| 【発明の名称】 |
香味を改善した野菜、その製造方法およびこれに使用する香料 |
| 【発明者】 |
【氏名】佐々木 次郎
【氏名】太刀川 久美子
【氏名】真許 勝弘
【氏名】井上 興一
【氏名】林 收一
【氏名】生形 義人
【氏名】御田村 哲
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| 【要約】 |
【課題】従来の水耕栽培野菜や露地栽培野菜が有する欠点を解消して、香味が改善された野菜、その製造方法およびこれに使用する香料を提供することである。
【解決手段】水耕栽培された野菜であって、体内に香料を取り込ませた香味の改善された野菜である。この野菜は、収穫期の野菜の根を、香料を添加した水または養液に浸漬することによって製造され、特に野菜を水耕栽培する過程で、香料を添加した水または養液を野菜に供給することによって製造される。前記香料としては、水溶性または水分散性の香料が使用される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】水耕栽培された野菜であって、体内に香料を取り込ませたことを特徴とする香味を改善した野菜。 【請求項2】葉菜類、果菜、豆類または根菜類である請求項1記載の野菜。 【請求項3】前記香料が少なくとも葉部に取り込まれている葉菜類である請求項1または2記載の野菜。 【請求項4】前記香料が、野菜本来の香味と異なる香味を付与する香料である請求項1〜3のいずれかに記載の野菜。 【請求項5】前記香料が果物香料である請求項4記載の野菜。 【請求項6】前記香料が、野菜本来の香味の少なくとも一部を強化する香料である請求項1〜3のいずれかに記載の野菜。 【請求項7】収穫期の野菜の根を、香料を添加した水または養液に浸漬することを特徴とする香味を改善した野菜の製造方法。 【請求項8】野菜を水耕栽培する過程で、香料を添加した水または養液を野菜に供給することを特徴とする香味を改善した野菜の製造方法。 【請求項9】請求項1〜6のいずれかに記載の野菜を製造するために使用する水溶性または水分散性の香料。 【請求項10】親水性溶剤を使用することなく、親水性の高い香料成分を含んでいる請求項9記載の香料。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、香味を改善した野菜、その製造方法およびこれに使用する香料に関する。 【従来の技術】 【0002】水耕栽培は植物の生育に必要な光、温度、栄養等の環境条件を制御しやすいため、一定の品質を有する野菜を一年を通じて安定して生産できるという利点がある。また、密閉された植物工場では、気象条件に影響されないため病気や害虫の侵入も防止することができる。その反面、水耕栽培は野菜の生育速度を速めているために、露地栽培された野菜に比べて、味や香りが弱く、水っぽくなる傾向にある。一方、露地栽培された野菜は、特有の苦味や渋み、香りが消費者に嫌われる原因となっている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来の水耕栽培野菜や露地栽培野菜が有する欠点を解消して、香味が改善された野菜、その製造方法およびこれに使用する香料を提供することである。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、野菜を水耕栽培する過程で、水または養液(培養液)に香料を添加して野菜に供給する場合には、当該香料が取り込まれた野菜を得ることができ、この野菜は体内に取り込まれた香料により特有の香りと味を有するという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。 【0005】すなわち、本発明にかかる香味が改善された野菜は、水耕栽培された野菜であって、体内に香料を取り込ませたことを特徴とする。本発明の野菜は、従来より水耕栽培されている、葉菜類、果菜、豆類および根菜類のいずれにも適用可能である。特に、葉菜類に適用すると、香料が少なくとも葉部に取り込まれている葉菜類の野菜を得ることができる。 【0006】本発明において、野菜の体内に取り込まれる香料には、野菜本来の香味と異なる香味を付与する香料と、野菜本来の香味の少なくとも一部を強化する香料とが含まれる。前者の例としては、後述する実施例に記載のように、レタスに対して果物(メロン等)の風味を付与する果物香料や他の野菜(キュウリ等)の風味を付与する野菜香料などが挙げられる。また、後者の例としては、水耕栽培野菜の欠点といわれる味や香りが弱く水っぽくなるのを改善したり、野菜本来の香味のうち、渋みや苦味、酸味などのない好ましい香気のみを増強する香料などが挙げられる。