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【発明の名称】 植物育成方法、植物育成システム、植物の生長の活性度合いの測定方法、植物の生育領域の微生物叢の測定方法および植物の生育領域の状態制御方法
【発明者】 【氏名】井上 高一

【要約】 【課題】植物を効果的に育成する植物育成方法および植物育成システムを提供することである。

【解決手段】植物の生長の活性度合いを増幅確率の制限されたSSC−PCR法によりモニターし、土壌等の微生物叢を増幅確率の制限されたSSC−PCR法によりモニターする。土壌等の温度および通気量を制御することにより、硝化細菌群の種類数および量を制御し、硝酸塩および亜硝酸塩の量を制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 植物の生長の活性度合いを測定するステップと、植物の生育領域の微生物叢を測定するステップと、前記植物の生長の活性度合いの測定結果および前記微生物叢の測定結果に基づいて前記植物の生育領域の状態を制御するステップとを備えたことを特徴とする植物育成方法。
【請求項2】 前記活性度合いを測定するステップは、植物から複数種類のmRNAを抽出するステップと、前記抽出された複数種類のmRNAから逆転写酵素を用いて複数種類のcDNAを合成するステップと、複数種類のプライマーを一度に用いて前記合成された複数種類のcDNAに対して増幅確率を制限したポリメラーゼ連鎖反応法を適用することにより複数のDNA断片を増幅するステップと、前記増幅された複数のDNA断片の電気泳動像の解析により前記植物の生長の活性度合いを判定するステップとを含むことを特徴とする請求項1記載の植物育成方法。
【請求項3】 前記活性度合いを測定するステップは、植物から複数種類のmRNAを抽出するステップと、複数種類のプライマーを用いて前記抽出された複数種類のmRNAから複数種類のcDNAを合成するとともに、前記複数種類のプライマーを一度に用いて前記合成された複数種類のcDNAに対して増幅確率を制限したポリメラーゼ連鎖反応法を適用することにより複数のDNA断片を増幅するステップと、前記増幅された複数のDNA断片の電気泳動像の解析により前記植物の生長の活性度合いを判定するステップとを含むことを特徴とする請求項1記載の植物育成方法。
【請求項4】 前記増幅するステップにおいて1つの反応溶液に対して複数種類のプライマーを用いることを特徴とする請求項2または3記載の植物育成方法。
【請求項5】 前記活性度合いを測定するステップは、植物から複数種類のmRNAを抽出するステップと、前記抽出された複数種類のmRNAから逆転写酵素を用いて複数種類のcDNAを合成するステップと、所定の塩基配列を有するプライマー対を用いて前記合成された複数種類のcDNAに対してポリメラーゼ連鎖反応法を適用することにより植物の生長に関わる蛋白質の元となるcDNAを検出するステップと、前記検出されたcDNAの電気泳動像の解析により前記植物の生長の活性度合いを判定するステップとを含むことを特徴とする請求項1記載の植物育成方法。
【請求項6】 前記活性度合いを測定するステップは、植物から複数種類のmRNAを抽出するステップと、前記抽出された複数種類のmRNAから逆転写酵素を用いて複数種類のcDNAを合成するステップと、前記合成された複数種類のcDNAにハイブリダイゼーション法を適用することにより前記抽出された複数種類のmRNAの発現パターンを検出するステップとを含むことを特徴とする請求項1記載の植物育成方法。
【請求項7】 前記活性度合いを測定するステップは、植物から複数種類のmRNAを抽出するステップと、前記抽出された複数種類のmRNAにハイブリダイゼーション法を適用することにより複数種類のmRNAの発現パターンを検出するステップとを含むことを特徴とする請求項1記載の植物育成方法。
【請求項8】 前記微生物叢を測定するステップは、前記植物の生育領域の土壌を採取するステップと、前記採取された土壌に懸濁および分散処理を行うステップと、前記懸濁および分散処理により得られた微生物を培養および生化学検査し、微生物の種類および量を検出するステップとを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の植物育成方法。
【請求項9】 前記微生物叢を測定するステップは、前記植物の生育領域の土壌を採取するステップと、前記採取された土壌に懸濁および分散処理を行うステップと、複数種類のプライマーを一度に用いて前記懸濁および分散処理により得られた微生物叢に含まれる微生物に対して増幅確率を制限したポリメラーゼ連鎖反応法を適用することにより微生物叢に含まれる微生物のDNAから複数のDNA断片を増幅し、前記増幅された複数のDNA断片の電気泳動像の解析により微生物叢に含まれる微生物の種類を識別するステップとを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の植物育成方法。
【請求項10】 前記複数のDNA断片を増幅する際に1つの反応溶液に対して複数種類のプライマーを用いることを特徴とする請求項9記載の植物育成方法。
【請求項11】 前記微生物叢を測定するステップは、前記植物の生育領域の土壌を採取するステップと、前記採取された土壌に懸濁および分散処理を行うステップと、前記懸濁および分散処理により得られた微生物叢に含まれる微生物のrRNAの遺伝子を保存したDNA領域をポリメラーゼ連鎖反応法により増幅し、前記増幅結果の解析により微生物叢に含まれる微生物の種類を識別するステップとを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の植物育成方法。
【請求項12】 前記植物の生育領域の状態を制御するステップは、前記生育領域の硝酸塩または亜硝酸塩の量を制御するステップを含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の植物育成方法。
【請求項13】 前記生育領域の硝酸塩または亜硝酸塩の量を制御するステップは、前記生育領域の硝化細菌の活性状態を制御するステップを含むことを特徴とする請求項12記載の植物育成方法。
【請求項14】 前記生育領域の硝化細菌の活性状態を制御するステップは、前記生育領域の温度、酸素量または含水率を制御するステップを含むことを特徴とする請求項13記載の植物育成方法。
【請求項15】 植物の生長の活性度合いを測定する方法であって、植物から複数種類のmRNAを抽出するステップと、前記抽出された複数種類のmRNAから逆転写酵素を用いて複数種類のcDNAを合成するステップと、複数種類のプライマーを一度に用いて前記合成された複数種類のcDNAに対して増幅確率を制限したポリメラーゼ連鎖反応法を適用することにより複数のDNA断片を増幅するステップと、前記増幅された複数のDNA断片の電気泳動像の解析により前記植物の生長の活性度合いを判定するステップとを含み、前記増幅するステップにおいて1つの反応溶液に対して複数種類のプライマーを用いることを特徴とする植物の生長の活性度合いの測定方法。
