設ける傾斜面としてはその外郭に形成したテーパ面とすることができ、このテーパ面の傾斜を適切にすることにより、加熱ヘッドが上昇していくときのマルチフィルムに引きずり上げ等を防止することができる。
【0014】また、テーパ面は円弧状の同一外径の横断面形状を持つものとした場合では、加熱ヘッドの畝への突っ込み深さが変わってもマルチフィルムには常に一様な内径の孔を開けることができる。したがって、植え深さを多少変更した場合でも同じ形状の孔がマルチフィルムに開けられるので、植深適応性及び畝適応性を向上させることができる。
【0015】更に、加熱ヘッドを、機体の走行と当該加熱ヘッドの上昇による合成軌跡に沿う傾斜とした軸線を持つ円柱状とすることができる。この場合では、円柱状の加熱ヘッドの軸線を機体の走行と加熱ヘッドの上昇の合成軌跡に沿うようにすれば、円柱状の加熱ヘッドの横断面に相当する孔を正確に開けることができる。
【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0017】図1は本発明のマルチフィルム孔開装置を備えた野菜移植機の側面図である。
【0018】野菜移植機は機体1の前端側に一対の前輪2aを備えるとともに後端側に一対の駆動輪2bを備え、この駆動輪2bにエンジン3からの動力を伝達することによって圃場A上を走行可能としたものである。エンジン3はベルト3aによって各駆動部に回転等の動力を伝達可能としたもので、駆動輪2bはベルト3aに連接した伝動ケース2c内の伝達手段によって回転駆動される。また、駆動輪2bの後方には畝B上を転動する鎮圧ローラ2dが配置されている。
【0019】エンジン3や後述する苗供給機構,苗植え付け機構等の操作は機体1の後部側に設けた操作部4によって操作される。この操作部4には、主クラッチレバー4a,植え付けクラッチレバー4b,サイドクラッチレバー4c,走行主変速レバー4d,株間調節レバー4e,ハンドル端部バー4fをそれぞれ備えている。
【0020】操作部4の前方には苗供給機構部5が配置されている。この苗供給機構部5はハウジング5aに収納されエンジン3によって駆動されるチェーン(図示せず)によって苗トレイCを周回動作させる構成としたものでハウジング5a内で苗トレイCが上下反転するときに苗が機体1側に引き取られる。そして、この苗はハウジング5aの近傍に設けた植え付け器6に収納されて畝に植え付けられる。すなわち、植え付け器6は先細り状とした一対の爪を開閉自在に構成したもので、エンジン3を駆動源とし苗供給機構部5と連動して上下方向にほぼ楕円軌道Lで昇降可能としたものである。そして、苗供給機構部5から受け取った苗を根が下側になるように植え付け器6内で保持し、植え付け器6が畝Bに突入したときに爪が開いてポット苗を移植することができる。
【0021】植え付け器6の前方には、畝Bの上面に被せたマルチフィルム(図示せず)に植え付け孔を開けるためのマルチフィルム孔開装置7を配置する。図2はマルチフィルム孔開装置7部分を示す拡大図である。
【0022】図2において、マルチフィルム孔開装置7は、機体1側に固定された支持プレート7aに上下方向に回動自在とした一対の上リンク7b及び下リンク7c、これらの上下のリンク7b,7cに摺接してエンジン3により回転駆動されるカム7dとを駆動系として備えたものである。上下のリンク7b,7cの右端側は支持プレート7aの連接点とともに四節平行リンク機構を構成するようにブロック8aに連接される。そして、ブロック8aにはスリーブ8bを上下に昇降可能に外挿し、スリーブ8bの下端には加熱ヘッド9を取り付けている。加熱ヘッド9は機体1内のバッテリー(図示せず)に導通接続されたもので、所定の加熱量となるように通電量が制御される。
【0023】ブロック8aは上下方向に多数の孔8a−1を開けたもので、スリーブ8bに外側から差し込むボルト(図示せず)をこれらの孔8a−1の任意のものに差し込むことによってスリーブ8bの高さ位置を調節することができる。このようにスリーブ8bの高さ位置を調節することで加熱ヘッド9の下降距離を設定することができる。また、加熱ヘッド9部分から孔8a−1部分が離れているので、高さ調節を手作業で行う場合でも手が熱くなることがなく、特に加熱ヘッド9の作動中でも熱さを感じることなく高さ調節が可能となる。
【0024】カム7dがエンジン3に連動して回転駆動されると、四節平行リンクを構成している上下のリンク7b,7cによってブロック8aはほぼ鉛直方向に下降し、図1において畝Bに敷設しているマルチフィルムに加熱ヘッド9を突き当てることができ、マルチフィルムに孔を開けることができる。
【0025】図3は加熱ヘッド9の詳細であって、(a)は下側から見た斜視図、(b)側面図、(c)は底面図である。
【0026】加熱ヘッド9は熱伝導性の高い金属を素材としたもので平面形状は円である。そして、機体1に装着したときに前面側を向く面にテーパ面9aを形成している。すなわち、図2に示すように加熱ヘッド9の前面側には下から上に向けて前方に突き出る傾斜のテーパ面9aが形成されている。このテーパ面9aの曲率は加熱ヘッド9の上下方向において全て等しいものとしている。すなわち、加熱ヘッド9の上面のテーパ面の半径をRとし、加熱ヘッド9の下面のテーパ面9aの半径をrとするとき、これらのRとrを等しい値に設定する。これにより。加熱ヘッド9のどの横断面でも半径R(r)のテーパ面9aとすることができる。
