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【発明の名称】 緑化用植生基盤材、植生ユニット、及び、これらを用いた特殊空間の緑化方法
【発明者】 【氏名】三橋 紀男

【氏名】堀 健治

【要約】 【課題】耐乾燥性植物を短期間で簡単に植栽でき、しかも、維持管理作業を一切必要とせずに、植栽植物を長期に渡って好適に生育させることができる緑化用植生基盤材、植生ユニット等を提供する。

【解決手段】セラミックス製の植生基盤材1を、粒径が5〜15mmの範囲にある多孔質無機材料の造粒骨材にガラスを配合したものを成形するとともに焼成してなる造粒部3と、粒径が3mm以下の多孔質無機材料を原料とする粒子骨材にガラスを配合したものを成形するとともに焼成してなる細粒部2とによって構成し、造粒骨材の表面が、通孔を有する多孔質結晶化ガラスによって被覆されるとともに、造粒骨材同士が部分的に結合せられ、かつ、それらの粒子骨材間に0.4〜10mmの連続孔隙が多数形成されることにより、耐乾燥性植物を無土壌で植栽できるように構成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】粒径が5〜15mmの範囲にある粗粒骨材にガラスを配合したものを成形するとともに焼成してなるセラミックス板状の植生基盤材であって、前記粗粒骨材の表面の一部又は全部が、10〜100μmの通孔を有する多孔質結晶化ガラスによって被覆されるとともに、それらの粗粒骨材同士が当該多孔質結晶化ガラスによって部分的に結合せられ、かつ、それらの粗粒骨材間に0.4〜10mmの連続孔隙が多数形成されることにより、保水性、透水性、強度、及び、耐久性を兼ね備え、ベンケイソウ科セダム属植物等の耐乾燥性植物を植栽できるように構成したことを特徴とする緑化用植生基盤材。
【請求項2】粒径が5〜15mmの範囲にある粗粒骨材にガラスを配合したものを成形するとともに焼成してなる粗粒部と、粒径が3mm以下の多孔質無機材料を原料とする粒子骨材にガラスを配合したものを成形するとともに焼成してなる細粒部と、によって構成されるセラミックス板状の植生基盤材であって、前記粗粒骨材の表面の一部又は全部が、10〜100μmの通孔を有する多孔質結晶化ガラスによって被覆されるとともに、それらの粗粒骨材同士が当該多孔質結晶化ガラスによって部分的に結合せられ、かつ、それらの粗粒骨材間に0.4〜10mmの連続孔隙が多数形成されることにより、保水性、透水性、強度、及び、耐久性を兼ね備え、ベンケイソウ科セダム属植物等の耐乾燥性植物を植栽できるように構成したことを特徴とする緑化用植生基盤材。
【請求項3】前記粗粒部と細粒部が、いずれも平板状に形成され、層状に構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の緑化用植生基盤材。
【請求項4】前記細粒部が器状に形成され、前記粗粒部が当該細粒部の器状内部に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の緑化用植生基盤材。
【請求項5】重量比で、前記粒子骨材を45〜80%、ソーダ石灰ガラスと水硬性セメントにより生成した多孔質結晶化ガラスを20〜55%の割合で配合したものを成形し、焼成したことを特徴とする、請求項2〜請求項4のいずれかに記載の緑化用植生基盤材。
【請求項6】重量比で、前記粗粒骨材を60〜95%、ソーダ石灰ガラスと水硬性セメントにより生成した多孔質結晶化ガラスを5〜40%の割合で配合したものを成形し、焼成したことを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の緑化用植生基盤材。
【請求項7】緑化用植生基盤材の体積の0.1〜10%に相当する量の、黒土や有機肥料等の充填材を、前記連続孔隙に充填したことを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の緑化用植生基盤材。
【請求項8】保水性、透水性、強度、及び、耐久性を兼ね備えたセラミックス板状の緑化用植生基盤材に、ベンケイソウ科セダム属植物を植栽、活着させてなる植生ユニット。
【請求項9】請求項1〜請求項7のいずれかに記載のセラミックス板状の緑化用植生基盤材に、ベンケイソウ科セダム属植物を植栽、活着させてなる植生ユニット。
【請求項10】ベンケイソウ科セダム属植物の切苗を発根処理し、これを前記緑化用植生基盤材に自立定植したことを特徴とする、請求項8又は請求項9に記載の植生ユニット。
【請求項11】請求項8〜請求項10のいずれかに記載の植生ユニットを特殊空間に配置することを特徴とする、コンクリート表面等の特殊空間の緑化方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建物、河川、道路、ダム等の構造物における壁面等の緑化に用いることができる植生基盤材、植生ユニット、及び、緑化方法に関し、特に、保水性、透水性、強度、及び、耐久性に優れ、短期間で植栽植物を活着、育成することができる緑化用植生基盤材、植生ユニット、及び、これらを用いて行う特殊空間の緑化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、日本では、ビルなどのコンクリート構造物が林立する都市部において、気温が局地的に上昇するという「ヒートアイランド現象」が問題となっている。ヒートアイランド現象は、都市内で大量に発生する排出熱、太陽熱を吸収しやすいコンクリート構造物の過密化、緑地面積の減少といったことが、その発生原因であると考えられている。