【請求項16】 植物の生長の活性度合いを測定する方法であって、植物から複数種類のmRNAを抽出するステップと、複数種類のプライマーを用いて前記抽出された複数種類のmRNAから複数種類のcDNAを合成するとともに、前記複数種類のプライマーを一度に用いて前記合成された複数種類のcDNAに対して増幅確率を制限したポリメラーゼ連鎖反応法を適用することにより複数のDNA断片を増幅するステップと、前記増幅された複数のDNA断片の電気泳動像の解析により前記植物の生長の活性度合いを判定するステップとを含むことを特徴とする植物の生長の活性度合いの測定方法。
【請求項17】 前記増幅するステップにおいて1つの反応溶液に対して複数種類のプライマーを用いることを特徴とする請求項16記載の植物の生長の活性度合いの測定方法。
【請求項18】 植物の生育領域の微生物叢を測定する方法であって、前記植物の生育領域の土壌を採取するステップと、前記採取された土壌に懸濁および分散処理を行うステップと、複数種類のプライマーを一度に用いて前記懸濁および分散処理により得られた微生物叢に含まれる微生物に対して増幅確率を制限したポリメラーゼ連鎖反応法を適用することにより微生物叢に含まれる微生物のDNAから複数のDNA断片を増幅し、前記増幅された複数のDNA断片の電気泳動像の解析により微生物叢に含まれる微生物の種類を識別するステップとを含むことを特徴とする植物の生育領域の微生物叢の測定方法。
【請求項19】 植物の生育領域の状態を制御する方法であって、前記生育領域の硝化細菌の活性状態を制御することにより、前記生育領域の硝酸塩または亜硝酸塩の量を制御することを特徴とする植物の生育領域の状態制御方法。
【請求項20】 前記生育領域の温度、酸素量または含水率を制御することにより、前記生育領域の硝化細菌の活性状態を制御することを特徴とする請求項19記載の植物の生育領域の状態制御方法。
【請求項21】 植物の生長の活性度合いを測定する第1の測定手段と、植物の生育領域の微生物叢を測定する第2の測定手段と、前記植物の生長の活性度合いの測定結果および前記微生物叢の測定結果に基づいて前記植物の生育領域の状態を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする植物育成システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、植物育成方法、植物育成システム、植物の生長の活性度合いの測定方法、植物の生育領域の微生物叢の測定方法および植物の生育領域の状態制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】植物工場において、種々の植物を育成することが行われている。従来の植物工場では、植物育成のために、光、水、温度および空気の供給が制御される。それにより、植物を最適な環境で育成することができる。
【0003】具体的には、植物育成室の温度、湿度、照度およびCO2濃度を測定し、その測定結果に基づいて照明の明るさ、照明のオン−オフの時間帯、室内の温度および湿度を制御するとともに、酸素と二酸化炭素とのバランスの空調制御を行なっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、自然の中では、植物は土壌中の微生物にも影響を受けて生長する。より自然に近い状態で植物を育成するために微生物を利用することが有効なことは知られているが、土壌等の微生物叢を人為的に制御する技術がないために、現状では、微生物叢の制御を簡便に行うことができない。そのため、植物工場等の植物育成に微生物叢の制御は行われていない。
【0005】本発明の目的は、植物を効果的に育成する植物育成方法および植物育成システムを提供することである。
【0006】本発明の他の目的は、植物の生長の活性度合いを容易に測定することができる測定方法を提供することである。
【0007】本発明のさらに他の目的は、植物の生育領域の微生物叢を容易に測定することができる測定方法を提供することである。
【0008】本発明のさらに他の目的は、植物の生育領域の状態を容易に制御することができる制御方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段および発明の効果】第1の発明に係る植物育成方法は、植物の生長の活性度合いを測定するステップと、植物の生育領域の微生物叢を測定するステップと、植物の生長の活性度合いの測定結果および微生物叢の測定結果に基づいて植物の生育領域の状態を制御するステップとを備えたものである。
【0010】本発明に係る植物育成方法においては、植物の生長の活性度合いが測定されるとともに、植物の生育領域の微生物叢が測定される。そして、植物の生長の活性度合いの測定結果および微生物叢の測定結果に基づいて植物の生育領域の状態が制御される。
【0011】それにより、植物の育成に関与する微生物叢を植物の生育領域に人為的に形成することができる。その結果、自然に近い状態での植物の生長を行わせることができる。
【0012】活性度合いを測定するステップは、植物から複数種類のmRNAを抽出するステップと、抽出された複数種類のmRNAから逆転写酵素を用いて複数種類のcDNAを合成するステップと、複数種類のプライマーを一度に用いて合成された複数種類のcDNAに対して増幅確率を制限したポリメラーゼ連鎖反応法を適用することにより複数のDNA断片を増幅するステップと、増幅された複数のDNA断片の電気泳動像の解析により植物の生長の活性度合いを判定するステップとを含んでもよい。
【0013】この場合、増幅確率が制限されているので、電気泳動像におけるバンドとmRNAとの対応付けが可能になる。それにより、植物の生長に関わる蛋白質の発現状態を検出することができる。その結果、植物の生長の活性度合いを判定することができる。
【0014】増幅確率は、平均的に1種類のcDNAから2種類以下のDNA断片が増幅される値であることが好ましく、平均的に1種類のcDNAから1種類以下のDNA断片が増幅される値であることがより好ましい。
【0015】活性度合いを測定するステップは、植物から複数種類のmRNAを抽出するステップと、複数種類のプライマーを用いて抽出された複数種類のmRNAから複数種類のcDNAを合成するとともに、それらの複数種類のプライマーを一度に用いて合成された複数種類のcDNAに対して増幅確率を制限したポリメラーゼ連鎖反応法を適用することにより複数のDNA断片を増幅するステップと、増幅された複数のDNA断片の電気泳動像の解析により植物の生長の活性度合いを判定するステップとを含んでもよい。
【0016】この場合、増幅確率が制限されているので、電気泳動像におけるバンドとmRNAとの対応付けが可能になる。それにより、植物の生長に関わる蛋白質の発現状態を検出することができる。その結果、植物の生長の活性度合いを判定することができる。