これらの香料を野菜に取り込ませることにより、従来にない美味しい野菜を提供することができる。 【0007】本発明にかかる香味の改善された野菜の製造方法は、収穫期の野菜の根を、香料を添加した水または養液に浸漬することを特徴とする。これにより、香料は根から吸収され、体内に取り込まれる。本発明では、特に、野菜を水耕栽培する過程で、香料を添加した水または養液を野菜に供給するのが好ましい。 【0008】また、本発明は、前記野菜を製造するために使用する水溶性または水分散性の香料をも提供するものである。このような水溶性または水分散性の香料を使用することにより、水または養液と共に当該香料を根から野菜に取り込ませることができる。この香料は、親水性溶剤を使用することなく、親水性の高い香料成分を含んでいるのが好ましい。 【0009】 【発明の実施の形態】本発明が適用される野菜としては、例えばキャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、こまつな、ほうれんそう、レタス、セルリー、ねぎ、菜類(はくさい、漬菜)、アスパラガスなどの葉菜類;トマト、ミニトマト、ナス、ピーマン、キュウリ、すいか、メロン、カボチャ、オクラ、いちご、とうもろこしなどの果菜類;いんげん、えだまめなどの豆類;だいこん、かぶ、にんじん、玉ねぎ、ごぼうなどの根菜類が挙げられる。 【0010】野菜の体内に香料を取り込ませるには、栽培中、好ましくは収穫期、特に収穫直前の野菜の根を、香料を添加した水または養液に浸漬して、根から香料を吸収させるのが好ましく、操作も簡単である。好ましくは、野菜を水耕栽培する過程で、香料を添加した水または養液をポンプなどで循環させるなどして、野菜に供給する。 【0011】本発明で使用する香料としては、例えばメロン、スイカ、オレンジ、レモン、パイナップルなどの果物の香気香味を呈する果物香料;レタス、キュウリ、キャベツなどの野菜の香気香味を呈する野菜香料などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、種々の香気香味を呈する香料が使用可能である。 【0012】前記果物香料は多くの人が好ましいと感じる香料であるため、これを野菜に取り込ませることにより、当該野菜が本来有する香気や食味が改善され、野菜が食べやすくなる。また、前記野菜香料を使用して、野菜が本来有する香りのうち、好ましいと感じる成分のみを強化することもできる。 【0013】本発明で使用する香料は、水または養液によって野菜の根から吸収される関係から、水に対する溶解性ないし分散性に優れた香料が使用される。この香料は、複数の親水性香料成分を組み合わせて調合されるが、一部に水に難溶性の香料成分が含まれていてもよく、この香料成分を他の親水性香料成分と混合することにより水に対する溶解性ないし分散性が向上する。 【0014】なお、香料を調合する際、必要に応じて、食品用に使用されているような水溶性ないし水分散性溶剤や界面活性剤などを適宜加えてもよい。しかし、水溶性香料に多用されるエチルアルコールは植物の体内に吸収されると、微量でも葉部などに即座に縮みが発生して、しぼんでしまうおそれがある。このため、溶剤を使用する場合には、非エチルアルコール溶剤を使用するのが好ましいが、溶剤を使用せずに、そのまま水または養液に加えるのがより好ましい。 【0015】本発明で使用可能な香料成分を以下に例示する。 (すべての野菜に使用可能な香料成分)ヘキサノール、ヘキサナール、trans−2−ヘキセナール、cis−3−ヘキセノール、trans−2−ヘキセノール、リナロール、リナロールオキサイド、ネロリドール、2−エチルヘキサノール、α−テルピネオール、テルピネンー4−オール、cis−3−ヘキセニルアセテート、trans−2−ヘキセニルアセテートなどの化合物であり、植物の若葉、青葉の香りとして認識される。 【0016】(特定の野菜、果物の香りを特徴付ける香料成分)3,6−ノナジエノール、2,6−ノナジエノール、ノナノール、2−ノネノール、3−ノネノール、6−ノネノール、3,6−ノナジエナール、2,6−ノナジエナール、2−ノネナール、3−ノネナール、6−ノネナール、フェニルアセトアルデヒド、ベンジルアセテート、リナロール、α−フェネチルアルコール、β−フェネチルアルコール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、シトラール、ヌートカトン、カンファー、メントール、メントン、ピペリトン、1,8−シネオール、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−ウンデカラクトン、エチルフェニルグリシデート、フラネオール、オイゲノール、バニリン、ジメチルスルフィド、ジアリルスルフィド、アリルイソチオシアネート、メチオノール、メチオナール、メチル3−メチルチオプロピオネート、エチル3−メチルチオプロピオネートなどの化合物(単品香料)、さらに食品エキスや果汁を濃縮する際に得られる回収フレーバーなどが挙げられる。