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【発明の名称】 育苗装置および育苗方法
【発明者】 【氏名】古在 豊樹

【氏名】全 昶厚

【氏名】岡部 勝美

【氏名】土屋 和

【氏名】布施 順也

【要約】 【課題】閉鎖型構造物の内部空間で、外部環境の影響をうけない安定した植物育苗環境を実現し、高品質で苗質の均一な苗を、低エネルギー、省力、低コストで生産が可能な育苗装置と、この育苗装置による育苗方法を提供すること。

【解決手段】閉鎖型構造物の内部空間に、空調装置、複数の多段式育成モジュールを配置し、育成モジュールには育苗棚が多段に配置され、各棚の上部に人工照明、各棚に自動灌水装置などを備え、空調装置は人工照明から放出される熱を閉鎖型構造物の空間外に放出し、自動灌水装置によって必要最小量の灌水を行いながら育苗できる育苗装置と、育苗装置を使用した育苗方法を特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 断熱性壁面で囲まれ完全遮光性とされた大型で閉鎖型構造物の内部空間に、複数の育苗棚が配置されてなる箱型の育成モジュールが複数個配置されてなる閉鎖型育苗装置において、閉鎖型構造物の内部空間の天井壁に空調装置が装備されてなり、上記育成モジュールには、上下の育苗棚の間に植物を生育する培地を入れた複数個のセルトレイを載置して、これらのセルトレイを出し入れして育苗を行うための育苗空間を設けて複数の育苗棚が配置され、育苗棚に載置したセルトレイの上側には植物に光を照射する人工照明装置が配置され、各セルトレイにはその底面から個別に灌水する自動灌水装置が配置されてなることを特徴とする育苗装置。
【請求項2】 人工照明装置は、人工照明装置の安定器を閉鎖型構造物の空間外に設置されたものである、請求項1に記載の育苗装置。
【請求項3】 自動灌水装置は、セルトレイ内培地からの蒸発量や、植物体からの蒸散量による重量減少などによる各セルトレイ総重量を電子天秤によって個別に検知し、減量分を個別に自動的に灌水可能にされてなる請求項1または請求項2に記載の育苗装置。
【請求項4】 育成モジュールには、各育苗棚の背面壁側に複数基の空気ファンが装備されてなり、空調装置によって冷却された空気を、空気ファンを稼働させて育成モジュールの各育苗棚の前面側より、育苗空間内に均一に吸入可能とされてなる、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の育苗装置。
【請求項5】 断熱性壁面で囲まれ完全遮光性とされた大型で閉鎖型構造物の内部空間に、複数の育苗棚が配置されてなる箱型の育成モジュールが複数個配置されてなる閉鎖型育苗装置によって育苗する方法において、閉鎖型構造物の内部空間の天井壁に空調装置が装備されてなり、上記育成モジュールには、上下の育苗棚の間に植物を生育する培地を入れた複数個のセルトレイを載置して、これらのセルトレイを出し入れして育苗を行うための育苗空間を設けて複数の育苗棚が配置され、各育苗棚に載置したセルトレイの上側には植物に光を照射する人工照明装置が配置され、各セルトレイにはその底面から個別に灌水する自動灌水装置が配置されてなる育苗装置を用い、前記人工照明装置から放出される熱を閉鎖空間の発熱を空調装置によって閉鎖型構造物の外に排出し、かつ、各々のセルトレイ総重量を個別に電子天秤によって重量減少を検知し、減量分を個別に自動灌水装置によって灌水を行い、育苗することを持徴とする育苗方法。
【請求項6】 閉鎖空間の冷却時に発生した結露水を回収し、回収した結露水を灌水用として再利用する、請求項5に記載の育苗方法。
