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【発明の名称】 農業用水の製造方法および製造装置
【発明者】 【氏名】小林 洋一

【氏名】岩根 真

【要約】 【課題】植物栽培に必要な鉄やマンガンなどの金属を安定な溶解状態で含有する農業用水を簡単な装置で製造する。

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属が溶解している原水にキレート化合物を混合し、そのキレート化合物と前記金属を反応させてキレート金属塩を生成し、それによって当該キレート金属塩を含有する農業用水を得ることを特徴とする農業用水の製造方法。
【請求項2】 原水に溶解している金属の量が所望値より不足している場合に、その不足する金属をキレート化合物溶液に溶解させてキレート金属塩を生成し、そのキレート金属塩を含有するキレート化合物溶液を原水と混合することを特徴とする請求項1に記載の農業用水の製造方法。
【請求項3】 金属が鉄およびマンガンである請求項1または2に記載の農業用水の製造方法。
【請求項4】 キレート化合物が生分解性または難分解性である請求項1ないし3のいずれかに記載の農業用水の製造方法。
【請求項5】 金属が溶解している原水を供給する原水供給系統(1) と、キレート化合物を供給するキレート化合物供給系統(2) と、前記原水供給系統(1)によって供給される原水とキレート化合物供給系統(2) によって供給されるキレート化合物を混合してキレート金属塩を生成させる混合装置(3) と、その混合装置(3) から排出されるキレート金属塩を含有する農業用水を貯蔵する貯蔵タンク(4) と、を備えていることを特徴とする農業用水の製造装置。
【請求項6】 混合装置(3) が静止型混合器である請求項5に記載の農業用水の製造装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は地下水、河川水、雨水、水道水などの原水に溶解されている鉄やマンガンなどの金属成分を安定化させた農業用水を製造する方法および製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に植物栽培に使用される水、すなわち農業用水は地下水、河川水、雨水、水道水などの原水を利用しているが、これらの原水には種々の金属が溶解しており、例えば地下水中の鉄は炭酸鉄としてイオン状態で存在するが、汲み上げられて空気中の酸素と触れると酸化し、水酸化鉄となって沈殿する。このような水酸化鉄は配管内にスライムやスラッジとして蓄積し、あるいは非鉄金属のほう金製などのバルブを腐蝕(もらい錆)させてしまう。そこで従来からこのような問題を回避するために除鉄装置を設けていた。
【0003】従来の除鉄方法としては、例えば第1鉄イオン(二価の鉄)として原水に溶解している鉄をばっ気する気曝法、または次塩素酸ソーダなどの塩素剤で酸化する塩素酸化法、酸化触媒を使用して水酸化第二鉄(三価の鉄)とする触媒酸化法などにより酸化させて沈殿する沈殿方法、または砂ろ過装置や膜分離装置を使用して鉄分を除去する物理的な分離方法が知られている。
【0004】一般に植物の成長には窒素、燐酸、カリなどの肥料成分のほかに、金属成分が欠かせない場合も多い。例えばトマトの成長には鉄およびマンガンが必須成分である。しかし上記のように農業用水の配管等を保護するために除鉄操作を行うと、鉄に加えてマンガンなどの他の金属成分が除去されてしまう。そこで従来から、植物に必要なこれら鉄やマンガン成分を補うために、除鉄工程を経た農業用水に水溶解性の鉄やマンガンなどの金属成分を再度添加する方法も採用されている。
【0005】鉄やマンガンを水溶解性とするには、それらの金属をキレート化合物と反応させてキレート金属塩とする方法が好ましい。キレート金属塩は水溶解性に優れ析出や沈殿現象がないので農業用水中に安定して含有させることがでる。キレート剤としては入手が容易で価格も低いEDTA(エチレンジアミン4酢酸)が一般的に使用されるが、そのほかにDTPA(ジエチレントリアミン5酢酸)、EDDHA(エチレンジアミンヒドロキシフェニル酢酸)なども試用されている。但しこれらキレート剤はいずれも難分解性であるため、農業用水が河川などに排水されたときに自然界に存在する水銀などの有害金属と結合し、飲料水等に混入するおそれがあるので注意する必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このように原水に溶解している鉄やマンガンを除去した後、再びそれらの金属を添加する方法は、酸化反応層、酸化沈殿除去槽などの大きな設置面積の装置の設置を必要とし、蓄積する酸化沈殿物の廃棄や、定期的な洗浄操作も欠かせない。さらに、鉄やマンガンなどの有用なキレート金属塩を購入して原水に添加するために原水の処理コストが上昇するという問題もある。
【0007】そこで本発明は、このような従来の農業用水の製造における問題点を解決することを課題とし、そのための新しい農業用水の製造方法を提供することを目的とする。また本発明はその製造方法を好適に実施できる製造装置を提供することも目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発明に係る農業用水の製造方法は、金属が溶解している原水にキレート化合物を混合し、そのキレート化合物と前記金属を反応させてキレート金属塩を生成し、それによって当該キレート金属塩を含有する農業用水を得ることを特徴とする。(請求項1)
【0009】上記製造方法において、原水に溶解している金属の量が所望値より不足している場合に、その不足する金属をキレート化合物溶液に溶解させてキレート金属塩を生成し、そのキレート金属塩を含有するキレート化合物溶液を原水と混合することができる。(請求項2)
上記製造方法は特に金属が鉄およびマンガンである場合に有効である。(請求項3)
さらに上記いずれかの製造方法において、製造された農業用水の使用目的に応じて、キレート化合物として生分解性または難分解性のものを使用することができる。(請求項4)
【0010】さらに、前記課題を解決する本発明に係る農業用水の製造装置は、金属が溶解している原水を供給する原水供給系統と、キレート化合物を供給するキレート化合物供給系統と、前記原水供給系統によって供給される原水とキレート化合物供給系統によって供給されるキレート化合物を混合してキレート金属塩を生成させる混合装置と、その混合装置から排出されるキレート金属塩を含有する農業用水を貯蔵する貯蔵タンクと、を備えていることを特徴とする。(請求項5)
