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【発明の名称】 育成部材の取り扱い方法
【発明者】 【氏名】鈴木 裕明

【氏名】棚橋 達治

【氏名】橘 紀久夫

【要約】 【課題】藻類の中間育成を行い、海底に沈設されるアンカー部材に着脱可能に取り付けてアンカー部材と共に藻場増殖礁を形成するための育成部材の取り扱い方法として、海中において極めて効率的に藻類の中間育成を行うことができるようにした方法を提供する。

【解決手段】海中Qにおいて藻類Cの中間育成を行うに際して、育成部材1の表面11又は裏面12若しくは表裏両面に、海面Rに浮かべた筏や延縄等の浮遊物7に一部を取り付けて海中Qに垂下させた一本又は二本以上のロープ等の吊り下げ部材8を添接させた状態で、吊り下げ部材8に取り付けた育成部材1を海中に保持するようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】藻類の中間育成を行い、海底に沈設されるアンカー部材に着脱可能に取り付けて該アンカー部材と共に藻場増殖礁を形成するための育成部材の取り扱い方法であって、海中において藻類の中間育成を行うに際して、前記育成部材の表面又は裏面若しくは表裏両面に、海面に浮かべた筏や延縄等の浮遊物に一部を取り付けて海中に垂下させた一本又は二本以上のロープ等の吊り下げ部材を添接させた状態で、該吊り下げ部材に取り付けた育成部材を海中に保持するようにしていることを特徴とする育成部材の取り扱い方法。
【請求項2】前記吊り下げ部材が、少なくとも2本のロープ要素を互いに交差させて撚り合わせたロープであって、該ロープの一部においてロープ要素同士の撚り合せを解くとともにそれら解かれたロープ要素同士の間に前記育成部材を挟み込むようにしている請求項1記載の育成部材の取り扱い方法。
【請求項3】前記育成部材が、厚み方向に貫通する貫通孔を具備するものであって、該貫通孔に挿通した結束具によって育成部材を保持する吊り下げ部材を拘束するようにしている請求項1又は2記載の育成部材の取り扱い方法。
【請求項4】前記育成部材が、平面的な裏面を有するものであって、一対の育成部材の裏面同士を向き合わせた状態にしてそれら育成部材の表面にそれぞれ前記吊り下げ部材を添接させることによって、少なくとも二つの育成部材を同時に吊り下げ得るようにしている請求項1、2又は3記載の育成部材の取り扱い方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、藻場を形成する藻類を育成するために使用される育成部材の好適な取り扱い方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、海藻類が増殖するための藻場増殖場としては、天然の岩場、テトラポットやコンクリートプレート、或いは、これらコンクリート製品を重積したりその間に自然石を配設したもの等が利用されてきた。ところで近時、海域において、水温や水質の変化、或いは食害動物等、様々な原因によって藻類が死滅し藻場が消失してしまういわゆる磯焼け現象が問題となっている。このような問題に対して、前述のような従来の藻場増殖礁では、投入されたブロック等に藻類が付着するのに時間がかかる上に、藻類が付着するかどうかも定かではなく、上述のように磯焼けが拡大して年々減りつつある現状にあっては藻場を回復するための実質的な対応策となってはいない。
【0003】そこで、磯焼けなどにより消失した藻場をより効率よく回復し、あるいは従前は藻場が存在しなかった箇所に新たに藻場を造成して優良な漁場を創出する方策として、主として藻類の育成機能と海底に沈めるためのアンカー機能とを分けて考慮し、育成部材とアンカー部材とを着脱可能に取り付けられるようにした、いわゆる着脱式藻場増殖礁が考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような着脱式藻場増殖礁は、育成部材を用いて藻類を予め中間育成した後、ある程度生育した藻類が根付いた育成部材をアンカー部材に取り付けるようにしたものであるが、これまで採用されてきた中間育成方法は、陸上に設置された巨大な水槽に前記育成部材を藻類の胞子と共に入れ、その水槽内で藻類の育成を行うというものであった。