【0003】そこで、最近では、コンクリート構造物を植物で覆うことにより、ヒートアイランド現象を抑止しようとする各種の緑化技術(緑化方法)が注目を集めている。特に、従来より緑化が困難であるとされていた人工地盤、屋上、壁面等の、人為的な手段を講じなければ植物の健全な育成が望めないような空間(特殊空間)の緑化は、大変意義が大きい。
【0004】従来から良く知られている特殊緑化空間の緑化方法としては、パーライト等を原料とする人工軽量土壌を構造物の屋上に配設し、そこに植物を植栽したり、ツタやアイビーといった蔓植物を構造物の壁面に這わせる、といった方法がある。
【0005】また、不織布に土壌を混入させ、そこに根付きセダムを植栽してなる緑化ユニットを用い、それらを構造物の屋上に配設するといった方法や、天然樹皮を無土壌軽量培地として使用し、そこにセダム属植物を植栽したものや、移植可能なレベルまで生育させた耐乾燥性植物と培地資材の結合体である緑化用ユニットを、植物の根が進入可能な空隙を有するポーラスコンクリート製の緑化対象面に張り付けるといった方法(特開平11−172706号等)も知られている。更に、法面緑化の場合は、種子吹付工(厚層基材混合)による工法が多数施工されている。
【0006】これらの緑化技術は、植物の断熱効果を利用して、構造物の屋上表面や壁面における太陽熱の吸収及び放射を好適に抑えることができ、ヒートアイランド現象の抑制に寄与するほか、省エネルギーにも貢献し、また、酸性雨から建物等を保護するという効果も期待することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】特殊空間の緑化は、光、水、気温、風、土壌等の環境条件が厳しく制限される。そして、特殊空間の緑化は、本来、園芸とは異なり、灌水、施肥、草刈り等のメンテナンスを殆どかけない省管理で行うものであり、自然条件下で永続育成できるものでなくてはならない。現在までに様々な資材と工法が開発されているが、各種関連法規(建築基準法、消防法等)による制約条件を満たし、灌水、施肥、草刈り等の管理を不要とする緑化技術は、未だ実現するには至っていない。
【0008】より具体的には、前述したような従来の緑化技術のうち、人工軽量土壌を用いた屋上緑化技術は、材料が軽量であるため、風が吹くと吹き飛ばされてしまうという欠点がある。特に、ビルの屋上などは強風に晒されることが多いため、有効な強風対策を講じる必要があるほか、降雨によって人工軽量土壌が流亡してしまうこともあるため、定期的に人工軽量土壌を補充しなければならないという問題がある。また、人工軽量土壌の原料として自然石を必要とし、資源問題という観点からも、実施化には多数の障害がある。
【0009】また、蔓植物を構造物の壁面に這わせるという壁面緑化方法のうち、ツタ系植物を用いたものは、ツタ系植物の特性として、強健であり、生育が旺盛であるというメリットはあるものの、灌水、剪定などの定期的な煩雑な維持管理が必要となるほか、ツタ系植物は落葉性のものが多いため、冬場は緑被効果を期待することができないという問題がある。また、冬場は、火災に対し防災上の問題がある。一方、アイビーを用いた壁面緑化方法は、アイビーが常緑樹であるため、周年その効果を期待することできるが、構造物を被覆できる程度にまで育成させるのに長期間を要し、また、ツタ系植物の場合と同様に、灌水、施肥、剪定等の維持管理が必要になるという問題がある。
【0010】また、不織布に混入させた土壌中に根付きセダムを植栽してなる緑化ユニットを用いた緑化方法は、根付きセダムの環境適応性、不織布の耐久性に問題があり、永続的に植生を維持することが困難であるという問題がある。また、構造物に設置する際、防根層、排水層等が必要となり、コストが嵩むという問題もある。
【0011】天然樹皮を無土壌軽量培地として使用し、そこにセダム属植物を植栽するという緑化方法は、天然樹皮の耐久性に問題がある。また、ポーラスコンクリートを用いた緑化方法の場合は、次のような問題がある。そもそもポーラスコンクリートは、骨材と結合膜のセメントペーストに細孔が形成されないため、保水機能に乏しく、微生物の生息に適していない。このため、ポーラスコンクリートを用いた緑化方法は、土壌、肥料、ピートモスなどの充填材を、植生しようとする植物の基盤としてポーラスコンクリートの空隙部に充填することが前提となるが、施工時においてそのような充填作業が必要になるとすれば、かなりの手間と時間がかかることになる。また、緑化を必要としないコンクリート構造物の工事と比べると、多大な費用を要することになる。
【0012】更に、施工後においても、充填材が雨や風等によって流失してしまうおそれがあり、特に、緑化対象面が急勾配ないし垂直な壁面である場合には、降雨による流失のおそれは顕著である。また、たとえ充填材が風雨などの外力による流失を免れたとしても、充填材中の栄養分は、植物の成長に従って、時間の経過とともに失われていくため、土壌等を充填してなるポーラスコンクリートを用いた緑化方法の場合、施工後において定期的に栄養分を補給してやる必要があり、メンテナンスが煩雑で、それだけ費用も嵩んでしまうという問題がある。
【0013】また、植物の生育環境としては、植生基盤材が弱酸性であることが望ましいが、ポーラスコンクリートからは、施工後長期に亘ってカルシウムイオンが溶出するため、植物を植栽したとしても、その周辺環境は植生に適しない強アルカリ性となってしまうだけでなく、カルシウム塩が植栽した植物の根の表面に集中して栄養分の吸収を阻害し、成長を妨げてしまうという問題がある。