これらの化合物および回収フレーバーは、1種または2種以上を組み合わせることにより、個々の品種の果物や野菜を特徴付ける香りを作り出すことができる。 【0017】(その他の使用可能な成分)酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、乳酸、ベンジルアルコール、エチルアセテート、エチルプロピオネート、エチルブチレート、エチルイソブチレート、エチル−2−メチルブチレート、エチルバレレート、エチルイソバレレート、プロピルアセテート、プロピルプロピオネート、プロピルブチレート、ブチルアセテート、トリエチルシトレート、エチルレブリネート、γ−ラクトン類、δ−ラクトン類などの比較的親水性の高い化合物は、これを適宜添加することにより、香りを整えるのに役立てることができる。この他にも、既存の香料成分と、親水性の高い香料成分であるアルコール類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、さらに分子量の小さい炭素数10以下のエステル類などとを組み合わせて親水性を高めさせることができる。 【0018】香料の水または養液への添加量は、対象とする個々の野菜の種類や使用する香料によって異なるため、特に制限されるものではないが、通常、水または養液に0.1〜1重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%の範囲で添加することにより、野菜の香味を改善することができる。 【0019】前記したように、香料を野菜に取り込ませるには、収穫期、好ましくは収穫直前の野菜の根を、香料を添加した水または養液に浸漬すればよい。この場合、水または養液に代えて、野菜を栽培している土に香料を添加する場合や、根を切り取った野菜を前記水または養液に浸漬することも考えられるが、いずれの場合も香料の取り込みが充分でなく、このため香味が改善された野菜を得ることができない。香料を添加した水または養液に野菜を浸漬する時間は特に制限されず、少なくとも2時間以上であればよく、好ましくは6〜12時間の範囲である。浸漬は、間隔をおいて複数回に分けて行ってもよい。 【0020】以上のように、本発明においては、水耕栽培野菜に、香料を添加した水または養液を供給することにより、水耕栽培野菜の特色である無農薬(安全性)に加えて、味、香りにも優れた野菜を一年を通じて安定的に提供することが可能になる。また、本発明方法は、操作が簡単であるため、植物工場のような大規模なものから小規模な家庭園芸用のものまで、いずれの水耕栽培にも適用可能であり、またいかなる種類の水耕栽培にも適用可能である。さらに、本発明では、香料と共に、他の栄養素、例えばビタミンC,カルシウム塩、鉄塩等をも水または養液に添加して、野菜に取り込ませてもよい。 【0021】 【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。 【0022】実施例1エチルアセテート5重量部、ベンジルアセテート1.5重量部、2−メチルブチルアセテート1重量部、3,6−ノナジエノール1重量部および既存の親水性メロン香料1.5重量部を混合して、水溶性のメロン香料を調製した。このメロン香料を蒸留水でそれぞれ200倍(0.5重量%)、400倍(0.25重量%)および800倍(0.125重量%)に希釈した。この希釈液に出荷直前まで成長した水耕栽培レタス(レッドファイヤー種)の根を、レタスの生育に最適な条件(温度25℃、湿度45〜55%、人工照明20000ルクス)に設定された人工気象室内で6時間浸漬する処理を行った。一方、比較のため、上記希釈液に代えて、香料を添加しない蒸留水を用いて同様にして水耕栽培レタスを処理した(以下、この処理レタスを対照品という)。上記のようにして処理したレタスを収穫し、7名のパネルにより、このレタスを食べたときの香りや味の官能評価を行った。その結果を表1および表2に示す。 【表1】
【表2】