【0017】特に、mRNAからcDNAの合成およびポリメラーゼ連鎖反応を共通のプライマーを用いて行うことができるので、活性度合いを簡便に測定することができる。
【0018】増幅確率は、平均的に1種類のcDNAから2種類以下のDNA断片が増幅される値であることが好ましく、平均的に1種類のcDNAから1種類以下のDNA断片が増幅される値であることがより好ましい。
【0019】増幅するステップにおいて1つの反応溶液に対して複数種類のプライマーを用いてもよい。この場合、ポリメラーゼ連鎖反応法における増幅確率の設定が容易になる。
【0020】活性度合いを測定するステップは、植物から複数種類のmRNAを抽出するステップと、抽出された複数種類のmRNAから逆転写酵素を用いて複数種類のcDNAを合成するステップと、所定の塩基配列を有するプライマー対を用いて合成された複数種類のcDNAに対してポリメラーゼ連鎖反応法を適用することにより植物の生長に関わる蛋白質の元となるcDNAを検出するステップと、検出されたcDNAの電気泳動像の解析により植物の生長の活性度合いを判定するステップとを含んでもよい。
【0021】この場合、植物の生長に関わる蛋白質の遺伝情報をコードしたプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応法を適用することにより、植物の生長に関わる蛋白質の発現状態を検出することができる。その結果、植物の生長の活性度合いを判定することができる。
【0022】活性度合いを測定するステップは、植物から複数種類のmRNAを抽出するステップと、抽出された複数種類のmRNAから逆転写酵素を用いて複数種類のcDNAを合成するステップと、合成された複数種類のcDNAにハイブリダイゼーション法を適用することにより抽出された複数種類のmRNAの発現パターンを検出するステップとを含んでもよい。
【0023】この場合、DNA−DNAハイブリダイゼーション法により複数種類のmRNAの発現パターンを検出することにより、植物の生長に関わる蛋白質の発現状態を検出することができる。その結果、植物の生長の活性度合いを判定することができる。
【0024】活性度合いを測定するステップは、植物から複数種類のmRNAを抽出するステップと、抽出された複数種類のmRNAにハイブリダイゼーション法を適用することにより複数種類のmRNAの発現パターンを検出するステップとを含んでもよい。
【0025】この場合、RNA−DNAハイブリダイゼーション法により複数種類のmRNAの発現パターンを検出することにより、植物の生長に関わる蛋白質の発現状態を検出することができる。その結果、植物の生長の活性度合いを判定することができる。
【0026】微生物叢を測定するステップは、植物の生育領域の土壌を採取するステップと、採取された土壌に懸濁および分散処理を行うステップと、懸濁および分散処理により得られた微生物を培養および生化学検査し、微生物の種類および量を検出するステップとを含んでもよい。
【0027】この場合、検出された微生物の種類および量に基づいて植物の生育領域の土壌中の微生物叢の状態を知ることができる。
【0028】微生物叢を測定するステップは、植物の生育領域の土壌を採取するステップと、採取された土壌に懸濁および分散処理を行うステップと、懸濁および分散処理により得られた微生物叢に含まれる微生物に対して増幅確率を制限したポリメラーゼ連鎖反応法を適用することにより微生物叢に含まれる微生物のDNAから複数のDNA断片を増幅し、増幅された複数のDNA断片の電気泳動像の解析により微生物叢に含まれる微生物の種類を識別するステップとを含んでもよい。
【0029】この場合、植物の生育領域の土壌中の微生物叢の状態を容易に知ることができる。
【0030】複数のDNA断片を増幅する際に1つの反応溶液に対して複数種類のプライマーを用いてもよい。この場合、ポリメラーゼ連鎖反応法における増幅確率の設定が容易になる。
【0031】微生物叢を測定するステップは、植物の生育領域の土壌を採取するステップと、採取された土壌に懸濁および分散処理を行うステップと、懸濁および分散処理により得られた微生物叢に含まれる微生物のrRNAの遺伝子を保存したDNA領域(以降rDNAと呼ぶ)をポリメラーゼ連鎖反応法により増幅し、増幅結果の解析により微生物叢に含まれる微生物の種類を識別するステップとを含んでもよい。
【0032】この場合、植物の生育領域の土壌中の微生物叢の状態を容易に知ることができる。
【0033】植物の生育領域の状態を制御するステップは、生育領域の硝酸塩または亜硝酸塩の量を制御するステップを含んでもよい。
【0034】この場合、生育領域の硝酸塩または亜硝酸塩の量を制御することにより、植物の生長の活性度合いを制御することができる。
【0035】生育領域の硝酸塩または亜硝酸塩の量を制御するステップは、生育領域の硝化細菌の活性状態を制御するステップを含んでもよい。
【0036】この場合、生育領域の硝化細菌の活性状態を制御することにより、生育領域の硝酸塩または亜硝酸塩の量を制御することができる。
【0037】生育領域の硝化細菌の活性状態を制御するステップは、生育領域の温度、酸素量または含水率を制御するステップを含んでもよい。
【0038】この場合、生育領域の温度、酸素量または含水率を制御することにより、生育領域の硝化細菌の活性状態を制御することができる。
【0039】第2の発明に係る植物の生長の活性度合いの測定方法は、植物の生長の活性度合いを測定する方法であって、植物から複数種類のmRNAを抽出するステップと、抽出された複数種類のmRNAから逆転写酵素を用いて複数種類のcDNAを合成するステップと、複数種類のプライマーを一度に用いて合成された複数種類のcDNAに対して増幅確率を制限したポリメラーゼ連鎖反応法を適用することにより複数のDNA断片を増幅するステップと、増幅された複数のDNA断片の電気泳動像の解析により植物の生長の活性度合いを判定するステップとを含み、増幅するステップにおいて1つの反応溶液に対して複数種類のプライマーを用いてもよい。
【0040】この場合、増幅確率が制限されているので、電気泳動像におけるバンドとmRNAとの対応付けが可能になる。それにより、植物の生長に関わる蛋白質の発現状態を検出することができる。その結果、植物の生長の活性度合いを判定することができる。
【0041】また、1つの反応溶液に対して複数種類のプライマーを用いているので、ポリメラーゼ連鎖反応における増幅確率の設定が容易になる。
【0042】増幅確率は、平均的に1種類のcDNAから2種類以下のDNA断片が増幅される値であることが好ましく、平均的に1種類のcDNAから1種類以下のDNA断片が増幅される値であることがより好ましい。
