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【発明の名称】 マルチフィルム
【発明者】 【氏名】田中 住典

【要約】 【課題】畝場より回収する際、マルチフィルムの土壌に埋められていた部分と、土壌に埋められていなかった部分の境界において確実にマルチフィルムが切断され、以て作業者の労力を低減化でき、また回収されたマルチフィルムの再利用や、廃棄処理が容易なマルチフィルムを提供すること。

【解決手段】フィルムがその長手方向に平行に、中央部と該中央部を挟む二つの側部に三分割されており、中央部が生分解性を有しておらず、側部が生分解性を有していることを特徴とするマルチフィルム。あるいは、フィルムがその長手方向に平行に、中央部と該中央部を挟む二つの側部に三分割されており、中央部、側部ともに生分解性を有しており、しかも、中央部の方が、側部よりも、土中において分解速度が遅いことを特徴とするマルチフィルム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 フィルムがその長手方向に平行に、中央部と該中央部を挟む二つの側部に三分割されており、中央部が生分解性を有しておらず、側部が生分解性を有していることを特徴とするマルチフィルム。
【請求項2】 フィルムがその長手方向に平行に、中央部と該中央部を挟む二つの側部に三分割されており、中央部、側部ともに生分解性を有しており、しかも、中央部の方が、側部よりも、土中において分解速度が遅いことを特徴とするマルチフィルム。
【請求項3】 中央部と該中央部を挟む二つの側部に三分割されたフィルムの少なくとも一方の面に、生分解性を有する外層が配されていることを特徴とする請求項1または2に記載のマルチフィルム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、農作物の栽培効率を向上させるために畝等に展張して使用するマルチフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、農作物の栽培効率を向上させるために、様々なポリエチレン製のマルチフィルムが提案されている。例えば、畝の地温が外気によって低下することを防止する透明のマルチフィルム、逆に太陽光線を反射して地温の上昇を抑制するシルバーや乳白色に着色されたマルチフィルム、太陽光線を吸収して雑草の繁茂を防止する黒色マルチフィルムなどがある。これらのマルチフィルムは生分解性を有しておらず、長期間使用しても分解してなくなることがないため、作物を収穫した後にマルチフィルムを回収かつ廃棄する必要があった。しかしながら該回収作業は非常に重労働である上、また回収中にマルチフィルムの一部が飛散するなどして回収できなかった場合は、回収し残されたフィルムが自然界に放置されたままの状態となって、環境を破壊してしまう恐れがある。また、マルチフィルムの廃棄問題は、野焼きが禁止されたのを受けて、近年深刻な社会問題となっており、その抜本的な対策が求められていた。
【0003】そこで、生分解性を有する高分子材料からなる農業用フィルムが種々検討されてきた。例えば、特公昭51−48975号公報には、ポリオレフィンに直鎖状高級脂肪酸直鎖高級アルコールエステルと、窒素、リン、もしくはカリウムの無機或いは有機化合物を配合して成形することを特徴とする微生物分解性農業用フィルムが開示されている。また、特公昭59−8365号公報には、高分子量ポリカプロラクトンと高分子量脂肪族ポリアミドとの混合物を、それらの融点以上で明確な融点降下を示すまで加熱溶融して得たエステル−アミド交換生成物を素材として成形された生分解性を有する農業用マルチフィルムが開示されている。さらにまた、特開平3−259935号公報や特開平3−263441号公報には、エチレン−ビニルアルコール共重合体10〜90重量%とでんぷん90〜10重量%を主成分とする組成物からなる農業用マルチ栽培フィルムが開示されている。
【0004】ところで生分解性を有するマルチフィルムを使用して作物を栽培後、マルチフィルムを畝場より回収する際、マルチフィルムの土壌に埋められていた部分の生分解が土壌に埋められていなかった部分のそれよりも進んでいるため、通常両部分の境界線に沿って切断されるが、マルチフィルムの使用期間によってはこの境界線で切断されず、土壌に埋められた部分が巻き込まれて回収される場合があった。この土壌に埋められた部分は土が多く付着しており、フィルムの回収作業において作業者を煩わせるものであった。また回収したマルチフィルムを再生利用するにも不都合であり、さらに焼却等により廃棄するにおいても重量がかさみ不都合であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような状況に鑑みなされたものである。すなわち、マルチフィルムを使用して作物を栽培後、マルチフィルムを畝場より回収する際、マルチフィルムの土壌に埋められていた部分と、土壌に埋められていなかった部分の境界において確実にマルチフィルムが切断され、以て作業者の労力を低減化でき、また回収されたマルチフィルムの再利用や、廃棄処理が容易なマルチフィルムを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は鋭意研究を行った。この結果、畝に展張されるマルチフィルムのうち、土が被せられる部分を、土が被せられない部分よりも生分解速度の速い樹脂から構成することにより前記課題が解決できることを見いだし本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は、■フィルムがその長手方向に平行に、中央部と該中央部を挟む二つの側部に三分割されており、中央部が生分解性をしておらず、側部が生分解性を有していることを特徴とするマルチフィルム。
