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【発明の名称】 植物の栽培基盤
【発明者】 【氏名】佐久間 護

【氏名】三輪 隆

【氏名】井上 幸一

【氏名】安藤 慎一郎

【氏名】東本 享也

【要約】 【課題】勾配を有する場所に配置した場合でも、栽培基盤の全面に渡り水分を安定して供給し、栽培基盤の全面で植物を同時に早期に育成繁茂させ得る植物の栽培基盤を提供する。

【解決手段】植物の種苗20と高吸水性ポリマ22等の保水材とを混合したものを、栽培基盤18、24の全表面に固定することができるから、栽培基盤18、24を垂直な壁面等の勾配を有する場所に配置し、高吸水性ポリマ22等の保水材で植物の種苗20を固定すると共に、高吸水性ポリマ22等の保水材で植物の種苗20に水分を安定して供給して、全面で植物20を同時に生育させ、短時間の内に全面に渡って植物を隙間なく早期に育成繁茂させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 垂直な壁面等の勾配を有する面を構成すると共に、その表面に空隙部や多孔質体の孔等である多数の小さな開口部分が形成された緑化用植栽基盤材と、前記緑化用植栽基盤材の表面に均等に吹き付けて固着された、高吸水性ポリマ等の保水材と、植物の種苗とのを混合したものと、を有することを特徴とする植物の栽培基盤。
【請求項2】 前記緑化用植栽基盤材の表面における空隙部や多孔質体の孔等である多数の小さな開口部分に、前記高吸水性ポリマ等の保水材とコケ類の子実体や胞子体の混合物を目止めさせるように固着させたことを特徴とする請求項1に記載の植物の栽培基盤。
【請求項3】 表面に、前記高吸水性ポリマ等の保水材と前記植物の種苗とのを混合したものを密に吹き付けた前記緑化用植栽基盤材を、金網を張った枠に固定して構成し、前記枠を利用して垂直な壁面等の勾配を有する面に設置可能に構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の植物の栽培基盤。
【請求項4】 不織布と、三次元織物との間の面上に、植物の種苗と高吸水性ポリマ等の保水材とを混合して配置し、前記不織布と前記三次元織物とを一体に締結したものを具備することを特徴とする植物の栽培基盤。
【請求項5】 建造物に取り付け可能な構造体としての枠組みに金網を張り渡して一体化したメッシュ筋と、前記メッシュ筋の上に取付られる不織布と、前記不織布の面上に配置される、植物の種苗と高吸水性ポリマ等の保水材との混合物の層と、前記植物の種苗と前記高吸水性ポリマ等の保水材との混合物の層の面上に配置されると共に、前記前記不織布に一体的に締結される三次元織物と、を具備することを特徴とする植物の栽培基盤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、建造物の壁面や屋根といった勾配を有する部分又は水平面の部分等に設置可能な植物の栽培基盤に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に植物の栽培は、農業用土壌又は園芸用土壌に、植物を植え付けて生育させることにより行われるのが普通である。
【0003】また、植物の栽培に当たっては、土壌の条件が重要であり、例えば、保水性、通気性等に優れること、根の伸長抵抗が少ないこと、適度の養分を含有すること、及び植物の支承性、保持性が良好であること等の条件が要求される。
【0004】このため、農業用土壌又は園芸用土壌には、赤土、黒土、鹿沼土、腐葉土等の土類、桐生砂、軽石、富士砂等の砂類等の天然用土や、雲母系の原鉱石を焼成、膨脹させたバーミキュライト、パーライト等の人工用土を配合することにより土壌改良を行った土壌が用いられている。
【0005】また、農業用土壌又は園芸用土壌は、植木鉢や栽培用ブロック等に詰められた状態で植物の栽培に利用される。