【0043】第3の発明に係る植物の生長の活性度合いの測定方法は、植物の生長の活性度合いを測定する方法であって、植物から複数種類のmRNAを抽出するステップと、複数種類のプライマーを用いて抽出された複数種類のmRNAから複数種類のcDNAを合成するとともに、それらの複数種類のプライマーを一度に用いて合成された複数種類のcDNAに対して増幅確率を制限したポリメラーゼ連鎖反応法を適用することにより複数のDNA断片を増幅するステップと、増幅された複数のDNA断片の電気泳動像の解析により植物の生長の活性度合いを判定するステップとを含むものである。
【0044】この場合、増幅確率が制限されているので、電気泳動像におけるバンドとmRNAとの対応付けが可能になる。それにより、植物の生長に関わる蛋白質の発現状態を検出することができる。その結果、植物の生長の活性度合いを判定することができる。
【0045】特に、mRNAからcDNAの合成およびポリメラーゼ連鎖反応を共通のプライマーを用いて行うことができるので、活性度合いを簡便に測定することができる。
【0046】増幅確率は、平均的に1種類のcDNAから2種類以下のDNA断片が増幅される値であることが好ましく、平均的に1種類のcDNAから1種類以下のDNA断片が増幅される値であることがより好ましい。
【0047】増幅するステップにおいて1つの反応溶液に対して複数種類のプライマーを用いてもよい。この場合、ポリメラーゼ連鎖反応法における増幅確率の設定が容易になる。
【0048】第4の発明に係る植物の生育領域の微生物叢の測定方法は、植物の生育領域の微生物叢を測定する方法であって、植物の生育領域の土壌を採取するステップと、採取された土壌に懸濁および分散処理を行うステップと、複数種類のプライマーを一度に用いて懸濁および分散処理により得られた微生物叢に含まれる微生物に対して増幅確率を制限したポリメラーゼ連鎖反応法を適用することにより微生物叢に含まれる微生物のDNAから複数のDNA断片を増幅し、増幅された複数のDNA断片の電気泳動像の解析により微生物叢に含まれる微生物の種類を識別するステップとを含んでもよい。
【0049】この場合、植物の生育領域の土壌中の微生物叢の状態を容易に知ることができる。
【0050】第5の発明に係る植物の生育領域の状態の制御方法は、植物の生育領域の状態を制御する方法であって、生育領域の硝化細菌の活性状態を制御することにより、生育領域の硝酸塩または亜硝酸塩の量を制御するものである。
【0051】この場合、生育領域の硝化細菌の活性状態を制御することにより、生育領域の硝酸塩または亜硝酸塩の量を制御し、植物の生長の活性度合いを制御することができる。
【0052】生育領域の温度、酸素量または含水率を制御することにより、生育領域の硝化細菌の活性状態を制御してもよい。
【0053】第6の発明に係る植物育成システムは、植物の生長の活性度合いを測定する第1の測定手段と、植物の生育領域の微生物叢を測定する第2の測定手段と、植物の生長の活性度合いの測定結果および微生物叢の測定結果に基づいて植物の生育領域の状態を制御する制御手段とを備えたものである。
【0054】本発明に係る植物育成システムにおいては、植物の生長の活性度合いが測定されるとともに、植物の生育領域の微生物叢が測定される。そして、植物の生長の活性度合いの測定結果および微生物叢の測定結果に基づいて植物の生育領域の状態が制御される。
【0055】それにより、植物の育成領域に植物の育成に関与する微生物叢を人為的に形成することができる。その結果、自然に近い状態での植物の生長を行わせることができる。
【0056】
【発明の実施の形態】図1は本発明の一実施の形態における植物育成方法を説明するための模式図である。図1に示すように、植物は、種子の発芽、花芽の形成、開花および果実の形成と生長する。
【0057】本実施の形態では、植物の生長の活性度合いをモニターするとともに、土壌等の微生物叢をモニターする。
【0058】植物の生長の活性度合いのモニターでは、葉の生長の活性度合いの確認、花の生長の活性度合いの確認および実の生長の活性度合いの確認を順に行う。
【0059】植物は、葉が生長するときに硝酸塩、亜硝酸塩等の栄養分を多く必要とする。硝酸塩および亜硝酸塩の量は、土壌中の硝化細菌の活性により変化する。
【0060】特異的な微生物の活性は植物の育成を促進させる。特に、硝化細菌群は土壌中の有機物(蛋白質等)から硝酸塩および亜硝酸塩を作ることができる。植物はこれを吸収し生長する。植物の葉が生長する時期には大量の窒素成分が必要となるため、その時期にあわせて硝酸塩および亜硝酸塩を作る。根の近傍で生成される硝酸塩および亜硝酸塩は効率的に根に吸収される。後述するように、硝化細菌群の活性は、温度、酸素量、pHおよび含水率で制御できる。土壌の全部あるいは一部の環境を変えることにより、硝化細菌群の活性状態を人為的に制御し、根の周辺の硝酸塩および亜硝酸塩の量を増加させる。
【0061】植物の生長の活性度合いをモニターすることにより、葉の生長が開始された時期を知ることができる。葉の生長が開始されたならば、土壌等の微生物叢をモニターしつつ、土壌等の温度および通気量を制御することにより、硝化細菌群の種類数および量が増加するように調節する。この場合、硝化細菌群が活性化するように、硝化細菌群に至適な温度、通気量および含水率への制御を開始する。
【0062】続けて、植物の生長の活性度合いをモニターすることにより、花の生長が開始された時期を知ることができる。花の生長が開始されたならば、土壌等の微生物叢をモニターしつつ、土壌等の温度および通気量の制御状態を変更し、硝化細菌群が減少する状態を作り出す。ここでは、硝化細菌群が不活性化するように、硝化細菌群の好まない温度、通気量および含水率への制御を開始する。
【0063】さらに、植物の生長の活性度合いをモニターすることにより、実の生長が開始された時期を知ることができる。実の生長が開始されたならば、土壌等の微生物叢をモニターしつつ、土壌等の温度、通気量および含水率を制御し、引き続き硝化細菌群が減少する状態を維持する。
【0064】このようにして、葉が十分に繁った植物を作ることができ、花や実も適切な状態で生長させることができる効果的な植物育成を行うことができる。
【0065】植物の生長に関係する微生物群であれば、硝化細菌群と同様にして容易に制御することができる。
【0066】このように、土壌等の微生物叢を制御することにより、植物の育成状態を制御することが可能となる。リン酸塩を生成する微生物群やその他の有用な栄養分を生産する微生物群を用いることも有用である。これらは、上記2種類のモニタリングによって効率的に行うことができる。
【0067】(1)植物の生長の活性度合いのモニタリング植物の活性度合いをRNAの発現状態(量および種類)により評価することができる。これは2つの方法に大別することができる。
【0068】1つの方法は、生長に関わる特異的な遺伝子の定量的検出を行う方法である。生長に関わる特異的な遺伝子とは、例えば、葉の生長に関わる遺伝子、花の生長に関わる遺伝子および実の生長に関わる遺伝子である。