【0027】なお、以上の形状の加熱ヘッド9とする代わりに、図4に示すように円柱をその軸線と斜めに交差する面で切断した形状の加熱ヘッド10としてもよい。このような加熱ヘッド10の形状であれば、どの横断面でも円柱の半径に等しい外郭を形成することができる。
【0028】以上の構成において、ポット苗を畝Bに移植して行く作業は、作業者が操作部4を操作することによりエンジン3を起動して駆動輪2bを回転させる。この駆動輪2bの回転により機体1は図1において左方向に移動し、同時に苗供給機構部5及びマルチフィルム孔開装置7を駆動する。すなわち、機体1の移動によりまずマルチフィルム孔開装置7のブロック8aとスリーブ8bが下降して加熱ヘッド9を畝B内に差し込む。このとき、畝Bの表面に敷設されたマルチフィルム(図示せず)に植え付け孔が開けられる。そして、この植え付け孔の位置に合わせて植え付け器6により苗が植え付け孔を通して畝Bに移植される。
【0029】ここで、マルチフィルム孔開装置7の加熱ヘッド9は、上下のリンク7b,7cによる四節平行リンク機構によってほぼ鉛直方向に昇降動作する。そして、機体1は連続的に走行していくので、加熱ヘッド9はその昇降動作と機体1の走行の合成とした軌跡を描くようになる。図5はこの加熱ヘッド9の移動の軌跡を示すもので、ほぼ鉛直姿勢で畝B上のマルチフィルムMを下に突っ切る。この突っ切りのときに加熱ヘッド9の熱により加熱ヘッド9の上端の円の大きさに等しい孔M−1がマルチフィルムMに開けられる。そして、加熱ヘッド9が最下端から上昇するときには機体1の走行方向の動きが合成されるので、図示のように斜め左に傾斜した軌跡を描く。したがって、加熱ヘッド9が従来例のように円柱状であると、加熱ヘッド9が左側にマルチフィルムMを引っ張るようになるため、長孔状となったりマルチフィルムMを引きずり上げることになる。
【0030】これに対し、本発明では、加熱ヘッド9の進行方向側を下側から上側に向けて進行方向側に突き出るようにテーパ面9aを形成している。そして、このテーパ面9aの傾斜を加熱ヘッド9が畝B及びマルチフィルムMから抜けるときの軌跡の傾斜にほぼ一致させておけば、加熱ヘッド9は速やかにマルチフィルムMから抜け出すことができる。すなわち、マルチフィルムMに対して加熱ヘッド9が傾斜状態で抜けていくとき、テーパ面9aの傾斜を加熱ヘッドの移動方向に合わせることで、マルチフィルムMに開けた孔M−1を広げることなくしかも引きずり上げることなく操作することができる。したがって、マルチフィルムMには図5に示すように加熱ヘッド9が入り込んだ分の大きさに相当する円形の孔M−1が形成され、苗の移植後のマルチフィルムMの被覆状態を良好にすることができ凍結することなく苗の生育を促すことができる。
【0031】なお、図4に示した形状の加熱ヘッド10の場合でもその軸線の傾きの度合いを加熱ヘッド10の軌跡に一致するようにすることでほぼ円形の孔をマルチフィルムMに開けることができる。すなわち、加熱ヘッド10の姿勢を機体1の進行方向に対して上端側が前に突き出るようにすることで、加熱ヘッド9の場合のテーパ面9aと同様の傾斜を持たせることができるので、マルチフィルムMに開ける孔をほぼ円形に開けることができるとともに孔の開口縁を引きずり上げることがない。
【0032】また、加熱ヘッド9のテーパ面9aの曲率は加熱ヘッド9の上下方向において全て等しいものとしているので、加熱ヘッド9の畝Bへの入り込み深さに関係なく一様な大きさ(図3で示した半径R)の孔をマルチフィルムMに開けることができる。したがって、植え深さを多少変更したときでも、一様な大きさの孔がマルチフィルムMに開けられるので、植深適応性及び畝適応性を高くすることができる。
【0033】
【発明の効果】請求項1の発明では、加熱ヘッドに機体の走行方向に向けて斜め上がりの傾斜面を形成しているので、加熱ヘッドによるマルチフィルムの孔開において開口縁を引きずり上げることがなく適正な形状の孔開けが可能となり、苗の健全な生育が可能となる。
【0034】請求項2の発明では、機体の走行方向と加熱ヘッドの移動の合成軌跡に沿うような傾斜面を加熱ヘッドに持たせることにより、加熱ヘッドによるマルチフィルムの孔開において孔が長孔となったり孔の開口縁が引きずり上げられることがないので、移植に適した孔の形状とすることができる。
【0035】請求項3の発明では、加熱ヘッドにテーパ面を形成するだけの簡単な構成で、マルチフィルムに正確に孔開けすることができる。
【0036】請求項4の発明では、加熱ヘッドの押し込み深さが変わってもマルチフィルムに開けられる孔の大きさが変わることがないので、植深適応性及び畝適応性を高めることができる。
【0037】請求項5の発明では、円柱状として軸線を傾斜させた加熱ヘッドを用いるので、請求項1の発明と同様に加熱ヘッドによるマルチフィルムの孔開において孔が長孔となったり孔の開口縁が引きずり上げられることがないので、移植に適した孔の形状とすることができ、苗の健全な生育が可能となる。また、加熱ヘッドは軸線を傾斜させた円柱状であるため、加熱ヘッドの押し込み深さが変わってもマルチフィルムに開けられる孔の大きさを一様とすることができる。
【出願人】 【識別番号】000006851
【氏名又は名称】ヤンマー農機株式会社
【出願日】 平成13年6月1日(2001.6.1)
【代理人】 【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
【公開番号】 特開2002−354947(P2002−354947A)
【公開日】 平成14年12月10日(2002.12.10)
【出願番号】 特願2001−167344(P2001−167344)