【0006】さらに、植木鉢や栽培用ブロック等に詰めた農業用土壌又は園芸用土壌に植物を植え付けて栽培する場合には、植木鉢や栽培用ブロック等を略水平の場所に置いて土壌の全面に渡り水分を安定して供給し、植木鉢や栽培用ブロック等に詰めた土壌の全面で植物の生育にバラツキが起こらないようにして使用する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】近年、都市建築物に対しては、その外壁面、屋上、屋根等を緑化し、その美観を向上し、都市のヒートアイランド化を防止し、建物の省エネルギー化を促進するという要望や、道路の遮音壁を緑化して炭酸ガスの固定や窒素酸化物及び硫黄酸化物の固定浄化を促進するという要望がある。
【0008】そこで、建築物壁面や道路遮音壁等の勾配を有する場所では、そこで植物を栽培するために、そこに農業用土壌又は園芸用土壌を詰めた栽培用ブロック等を配置し、この栽培用ブロック等に詰めた農業用土壌又は園芸用土壌に植物を植え付けて栽培することが考えられる。
【0009】しかし、このような建築物壁面や道路遮音壁等の勾配を有する場所に土壌を詰めた栽培用ブロック等を配置して植物を栽培する場合には、栽培用ブロック内の土壌への植物の付着育成繁茂は自然の成り行きに任せられることになる。
【0010】このため、建築物壁面や道路遮音壁等の勾配を有する場所に配置された栽培用ブロック等の内部では、勾配があるために土壌の全面に渡って水分を安定して供給することが難しく、土壌の表面における勾配の上下方向で植物の生育に大きなバラツキが生じる。
【0011】さらに、土壌の表面に勾配がある場合には、植物が栽培用ブロック内の土壌へしっかりと根を下ろすまでに植物が風で飛ばされたり降雨で洗い流されたりすることがあるため、成長の遅い植物を栽培用ブロック内の土壌における勾配がある表面全体に渡って隙間なく育成繁茂させるまでに長時間を要するという問題がある。
【0012】また、建築物壁面や道路遮音壁等の勾配を有する場所に配置された栽培用ブロック等では、その内部に詰められた土壌が短期間(例えば栽培用ブロック等が60度勾配以上に傾斜されて配置される場合では、半年から1年、長くて2年の期間)の間に、栽培用ブロック等の内部から土壌が流亡し植物の生育が困難となる。
【0013】本発明は上記事実を考慮し、勾配を有する場所に配置した場合でも、栽培基盤の全面に渡り水分を安定して供給し、栽培基盤の全面で植物を同時に生育させ、短時間の内に栽培基盤における表面全体に渡って植物を隙間なく早期に育成繁茂させ得る植物の栽培基盤を新たに提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に記載の植物の栽培基盤は、垂直な壁面等の勾配を有する面を構成すると共に、その表面に空隙部や多孔質体の孔等である多数の小さな開口部分が形成された緑化用植栽基盤材と、緑化用植栽基盤材の表面に均等に吹き付けて固着された、高吸水性ポリマ等の保水材と、植物の種苗とのを混合したものと、を有することを特徴とする。
【0015】上述のように構成することにより、緑化用植栽基盤材が垂直な壁面等の勾配を有する場所に配置されても、この垂直又は傾斜する緑化用植栽基盤材上の全面に渡り植物を高吸水性ポリマ等の保水材で固定すると共に、植物に水分を安定して供給して、緑化用植栽基盤材の全面で植物を同時に生育させ、短時間の内に緑化用植栽基盤材における表面全体に渡って植物を隙間なく早期に育成繁茂させることができる。
【0016】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の植物の栽培基盤において、緑化用植栽基盤材の表面における空隙部や多孔質体の孔等である多数の小さな開口部分に、高吸水性ポリマ等の保水材とコケ類の子実体や胞子体の混合物を目止めさせるように固着させたことを特徴とする。