【0069】もう1つの方法は、植物全体のRNAを測定する方法であり、SSC−PCR法をRNAに改良した方法である。SSC−PCR法(Single Strain CountingPolymerase Chain Reaction法)では、ディファレンシャルディスプレー法(differential display法;P. Liang, A. B. Pardee, Science, 257, 967 (1992))と異なり、平均的に1種類のRNAから得られるDNA断片の種類数を多くとも1個程度にするように、増幅確率を適切に制限する(特開2000-270867号公報)。そのため、電気泳動像のバンドとRNAとの対応が可能となる。これによって、より実態に近いRNAの発現状態を観測できる。SSC−PCR法によりmRNAを識別する方法については後述する。
【0070】図2は植物の生長の活性度合いのモニタリング方法を示す模式図である。植物の生長の活性度合いをmRNAの発現状態で測定する。その方法としては、以下の4つの方法を適宜選択することができる。
【0071】(a)増幅確率を制限したPCR法によるcDNAプールの増幅まず、植物100から複数種類のmRNAを抽出する(ステップS1)。逆転写酵素であるオリゴdTプライマーを用いて一般的な方法で複数種類のcDNAを合成し、複数種類のcDNAを含むcDNAプールを調整する(ステップS2)。そして、増幅確率を制限したSSC−PCR法により任意に選択された複数種類のプライマーを用いてcDNAプールのPCR増幅を行う(ステップS3)。この場合、調製したcDNAプールを鋳型として用いて、1種類のcDNAから多くとも1種類のDNA断片が増幅できる増幅確率となるようにPCR条件を設定する(特開2000-270867号参照)。最後に、SSC−PCR法により増幅された複数のDNA断片の電気泳動像のバンドを解析する(ステップS8)。バンドとmRNAとを対応づけることにより、植物100の発現状態を観測することができる。
【0072】従来のディファレンシャルディスプレー法では、1回の増幅で多くの種類のDNA断片を得るためのPCR条件が用いられている。しかし、多くのDNA断片を増幅すると電気泳動像が複雑になり、バンドに対応するmRNAを見出すのが困難になる。
【0073】本例のように、mRNAから多くとも1種類のDNA断片が増幅できるように条件を設定すると、電気泳動像で得られるバンドは、それぞれ異なるmRNAに対応する。そのため、バンドの解析が容易となる。さらに、バンドは単一成分から形成されることが多いため、切出してクローニングすることが容易であり、切出したバンドの塩基配列情報から何の蛋白質に対応するかを推測することが可能となる。
【0074】また、SSC−PCR法では、ディファレンシャルディスプレー法よりも反応の特異性が高いことから、増幅の再現性が高く、キメラ等の予期しないPCR断片の増幅を極力制限することができる。
【0075】増幅の確率を制限する方法としては、1種類のプライマーを用いて、マグネシウム濃度およびアニーリング温度の調整により行ってもよいが、1つのPCR反応溶液に2種類以上のプライマーを共存させることが好ましい。cDNAプールを増幅した結果、最終的に電気泳動像で観察されるバンド数が1〜100本、望ましくは1〜25本現れるように増幅確率を制限する。
【0076】(b)増幅確率を制限したPCR法によるmRNAの直接増幅まず、植物100から複数種類のmRNAを抽出する(ステップS1)。次に、オリゴdTプライマーを用いて逆転写を行なうのではなく、SSC−PCR法により任意に選択された複数種類のプライマーを用いて複数種類のcDNAの合成およびそれに続く増幅確率を制限したPCR増幅を行う(ステップS4)。この場合、1種類のmRNAから多くとも1種類のDNA断片が増幅できるPCR用プライマーによりcDNA鎖を合成し、引き続きPCR反応を行う。これにより、cDNAプール調製のステップが不要となる。
【0077】最後に、SSC−PCR法により増幅された複数のDNA断片の電気泳動像のバンドを解析する(ステップS8)。バンドとmRNAとを対応づけることにより、植物100の発現状態を観測することができる。
【0078】増幅確率を制限する方法としては、1種類のプライマーを用いて、マグネシウム濃度およびアニーリング温度の調整により行ってもよいが、1つのPCR反応溶液に2種類以上のプライマーを共存させることが好ましい。mRNAを増幅した結果、最終的に電気泳動像で観察されるバンド数が1〜100本、好ましくは1〜25本現れるように増幅確率を制限する。
【0079】(c)特異的プライマー対を用いた1種類以上の蛋白質の発現検出まず、植物100から複数種類のmRNAを抽出する(ステップS1)。逆転写酵素であるオリゴdTプライマーを用いて一般的な方法で複数種類のcDNAを合成し、複数種類のcDNAを含むcDNAプールを調整する(ステップS5)。次に、一般的な方法により調製したcDNAプールを鋳型として、所定の塩基配列を有するプライマー対(以下、特異的プライマー対と呼ぶ)を用いて通常のPCR法により植物100の生長に関わる1種類以上の蛋白質の発現状態を検出する(ステップS6)。ここでは、蛋白質の元となる1種類以上のcDNAを特異的プライマー対を用いて検出する。
【0080】最後に、PCR法により増幅された複数のDNA断片の電気泳動像のバンドを解析する(ステップS8)。バンドとmRNAとを対応づけることにより、植物100の生長に関わる1種類以上の蛋白質の発現状態を観測することができる。
【0081】この場合、定量的PCR法を用いて定量分析することによりさらに詳しい生長の度合いを調べることができる。調べる蛋白質の数は1種類以上とし、調べる蛋白質の種類が多いほど、平均的な活性度合いを調べることができる。また、葉の生長状態、花の生長状態または実の生長状態という組織特異的な活性度、あるいは、ライフサイクル特異的な活性度を検出することができる。
【0082】(d)DNAチップによるmRNAの発現パターンの検出まず、植物100から複数種類のmRNAを抽出する(ステップS1)。次に、DNAチップを用いて複数種類のmRNAの発現パターンを検出する(ステップS7)。種々のライフサイクルで発現する複数種類のcDNAを配列したDNAチップを用いて活性状態を簡便に測定することがきる。
【0083】この場合、抽出した複数種類のmRNAを直接RNA−DNAハイブリダイゼーション法により検出してもよい。あるいは、ステップS5においてcDNAプールを調整し、cDNAプールの複数種類のcDNAを変性処理後、DNA−DNAハイブリダイゼーション法によりcDNAを検出することにより複数種類のmRNAの発現パターンを検出してもよい。
【0084】(2)土壌等の領域の微生物叢のモニタリング図3は土壌等の微生物叢のモニタリング方法を示す模式図である。土壌等の微生物叢のモニタリングでは、以下の方法の中から適切な1または複数の方法を選択する。