【請求項7】 閉鎖型構造物の内部空間の炭酸ガス濃度を、炭酸ガス濃度計測装置によって計測し、炭酸ガス濃度計測装置からの信号に従い、液化炭酸ガスのボンベから発生させた炭酸ガスを、閉鎖型構造物の内部空間に放出する、請求項5に記載の育苗方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、育苗装置および育苗方法に関する。さらに詳しくは、閉鎖空間型で多段棚式の育苗装置であって、人工光源、空調装置および自動灌水装置を装備し、外部環境の影響を受けない安定した植物育苗環境を実現し、均一な生育条件下で、高品質のセル成型苗を、低エネルギー低コストで自動的に生産することができる育苗装置、およびこの育苗装置による育苗方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、各種植物の苗を育成する育苗方法としては、植物工場に代表される育苗方法がある。この育苗方法は、人工光源、空調装置および自動灌水装置を装備した育苗装置によって、育苗空間の光量、温度、湿度、風速、灌水量などを人為的に最適状態に調節し、高品質で均一な苗を安定的に、省力、低コストで育成する方法である。この種の育苗方法で使用される育苗装置は、エネルギー資源、水資源などを節約し、低環境負荷型であることが求められる。
【0003】この種の育苗装置の自動灌水装置としては、1999年日本農業気象学会・生物環境調節学会、植物工場学会3学会合同大会において、「プラグトレイ用噴射式底面灌水装置の開発」が報告されているものがある。ここで報告されている自動灌水装置では、セルトレイの底穴からノズルをセルトレイ内に貫入させ、適量の水や培養液を培地へ短時間噴射するもので、噴射した水分がセルトレイの底穴から漏れないので、余剰水、余剰養液を出さないという特徴がある。しかしながら、セルトレイ一枚に数十から数百個あるセルトレイの底壁面に設けた総ての貫通穴に挿入する多数のノズルを用意し、それを総ての貫通穴に機械的に挿入したあと、各ノズルから等量の水分を噴霧させなければならず、これを実現するには複雑でかつ高価な機構の装置が必要であるという欠点がある。
【0004】また、別の自動灌水装置として、2000年日本農業気象学会・生物環境調節学会合同大会で、「セル成形苗個体群の蒸発散計測に基づく自動灌水装置の簡易化」が報告されている。この自動灌水装置では、セルトレイ単位の苗個体群の重量を上皿ハカリに設置し、植物体や培地の蒸発散量を苗個体群重量の増減として計測するため、ハカリの指針にスイッチ接点を設け、指針の移動をスイッチ接点が直接感知し、苗個体群への灌水開始の指示を行うものである。この装置は、蒸発散量をもとに灌水を開始し、サブタイマーにより必要最小限量の灌水を行うため、余剰水を出さずに適量の灌水を行うことことができるという特徴がある。しかしながら、実験によりこの指針の動作には抵抗があり、また指針の動きが直接重力の影響を受けるので、動作が不完全であったり、動作精度に問題があったりすることが、同報告により明らかにされている。
【0005】さらに、この種閉鎖型の育苗装置の送風装置、空調装置として、特許第3026253号公報に記載の人工環境装置が提案されている。ここで提案されている人工環境装置では、左右両端を開口した空調室を設け、その一端に吸入室を、他方の端に吹出室を設け、それぞれを連結した通風路に空調装置と通風装置を設け、吸入室と吹出室との間に配置した苗育成装置に、空調された空気を供給するようにされている。しかしながらこの人工環境装置では、特別な空調のための部屋構造や、送風の整流のための機器類が必須であり、人工環境装置全体としては複雑で、かつ、育苗空間の面積利用効率が低いという欠点がある。
【0006】上記の育苗装置の人工照明装置としては、近年蛍光灯が用いられるようになった。これは蛍光灯のエネルギー利用効率の高さ、寿命の長さ、メタルハライドランプなどの他の植物育成用ランプに比べた価格の安さによるものである。蛍光灯には、ランプ本体の他に、安定器と呼ばれる器具がランプ本体への電流供給を行っているが、この安定器からの発熱が蛍光灯による照明器具全体の消費エネルギーの一割〜数割を占めており、生産装置全体を冷却する際の冷房負荷を上昇させるという欠点がある。