【0014】法面の緑化方法において利用されている種子吹付工法は、植生後は殆ど無管理のため、雑草が繁茂し、見苦しい姿となっている。また、急勾配の法面に適用する場合には、植物の生育環境が厳しく、植生困難となっている。
【0015】本発明は、上記のような従来技術における問題を解決すべくなされたものであって、セダム属植物などの耐乾燥性植物を短期間で簡単に植栽でき、しかも、灌水、施肥、土壌の充填、剪定などの維持管理作業を一切必要とせずに、植栽植物を長期に渡って好適に生育させることができる緑化用植生基盤材、植生ユニット、及び、これらを用いた特殊空間の緑化方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明の発明者らは、上記のような各種植生基盤材及び各種植物を採用した従来の緑化技術における問題点を踏まえ、それらの問題を解決できるような植生基盤材及び植物について種々検討を行った結果、植栽管理上の理由から選抜した植物(セダム属植物)の生育に最も適し、多孔質材料を造粒によって調粒してなる粒状物(造粒物)を骨材とし、これを所定量の結晶化ガラス組成物を用いて結合した焼結板が、緑化用の植生基盤材としての特性(即ち、保水性、透水性を兼ね備え、微生物の生息が可能であること)を確保できること、更に、この植生基盤材にセダム属植物を植栽してユニット化したもの(植生ユニット)を使用すれば、特殊空間の短期緑化及び永続的緑化を容易に実現できることに着眼して、本発明を完成させるに至った。
【0017】本発明の請求項1に記載の緑化用植生基盤材は、粒径が5〜15mmの範囲にある粗粒骨材にガラスを配合したものを成形するとともに焼成してなるものであって、前記粗粒骨材の表面の一部又は全部が、10〜100μmの通孔を有する多孔質結晶化ガラスによって被覆されるとともに、それらの粗粒骨材同士が当該多孔質結晶化ガラスによって部分的に結合せられ、かつ、それらの粗粒骨材間に0.4〜10mmの連続孔隙が多数形成されることにより、保水性、透水性、強度、及び、耐久性を兼ね備え、ベンケイソウ科セダム属植物等の耐乾燥性植物を無土壌で植栽できるように構成したことを特徴としている。
【0018】また、本発明の請求項2に記載の緑化用植生基盤材は、粒径が5〜15mmの範囲にある粗粒骨材にガラスを配合したものを成形するとともに焼成してなる粗粒部と、粒径が3mm以下の多孔質無機材料を原料とする粒子骨材にガラスを配合したものを成形するとともに焼成してなる細粒部とによって構成されるものであって、前記粗粒骨材の表面の一部又は全部が、10〜100μmの通孔を有する多孔質結晶化ガラスによって被覆されるとともに、それらの粗粒骨材同士が当該多孔質結晶化ガラスによって部分的に結合せられ、かつ、それらの粗粒骨材間に0.4〜10mmの連続孔隙が多数形成されることにより、保水性、透水性、強度、及び、耐久性を兼ね備え、ベンケイソウ科セダム属植物等の耐乾燥性植物を無土壌で植栽できるように構成したことを特徴としている。
【0019】尚、この場合、粗粒部と細粒部は、いずれも平板状に形成され、層状に構成されているか、又は、前記細粒部が器状に形成され、前記粗粒部が当該細粒部の器状内部に配置されていることが好ましく、更に、粒子骨材とガラスの配合割合は、重量比で、前記粒子骨材が45〜80%、ソーダ石灰ガラスと水硬性セメントにより生成した多孔質結晶化ガラスが20〜55%であることが好ましい。
【0020】一方、粗粒骨材とガラスの配合割合は、重量比で、粗粒骨材が60〜95%、ソーダ石灰ガラスと水硬性セメントにより生成した多孔質結晶化ガラスが5〜40%であることが好ましい。
【0021】尚、本発明に係る緑化用植生基盤材は、土壌等からなる充填材を充填することなく、即ち、無土壌で耐乾燥性植物を植栽できることが一つの特徴となっているが、土壌等の充填材が充填されることを排除するものではなく、例えば、黒土や有機肥料等の充填材を前記連続孔隙に充填した場合には、植生基盤材の内部に微生物を移植することができ、植生基盤材の早期土壌化を図ることができる。この場合、緑化用植生基盤材の体積の0.1〜10%に相当する量の充填材を充填することが好ましい。
【0022】本発明の請求項8に記載の植生ユニットは、保水性、透水性、強度、及び、耐久性を兼ね備えたセラミックス板状の緑化用植生基盤材に、ベンケイソウ科セダム属植物を植栽、活着させてなることを特徴としている。尚、この植生ユニットにおける緑化用植生基盤材としては、請求項1から請求項7に記載したものを用いることが好ましい。また、植栽するベンケイソウ科セダム属植物は、予め切苗を発根処理しておき、これを自立定植することが好ましい。
【0023】本発明の請求項11に記載の緑化方法は、請求項8から請求項10に記載の植生ユニットを特殊空間に配置することによって、灌水、施肥、草刈等の管理を必要とせずに実施できるように構成されていることを特徴としている。尚、この場合、植栽植物に適度な乾燥ストレスを与えるようにすれば、植栽植物以外の植物の発芽、生育を阻止し、植栽植物のみを好適に生育させることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態について説明する。本発明の第1の実施形態に係る緑化用植生基盤材は、基本的には、粗粒骨材にガラスを配合したものを長さ40cm、幅25cm、厚さ5cm程度の平板状に成形し、これを焼成(セラミックス化)してなるものである。