【0005】しかしながら、陸上で藻類の中間育成を行う方法には、藻類を陸上で初期及び中間育成する場合には、広大な敷地に大型で深い水槽を設置して藻類を育成し、その水槽の水を清浄に保つために水の循環や取り替え等の作業を必要とするため、多大な費用が必要となるという問題が生じている。
【0006】このような問題に対応して、近頃、実海域で藻類の中間育成を行うことが有効であることが分かりつつある。すなわち、実海域での中間育成方法には、自然な環境で藻類を育成することができるのみならず、藻類に十分な日照量を受けさせて幼芽の成長を促進し、低コストで確実に藻類を生育させることができるというメリットが得られる。
【0007】そこで本発明は、海中において極めて効率的に藻類の中間育成を行うことができるようにした育成部材の取り扱い方法を提供することを主たる目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、藻類の中間育成を行い、海底に沈設されるアンカー部材に着脱可能に取り付けて該アンカー部材と共に藻場増殖礁を形成するための育成部材の取り扱い方法であって、海中において藻類の中間育成を行うに際して、前記育成部材の表面又は裏面若しくは表裏両面に、海面に浮かべた筏や延縄等の浮遊物に一部を取り付けて海中に垂下させた一本又は二本以上のロープ等の吊り下げ部材を添接させた状態で、該吊り下げ部材に取り付けた育成部材を海中に保持するようにしていることを特徴としている。
【0009】このような方法であれば、育成部材に対するロープ等の吊り下げ部材の接触状態を良好にして、吊り下げ部材あるいは育成部材が潮流を受けて揺れ動いても育成部材を海中にしっかりと保持しておくことができる上に、吊り下げ部材には数多くの育成部材を同時に保持させることができ、また育成部材の吊り下げ深度を海水温に対応して変更することも容易であるため、極めて効率のよい藻類の中間育成を行うことができるようになる。吊り下げ部材としてロープを使用する場合は、その本数は何本でも構わない。
【0010】また、極めて簡便な方法により育成部材をよりしっかりと海中に保持した状態に吊り下げておくことができるようにするためには、前記吊り下げ部材を、少なくとも2本のロープ要素を互いに交差させて撚り合わせたロープから構成し、該ロープの一部においてロープ要素同士の撚り合せを解くとともにそれら解かれたロープ要素同士の間に前記育成部材を挟み込むようにすることが望ましい。
【0011】特に、前記育成部材が、厚み方向に貫通する貫通孔を具備するものである場合には、その貫通孔に挿通した結束具によって育成部材を保持する吊り下げ部材を拘束するようにすれば、育成部材の脱落防止を更に確実なものとすることができる。このように育成部材に貫通孔が形成されている場合、貫通孔にロープを通して該育成部材を吊り下げる方法も考えられるが、そうすると貫通孔でロープが擦れて切れてしまう恐れが生じる。このような方法に対して本発明のように、育成部材の表面や裏面にロープ等を添接させることで、ロープが切断して育成部材を流失するという不具合を有効に回避することができるようになる。