【0085】(A)培養法まず、土壌等200を生理食塩水等で懸濁し、適切な分散処理を行う(ステップS11)。その後、一般的な細菌用培地等で調製した寒天プレート上に塗布し、適切な温度で適切な期間、培養する。培養後、寒天プレート上に形成されるコロニーを採取し、生化学検査等を行い、土壌等200に含まれている微生物の種類および存在数を調べる(ステップS12)。
【0086】(B)SSC−PCR法ここで、SSC−PCR法は、特開平11-276176号公報および特開平11-3419893号公報に記載されており、微生物のDNAから増幅されるDNA断片の種類数を制限し、電気泳動像上に1本程度のDNA断片が得られる条件で任意に選択された複数種類のプライマーを用いて微生物をPCR増幅する方法である。
【0087】まず、土壌等200を生理食塩水等に懸濁し、適切な分散処理を行う(ステップS11)。その後、複数種類の微生物のDNAを鋳型として用いてSSC−PCR法によりPCR増幅を行なう。得られたPCR産物を電気泳動パターンにより解析する(ステップS13)。
【0088】土壌等200の状態の経時変化を調べることにより、増減する微生物についての情報を見出す。また、微生物ごとのSSC−PCR法で調べた電気泳動パターンを保存したデータベースと照合することにより、土壌等200に含まれる微生物の種類を推定する。
【0089】(C)rDNA領域のPCR増幅・解析まず、土壌等200を生理食塩水等に懸濁し、適切な分散処理を行う(ステップS11)。その後、rDNA領域のPCR増幅および解析を行う(ステップS14)。
【0090】ここで、rDNA領域は、細菌など同じ種類の微生物であれば同じプライマー対で増幅できるため、微生物の分類などに用いられている。
【0091】細菌では、16SrRNAの遺伝情報が書き込まれたDNA領域(以降、16SrDNAと呼ぶ)の塩基配列が細菌の種類を識別するために用いられている(梅崎良則ら、セグメント細菌の定着と腸粘膜諸形質の活性化、腸内フローラと腸内増殖、光岡知足編、学会出版センター、pp. 43-63 (1997)など参照)。
【0092】また、16SrDNA領域の硝化細菌に特有の塩基配列を利用して、硝化細菌のみを見出す方法を利用してもよい(G. A. Kowalchuk, Z. S. Naoumenko, P. J. L. Derikx, A. Felske, J. R. Stephen, I. A. Arkhipchenko, "Molecular analysis of ammonia-oxidizing bacteria of the ( subdivision of the class Proteobacteria in compost and composted materials", Applied and Environment Microbiology, Vol. 65, No. 2, 396-403 (1999)参照)。
【0093】(D)簡易測定法調べたい微生物が予めわかっている場合には、上記(B),(C)の方法を簡便化した3つの簡易測定法のいずれかを用いてもよい(ステップS15)。
【0094】第1の方法は、予めステップS13のSSC−PCR法またはステップS14のPCR法によって増幅したDNA断片の塩基配列からプライマー対を設計しておく。土壌等を生理食塩水等に懸濁し、適切な分散処理を行なった後(ステップS11)、微生物のDNAを鋳型として用いて、設計したプライマー対によりPCR増幅を行なう。これにより、簡易に微生物の存在を知ることができる。さらに、定量的PCR法(中山広樹著、定量的PCR、バイオ実験イラストレイテッド、秀潤社、東京、pp. 141-151 (1996))を用い、所望の微生物の存在量を調べることが有効である。
【0095】第2の方法は、予めステップS13のSSC−PCR法またはステップS14のPCR法によって増幅したDNA断片、あるいは、それと同一の塩基配列を有するDNA断片をプローブとして用い、DNA−DNAハイブリダイゼーション法、あるいは、DNA−RNAハイブリダイゼーション法により微生物を検出する方法である。
【0096】特に、調べたい微生物全てについて、PCR法によって増幅したDNA断片、あるいは、それと同一の塩基配列を有するDNA断片を基板上に配列させたDNAチップを用いることにより一度に多くの微生物の存在を検出する方法が有効である(特願平11-330924号)。土壌等を生理食塩水等に懸濁し、適切な分散処理を行なった後、微生物のDNAを鋳型にしてPCR増幅した産物を含む溶液、あるいは、土壌等を生理食塩水等に懸濁し、適切な分散処理を行なった後(ステップS11)、微生物から抽出したRNAを含む溶液を、DNAチップに接触させることにより土壌等に含まれる微生物を複数同時に検出する。
【0097】第3の方法は、FISH(Florescence In Situ Hybridization)法による微生物像の測定である。このFISH法では、PCR法によって増幅したDNA断片、あるいは、それと同一の塩基配列を有するDNA断片をプローブとして用い、DNA−DNAハイブリダイゼーション法、あるいは、DNA−RNAハイブリダイゼーション法により、in situハイブリダイゼーションを行ない、顕微鏡下で微生物像を観察する方法である(Amann, R, W. Ludwig, K. H. Schleifer,Phylogenetic identification and in situ detection of individual microbial cells without cultivation, Microbiol. Rev., 59, 143-169 (1995)参照)。
【0098】土壌そのもの、あるいは、土壌等を生理食塩水等に懸濁し、適切な分散処理を行なった後(ステップS11)、その懸濁液を用い、in situハイブリダイゼーションの処理を行い、顕微鏡下で微生物の像を蛍光観察する。
【0099】(3)土壌中の硝酸塩および亜硝酸塩の蓄積状態の制御方法図4は土壌中の硝酸塩および亜硝酸塩の蓄積状態の制御方法を示す模式図である。また、表1に硝酸塩および亜硝酸塩の増加および減少の要因を示す。
【0100】
【表1】

【0101】土壌等における硝酸塩および亜硝酸塩の量は大半が蛋白質である生物体窒素からアンモニアを経て生成される。硝酸塩および亜硝酸塩の量は以下の要因で変化する。
【0102】図4および表1に示すように、硝化細菌の活性化、アンモニア量の増加、硝酸塩および亜硝酸塩の流出量の減少および脱窒菌の不活性化により、硝酸塩および亜硝酸塩の量が増加する。また、硝化細菌の不活性化、アンモニア量の減少、硝酸塩および亜硝酸塩の流出量の増加および脱窒菌の活性化により、硝酸塩および亜硝酸塩の量が減少する。
【0103】硝化細菌の活性は、温度に影響を受け、土壌中の硝酸イオン、亜硝酸イオンの量が変化する。図5は温度と硝酸イオンおよび亜硝酸イオンとの関係を示す図である。図5に示すように、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの量は、温度により変化する。