【0025】本実施形態においては、粗粒骨材の原料として、保水性に寄与するとともに微生物の住処となる0.1〜100μmの多数の細孔を有する無機材料(例えば、石炭灰クリンカーアッシュなど)が使用されており、本実施形態における粗粒骨材は、そのような多孔質の無機材料の微細粒子を造粒してなるものである。以下、本明細書においては、粗粒骨材のうち、このように微細粒子を造粒することによって構成した骨材を「造粒骨材」と言う。
【0026】そして、この緑化用植生基盤材は、造粒骨材の表面の一部又は全部が、10〜100μmの通孔を有する多孔質結晶化ガラスによって被覆され、この多孔質結晶化ガラスによって造粒骨材同士が部分的に結合せられるとともに、それらの造粒骨材間に0.4〜10mmの連続孔隙が多数形成されるような構造となっている。
【0027】このような内部構造を呈する緑化用植生基盤材は、例えば、次のような方法によって製造することができる。まず、無機材料を造粒によって粒径が5mm以上となるように調粒してなる造粒骨材と、ソーダ石灰ガラス及び水硬性セメントよりなる多孔質結晶化ガラス(バインダー)とを用意し、重量比で造粒骨材が60〜95%、多孔質結晶化ガラスが5〜40%となるように配合する。
【0028】そして、この配合物の総重量の10〜25重量%の成形用水分を加えて混合し、得られた混合物(造粒骨材混合物)を型枠内に投入し、成形面圧力5kg/cm以下で振動成形を行い、所定の形状に成形する。これを養生硬化の後、1000〜1200℃で焼成する。
【0029】このような方法によって緑化用植生基盤材を製造した場合、0.1〜100μmの多数の細孔(造粒骨材の体積の10〜40%を占める。)を有する造粒骨材の表面の一部又は全部が多孔質結晶化ガラスによって被覆され、その多孔質結晶化ガラスには10〜100μmの通孔が形成されることになる。また、それらの造粒骨材同士は当該多孔質結晶化ガラスによって部分的に結合され、それらの造粒骨材間には、植物の根の伸長を阻害しない0.4mm以上の連続孔隙が形成されることになる。
【0030】そして、これらの細孔、通孔、及び、連続孔隙により、この緑化用植生基盤材は、土のpF試験(遠心法:JFS T151)による有効水分保持量(pF1.8〜3.0の条件下における保水量)80リットル/m程度の保水性と、透水性を兼ね備えることが可能となり、また、造粒骨材が結晶化ガラスによって強固に結合されることにより、十分な強度と耐久性を確保することができる。また、前述の方法によって製造した場合、緑化用植生基盤材の重量は、比較的軽量(嵩比重1.2程度)なものとなる。
【0031】このような特性を有する緑化用植生基盤材の構造は、自然界に存在するものとしては、土壌の団粒構造に類似している。土壌の団粒構造は、図1に模式的に示すように、水分を多く含むバクテリアや細菌等の微生物が棲む小さな孔7を有するミクロ団粒8と、このミクロ団粒8が集まった大きなマクロ団粒9を形成し、このマクロ団粒9には原生動物が生息する。また、土壌の団粒構造には多くのすき間10があり、これに水や空気が適度に出入りしたり、植物の根が入り込んで水分を吸い上げると共に呼吸している。そして、植栽基盤として健全な土壌は、固層40%、液層30%、気層30%程度の比率とされている。
【0032】一方、本実施形態に係る緑化用植生基盤材も、このような土壌の団粒構造に類似し、土壌の団粒構造が有するような保水性、透水性、通気性を有している。即ち、この緑化用植生基盤材は、図2に模式的に示すように、多数の細孔11を有する造粒骨材12が、その表面の一部又は全部に被覆された多孔質結晶化ガラス13によって部分的に結合され(結合部13a)、各造粒骨材12間には連続孔隙14が形成されている。また、被覆多孔質結晶化ガラス13層にも連続孔隙14に連通する通孔15が多数形成されている。
【0033】このような保水性及び透水性は、細孔、通孔、孔隙がそれぞれ独立した孔ではなく、連続した孔によってもたらされるものであり、多孔質結晶化ガラスで造粒骨材を部分的に結合し、骨材間に0.4〜10mmの連続孔隙を有するために、上述したような特性を有するものである。即ち、造粒骨材が土壌団塊構造のマクロ団粒に相当し、造粒骨材の細孔が分布している部分がミクロ団粒に相当する。
【0034】尚、図2に示した造粒骨材12は、図3の(1)に示すように、内部に多数の粒子内空隙21を有する多孔質の微細粒子4を凝集させ、微細粒子4間に多数の空隙(粒子間空隙6)を有する粒子塊5をさらに凝集させた構造(図3の(2)参照)を有しており、図2に示した造粒骨材12の細孔11は、これらの粒子内空隙21や粒子間空隙6によって構成されている。
【0035】このようにしてなる緑化用植生基盤材の空隙率は、30〜60%となっており、前述の植栽基盤としての健全な土壌の液層と気層の比率にすることができる。
【0036】尚、本実施形態においては、造粒骨材の原料となる無機材料として、石炭灰クリンカーアッシュ等を好適に用いることができるが、その他のもの、例えば、大谷石を粉砕したものや、珪藻土等の材料を用いることもできる。また、最終的な形状は、必ずしも平板状でなくとも良く、例えば、ブロック状に成形しても良い。