【0012】また、多数の育成部材の吊り下げを可能とするためには、前記育成部材を、平面的な裏面を有するものとして、一対の育成部材の裏面同士を向き合わせた状態にしてそれら育成部材の表面にそれぞれ前記吊り下げ部材を添接させることによって、少なくとも二つの育成部材を同時に吊り下げ得るようにすることが有効である。また、一対の育成部材を裏合わせにすることなく、一つの育成部材を海中に吊り下げている場合には、その裏面にフジツボ等の付着物が付着しやすいので、育成部材に藻類が活着した後その育成部材を海底のアンカー部材に取り付けようとすると裏面に付着したフジツボ等を剥がし落とさないと育成部材のアンカー部材に対する良好な取り付け状態が得られないが、このように育成部材同士を裏合わせにして海中に吊り下げることで、裏合わせにした育成部材同士を引き離すとフジツボ等が付いていない平面的なままの裏面が表出することになり、育成部材をアンカー部材等に取り付ける際に、フジツボ等を裏面から除去する手間を省くことができ、海底での藻場増殖礁の形成を容易且つ迅速に行うことができるようになる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0014】この実施形態における育成部材1は、海底Pに沈設されるアンカー部材2と共に着脱式藻場増殖礁Bを構成するものである。図2に示す着脱式藻場増殖礁Bは、海藻類の一種であるアラメCを生育、増殖させて、主にそれを餌として食べるために集まるアワビを漁獲するために使用されるものである。この藻場増殖礁は、主としてアラメCを育成するための機能を有する上述した育成部材1と、この育成部材1を海底Pに保持する重しとしてのアンカー機能を有するアンカー部材2とから構成されている。海藻類としては、アラメの他にも、カジメやクロメ等の多年生の褐藻類を適用することもできる。
【0015】図1及び図2に示す育成部材1は、一辺が20cm程度の平面視略正方形状をなし5cm程度の厚みを有する板状のコンクリート製の一体成型品であり、その重量は約2.5Kgである。しかして、表面11の略中央部に厚み方向に貫通する貫通孔15を形成するとともに、その表面11に凹凸部14を形成している。この凹凸部14は、砂利や石の形状を模したもので、前記表面11側を向く下向きの面(いわゆる逆勾配)を有している。さらに、この育成部材1をロープ8を添接させて取り付けた状態で海中Rに吊すことができるようにするために、表面11の対向する辺同士に亘って前記貫通孔15の開口部分を通過するように略十文字状をなす添接路16を形成している。そして、この添接路16が前記凹凸部14を避けて形成されるようにするために、凹凸部14を表面11の中央部よりも4隅寄りに形成している。また、この育成部材1の裏面12は平坦に形成してある。このように、育成部材1に凹凸部14とその凹凸部14を避けて形成した添接路16とを形成し、さらに添接路16上に貫通孔15を位置付けて、添接路16にロープ8を沿わせるようにしているのは、この育成部材1に着生し成育したアラメCが根を凹凸部14に張って安定的に活着できるようにするとともに、この凹凸部14を海底Pにおいて食害動物の障害物として利用して食害防止を図ることが主目的の一つである。さらに、ロープ8を生育したアラメCが活着した凹凸部14を避けて添接路14に添接させるようにすることで、ロープ8を育成部材1に安定的に取り付けることができるだけでなく、ロープ8が潮流で揺れてアラメCを傷つけたりロープ8を取り外す際に凹凸部14に活着したアラメCの損傷を有効に防止することもできる。また、育成部材の略中央部に貫通孔15を形成しており、添接路16をその中央部を通過するように略十文字をなすように形成しているため、ロープ8を育成部材1の上下左右を問わずに取り扱うことができ、育成部材1に確実に添接させて多数の育成部材1を上下方向に並べて安定的に吊り下げることができる。
【0016】一方、アンカー部材2は、一辺が2.2m程度の略正方形の平面視形状を有し、高さ約1mのコンクリート製ブロックからなる重量約9tのアンカーとしての機能を具備するものである。また、このアンカー部材2は、海産物の廃棄物を有効利用するために、そのコンクリート組成中にカキ殻等の海産物の廃棄物(貝殻等のそのままの形状のものや、その破砕物・粉砕物等、形状は問わない)を含有するものである。本実施形態では、アンカー部材2に主としてアンカーの役割を担わせたものであるが、海底Pで継続的に藻場Aを形成するために、経年変化にある程度耐え得るだけの強度を付与するべく、コンクリート組成中の前記カキ殻を基本組成であるセメント材料に対して所定割合で混在させている。なお、このようなものを含有しない一般のコンクリートブロックを用いることもできる。そして、その表面に、育成部材1の貫通孔15に挿通し得る金属製の突起21を複数突出させている。また、同じく表面の略中央部には、このアンカー部材2を沈設又は引き上げる際に利用されるフック22を取り付けている。