【0104】硝化細菌の活性は、温度以外にも、土壌中のpH、空気量、含水率、栄養分の量、硝化細菌以外の微生物により影響を受ける。
【0105】これらのパラメータを用いて、植物が硝酸塩および亜硝酸塩を必要とする時期に、硝化細菌が最も活性となる温度および空気量へ調節し、土壌の硝酸塩および亜硝酸塩の量を増加させる。逆に、硝酸塩および亜硝酸塩の不要な時期にこれらのパラメータを至的な条件から外すことにより硝酸塩および亜硝酸塩の量を減少させる。急速に亜硝酸塩および硝酸塩の量を減少させるために、水に溶けやすい硝酸塩および亜硝酸塩を水で洗浄することが可能であり、土壌への通気量の増加により原料となるアンモニアを気散させることも有効である。
【0106】なお、硝化細菌は、Nitrosomonas属、Nitrosococus属、Nitrosopire属、Nitrosolobus属、Nitrobacter属に分類される細菌である。
【0107】図6は本発明の植物育成システムの一例である植物工場の構成を示す模式図である。
【0108】図6の植物工場10においては、微生物叢の制御による効果的植物育成を行なうことができる。
【0109】図6の植物工場10において、ハウジング(植物育成室)2内に照明器具3および空調機4が設けられている。また、ハウジング2内の土壌5中にヒータ6が埋め込まれ、土壌5中に空気を送るエアポンプ7が設けられている。
【0110】さらに、ハウジング2内には、温度・湿度計11、照度計12、CO2濃度計13が設けられている。また、ハウジング2内の土壌5中に含水率計14、温度計15、pH計16、酸素量測定器17および酸化還元電位計18が埋め込まれている。
【0111】また、植物生長の活性度合いモニター装置20および微生物叢モニター装置30が設けられている。植物生長の活性度合いモニター装置20は、上記の植物生長の活性度合いのモニタリングを自動的に実行する。微生物叢モニター装置30は、上記の土壌等の微生物叢のモニタリングを自動的に実行する。
【0112】空調・照明制御装置40は、温度・湿度計11により測定された温度および湿度、照度計12により測定された照度、CO2濃度計13により測定されたCO2濃度に基づいて照明器具3および空調機4を制御する。また、土壌環境制御装置50は、含水率計14により測定された含水率、温度計15により測定された温度、pH計16により測定されたpH、酸素量測定器17により測定された酸素量、および酸化還元電位計18により測定された酸化還元電位に基づいて、ヒータ6による温度およびエアポンプ7による通気量を制御する。
【0113】植物育成システム制御系60は、植物生長の活性度合いモニター装置20および微生物叢モニター装置30の出力に基づいて、空調・照明制御装置40および土壌環境制御装置50を全体的に制御する。この植物育成システム制御系60を遠隔制御装置70を用いて遠隔制御してもよい。
【0114】図6の植物工場10では、植物の生長の活性度合いを調べながら、適切に土壌環境を制御することにより微生物叢を制御することができる。
【0115】一例として、食用の果実を育成する場合の制御方法を示す。植物生長の活性度合いモニター装置20が葉の生長の活性が高いことを知らせているときには、土壌環境制御装置50により土壌環境を硝化細菌が活性化される条件に設定する。そして、土壌中の硝化細菌が活性になることを微生物叢モニター装置30により確認する。植物生長の活性度合いモニター装置20が開花形成の活性が高まったことを知らせると、土壌環境制御装置50により土壌環境を硝化細菌が不活性化される条件に変更する。そして、土壌中の硝化細菌が不活性になることを、微生物叢モニター装置30により確認する。これにより、果実が育つ時期に窒素源過多による果実の生長不良を抑制し、有機栽培特有の味のある果実を得ることができる。
【0116】以上のように、本実施の形態の植物育成方法および植物育成システムによれば、植物工場における植物の育成をより効率的に行うことが可能になる。葉を食用とするほうれん草等や種子を食用とする豆類などは、肥料を与えるべき時期が異なるが、微生物叢を制御することにより目的に合った植物育成が容易になる。
【0117】また、近年、大量の化学肥料を施肥することによる硝酸性窒素の地下水汚染が問題となっており、本実施の形態の植物育成方法および植物育成システムにおいては、必要な量の硝酸塩および亜硝酸塩を適宜生産することができ、汚染を低減することができる。また、微生物の分解力を利用するため、堆肥を有効利用することが可能になる。
【0118】(4)SSC−PCR法ここで、SSC−PCR法によりmRNAの発現状態を検出する方法を説明する。
【0119】1.mRNAの調製植物の細胞または組織からのmRNAの調製は、特に限定はなく周知の方法で行うことができる。例えば、mRNAの調製方法は、Current Protocols in Molecular Biology,4.0.3-4.5.3に記載されている。また、簡便には、市販のキット例えば、QIAGEN製RNeasy Total RNA Systemを用いて行うこともできる。
【0120】2.cDNAプールの調製本例のDNA増幅方法では、先ず、例えば、植物の細胞から抽出したmRNAプール(混合液)を基に逆転写酵素を用いて逆転写を行い、cDNAを合成し、cDNAプールを得る。本例では、この逆転写酵素を用いた逆転写反応は、特に限定がなく、通常の方法によって行うことができる(Molecular Cloning (ColdSpring Harbor Laboratory Pres 1989),II-8)。
【0121】3.cDNAプールを用いたDNA断片の増幅(1)増幅させるDNA断片数このDNA断片の増幅に用いるPCRプライマーは、一種類のプライマー又は2種類以上のプライマーセットからなり、前記cDNAプールのうち限定された種類数のcDNAに対応するDNA断片を増幅し得る増幅確率を有している。なお、この増幅確率とは、総塩基配列長さ当たりの増幅バンド数を意味する。
【0122】ここで限定された種類数のcDNAは、各増幅されるDNA断片及びその増幅量などの再現性を向上させることが可能となる数であって、最終的な電気泳動等により解析で各増幅産物が識別し得る数であることが好ましい。一方、未知のmRNAを調べるためには、ある程度の種類のmRNAに対応したcDNAを増幅させる必要がある。このような観点から、このcDNAの限定された種類数は、例えば、100種類以下であり、より正確な解析を行うためには、1〜25種前後とする。
【0123】(2)プライマーの増幅確率また、上記した限定された種類数のmRNAを合成するためには、プライマーは一定の増幅確率を有していることが必要となる。上述したように、増幅確率とは、総塩基配列長さ当たりの増幅バンド数を意味する。従って、ここでmRNAの長さを2000bpとして計算すると、5000種類のmRNAが存在する細胞又は組織を調べる場合には、cDNAプール中に総合計で1×107bpのcDNAが存在することになる。従って、この場合には、増幅確率10-6のプライマーを用いることにより、10種類のcDNA断片が増幅されることになる。