【0017】上述のように構成することにより請求項1に記載の発明の作用及び効果に加えて、緑化用植栽基盤材の表面における空隙部や多孔質体の孔等である多数の小さな開口部分に、高吸水性ポリマ等の保水材が目止めするように強固に固着し、さらに、この高吸水性ポリマ等の保水材がコケ類の子実体や胞子体に固着して、コケ類の子実体や胞子体を緑化用植栽基盤材の表面に強固に固定できる。
【0018】請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の植物の栽培基盤において、表面に、高吸水性ポリマ等の保水材と植物の種苗とのを混合したものを密に吹き付けた緑化用植栽基盤材を、金網を張った枠に固定して構成し、枠を利用して垂直な壁面等の勾配を有する面に設置可能に構成したことを特徴とする。
【0019】上述のように構成することにより請求項1又は請求項2に記載の発明の作用及び効果に加えて、建造物の垂直又は傾斜する面上に緑化用植栽基盤材を配置する際、建造物の垂直又は傾斜する面に枠を固定することにより、緑化用植栽基盤材を建造物の垂直又は傾斜する面に容易に配置して保持可能とする。
【0020】本発明の請求項4に記載の植物の栽培基盤は、不織布と、三次元織物との間の面上に、植物の種苗と高吸水性ポリマ等の保水材とを混合して配置し、不織布と三次元織物とを一体に締結したものを具備することを特徴とする。
【0021】上述のように構成することにより、植物の種苗と高吸水性ポリマ等の保水材とを混合したものを不織布と三次元織物との間に挟み付けて保持すると共に、植物を高吸水性ポリマ等の保水材で三次元織物に対して固定することができるから、これを垂直な壁面等の勾配を有する場所に配置し、風や雨が当たっても不織布と三次元織物との間の面上で植物の種苗と高吸水性ポリマ等の保水材とが移動したり剥落しないように保持できる。また、不織布と三次元織物との間の面上の全面に渡り植物に水分を安定して供給して、不織布と三次元織物との間の面上の全面で植物を同時に生育させ、短時間の内に不織布と三次元織物との間の面上の全体に渡って植物を隙間なく早期に育成繁茂させることができる。
【0022】本発明の請求項5に記載の植物の栽培基盤は、建造物に取り付け可能な構造体としての枠組みに金網を張り渡して一体化したメッシュ筋と、メッシュ筋の上に取付られる不織布と、不織布の面上に配置される植物の種苗と高吸水性ポリマ等の保水材との混合物の層と、植物の種苗と高吸水性ポリマ等の保水材との混合物の層の面上に配置されると共に、不織布に一体的に締結される三次元織物と、を具備することを特徴とする。
【0023】上述のように構成することにより、植物の種苗と高吸水性ポリマ等の保水材とを混合したものを不織布と三次元織物との間に挟み付けて保持すると共に、植物を高吸水性ポリマ等の保水材で三次元織物に対して固定することができるから、これを垂直な壁面等の勾配を有する場所に配置し、風や雨が当たっても不織布と三次元織物との間の面上で植物の種苗と高吸水性ポリマ等の保水材とが移動したり剥落しないように保持できる。さらに、不織布と三次元織物との間で植物に高吸水性ポリマ等の保水材から水分を供給して、植物の生育を可能とする。また、建造物の垂直又は傾斜する面部に、メッシュ筋を利用して一体的に設置するよう施工することにより、容易に配置して保持可能とする。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の植物の栽培基盤に係わる実施の形態について図1及び図2によって説明する。図1の全体斜視図に示すように、本実施の形態に係る植物の栽培基盤は、全体を一体化してパネル状の栽培基盤本体10に構成する。
【0025】この栽培基盤本体10は、その裏面側に、裏面支持用部材としてのアンカー用鉄筋12を、50mm四方の矩形枠を構成するように組み、その50mm四方の構造体としての矩形枠の全面にラス金網14を張り渡して一体化することにより、メッシュ筋16を構成する。