そして上記製造方法において、混合装置として静止型混合器を使用することができる。(請求項6)
【0011】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態を図面により説明する。図1は本発明に係る農業用水の製造装置の1例を示すプロセスフロー図である。図中、1は原水供給系統、2はキレート化合物供給系統、3は混合装置、4は貯蔵タンク、5は汲み上げポンプ、6は流量計、7はキレート化合物槽、8は薬液ポンプ、9は制御器、a〜dは配管である。
【0012】原水供給系統1は地下水などの原水を汲み上げる汲み上げポンプ5、配管aおよび配管bにより構成され、キレート化合物系統2はキレート化合物槽7、定量ポンプである薬液ポンプ8、制御器9および配管cにより構成される。流量計6は例えばフロート式またはタービン式の流量計が使用され、流量に比例した電気信号を制御器9に出力するようになっている。
【0013】制御器9は原水中に含まれる金属のモル濃度に対してキレート化合物が予め設定されたモル濃度になるように薬液ポンプ8を制御する。例えば、流量計6からの原水流量測定信号にキレート化すべき金属の総モル濃度を乗じた値とキレート化合物溶液の流量にそのモル濃度を乗じた値を比較し、それが所定の比率を維持するように、制御器9は薬液ポンプ8の回転速度を制御する。なお薬液ポンプ8はこの分野で慣用されている容量式の薬液ポンプ8であり、吐出量はその回転速度に正確に比例する。
【0014】この混合装置3は原水供給系統1から流入する原水と、キレート化合物供給系統2から流入するキレート化合物を均一に混合してキレート金属塩を生成させる機能を有する。本発明に好適に使用できる混合装置3は、例えば配管路内に攪拌混合用静止型混合器の羽根が重層に配置されているような構造からなるものを使用することができる。かかる静止型混合器を使用すると、ポンプなど駆動機器がいらないというような利点がある。上記製造装置において、汲み上げポンプ5以降の原水供給系統1、キレート化合物供給系統2、混合装置3等は密閉系を構成しており、キレート化合物などが空気に触れないように考慮されている。
【0015】キレート化合物としては、水中で安定に溶解状態を維持し、植物が吸収できる性状を有し、さらに毒性がなく取り扱いやすいものが望ましい。そのようなキレート化合物としては、微生物に分解される生分解性化合物と、分解されにくい難分解性化合物の2種があり、前者の生分解性化合物にはEDDS(エチレンジアミン2コハク酸)、グルコン酸塩、クエン酸塩など、後者の難分解性化合物にはEDTA(エチレンジアミン4酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン5酢酸)、EDDHA(エチレンジアミンヒドロキシフェニル酢酸)などがある。
【0016】次に図1の装置を使用して農業用水を製造する方法について説明する。先ず、使用する原水中に溶解されている鉄やマンガンなどの植物に必要な金属の種類とそれぞれのモル濃度を調べ、その結果、もし有用金属の種類もしくはモル濃度が所望値より不足している状態であれば、その不足分を補う量の金属を予めキレート化合物槽7に添加しておく。なお金属は水溶解性の形態で調整し、例えば鉄の場合は硫酸鉄7水和物、マンガンの場合は硫酸マンガン4水和物のような金属化合物の形態で添加する。
【0017】次にキレート化合物槽7内に水を補給すると共に、キレート化合物溶液を所定のモル濃度になるように投入する。なおキレート化合物の種類は植物栽培システムに合わせて生分解性または難分解性のいずれかを選択する。例えば本発明の方法により製造された農業用水が養液栽培の用水として使用される場合、養液掛け捨てシステム(養液が培地に散布された後に施設外に廃棄するシステム)を採用するときは生分解性のキレート化合物を使用する。
【0018】すなわちキレート化合物を自然界に放出すると環境中の重金属を捕捉する性質があり好ましくない。そこで自然界に存在する微生物で分解されやすい生分解性のキレート化合物を使用することによって、河川、地下水などを汚染する(環境中の重金属を捕捉する)問題を回避することができる。なお生分解性のキレート化合物を使用する場合には、その濃度を高めに設定してキレート化合物槽7内などに空気が浸入し、それに含まれている微生物で分解されないようにする。好ましい濃度は1000倍程度である。このような濃度とすることにより水素イオン濃度が酸性になり、微生物が繁殖しにくくなる。
【0019】一方、養液循環システム(養液を施設外に放出せず循環して使用するシステム)を採用するときは難溶解性のキレート化合物を使用する。この難分解性キレート化合物は長期間循環して使用しても溶液中の微生物によって分解されることなく、安定して植物に必須金属を供給する役目を果たすことができる。
【0020】次に原水の金属モル濃度に基づき、必要なキレート化合物の供給量を設定する。金属のモル濃度に対してキレート化合物のモル濃度を1.05倍以上とすることが好ましく、より好ましくは1.05〜1.10倍の範囲とする。このモル濃度の比率(またはその換算比率)は制御器9に設けた設定器に予め設定することができ、その設定に従って制御器9は前記のように薬液ポンプ8の回転速度を制御する。
【0021】上記操作により装置の準備が完了するので、次に汲み上げポンプ5を運転して農業用水の製造を開始する。原水の流量は流量計6の測定目盛りが所定の範囲になるように配管bに設けた調整弁(図示せず)で調整する。原水が所定流量に設定されると、制御器9は原水に注入されるキレート化合物のモル濃度が所定の比率になるように薬液ポンプ8を制御する。キレート化合物が注入された原水は次に混合装置3に導入され、そこを通過する間に原水に含まれている金属とキレート化合物が反応してキレート金属塩が生成する。そして原水中に溶解されていた金属が実質的にキレート金属塩になった状態の農業用水は地下などに設置される貯蔵タンク4に流入し貯蔵される。
【0022】次に実施例により本発明の農業用水の製造方法をより具体的に説明する。
【0023】
【実施例1】本発明の方法により農業用水を製造し、ハウスによる養液栽培法(養液循環式)により2.2ヘクタールの栽培面積でトマトを栽培した。原水として使用した地下水中の成分分析を行った結果、鉄が3mg/l、マンガンが0.8mg/lの濃度で含まれており、トマト栽培に必要な量を満たしていることが分かった。しかしトマト栽培に必要な銅、亜鉛は含まれていなかったので、銅を0.01mg/l、亜鉛を0.01mg/lの濃度になるように添加する必要があった。(表1参照)
【0024】
【表1】