【0037】次に、本発明の第2の実施形態に係る緑化用植生基盤材について説明する。図4に示されているように、本実施形態における緑化用植生基盤材1は、粒径が5〜15mmの範囲にある造粒骨材(粗粒骨材)にガラスを配合したものを成形するとともに焼成してなる粗粒部3(以下、この粗粒部を「造粒部(3)」と言う。)、粒径が3mm以下の多孔質無機材料を原料とする粒子骨材にガラスを配合したものを成形するとともに焼成してなる細粒部2とによって構成されており、造粒部3の周囲(各側面及び底面)が細粒部2によって被覆されるような構造、換言すれば、器状に成形された細粒部2の器状内部に造粒部3が収納され、一体化された構造となっている。
【0038】そして、細粒部2及び造粒部3のいずれにおいても、骨材(造粒骨材及び粒子骨材)の表面の一部又は全部が、10〜100μmの通孔を有する多孔質結晶化ガラスによって被覆され、この多孔質結晶化ガラスによって骨材同士が部分的に結合されるような構造となっている。
【0039】尚、この緑化用植生基盤材1における造粒部3は、第1の実施形態における緑化用植生基盤材とほぼ同様の構成に係るものである。従って、この造粒部3は、第1の実施形態において説明したような方法と、同様の方法によって製造することができる。
【0040】一方、細粒部2は、例えば、次のような方法によって製造することができる。まず、粒子骨材として、粒径が3mm以下の、保水性に寄与するとともに微生物の住処となる0.1〜100μmの多数の細孔を有する無機材料(例えば、石炭灰クリンカーアッシュなど)を用意し、バインダーとして、ソーダ石灰ガラス及び水硬性セメントよりなる多孔質結晶化ガラスを用意する。そして、これらを重量比で、粒子骨材が45〜80%、多孔質結晶化ガラスが20〜55%となるように配合する。
【0041】そして、この配合物の総重量の10〜25重量%の成形用水分を加えて混合し、得られた混合物を型枠内に投入し、成形面圧力3kg/cm以上で振動成形を行い、器状に成形する。これを養生硬化の後、1000〜1200℃で焼成する。
【0042】このように、本実施形態におけるの緑化用植生基盤材1を構成する細粒部2と造粒部3は、いずれも製造工程の最後に焼成することにより、セラミックス化してなるものである。そして、この緑化用植生基盤材1は、細粒部2の焼成と、造粒部3の焼成とを別々に行い、焼成後において、細粒部2の器状内部に、造粒部3をはめ込むようにして製造することもできるが、振動成形によって器状に成形した細粒部2(焼成前)の器状内部に、造粒骨材混合物(振動成形・焼成前)を投入し、両者を一体化した後で、一度に焼成することによって製造することもできる。
【0043】このような方法によって製造された緑化用植生基盤材1は、造粒部3における造粒骨材の表面の一部又は全部、及び、細粒部2における粒子骨材の表面の一部又は全部が、10〜100μmの通孔を有する多孔質結晶化ガラスによって被覆され、この多孔質結晶化ガラスによって骨材(造粒骨材、及び、粒子骨材)同士が部分的に結合せられるとともに、それらの骨材間には、連続孔隙が多数形成されることになる。
【0044】但し、細粒部2と造粒部3とでは、使用される骨材の粒径が異なっている(造粒骨材の粒径は、5〜15mmであるのに対し、粒子骨材の粒径は、3mm以下)ため、骨材間に形成される連続孔隙の大きさに差が生じ、その結果、機能に差が生じることになる。
【0045】より具体的には、造粒部3においては、粒径が5〜15mmの範囲にある造粒骨材が使用されているので、造粒骨材間には、植物の根の伸長を阻害しない0.4mm以上の連続孔隙14が形成されることになる一方、細粒部2においては、粒径が3mm以下の粒子骨材が使用されているので、粒子骨材間には、500μm以下の連続孔隙が形成されることになり、その結果、細粒部2は、防根機能と断熱機能に優れたものとなる。
【0046】このように、造粒部3と細粒部2によって構成される緑化用植生基盤材1は、全体として適度な保水性と透水性を有するだけでなく、造粒部3と細粒部2のそれぞれの長所、即ち、根の伸長を阻害しないという植物の生育基盤としての機能と、防根・断熱機能とを併せ持つことになり、特殊空間の緑化に用いる材料としては、理想的な構造となっている。
【0047】尚、一例として、造粒部3の厚さを40mmとし、細粒部2の厚さを10mmに設定してこの緑化用植生基盤材1を製造した場合には、有効水分量85リットル/m、最大吸水量28vol%、透水係数6×10−2cm/秒という物性値を達成することができる。
【0048】また、この緑化用植生基盤材1の厚さ寸法は、特殊空間(構造物の屋上、法面、壁面等)に設置する際に受ける重量制限(建築基準法等)や、製造・輸送コストのことを考慮すると、薄層(例えば、100mm以下)に設定することが好ましく、造粒部3の厚さは20〜95mm、細粒部2の厚さは5〜20mmが好適である。
【0049】尚、本実施形態においても、造粒骨材及び粒子骨材の原料となる無機材料として、石炭灰クリンカーアッシュ等を好適に用いることができるが、その他のもの、例えば、大谷石を粉砕したものや、珪藻土等の材料を用いることもできる。
【0050】また、本実施形態においては、緑化用植生基盤材1は、前述したように造粒部3の周囲(各側面及び底面)が細粒部2によって被覆されるような構造となっているが、細粒部2を下層とし、造粒部3を上層とする、単純な2層構造とすることもでき、更に、造粒部3については、平板状ではなくブロック状に成形することもできる。
【0051】次に、本発明の第3の実施形態に係る植生ユニットについて説明する。本実施形態における植生ユニットは、基本的には、本発明の第2の実施形態として説明した緑化用植生基盤材1(図4参照)に耐乾燥性植物を植栽してなるものである。