【0007】また、上記育苗装置の冷房装置では、主に人工照明装置からの発熱を除去するための冷房を行っているが、冷房の際に熱交換機からの結露水が生じる。この結露水により育苗装置空間内の相対湿度が、植物育成に適度な状態に保たれるが、一方その結露水は通常ではそのまま廃棄され、再利用されることは少ない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、かかる状況に鑑み、閉鎖型育苗装置によって苗を育成する技術分野において存在していた上記のような諸欠点を排除し、均一で高品質の笛を自動的に、省エネルギー、省資源、低コスト方式で生産することができる育苗技術を提供すべき鋭意検討した結果、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】本発明の目的は、次の通りである。
(1)外部環境の影響を受けない安定した植物育苗環境を実現する閉鎖型育苗装置を提供すること。
(2)空間利用率の高い閉鎖型育苗装置を提供すること。
(3)育苗する際に、必要最小限の培養液を灌水することができる育苗装置を提供すること。
(4)育苗する際に育苗空間を、必要最小限の電力で冷房を可能にした省エネルギー型の育苗装置を提供すること。
(5)余剰灌水、余剰炭酸ガスなどを閉鎖型育苗装置外に放出することなく、環境負荷を最小限に抑制できる育苗装置を提供すること。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、第1発明では、断熱性壁面で囲まれ完全遮光性とされた大型で閉鎖型構造物の内部空間に、複数の育苗棚が配置されてなる箱型の育成モジュールが複数個配置されてなる閉鎖型育苗装置において、閉鎖型構造物の内部空間の天井壁に空調装置が装備されてなり、上記育成モジュールには、上下の育苗棚の間に植物を生育する培地を入れた複数個のセルトレイを載置して、これらセルトレイを出し入れして育苗を行うための育苗空間を設けて複数の育苗棚が配置され、各育苗棚に載置したセルトレイの上側には植物に光を照射する人工照明装置が配置され、各セルトレイにはその底面から個別に灌水する自動灌水装置が配置されてなることを特徴とする育苗装置を提供する。
【0011】さらに、第2発明では、断熱性壁面で囲まれ完全遮光性とされた大型で閉鎖型構造物の内部空間に、複数の育苗棚が配置されてなる箱型の育成モジュールが複数個配置されてなる閉鎖型育苗装置によって育苗する方法において、閉鎖型構造物の内部空間の天井壁に空調装置が装備されてなり、上記育成モジュールには、上下の育苗棚の間に植物を生育する培地を入れた複数個のセルトレイを載置して、これらセルトレイを出し入れして育苗を行うための育苗空間を設けて複数の育苗棚が配置され、各育苗棚に載置したセルトレイの上側には植物に光を照射する人工照明装置が配置され、各セルトレイにはその底面から個別に灌水する自動灌水装置が配置されてなる育苗装置を用い、前記人工照明装置から放出される熱を閉鎖空間の発熱を空調装置によって閉鎖型構造物の外に排出し、かつ、各々のセルトレイ総重量を個別に電子天秤によって重量減少を検知し、減量分を自動灌水装置によって個別に必要最小量の灌水を行い、育苗することを持徴とする育苗方法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の係る育苗装置は、断熱性壁面で囲まれ完全遮光性とされた大型で閉鎖型構造物の内部空間に、複数の育苗棚が配置されてなる箱型の育成モジュールが複数個配置されてなる閉鎖型育苗装置である。本発明において閉鎖型育苗装置とは、外気温を遮断し、自然光線を遮断する壁面で囲まれて閉鎖された内部空間を有する構造物をいう。代表的な構造物は、鉄筋、スレート板および断熱材を組み合わせた箱型の六面体が挙げられる。構造物の外形は特に限られるものではなく、外形が蒲鉾型、半円筒型、半球型などのものであってもよい。