【0025】2.2ヘクタールの栽培面積を有する養液栽培ハウスの場合、1日に必要とする最大農業用水の量は100トンである。日産100トンの農業用水中に必要な鉄は300g(5.38モル)、マンガン80g(1.46モル)と計算され、添加すべき銅は1g(0.02モル)、亜鉛は1g(0.02モル)と計算された。養液栽培は循環式であるので、キレート化合物は難分解性のEDTA・2Na・2H2 O(エチレンジアミン4酢酸2水素2ナトリウム水和物)を使用した。その際の必要なキレート化合物の量は(5.38+1.46+0.02+0.02)の1.05倍のモル濃度7.22モルの2685.84gが必要と計算された。
【0026】そこで上記エチレンジアミン4酢酸2水素2ナトリウム水和物2685.84gと前記添加金属をキレート化合物槽7に溶かし込んだ。その際、キレート化合物等の溶媒として原水を98.5リットル使用したので、その溶媒に含まれている鉄、マンガンに消費される分としてエチレンジアミン4酢酸2水素2ナトリウム水和物をさらに2.67g追加した。なお調整したキレート化合物の濃縮率は1000倍とした。
【0027】100トン/日の農業用水を製造するために、100リットル・分の能力を有するステンレス製の汲み上げポンプ5、10〜200リットル/分の測定範囲を有する流量計6、1〜1000ミリリットル/分の薬液ポンプ8、およびそれに対応する制御器9、密閉型で100リットル容量のキレート化合物槽7、静止型混合器からなる塩化ビニール樹脂製の混合装置3等を使用し、貯蔵タンク4は既存のものを使用した。配管類は塩化ビニール樹脂製、薬液チューブはシリコン製とした。なお装置の設置に必要な面積は、貯蔵タンク4を除いて2平方メートルであった。
【0028】既存の地下水管(井戸)から原水を100リットル/分で汲み上げ、薬液ポンプ8で100ミリリットル/分の割合でキレート化合物が注入されるように制御器9を設定した。装置が運転開始すると、農業用水は6トン/時の割合で製造され、約16時間40分で100トン製造することができた。運転開始前原水、運転直後用水、8時間時点用水、16時間時点用水および貯蔵タンク4に24時間貯留後用水をそれぞれ原子吸光光度計で成分分析した結果を表2に示す。
【0029】表2から分かるように、本実施例によって原水中に含まれていた鉄、マンガンを酸化沈殿させることなく、溶解状態の農業用水が製造された。また、製造後24時間貯蔵タンク4などの空気に接触する槽内に貯留しておいても、その溶解状態が維持された。さらに、製造された農業用水を1時間バッキ処理しても、表3に示すように沈殿物の発生はなかった。
【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】上記のように製造された農業用水を使用し、前記の養液栽培設備でトマトを栽培した結果を表4に示す。表4から分かるように、栽培期間を通してトマトの植物葉、茎および果実部に鉄、マンガン、銅、亜鉛の欠乏症状、過剰症状は認められずに正常に生育した。また、他の要素の欠乏症状、過剰症状も認められなかった。さらに、トマト10アール当たりの収穫量を、従来の農業用水(除鉄マンガン処理した用水に金属塩を添加したもの)で同様の栽培を行って比較した結果、両者に実質的な差は認められなかった。(表5参照)
【0033】
【表4】