【0052】尚、本実施形態においては、植栽する耐乾燥性植物として、ベンケイソウ科セダム属植物を使用している。これらの植物は、貯水機能が発達しており、極端な乾燥状態でも生育が可能で、また、緑化用植生基盤材への活着も容易であるため、植栽に手間がかからないという利点を有している。尚、セダム属以外の植物であっても、耐乾燥性植物であれば、例えば、マツバギク等のツルナ科植物を植栽することもできる。
【0053】具体的な植栽方法は、次の通りである。まず、植栽するセダム属植物の切苗を用意する。この切苗とは、セダム属植物の母株の芽の先端から約5cmまでの部分を切り取ったものである。本実施形態において、根付きの苗ではなく、切苗を使用している理由は、経済的な植栽が可能となるからであり、また、根付きの苗を使用した場合には、植栽前の環境(一般土壌)と植栽後の環境(セラミックス)が異なることから、苗が衰退してしまう可能性がある一方、切苗を使用した場合には、植栽後の環境に合った生育を期待することができるからである。
【0054】次に、切苗の発根処理を行う。この発根処理は、例えば、切苗を気温23〜7℃程度に調整した室内環境下に置き、この状態のまま5〜10日間放置することによって、切苗の切断面から新たに根を発生させるための処理である。
【0055】そして、発根処理を行うことによって5mm程度発根した苗を選抜し、植生基盤材1上に植栽(自立定植)する。そうすると、発根処理によって切苗の切断面に生じた根が、植生基盤材1の通孔、連続孔隙等に進入していき、数日後には根が活着する。
【0056】尚、本実施形態においては、発根処理を行ってから切苗を植栽しているので、発根処理を行わなかった場合よりも、生育期間(植栽から活着までの期間)を1〜2週間程度短縮することができ、植え付け直後の風雨の影響を受けず、経済的で確実な生育が可能となっている。
【0057】緑化用植生基盤材1に、セダム属植物を容易に活着させることができるのは、第1の実施形態において説明したように、この緑化用植生基盤材1が保水性と透水性という機能を兼ね備えたものであるからである。また、セダム属植物の主根は、通常、直径が0.3〜0.5mm程度であるところ、この緑化用植生基盤材1の造粒部3の内部には、セダム属植物の根のサイズに合わせて、0.4〜10mmの連続孔隙を多数形成してあるので、それらの連続孔隙に根を容易に進入させ、活着させることができる。
【0058】但し、無灌水、無土壌で植栽が可能であるとは言っても、この緑化用植生基盤材1は焼成物であり、内部に土壌並の微生物の存在は望めない。そこで、植生基盤材1の内部に微生物を移植することによって、植生基盤材1の早期土壌化を図るべく、植栽に先立ち、土壌成分を植生基盤材1内部に充填することもできる。尚、この場合、土壌成分の充填量は、植生基盤材1の体積の1〜10%程度(望ましくは5%程度)でよい。また、充填する土壌成分としては、微生物が多く存在する黒土と、微生物の栄養源となるバーク肥料やピートモス等の有機物とを混合して用いることが望ましい。
【0059】本実施形態における植生ユニットは、以上のような方法によって、緑化用植生基盤材1上にセダム属植物を植栽してなるものであり、後述するように、特殊空間に設置し、特殊空間において安定的かつ十分な緑化を行うことを考慮している。そして、植生基盤材1上に植栽された植物を、植生ユニットの設置後においても良好に生育させ、安定的かつ十分な緑化を図るためには、設置環境に対する植栽植物の順応性が、重要な要素となってくる。
【0060】具体的には、植生ユニットの設置前において、植生ユニットを、植栽したセダム属植物の生育に適した環境下に置き、セダム属植物の生育を促進することによって、植生基盤材1を覆い尽くしてしまう程セダム属植物を繁茂させることは容易であるが、このような状態まで生育してしまうと、その後、植生ユニットを特殊空間に設置した際に、環境の変化によって、植栽植物が短期間のうちに衰退してしまうことがある。
【0061】このような事態を回避するためには、植生ユニットの製造後、特殊空間へ設置するまでの間、植生基盤材1上の植栽植物の生育状態を調節することが望ましい。より具体的には、植生ユニットの製造工程において、植生基盤材1上に植物を植栽したら、植栽植物の切苗(1芽)から新芽が発生し、2〜3芽の新芽が3cm程度まで生育した時点で、植栽植物の生育を抑制することが好ましい。
【0062】このような生育の抑制は、乾燥ストレスを与えること(例えば、灌水量を控えたり、或いは、生育環境での降雨による自然灌水を排除すること)によって行うことができる。
【0063】本実施形態における植生ユニットは、以上に説明したような方法によって製造することができるものであり、コンクリート構造物の壁面や屋上等の緑化対象面に貼り付けることにより、特殊空間を簡単に緑化することができる。尚、この植生ユニットを構成する緑化用植生基盤材は、前述の通り比較的軽量(嵩比重1.2程度)であるので、貼り付け対象面が垂直であっても、例えば、エポキシ樹脂系の接着剤などを用いることによって接着することが可能であり、極めて容易に貼り付けることができる。
【0064】そして、この緑化用植生基盤材に活着しているセダムは、緑化用植生基盤材が壁面に貼り付けられた後においても、灌水、施肥、その他の維持管理作業を要せず、放置するだけで好適に生育し続けることができる。