表2における食味評価は以下の基準にて行った。 ×:対照品と変わらない。 △:対照品よりも少し美味しい。 ○:対照品よりも美味しい。 ◎:対照品よりも非常に美味しい。 7名のパネルによる官能評価を総合すると、対照品であるレタスがグリーン調の香りと特有の苦味を有し、ハリのある繊維質的な食感を示したのに対して、800倍希釈液で処理したレタスは、葉の表面からメロンの香りが感じられ、食べてみた感覚は香りの強さがそれほど強く感じず、若干の甘味があって対照品よりも食べやすくなったと評価された。また、400倍希釈液で処理したレタスは、強くメロンの香りが放出され、食べると味もメロンのような甘さと爽やかさがあると評価された。200倍希釈液で処理したレタスは、香料の効果が充分に強くなり、7名のパネル全員が明らかにレタスからメロンの香りがすると評価した。すなわち、800倍〜200倍希釈液でメロン香料を取り込ませたレタスは、いずれも外香にメロンの香りを持ち、ちぎると明らかな強さで香りを感じることができた。また、800倍〜200倍希釈液でメロン香料を取り込ませたレタスを口に入れて食べてみると、いずれもメロンを想起させる甘さとまろやかさを感じ、柔らさが増したように感じられ、7名のパネル全員が対照品のレタスよりも美味しくなったと報告した。 【0023】実施例2エチルアセテート5重量部、ベンジルアセテート1.2重量部、2−メチルブチルアセテート1.2重量部、trans-2−ヘキセナール1重量部、2,6−ノナジエノール0.4重量部および既存の親水性キュウリ香料1.2重量部を混合して、水溶性のキュウリ香料を調製した。このキュウリ香料を蒸留水でそれぞれ250倍(0.4重量%)、500倍(0.2重量%)および1000倍(0.1重量%)に希釈した。この希釈液に出荷直前まで成長した水耕栽培レタス(レッドファイヤー種)の根を、実施例1と同様にレタスの生育に最適な条件に設定された人工気象室内で6時間浸漬する処理を行った。一方、比較のため、上記希釈液に代えて、香料を添加しない蒸留水を用いて同様にして水耕栽培レタスを処理した(以下、この処理レタスを対照品という)。上記のようにして処理したレタスを収穫し、7名のパネルにより、このレタスを食べたときの香りや味の官能評価を行った。その結果を表3および表4に示す。 【表3】
【表4】
表4における食味評価は以下の基準にて行った。 ×:対照品と変わらない。 △:対照品よりも少し美味しい。 ○:対照品よりも美味しい。 ◎:対照品よりも非常に美味しい。 7名のパネルによる官能評価を総合すると、対照品であるレタスと比較して、1000倍希釈液で処理したレタスは、葉の表面からキュウリの香りが感じられた。しかし、食べてみた感覚は香りの厚みが出たように感じる程度で、実施例1のようにメロン香料を取り込ませたときと比べると、対照品との区別がはっきりするまでには強さがそれほど強く感じられなかったが、若干の甘味があって対照品よりも食べやすくなったと評価された。また、500倍希釈液で処理したレタスは、キュウリの香りと認識できる香りがあると評価された。250倍希釈液で処理したレタスは、香りに力強さが出て、香料の効果が強く現れ、はっきりとキュウリの香りを認識できると評価された。すなわち、1000倍〜250倍希釈液でキュウリ香料を取り込ませたレタスは、いずれも外香にキュウリの香りを持ち、口に入れて食べてみると、いずれもキュウリを想起させる厚みのある香りが感じられ、7名のパネル全員が対照品のレタスよりも美味しくなったと報告した。 【0024】 【発明の効果】本発明によれば、野菜の体内に香料を取り込ませることにより、この野菜に当該香料に由来する特有の好ましい香味を付与することができるという効果がある。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000183484 【氏名又は名称】日本製紙株式会社 【識別番号】591016839 【氏名又は名称】長岡香料株式会社
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| 【出願日】 |
平成13年5月14日(2001.5.14) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100104318 【弁理士】 【氏名又は名称】深井 敏和
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| 【公開番号】 |
特開2002−335763(P2002−335763A) |
| 【公開日】 |
平成14年11月26日(2002.11.26) |
| 【出願番号】 |
特願2001−143657(P2001−143657) |
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