【0034】
【表5】

【0035】
【実施例2】本発明の方法により農業用水を製造し、ハウスによる養液栽培法(養液掛け捨て式)により1アールの栽培面積でトマトを栽培した。なお原水は実施例1と同じものを使用した。1アールの栽培面積を有する養液栽培ハウスの場合、1日に必要とする最大農業用水の量は5トンである。日産5トンの農業用水中に必要な鉄は15g(0.27モル)、マンガン4g(0.07モル)と計算され、添加すべき銅は0.05g(0.001モル)、亜鉛は0.05g(0.001モル)と計算された。
【0036】養液栽培は掛け捨て式であるので、キレート化合物は生分解性のC3 4 (OH)(COOH3 )・H2 O(クエン酸1水和物)を使用した。その際の必要なキレート化合物の量は(0.27+0.07+0.001+0.001)の1.05倍のモル濃度0.359モルとなり75.46gが必要と計算された。このクエン酸1水和物75.46gと添加金属を5リットルをキレート化合物槽7へ溶かし込んだ。その際、キレート化合物等の溶剤として原水を4.55リットル使用したので、その溶媒に含まれている鉄、マンガンに消費される分としてクエン酸1水和物をさらに3.4mg追加した。なお調整したキレート化合物の濃縮率は1000倍とした。
【0037】5トン/日の農業用水を製造するために、5リットル・分の能力を有するステンレス製の汲み上げポンプ5、0.5〜10リットル/分の測定範囲を有する流量計6、0.1〜500ミリリットル/分の薬液ポンプ8、およびそれに対応する制御器9、密閉型で10リットル容量のキレート化合物槽、静止型混合器からなる塩化ビニール樹脂製の混合装置3等を使用し、貯蔵タンク4は既存のものを使用した。配管類は塩化ビニール樹脂製、薬液チューブはシリコン製とした。なお装置の設置に必要な面積は、貯蔵タンク4を除いて1平方メートルであった。
【0038】原水を5リットル/分で汲み上げ、薬液ポンプ8で5ミリリットル/分の割合でキレート化合物が注入されるように制御器9を設定した。装置が運転開始すると、農業用水は300リットル/時の割合で製造され、約16時間40分で5トン製造することができた。運転開始前原水、運転直後用水、8時間時点用水、16時間時点用水および貯蔵タンク4に24時間貯留後用水をそれぞれ原子吸光光度計で成分分析した結果を表6に示す。
【0039】表6から分かるように、本実施例によって原水中に含まれていた鉄、マンガンを酸化沈殿させることなく、溶解状態の農業用水が製造された。また、製造後24時間貯蔵タンク4などの空気に接触する槽内に貯留しておいても、その溶解状態が維持された。さらに、製造された農業用水を1時間バッキ処理しても、表7に示すように沈殿物の発生はなかった。
【0040】
【表6】