【0013】閉鎖型構造物の内部空間の大きさは、その内部空間に育成モジュールを複数個並べて配置可能とされ、育成モジュールの前面で、一人または複数の作業者が作業できる程度の作業空間を設けるものとする。閉鎖型構造物の内部空間の面積利用率、空間利用率を高めるために、作業空間は局限まで小さく、狭くするのが好ましい。閉鎖型構造物の内部に育成モジュールを配置する際には、閉鎖型構造物の壁面と育成モジュールの背面との間に、5〜30cm程度の幅の空間を設けて、育成モジュールを通過した空気の通路とするのが好ましい。
【0014】閉鎖型構造物には、空調装置を装備している必要がある。空調装置は、閉鎖型構造物の内部空間の空気を調温・調湿し、設定条件に調温・調湿した空気を、閉鎖型構造物内に循環させる機能を備えている必要がある。空調装置の室内機は閉鎖空間内部の天井壁面に取り付け、屋外機は閉鎖型構造物の外に取り付ける。空調装置は、一基の装置によって閉鎖型構造物の内部空間の全体を調温・調湿することができるが、複数の育成モジュールに対応させた数とし、各育成モジュールの上側の天井壁面に取り付けるのが好ましい。空調装置によって循環される循環空気が育成モジュールを通過する際に、主に照明装置から放出される熱と、セルトレイ、培土、植物苗などから蒸発した水蒸気を同伴し、空調装置の室内機によって温度・湿度し、調温・調湿された冷空気が各育成モジュールの各育苗棚の前面側に供給される。このように、閉鎖空間内の空気を循環させることによって、閉鎖空間内を植物体生育に最適な温度・湿度環境に保つことができる。
【0015】本発明の係る育苗装置の内部空間に配置される育成モジュールは、外形が箱型の六面体であって、内部は複数の育苗棚が多段に配置され、各育苗棚には、人工照明装置、自動灌水装置、空気循環ファンが装備されている。育成モジュールの前面には壁を設置せず解放した構造とし、内部に複数の育苗棚を一定間隔で多段に配置することによって、育苗空間の面積利用効率を高めることができる。育成モジュールの高さは、作業者が作業できる程度の高さである200cm程度とし、育苗棚の幅は数十から数百のセル(小鉢)を格子状に配列させたセルトレイを配列でき、各棚の温度・湿度を一定に調節できる幅、例えば100cm〜200cm程度とし、育苗棚の奥行きは50cm〜150cmとするのが好ましい。
【0016】育成モジュール内に配置する複数の育苗棚はほぼ水平とし、各育苗棚によって育苗空間を形成する。最下段の棚は、育成モジュールの下側壁面を棚として活用することができる。複数の育苗棚相互の間隔は、小さくして育苗棚の数を増やす空間利用効率を高めることができる。しかし、育苗棚の相互の間隔が小さ過ぎると、セルトレイの出し入れなどの作業性に劣り、苗の最大長を確保できないなどの欠点があるので、最低30cm程度とするのが好ましい。育苗棚は、金属板、金属網、金属棒などによって形成するのが好ましい。
【0017】育苗棚の各段背面側には、複数基の空気ファンが装備されてなり、前記空調装置によって冷却・除湿された空気を、空気ファンを稼働させて育成モジュールの各育苗棚の前面側より、育苗空間内に吸引し、多段式育苗箱の背面側に排出する。一個の育苗棚に一基の空気フアンを装備した場合には、育苗棚の幅が広い場合には送風ムラが生じ、この送風ムラなくして均一化するために前室を設けたり整流板を設けたりする必要があり、これら機器類の設置面積が増大したり、装置が複雑になったりして、いずれも好ましくない。一個の育苗棚に複数基の空気ファンを装備することにより、送風ムラを解消して均一な送風、均一な空気の循環が可能となる。育成モジュールの背面に排出された空気は、閉鎖型構造物の天井壁面に設置した空調装置によって吸込まれ、調温・調湿されて、育成モジュールの各育苗棚の前面側に吹出される。空気ファンによる空気循環の強さは、微風で十分である。