【0124】また、仮に5000種類より多い場合には、増幅確率の小さなプライマーを用い、逆にmRNAが5000種類よりも少ない場合には増幅確率の大きなプライマーを用いる。さらに、平均のmRNAの長さが2000bpよりも大きな場合には増幅確率の小さなプライマーを用い、逆に2000bpよりも小さな場合には増幅確率の大きなプライマーを用いる。
【0125】このように複数種のcDNAプールを鋳型にDNA断片を増幅するために用いるプライマーの至適な増幅確率は、プール中に存在するcDNAの種類数、長さなどによるが、例えば、10-5から10-9であり、好適には10-6から10-7である。こうした増幅確率を有するプライマーは、PCRプライマーとして機能する程度の長さ、例えば、12塩基前後とし、その塩基配列を種々の組み合わせから構成して、この増幅確率を示したものから選択することができる。例えば、特開2000-270867号公報に示すプライマーの中から所望の増幅確率を有するプライマーを用いることができる。
【0126】なお、このcDNAのプール中に存在するcDNAの種類数及びその長は、増幅確率の明らかな上記PCRプライマーを用いたPCR反応を1種類、又は複数種類行い、得られるDNA断片の数を測定することで、簡便に調べることができる。
【0127】(3)PCRの条件PCRの反応液及びPCRの条件は、上記増幅確率を有するプライマーにより上記限定した種類数のcDNA断片を増幅し得るように調節する。PCRの反応液は、例えば、表2の組成とすることができる。また、PCRの反応条件としては、表3に示す条件とすることができる。
【0128】
【表2】

【0129】
【表3】

【0130】上記表2及び表3に示す条件では、目的とする種類数のDNA断片が増幅することができない場合には、より緩和な条件にすることができる。緩和な条件にするためには、例えばPCRの反応液中の塩化マグネシウム(MgCl2)濃度を上昇させるか又はアニーリング温度(45℃)を低下させるか等を行うことができる。具体的には、例えば、塩化マグネシウム濃度としては、1.0〜3.0mMの範囲で変更することができる。また、アニーリング温度は、例えば、45℃〜55℃の範囲で変更してもよい。
【0131】増幅されるDNA断片の量は、上記反応溶液中マグネシウム濃度、PCRサイクルのアニーリング温度、PCRサイクルのサイクル数、鋳型濃度に依存するため、これを調節することにより、増幅させるDNA断片の量を適正化することができる。ここで、サイクル数としては、25〜45サイクルとすることができ、好適には、25〜35サイクルとすることができる。
【0132】4.DNA断片の増幅方法及び電気泳動解析本実施形態のDNA断片増幅方法の一例を説明する。ここでは、mRNAの種類数等が不明な場合に対応して、増幅確率の異なるプライマーをそれぞれ使用してcDNAプールからDNA断片を増幅する場合を示す。
【0133】図7において、マイクロタイタプレート50の各ウェル51のそれぞれに異なる増幅確率を有するプライマーが添加される。ここでは、10-8〜10-6の増幅確率を有するプライマーを用いた。
【0134】これらウェル51にmRNAプールから逆転写したcDNAプールの一部をそれぞれ添加する。そして、上記表1に示すようにPCRバッファ、塩化マグネシウム、dNTPミックス、Taqポリメラーゼを添加して、反応液を調製する。
【0135】反応液調製後、マイクロタイタプレート50を増幅器にセットする。この増幅器は、特に限定はなく、通常市販されている増幅器を使用することができる。増幅器にPCRの条件、例えば、表3に示す条件を設定する。設定が終了したら、PCR反応を開始させる。
【0136】PCRの一連の反応工程を図8に示す。なお、ここでは、一例として配列番号69に示すプライマー(5'GGCTTCGAATCG`3)プライマーを用いた。
【0137】図8(a)に示す2本鎖のcDNA1は、熱変性工程において、図8(b)に示すように一本鎖DNA2a,2bに分離される。図8(c)に示すように、アニーリング工程において、プライマー11aは一本鎖DNA2a,2b中の相補する配列を探し、相補する配列があればその配列に融合する。プライマーが融合すると、図8(d)に示すように、伸長工程において、ポリメラーゼによりプライマーからDNAの伸長反応が起こり、2本鎖DNA3a,3bが合成される。
【0138】ここで生成された2本鎖DNA3a,3bは、再び、変性工程において、2本鎖が一本鎖に分離され、プライマーの融合、伸長がサイクル数分だけ繰り返されてDNA断片が順次増幅される。
【0139】ここで増幅されたDNA断片は、増幅産物を確認するために、電気泳動にかけられる。この電気泳動は、解析するDNA断片の数や長さにより、適切なものが使用される。例えば、アガロースゲルを用いた電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動などを用いることができる。また、分画するDNA断片の長さに幅がある場合には、ロングレンジ型ゲル及び装置を用いることができる。
【0140】図7に、上記電気泳動により増幅DNA断片を分画した際の予想されるパターン像を示す。このように、増幅確率が高いプライマーを用いた場合には、DNA断片の限定された種類数が多くなり、一方、増幅確率の低いプライマーを用いることにより、DNA断片の種類数をさらに限定することができる。これにより、従来のようにcDNAを無作為に膨大な種類数を増幅させるRAPD法(RandomAmplified Polymorphic DNA法)に比して、DNA断片の泳動パターンの解析をより正確に行うことができ、また、再現性を向上させることが可能となる。
【0141】したがって、このDNA増幅方法を異なる発生段階の細胞又は異なる組織由来のmRNAを用いて逆転写させたcDNAに適用することにより、発生段階を通したmRNAの発現状態、又は組織特異的なmRNAの発現状態を調べることが解析する場合に有効となる。また、このDNA増幅方法に用いられるプライマー耐熱性ポリメラーゼを含むPCR反応試薬をキットとして提供することにより簡便にcDNA又はmRNAの解析を行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
【出願日】 平成13年4月27日(2001.4.27)
【代理人】 【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
【公開番号】 特開2002−325511(P2002−325511A)
【公開日】 平成14年11月12日(2002.11.12)
【出願番号】 特願2001−133470(P2001−133470)