【0065】これは、この緑化用植生基盤材が多数の空隙を有し、かつ、保水性を有していることにより、その内部には微生物が棲息可能となっており、吸着したダスト等の有機物をそれらの微生物が分解し、耐乾燥性植物に栄養分を供給することができるからである。
【0066】このように、本実施形態に係る植生ユニットを使用すれば、特殊空間の緑化を極めて容易に実現することができる。更に、施工後において、緑化用植生基盤材1及び植栽植物を極端な乾燥状態におき、乾燥ストレスを与えるように構成すれば、植栽植物以外の植物の発芽、活着、育成を抑止し、植栽植物のみを選択的に生育させることができる。
【0067】
【実施例】以下、本発明に係る植生ユニットの実施例を説明する。本実施例においては、粒径の異なる造粒骨材をそれぞれ使用することによって、2種類の植生ユニットA,Bを用意し、これらをコンクリート壁面に貼り付けて特殊空間の緑化を行い、植栽植物の生育観察を実施した。尚、これらの植生ユニットA,Bは、器状に成形した細粒部及びその器状内部に配置した造粒部によって構成される緑化用植生基盤材に、植物を植栽し、活着させたものである。
【0068】ここで、本実施例において使用した植生ユニットA,Bの具体的な製造方法について説明する。まず、図4に示すような細粒部2を製造した。この細粒部2は、粒径が0.01〜3mmの石炭灰クリンカーアッシュ60重量%と、ソーダ石灰ガラス20重量%と、水硬性セメント20重量%とを配合し、これに成形水分12重量%を加えて混合したものを、成形圧力10kg/cmでプレスすることによって図4に示すような器状(外寸:400×250×50mm、内寸:380×230×40mm)に成形し、養生硬化させたものである。
【0069】次に、造粒部を構成するための造粒骨材として、粒径5〜10mmのもの(造粒骨材A)と、粒径10〜15mmのもの(造粒骨材B)と、2種類を用意した。尚、これらの造粒骨材A,Bはいずれも、粒径2mm以下の石炭灰クリンカーアッシュ68.5重量%と、高炉スラグ微粉末30.0重量%と、苛性ソーダ1.5重量%を配合し、これらの配合材の配合量(総量)に対し、造粒水分を重量比で約20%加え、パン型造粒機を用いてそれぞれ製造した。
【0070】そして、これらの造粒骨材A,Bに、それぞれソーダ石灰ガラス及び水硬性セメントを配合し、成形水分を加えてオムニミキサーにより混合し、得られた2種類の造粒骨材混合物A,Bを、細粒部2A,2B内へそれぞれ投入し、成形圧力0.03kg/cmで振動成形を行った。尚、造粒骨材混合物A,Bの配合量、及び、成形水分の量は、下記の表1の通りである。
【0071】
【表1】

【0072】次に、細粒部2A,2B、及び、その内部に投入された造粒骨材混合物A,Bを、下記のような条件にて焼成することにより、緑化用植生基盤材A,Bを得た。
焼成機種:ローラーハースキルン焼成温度:1160℃焼成時間:3時間【0073】このようにして製造した緑化用植生基盤材A,Bの物性値は、下記の表2の通りであった。
【0074】
【表2】

【0075】また、緑化用植生基盤材Aの造粒部を構成する粒子(造粒骨材混合物Aを焼成してなる粒子)における細孔の分布状況を、水銀圧入法によって測定してみたところ、図6に示すような結果が得られた。
【0076】この図に示されているように、緑化用植生基盤材Aの造粒部を構成する粒子における積算細孔量(空隙量)は、直径100μm以上の細孔で0.01cc/g、直径1μm以上の細孔で0.23cc/gであった。従って、直径が1〜100μmの範囲にある空隙の量は、0.22cc/gである、ということになる。尚、直径が1〜100μmの範囲にある空隙は、微生物の住処として好適であり、吸水保水に寄与すると言われている。
【0077】一方、この粒子の比重を測定してみたところ、1.53という結果が得られた。従って、この粒子において、直径が1〜100μmの範囲にある空隙の量(0.22cc/g)を体積に換算してみると、0.34cc/ccということになる。つまり、この粒子の体積の34%が、微生物の住処として適し、吸水保水に寄与する大きさの空隙(直径1〜100μmの範囲にある空隙)で占められている、ということになる。
【0078】そして、上記のような特性を有する緑化用植生基盤材A,Bに、体積(5,000cc)の4%に相当する黒土とバーク堆肥の混合物(1:1)を充填し、微生物の移植を行った。
【0079】次に、セダム属植物であるメキシコマンネングサの切苗(母株の芽の先端から約5cmまでの部分を切り取ったもの)の発根処理(気温25℃に調整した室内環境下にて7日間放置)を行った。そして、発根処理を行った切苗のうち、5mm程度の発根が確認された切苗を選抜して、緑化用植生基盤材A,Bにそれぞれ植え付けた。
【0080】その結果、緑化用植生基盤材A,Bのいずれにおいても、気温18〜26℃の条件下では、約3日で切苗が活着した。その後、切苗から新たな芽と根が発生し、芽は、成長して株状(2〜3芽の株)になり、根は、植生基盤材の内部に進入し、切苗の活着は、より強固な状態となった。尚、平均気温が20℃程度である場合、切苗の植栽から約1ヶ月で、このような強固な活着状態となることが確認された。
【0081】このようにして植生基盤材A,Bにメキシコマンネングサを植栽してなる植生ユニットA,Bを、コンクリート壁面へそれぞれ貼り付けることによって、特殊空間の緑化実験を行った。