【0018】各セルトレイの上側には、苗などの植物に光を照射する人工照明装置を配置する。人工照明装置は、複数の育苗棚のすぐ上の育苗棚の裏面に、最上の育苗棚では育成モジュールの上側壁の内側面に、それぞれ配置する。人工照明装置の光源としては蛍光灯が好ましく、蛍光灯の燭光、長さなどは、一個の育苗棚の幅、長さ、育苗棚相互の間隔などにより、適宜選ぶことができる。例えば、120cm幅×60cm長さの育苗棚で、育苗棚相互の間隔が35cmの場合は、長さが120cmの45Wの蛍光灯を4〜8本、育苗棚面に平行に配置すればよい。
【0019】なお、人工照明装置の安定器は、閉鎖型構造物の空間外に設置し、人工照明装置と安定器との間は電線によって結線する。安定器を閉鎖型構造物の空間外に設置することにより、安定器から放出される熱が閉鎖型構造物の空間内に蓄積されることがなく、閉鎖型構造物に装備する空調装置の冷房負荷を、一割程度減らすことができ、省エネルギーを達成することができる。
【0020】空調装置の除湿機能により、空調装置の室外機より結露水が発生する。この結露水は、通常、そのまま排水路や一般河川へ排出されるが、結露水を集めるドレンタンクに全量回収し、灌水(培養液)用の原水、灌水原液の希釈水として活用することによって省資源が達成される。
【0021】自動灌水装置は、育成モジュールに配置された複数の育苗棚の各棚に電子天秤を配置し、各棚の電子天秤の上に育苗箱(アンダートレイと呼ばれることもある)を載置して、灌水パイプから育苗箱の中に灌水を行う方式とする。育苗箱は、金属または合成樹脂によって調製され、平面形状が30cm×60cm前後で、深さが10〜40mmの寸法の浅い箱状を呈するものが好ましい。育苗箱の収納部にはセルトレイを載置して、育苗箱に灌水(培養液)を供給するように機能する。育苗箱の底面に樹脂製多孔質シートを敷いておくと、灌水パイプ口から供給される灌水を、育苗箱の底面に素早く均一に広げることができ、好ましい。樹脂製多孔質シートとしては、化学繊維製の織物、不織布、織物と不織布とを組み合わせたものなどが挙げられる。化学繊維には特に制限がなく、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維などが挙げられる。
【0022】セルトレイは、幅が30cm、長さが60cm前後の寸法とされており、前記したとおり、一個のセルトレイには数十から数百のセル(小鉢)を格子状に配列させたものである。セルは裁頭逆錐型のものがよく、錐は円錐、角錐のいずれであってもよく、セルの大きさは、深さが15〜50mmで、容量が4〜30ミリリットル程度のものが好ましい。セルトレイは、樹脂製シートから差圧成形法によって製造し、一個(一枚)のセルトレイには最大450個のセルを有するものが、好ましい。各セルの底壁面に貫通孔が設けられている必要がある。底壁面は平坦でも、底壁面から下方側に突設した複数の小突起が設けられていてもよい。水分は、毛細管現象により貫通孔からセルトレイ内の培地に吸いあげられる。
【0023】電子天秤は各育苗箱の重量を計測するものであり、育苗箱、セルトレイ、セルトレイ内の培地、培養液(水、肥料分を含む)、植物体の総重量を常時モニタリングするように機能する。電子天秤から個々の育苗箱についての重量データを制御装置が個別に検知し、前回灌水終了時からの総重量の減少量を制御装置が随時確認する。制御装置は、育苗箱個々の総重量の減少量がある一定量に達したら、個別に電磁弁に制御信号を送って灌水開始を指示し、電磁弁をオンとし個別に灌水するように作動する。総重量の減少量には、植物体からの水分の蒸散、培地からの水分蒸発などが含まれる。