【0026】このように栽培基盤本体10は、その裏面部にメッシュ筋16を配置することにより、建築物を建設するためコンクリートの打ち込み作業と同時に栽培基盤本体10を設置する施工をすることができる。
【0027】また、栽培基盤本体10は、斜面上での固定方法として、その裏面部のメッシュ筋16を建築物の建設用コンクリートに打ち込んで一体化して設置すれば、建築物の壁面から栽培基盤本体10が滑落しないように確実に施工できる。
【0028】このメッシュ筋16の上には、その上面全体に渡って、緑化用植栽基盤材としての厚み10mmの不織布18を配置する。この不織布18は、耐候性に優れた材料を使用する。
【0029】この不織布18の材料として、例えば衣料浅滓を用いることができる。不織布18用の耐候性に優れた素材としては、麻、綿、絹(天然系)、ナイロン、エステル、ポリプロピレン(人工系)等を使用することができる。
【0030】この不織布18の上面部には、その全体に渡って植物の種苗としての種ゴケ20(コケ類の子実体や胞子体等)と高吸水性ポリマ22とを所要の混合比で混合したものを薄い層状に均して配置する。なお、図2に示す種ゴケ20と高吸水性ポリマ22とは、それぞれ図示するための便宜上の形状であって、具体的には種々の形態をとる。
【0031】また、種ゴケ20と高吸水性ポリマ22との混合物は、高吸水性ポリマ22が水を含んで30倍に膨張する性質のものを使用し、高吸水性ポリマ22が水を含んで30倍に膨張したときに、1重の層を成すように相隣接して並ぶ状態に構成する。
【0032】ここで、栽培基盤本体10に種ゴケ20を蒔くこととしたのは、スナゴケ、ハイゴケをはじめとする各種コケ類で建築物壁面を早期に緑化することで、建築物壁面や道路遮音壁等の従来緑化が困難で在った場所の緑化が容易となるためである。
【0033】すなわち、都市構造物における建築物壁面や道路遮音壁等は、一般の植物の生育には不適な場所が多い。ただし、コケ植物はこのような場所でこそ他の植物との競争することなく生育でき、環境に適合して旺盛に繁茂できるためである。
【0034】特に、種ゴケ20としては、スナゴケを利用すると、次の理由から有利である。
【0035】第1に、スナゴケの生育は、仮根の上に積み重なるように行われると共に、根が横方向にも伸びてネットワーク状に張り巡らされるので、相互に強く結束して生育する。
【0036】第2に、スナゴケは、高い保水機能(約20倍)を有する。
【0037】第3に、スナゴケは、胞子を雨の日に飛ばすため、花粉症を引き起こさない。
【0038】第4に、スナゴケは、・二酸化炭素(CO2)の固定力がかなりあり、窒素酸化物及び硫黄酸化物の固定浄化にも有効であるので、大気の浄化作用を期待できる。
【0039】第5に、スナゴケは、必要に応じて水分を吐き出す機能を有するため、砂漠や南極といった過酷な環境に耐えて生き続けることができる。
【0040】第6に、スナゴケは、フライパンで煎っても発芽能力が消えないほど生命力に富む。
【0041】第7に、スナゴケは、火山による裸地に始めに生える植物である陽光苦(スナゴケ等)であり、次にハイゴケ等が生えるという順序が自然界の節理として厳しく決まっており、このことからもスナゴケの生命力が強いことが伺える。
【0042】以上より、スナゴケは、都市構造物の屋上やコンクリート壁面上に配置した栽培基盤本体10が最適の生育環境となることが解かる。
【0043】また、種ゴケ20の生育に適した高吸水性ポリマ22の薄い層について見ると、高吸水性ポリマ22は多すぎないことが望ましい。すなわち、高吸水性ポリマ22の層は、完全吸水(約30倍)したときに、この不織布18の上面部の全面を覆う量を最大限度とする。
【0044】例えば、乾燥状態の高吸水性ポリマ22を1m2の不織布18の上面に蒔くときには、乾燥状態の高吸水性ポリマ22の占める面積が、不織布18の上面における面積の1/10以下である0.1m2以下とする。なお、高吸水性ポリマ22の量が多すぎると、高吸水性ポリマ22の上に種ゴケ20がくっついて成長し、不織布18の上に生育しなくなることがある。