【0082】図5は、植生ユニットAをコンクリート壁面17に貼り付けた状態を示す図である。この図からも明らかなように、植生ユニットAの貼り付けは、まず、最下段にストッパー金具19を配置し、その上に、樹脂系接着剤18を塗布した植生ユニットAを貼り付け、更に、その上方へ他の植生ユニットAを順次積み上げていくことによって行った。尚、植生ユニットBの貼り付け状態を示す図、及び、その説明は、植生ユニットAを用いた場合と同様であるので、省略する。
【0083】このようにして植生ユニットA,Bの貼り付けが完了した後、灌水、施肥、雑草処理等のメンテナンスを行わずに、植栽植物20の生育観察を行った。まず、春先より、気温の上昇及び降雨の増加に伴って芽が成長し、切苗が直径7cm程度の株状に成長した。その後、5月中旬には、開花が行われた。
【0084】更に、梅雨時期には、横径のランナーが伸び、そのランナーから新たに根と芽が発生して、植生基盤材内部に根を進入させて活着し、そこが株状に成長した。また、株は直径10cm程度まで大きくなった。
【0085】秋になって気温が低下すると、紅葉し、葉全体が黄色くなり、冬になって降水量が低下すると、葉はコンパクトになった。しかし、翌春には、前年と同様な生育サイクルが行われ、3年が経過しても、同様なサイクルを繰り返し、衰退現象は確認されず、十分な緑化が維持された。また、この期間中に雑草が進入することはなかった。
【0086】尚、日本に植生しているセダム属植物は、「平均気温が20℃から25℃以上になる高温多湿の雨期(6月)に最も成長し、低温乾燥の冬季には休眠し、成長を止める」という年間生育サイクルを繰り返す、ということが知られている。そして、セダム属植物は、高温多湿の時期に、節間が長くなる軟弱徒長を起こし、その後、乾燥、高温で衰退したり、致命的な根腐れを起こすため、雨期の生育管理が最も重要になる。つまり、生育基盤の保水性が生育障害を左右することになる。
【0087】一般に、セダム属植物の生育培地としては、一般土壌よりも砂質土の方が適していると言われている。砂質土は、透水性が高く、保水性が低い(体積保水割合:20〜25%程度)という特性を有しており、この特性が、セダム属植物の生育環境に適合していると考えられているからである。
【0088】そこで、本実施例において製造した緑化用植生基盤材Aの、セダム属植物の生育培地としての適合性を確認すべく、人工降雨試験を実施して、緑化用植生基盤材Aと、一般土壌である黒土のそれぞれについて、体積保水割合の測定を行った。
【0089】その結果、本実施例に係る緑化用植生基盤材Aは、高温多湿の雨期に相当する降雨環境下においても、体積保水割合を平均で18%程度に保ち、平均で51%という結果になった黒土に比べ、透水性の高さ、及び、保水性の低さという点において、砂質土に近い基盤特性を有していることが判った。
【0090】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明に係る緑化用植生基盤材は、保水性、透水性、強度、及び、耐久性を兼ね備え、耐乾燥性植物を無土壌で植栽することができるので、極めて簡単な作業で、植物を植栽することができ、経済性にも優れている。
【0091】また、緑化用植生基盤材の内部には、植栽する植物の根のサイズに合わせて、0.4〜10mmの連続孔隙が多数形成されているので、植栽時において、根をそれらの連続孔隙内へ容易に進入させ、短期間で活着させることができる。尚、植栽後においても、灌水、施肥等の維持管理作業は一切不要で、経済的である。
【0092】更に、本発明に係る緑化用植生基盤材にセダム属植物を植栽した場合、三種類の生育パターン(元株から新芽、ランナー、種子)による永続的緑化が可能になり、緑化対象の緑被率を確保することができる。また、この緑化用植生基盤材は、一般土壌よりも低保水性のため、セダム属植物は徒長しないコンパクト生育し、雑草混入による被圧のない永続的植生が可能である。
【0093】温度管理下で発根処理したセダム属植物の切苗(5〜10cm程度)を、緑化用植生基盤材の定植孔(深さ2cm)に自立定植して植生ユニットを形成し、これに充填材(土壌、及び、バーク堆肥)を充填し、初期土壌化を図り、日平均気温が20℃〜25℃程度の屋外で生育させると、約1ヶ月程度で早期育成し、出荷可能となる。そして、この植生ユニットを出荷、設置した後は、長期に渡り灌水、施肥、草刈を必要としない無管理型植栽が可能であり、特に維持管理の難しいとされてきた法面では大きな効果がある。
【0094】また、本発明に係る植生ユニットを用れば、特殊空間(都市部のビル等の屋上、壁面、河川、道路等の法面、壁面)を極めて簡単な施工工事のみで緑化することができ、施工後においても、灌水、施肥等の緑化現場におけるメンテナンスは不要であり、また、特殊空間の緑化によって、ヒートアイランド現象を抑制乃至は緩和し、更に、景観性の改善、快適空間の形成、生態系の保護、都市の有効利用、高度利用を図ることができる。
【0095】更に、施工後に乾燥ストレスを与えるように構成した場合には、他の植物の発芽、活着、生育を抑止し、植栽した耐乾燥性植物のみを選択的に、かつ、安定的に生育させることができる。
【出願人】 【識別番号】000229243
【氏名又は名称】株式会社テトラ
【出願日】 平成13年5月18日(2001.5.18)
【代理人】 【識別番号】100064300
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 賢市 (外1名)
【公開番号】 特開2002−335747(P2002−335747A)
【公開日】 平成14年11月26日(2002.11.26)
【出願番号】 特願2001−148838(P2001−148838)