【0024】総重量の減少量を補う際の灌水量は、一個のセルトレイ当り総重量の減少量+αとし、減少量+αの量を灌水したあと電磁弁をオフとし一回の灌水を終了する。αの値を調節することにより、余剰な灌水を防ぎ、個々の育苗箱に余剰の灌水が残らないようにすることができる。このように機能する自動灌水装置によって、必要最小限の水分を自動的に灌水することができるので、余剰水が生じず、一般河川に廃棄するための付帯設備などを設置する必要がない。
【0025】閉鎖型構造物の内部空間の空気を冷却する際、各空調装置に結露水が生じるが、育苗装置が大型になると結露水が相当の量となるので、これを回収してドレインタンクに溜め、培養液調製用水として再利用することによって、水道水の使用量を減らすことができる。
【0026】閉鎖型構造物の内部空間で育苗する場合、閉鎖型構造物の内部空間の換気回数が毎時0.1回前後と低くされ、密閉度が高いので、育成中の苗が光合成で消費する炭酸ガスを人為的に供給するための装置が必要となる。閉鎖型構造物の内部空間の炭酸ガス濃度を、炭酸ガス濃度計測装置によって計測し、炭酸ガス濃度が一定濃度以下になった場合に、炭酸ガス濃度計測装置からの信号に従い、液化炭酸ガスのボンベから発生させた炭酸ガスを、閉鎖型構造物の内部空間に必要量放出する方式によって、炭酸ガス濃度を一定に維持することができる。
【0027】本発明に係る育苗装置を使用し、閉鎖型構造物の内部空間で苗を育成する際には、苗の生育に好適な光量、温度、湿度、炭酸ガス、水分などの環境条件を、自動的に調節することが可能である。また、本発明に係る育苗方法によれば、同じ棚の苗は総て同一環境下で育成することができるので、得られる苗質の均一性を高めることができる。ここで苗質とは、苗の胚軸長、胚軸径、葉色、葉面積などの外見的特徴、花芽形成位置、抽台の有無などの質的特徴などを意味する。
【0028】以下、本発明に係る育苗装置を図面に基づいて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。
【0029】図1は本発明に係る育苗装置の一例の概略平面図であり、図2は箱型育成モジュールの一例の正面図であり、図3は図2に示した箱型育成モジュールの側面図であり、図4はセルトレイの一例の部分拡大縦断面図であり、図5は閉鎖型構造物の内部空間での空気の流れを示す概略側面図であり、図6は自動灌水装置の一例の概略側面図である。
【0030】図1において、内寸法が幅3400mm、奥行き2500mm、高さ2200mmの大きさの閉鎖型構造物1には、入り口には開き戸2の内側にエアーカーテンを設置すると、作業者が出入りする際に外気が入らないようできるので好ましい。閉鎖型構造物1の内部には、外寸法が幅1300mm、奥行き650mm、高さ1650mmの4個の育成モジュール3、4、5、6が配置されている。それぞれの育成モジュールの背面には空気ファン17を装備し、各棚にはセルトレイ16が棚の幅方向に4個(4枚)並べて載置されている。4個の育成モジュールに装備した人工照明装置の安定器(インバータ)ボックス13、14、15は、閉鎖型構造物の外壁に取付られている。閉鎖型構造物の天井壁面であって、3個の育成モジュールの上には、育成モジュール用の空調装置室内機3a、4a、5a、6aが取付られている。空調装置の安定器13、14、15、16は閉鎖型構造物の外側に配置されている。閉鎖型構造物の外側には、その他に空調装置ドレインタンク7、炭酸ガスボンベ8などのほか、図示されていないが培養液タンク、灌水ポンプ、操作盤、分電盤などが配置されている。
【0031】図2におよび図3に示した箱型の育成モジュール3は、台座3bに載置され、アジャスター3cによって水平度を調節可能にされている。育成モジュール3は、3枚の育苗棚9が配置されて4段にされ、各棚段の上(ただし、最下段は育苗箱の底壁の上)には育苗箱10が載置され、育成モジュール3の一方の側壁外側に、排水溝11が配置され、各育苗棚9の裏面(ただし、最上の育苗棚の場合は育成モジュール3の上壁の裏面)には人工照明ユニット12が配置されている。育成モジュール3の前面は壁面を設けず解放されており、背面には背面壁を設け、この背面壁を貫通して複数個の空気ファン取付け穴が穿設され、取付け穴の各々に空気ファン17が、各棚に4基装備されている。図示した例では、空気ファンは、育苗棚の上に形成された各育苗空間のほぼ中央に、1個のセルトレイ当り1基装備されている。