【0007】さらに本発明は、■フィルムがその長手方向に平行に、中央部と該中央部を挟む二つの側部に三分割されており、中央部、側部ともに生分解性を有しており、しかも、中央部の方が、側部よりも、土中において分解速度が遅いことを特徴とするマルチフィルム。
【0008】さらに本発明は、■中央部と該中央部を挟む二つの側部に三分割されたフィルムの少なくとも一方の面に、生分解性を有する外層が配されていることを特徴とする■または■に記載のマルチフィルム。
【0009】即ち、本発明のマルチフィルムは、フィルムを単一構成とせずにフィルムの長手方向に三分割し、マルチフィルム使用時に土中に埋設されない中央部は、生分解性を有さないか、あるいは比較的生分解速度が遅いものとし、土中に埋設される側部は、比較的生分解速度が早いものとすることによって構成されている。さらに、該フィルムの少なくとも一方の面に、生分解性を有する外層が配されることにより構成されている。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明において用いられる生分解性を有する合成樹脂は限定されるものではないが、ポリ―ε―カプロラクトン(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、もしくはポリブチレンサクシネート/アジベート(PBSA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネートのテレフタレート変性タイプ(PBST)、ポリブチレンサクシネートのカーボーネート変性タイプ(PEC)、ポリエチレンサクシネート( PES )等の脂肪族ポリエステル系樹脂が好適である。そして、これらを目的とする生分解性速度に応じて適宜組み合わせて用いることができる。本発明者の研究によれば、これらの樹脂の生分解速度の順位は、下記のごとくである。
PES>PCL>PBSA>PBS>PBST≒PEC>PLA【0011】なお、PCLは、例えばダイセル化学工業(株)より商品名 ”セルグリーン”として上市されている。PBS、PBSAは昭和高分子(株)より商品名”ビオノーレ”として上市されている。PBSTはDuPont社、EastmanChemical社、及びBASF社からそれぞれ”Biomax”、”Easterbio”、”Ecoflex”として上市されている。PECは、三菱ガス化学(株)より商品名”ユーペック”として上市されている。PESは、(株)日本触媒より商品名”ルナーレSE”として上市されている。
【0012】一方、本発明において用いられる生分解性を有さない合成樹脂も限定されるものでなく、例えばポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1、低−、中−、或いは高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物等のポリオレフィン類;ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体等の芳香族ビニル共重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン樹脂等のハロゲン化ビニル重合体;アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体の如きニトリル重合体;ナイロン6、ナイロン66、パラまたはメタキシリレンアジパミドの如きポリアミド類;ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル類;各種ポリカーボネート;ポリオキシメチレン等のポリアセタール類等の熱可塑性樹脂が挙げられ、これらが1種以上組み合わせて用いることができるが、低密度ポリエチレンに代表されるポリオレフィン類が最適である。なお、上記合成樹脂には、その耐候性や、滑り性、熱安定性を向上させるために各種公知の添加剤を加えることができるほか、目的に応じて黒色、白色、銀色等の各種着色剤を添加することができる。
【0013】次に、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1は本発明のマルチフィルム1の一実施形態を示す平面図(A)、及び(A)のa−a’における断面図(B)である。本形態のマルチフィルム1は、フィルムの長手方向に平行に三分割されており、フィルム2の中央に位置する部位を中央部21、両側に位置する部位を側部22とする。この側部22は展張時において土が被せられる部分に相当するもので、その幅は、使用される畝場に設けられる畝の幅、高さに応じて30〜500mmの範囲で適宜設定される。