【0041】
【表7】

【0042】キレート化合物槽7のpH(水素濃度イオン)を濃度計で測定したところ、常時pH3.5で酸性を維持していた。また、一般生菌数は検出されなかった。このようにキレート化合物槽7内を酸性にすることにより、微生物によるキレート化合物の分解を防止して溶解状態を維持することができることが分かった。(表8参照)
【0043】
【表8】

【0044】上記のように製造された農業用水を使用し、前記1アールの養液栽培設備でトマトを栽培した結果を表9に示す。表9から分かるように、栽培期間を通してトマトの植物葉、茎および果実部に鉄、マンガン、銅、亜鉛の欠乏症状、過剰症状は認められずに正常に生育した。また、他の要素の欠乏症状、過剰症状も認められなかった。さらに、トマト1アール当たりの収穫量を、従来の農業用水(除鉄マンガン処理した用水に金属塩を添加したもの)で同様の栽培を行って比較した結果、両者に実質的な差は認められなかった。(表10参照)
【0045】
【表9】

【0046】
【表10】

【0047】さらに、養液栽培後の廃液を100リットルの円筒型密閉容器にサンプリングし、サンプリング直後と24時間貯留後に原子吸光光度計により成分分析した結果を表11に示す。表11から分かるように、養液廃液中に溶解する鉄、マンガンは存在しなかった。すなわちクエン酸1水和物が微生物によって分解され、キレート機能が消失し、その結果、鉄、マンガン等が酸化沈殿され、環境への影響がない状態になっていた。
【0048】
【表11】

【0049】
【発明の効果】以上のように本発明に係る農業用水の製造方法は、金属が溶解している原水にキレート化合物を混合し、そのキレート化合物と前記金属を反応させてキレート金属塩を生成し、それによって当該キレート金属塩を含有する農業用水を得ることを特徴とする。そのため従来方法のように原水を除金属操作してから再度鉄等を溶解させるという複雑な工程を必要とせず、簡単な操作で農業用水を製造することができる。また本発明の方法によれば金属添加を最小限に抑えることができるので、ランニングコストが低くなる。さらに、本発明の方法は環境への影響が少ない方法で実施できる。
【0050】上記製造方法において、原水に溶解している金属が所望値より不足している場合に、その不足する金属をキレート化合物溶液に溶解させてキレート金属塩を生成し、そのキレート金属塩を含有するキレート化合物溶液を原水と混合することができる。このような方法を採用することにより、使用する原水の範囲を広げることができる。
【0051】また、本発明に係る農業用水の製造装置は、金属が溶解している原水を供給する原水供給系統と、キレート化合物を供給するキレート化合物供給系統と、前記原水供給系統によって供給される原水とキレート化合物供給系統によって供給されるキレート化合物を混合してキレート金属塩を生成させる混合装置と、その混合装置から排出されるキレート金属塩を含有する農業用水を貯蔵する貯蔵タンクと、を備えていることを特徴とする。この装置を使用することにより上記方法を好適に実施することができる。また上記構成とすることにより装置を小型化することができ、農業用水製造能力当たりの設置面積も小さくできる。
【出願人】 【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラント建設株式会社
【出願日】 平成13年4月26日(2001.4.26)
【代理人】 【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
【公開番号】 特開2002−320416(P2002−320416A)
【公開日】 平成14年11月5日(2002.11.5)
【出願番号】 特願2001−130413(P2001−130413)