【0032】セルトレイ21は、一例を図4に部分拡大縦断面図として示したとおり、樹脂シート製の成形品であり、裁頭逆円錐型のセル(空間)22を複数個、格子状に配置されたものであり、セル22の底壁面23には、小突起24とセル穴25が設けられている。底壁面23に設けるセル穴は1個でよく、小突起24は設けなくてもよいが、図示した例ではこれが設けられている。
【0033】閉鎖型構造物1の内部空間での空気の流れは、図5に概略側面図として示したとおりである。矢印は、空気の流れる方向を示す。閉鎖型構造物用の空調装置室内機26は閉鎖空間内部の天井壁面に取り付け、室内機26によって冷却・除湿された空気を、各育苗棚の背面に装備した空気ファン17を稼働させて、育成モジュールの前面側より吸引し背面への排出する。背面へ排出された空気は、室内機26によって温度・湿度を調節し、温度・湿度された冷空気が育成モジュールの各育苗棚の前面側に供給される。
【0034】自動灌水装置は、育苗棚上でセルトレイ21を収納した水受け皿19に下側に電子天秤27が配置され、電子天秤27で検知した育苗箱19の重量データを、制御装置28で検知し、前回灌水終了時からの総重量の減少量を制御装置28が随時確認する。制御装置28は、育苗箱個々の総重量の減少量がある一定量に達したら、個別に電磁弁29に制御信号を送って灌水開始を指示し、電磁弁29をオンとし個別に灌水するように作動する。
【0035】
【発明の効果】本発明は、以上詳細に説明したとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係る育苗装置は、断熱性壁面で囲まれ完全遮光性とされた大型で閉鎖型構造物の内部空間に、複数の育苗棚が配置されてなる箱型の育成モジュールが複数個配置されているので、外部環境の影響を受けない安定した植物育苗環境が実現される。
2.本発明に係る育苗装置は、断熱性壁面で囲まれ完全遮光性とされた大型で閉鎖型箱の内部空間に、複数の育苗棚が配置されてなる箱型の育成モジュールが複数個配置されているので、空間利用率が極めて高い。
3.本発明に係る育苗装置は、人工照明装置の安定器を閉鎖型構造物の空間外に設置されてなるので、育苗空間の循環空気を冷房する際の消費電力が少なくて済むので、省エネルギー型の育苗装置である。
【0036】4.本発明に係る育苗方法によれば、外部環境の影響を受けることなく、苗質の一定したものを得ることができる。
5.本発明に係る育苗方法によれば、自動灌水装置によって、必要最小限の水分を自動的に灌水するので、余剰水を回収、再使用、廃棄処理するための付帯設備などを設置する必要がない。
6.本発明に係る育苗方法によれば、閉鎖型構造物の内部空間の炭酸ガス濃度を、計測装置によって計測し、炭酸ガス濃度が一定濃度以下になった場合に、炭酸ガス濃度計測装置からの信号に従い、炭酸ガスを閉鎖型構造物の内部空間に放出するので、炭酸ガスを一定濃度に維持することができる。
【出願人】 【識別番号】000204099
【氏名又は名称】太洋興業株式会社
【出願日】 平成13年3月30日(2001.3.30)
【代理人】 【識別番号】100084320
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 重光
【公開番号】 特開2002−291349(P2002−291349A)
【公開日】 平成14年10月8日(2002.10.8)
【出願番号】 特願2001−99162(P2001−99162)