【0045】この種ゴケ20と高吸水性ポリマ22との層の上には、三次元織物24を配置する。この三次元織物24は、ポリプロピレン製の糸(耐候性に優れた糸材料であれば、その他種々の糸材料を使用できる)を立体的にランダムに絡ませる構造や立体的な網目構造等の種々の構成をとり得る。
【0046】また、三次元織物24を構成するポリプロピレン製の糸は、耐候性を備えるようにコーティング処理を施すことが望ましい。
【0047】さらに、三次元織物24を構成する糸は、コケが繁茂した際に目立たないようにするため、緑色に着色しておく。
【0048】この三次元織物24の層の厚さは、5〜20mmとする。
【0049】また、三次元織物24は、コケが生育するとき風で動かないようにし、かつ垂直面にしたときにコケが落ちないようにする役割を果たすため、三次元織物24の目合い(矩形網目の縦横の大きさ)を3mm×3mm〜25mm×25mmとし、その厚みを3mm〜40mmとしたものを用いることができる。
【0050】本実施の形態では、三次元織物24の下部目合い(三次元織物24の裏面における矩形網目の縦横の大きさ)を3×6、上部目合い(三次元織物24の表面における矩形網目の縦横の大きさ)を15×15、厚みを15に構成したものを不織布に一体化させて用いる。
【0051】前述のように構成した、不織布18と、種ゴケ20及び高吸水性ポリマ22の混合物と、三次元織物24とは、これら3者が一体に積層した状態で、図示しない締結装置が締結用針部材を打ち込み塑性変形させて締結することによって相互に幅が縮むほど圧縮された状態に縫合され一体化される。なお、不織布18と、種ゴケ20及び高吸水性ポリマ22の混合物と、三次元織物24とは、これら3者を、ミシンで相互に幅が縮むほど圧縮された状態となるよう縦横に縫製して一体化しても良い。
【0052】このように、種ゴケ20及び高吸水性ポリマ22の混合物とを、不織布18と三次元織物24との間に挟んで、3者を一体に積層した構造にした場合は、栽培基盤本体10を勾配が有る場所に配置したときでも、栽培基盤本体10から土壌が流亡してコケの生育ができなくなることを防止できる。また、不織布18に根を張ったコケが三次元織物24側に生育するので、三次元織物24が風除けや雨除けとなり、栽培基盤本体10から抜け落ちないようにできる。
【0053】また、不織布18と三次元織物24との間に、種ゴケ20と高吸水性ポリマ22とを混合して挟むことにより、栽培基盤本体10を勾配が有る場所に配置した場合でも、栽培基盤本体10における上方部分又は下方部分の何れでも、高吸水性ポリマ22で水分を十分に供給してコケの早期育成に寄与できると共に、コケ本体を高吸水性ポリマ22が三次元織物24に固定する作用を奏する。
【0054】実際に栽培基盤本体10でスナゴケを栽培したところ、高吸水性ポリマ22は水を含むと膨れ、乾燥すると縮む。この高吸水性ポリマ22が乾燥して縮むときに、高吸水性ポリマ22は、これに接触しているスナゴケと三次元織物24とに固着して両者を硬く結び付けて固定する。
【0055】これによりスナゴケ本体は、高吸水性ポリマ22によって三次元織物24に強固に固定される。また、このように高吸水性ポリマ22に固定された状態となると、この高吸水性ポリマ22から水を容易に吸収出来るようになり、水分を供給し易くなる。
【0056】三次元織物24の上には、構造体を構成するように50mm四方の矩形枠に組んだ表面支持用部材としての鉄筋26を配置する。
【0057】また、栽培基盤本体10は、間に不織布18と種ゴケ20及び高吸水性ポリマ22の混合物と三次元織物24との3者を一体化したものを挟んた状態で、表面支持用部材としての鉄筋26と裏面支持用部材としての鉄筋12とを所定間隔(ここでは、20mm)を開けて、複数の支持柱部材28によって固着することにより、全体が一体のパネル状となるように構成する。