【0014】図2は本発明のマルチフィルムの他の実施形態を示す平面図(A)、及び(A)のb−b’における断面図(B)である。この形態のマルチフィルムは図1で示された形態のマルチフィルムの両表面に、さらに生分解性を有する外層3が積層されている。なお、外層は図1で示された形態のマルチフィルムの一方の表面のみに積層するようにしてもよい。
【0015】本発明のマルチフィルム1の中央部と該中央部を挟む二つの側部に三分割された部分は、中央部21と側部22とで、生分解速度に差がある。生分解速度に差をつける方法は特に限定されないが、以下の4つを例示する。
(1)中央部を、生分解性を有さない樹脂から形成し、側部を生分解性樹脂から形成する。
(2)中央部と側部で主成分となる生分解性樹脂の種類を変え、側部の生分解性速度を速く設定する。
(3)中央部と側部を同種の生分解性樹脂を主成分として用い、それに配合する分解を促進する添加剤(以下、分解促進剤と称す。)の配合割合を変える。分解性促進剤としては、セルロース粉、パルプ粉、サンダー粉、麦わら、稲わら、やしがら、もみがら、古紙、リンター、バガス等の植物繊維、或いは、その他のセルロースやリグニンを主成分とするリグノセルロース材料を粉砕したもの、さらに炭酸カルシウム、珪藻土、タルク等の吸水性を有する無機粉体等が例示できる。
(4)中央部と側部を同種の生分解性樹脂を主成分として用い、それに配合する分解を抑制する添加剤(以下、分解抑制剤と称す。)の配合割合を変える。分解性抑制剤としては、生分解性を有さない合成樹脂等が挙げられる。
【0016】なお、上記(3)で述べた分解促進剤を、(1)、(2)で述べた方法において側部を構成する生分解性樹脂に適宜配合してもよい。
【0017】また、本発明の請求項1、2に係るマルチフィルムは、中央部と側部との境界部分の強度が弱くなることがあり、マルチフィルムを運搬する間や展張する作業中にこの境界部分から破れてしまう恐れがある。そこでこの部分を補強する目的で、本発明によるマルチフィルムを多層化し、中央部と該中央部を挟む二つの側部に三分割されたフィルムの少なくとも一方に生分解性を有する合成樹脂からなる外層を設けることが好ましい。
【0018】更にまた、本発明のマルチフィルムの中央部、及び側部の境界部分が分かると、該フィルムを畝に展張する際に、土をどの辺りまで被せればよいのか目安になる。よって、中央部と側部の境が分かるように、境部分に印刷を施しても良い。また、中央部を成形するための合成樹脂、及び側部を成形するための合成樹脂の一方に着色剤を添加したり、あるいは双方に別色の着色剤を添加しておくと、フィルム製膜後に印刷等の処理を施さなくても、中央部と側部の境を作業者に知らせることができる。
【0019】以上述べた形態のマルチフィルムを製造する方法について説明する。本発明のマルチフィルムの製造方法は特に限定されず、例えば中央部のみからなるフィルム一枚と、側部のみからなるフィルム二枚を用意し、中央部の両側に側部が位置するように、中央部の側辺と側部の側辺を熱溶着等の方法により繋ぎ合わせることによって得られる。また他の製造方法としては、本出願人が特開平7−148841号公報等において示したように、中央部を成形するための合成樹脂と側部を成形するための合成樹脂を、複数の押出機にそれぞれ供給し、これらの押出機より特殊な樹脂分配流路を有する一つのダイスに供給し、溶融押出する方法を例示することができる。尚、ダイスは直線上のいわゆるTダイを用いてもよく、また環状のダイスを用いても良い。しかしながら、フィルムの幅を変更する可能性のある場合は、環状のダイスを用いてインフレーション押出成形法によって製膜すると、幅調節が簡単であるので好ましい。
【0020】更に、中央部と側部からなるフィルムの少なくとも一方に外層を設ける場合、例えば三分割されたフィルムとは別に、外層として生分解性樹脂からなる単層のフィルムを製膜し、これを接着剤等を介して三分割されたフィルムに貼り合わせると良い。また、共押出機を用いて、三分割されたフィルムを押出成形する際に同時に外層を押出成形することによっても得られる。共押出機を用いて同時に外層を押出成形すると、別々に成形した後に貼り合わせる場合と比較して、生産の工程数を減少することができる。
【0021】
【発明の効果】本発明によって提供されるマルチフィルムは、それを展張して使用する際に、土を被せる部分を、土を被せない部分よりも分解速度の早い樹脂から構成しているため、マルチフィルムを土壌より回収する際、両部分の境界線でマルチフィルムが確実に切断される。従って回収された部分には土壌の付着が少なく作業者の負担を軽減させることができ、また、回収したマルチフィルムの再生利用、あるいは焼却等による廃棄処理にあたっても有利である。
【出願人】 【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
【出願日】 平成13年5月17日(2001.5.17)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−335780(P2002−335780A)
【公開日】 平成14年11月26日(2002.11.26)
【出願番号】 特願2001−147406(P2001−147406)