【0058】次に、上述のように構成された本実施の形態に係る栽培基盤本体10の使用法及び作用について説明する。
【0059】この栽培基盤本体10は、建築物壁面や道路遮音壁等の勾配を有する場所、又は水平な場所に設置して使用する。
【0060】この栽培基盤本体10は、野外に設置してから1年間程度育成養生すると、スナゴケが自然に育成して、図1に向かって左側部分に示すように、栽培基盤本体10がスナゴケで密に覆われた状況にできる。
【0061】すなわち、建築物壁面や道路遮音壁等の勾配を有する場所に設置した栽培基盤本体10の不織布18上に均等に種ゴケ20としてのコケ類の子実体や胞子体を直蒔きし、風で種ゴケ20が飛ばされたり雨で流されたりすることがないように三次元織物24で保護し、かつ高吸水性ポリマ22で種ゴケ20を三次元織物24に固定する。
【0062】また高吸水性ポリマ22によって種ゴケ20の生育に必要な水分補給を安定して適切に行うことによって種ゴケ20の伸長育成を早める。これによりコケで覆われた緑化基盤を早期に育成できる。
【0063】なお種ゴケ20としては、スナゴケ、ハイゴケ(蘇類)が好ましいが、ウメノキゴケ、ツメゴケ、モジゴケ、チズゴケ、サルオガセ、ハナゴケ等の地衣類を利用しても良い。
【0064】次に、上述した本実施の形態に係る植物の栽培基盤における他の構成について説明する。
【0065】この構成例では、図示しないが、垂直な壁面等の勾配を有する面を構成する緑化用植栽基盤材(例えば、骨材の表面を接着させて骨材間に連続する空隙部を形成した硬化体であるポーラスコンクリートや火山性多孔質材などの多孔質体上や不織布または砂質土壌等の材料)の表面に、十分に水分を含ませた主として高吸水性ポリマ等の保水材と、植物の種苗としてのコケ苗とを一緒にして混合したものを、緑化用植栽基盤材の表面に均等に吹き付けて固着させ、垂直な壁面等の勾配を有する面である緑化用植栽基盤材上に、コケ植物を高吸水性ポリマ等の保水材で固定すると共に、コケ植物に水分を供給して、コケ植物の生育を可能とする。
【0066】また、上述の緑化用植栽基盤材の表面における空隙部や多孔質体の孔等である多数の小さな開口部分に、高吸水性ポリマ等の保水材とコケ類の子実体や胞子体の混合物を目止めさせるように固着させても良い。
【0067】さらに、コケ類の子実体や胞子体を、吸水性の物質(有機・無機の粉体や吸水性ポリマー等)によって固定し、かつこの吸水性の物質で水分供給をできるように、コケ類の子実体や胞子体と吸水性の物質とを混合したものを多孔質の緑化用植栽基盤材の表面に密に吹き付けたものを、金網で作った枠に固定して構成し、この枠を利用して垂直な壁面等の勾配を有する面に設置可能に構成しても良い。
【0068】
【発明の効果】本発明の植物の栽培基盤は、植物の種苗と高吸水性ポリマ等の保水材とを混合したものを、その表面に固定することができるから、これを垂直な壁面等の勾配を有する場所に配置し、高吸水性ポリマ等の保水材で植物の種苗を固定すると共に、高吸水性ポリマ等の保水材で植物の種苗に水分を安定して供給して、全面で植物を同時に生育させ、短時間の内に全面に渡って植物を隙間なく早期に育成繁茂させることができるという効果がある。
【出願人】 【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
【識別番号】592073318
【氏名又は名称】協和ト−タルワ−クス株式会社
【識別番号】000150110
【氏名又は名称】株式会社竹中土木
【識別番号】593232000
【氏名又は名称】株式会社朝日興産
【出願日】 平成13年5月17日(2001.5.17)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳 (外1名)
【公開番号】 特開2002−335756(P2002−335756A)
【公開日】 平成14年11月26日(2002.11.26)
【出願番号】 特願2001−148045(P2001−148045)