【0017】次に、前記育成部材1を使用したアラメCの中間育成方法及びも場造成方法について図3及び図4に示す模式図に従って説明する。
【0018】まず、アラメCを育成すべき育成ゾーンXをアラメCが自生している海域又はその近傍に設定し、図3(a)に示すようにその位置に海面Rに浮かべた筏7から吊り下げ部材たるロープ8を介して育成部材1を水深約5m以内の海中Qに吊り下げる。その際、一対の育成部材1を相互に平坦な裏面12同士を合わせた状態で厚み方向が水深方向と略直交するように縦向きの姿勢にし、ロープ8をそれぞれ前記添接路16に添接させている。更に詳細に説明すると、図5及び図6に拡大して示すように、このロープ8は多数の細い糸を束ねて撚り合わせることによって形成した太い2本のロープ要素81、82を更に互いに撚り合わせて直径1〜2cmの太さにした、いわゆる漁業用ロープである。このロープ8を用いて育成部材1を吊り下げるには、ロープ要素81、82同士の撚り合せを部分的に解いておき、一対の育成部材1を相互に裏面12同士を合わせた状態で長手方向を水深方向と略直交させた姿勢にして、先に解いておいたロープ要素81、82同士の間に挟み込み、それらロープ要素81、82をそれぞれ育成部材1の添接路16に添接させる。すると、解かれたロープ要素81、82同士は元の捻られた状態に戻ろうとするため、その力によってロープ要素81、82間に育成部材1を強く挟み込むことになる。その上で更に育成部材1の脱落防止を図るために、育成部材1の貫通孔15に、上述したものと同様の結束具たる結束バンド17を挿通し、この結束バンド17によって両ロープ要素81、82を拘束する。この結束バンド17は、一端に孔部17aを有し、他端17bをその孔部17aに挿入、係合することにより他の部材を拘束できるようにした樹脂製の市販のものである。このようにして一本のロープ8に高さを違えて複数の育成部材1を取り付けて、ロープ8の下端部においてはロープ要素81、82同士を固く結んで瘤83を作っている。このようにして、一本のロープ8に複数の育成部材1を取り付けたものを多数用意しておき、例えば合計2000個程度の育成部材1を筏7から吊り下げるようにすると、同時に多数の育成部材1を用いてアラメCの中間育成を極めて効率的に行うことができる。なお、育成部材1をロープ8に保持させるには、育成部材1を略水平な姿勢にして貫通孔15にロープ8を通すとともに、ロープ8の一部を結んで作った瘤によって育成部材1を下方から受けるようにすることも考えられるが、このようにすると海中Qにおける育成部材1の安定性が悪い上に、貫通孔15の縁部でロープ8が擦れて切れてしまう恐れが生じる。さらに、貫通孔15に太いロープ8を摩擦による切断を防止して通すには、貫通孔15の直径をロープ8の太さ以上に大きくする必要が生じるが、育成部材1を海底Pに移設してアンカー部材2に固定する場合、前記貫通孔15に挿通するための突起21もそれだけ太いものを用意しなければならない。すなわち、コスト的な面においてもこのような吊り下げ方は不利であるので、貫通孔15の大きさは前記結束バンド17を通すことができ、突起21を挿通できる大きさとすれば十分である。このような観点からも、本実施形態における育成部材の吊り下げ方は好ましい方法である。
【0019】そして、育成部材1を海中Qに吊してから一定期間経過した後この育成部材1を引き上げ、アラメCの活着及び成育を確認してから、育成部材1を造成ゾーンYへと移設する。その際の、アラメCの成育度合は、成育したアラメCが潮流から受ける抵抗力に抗し切れずに育成部材1から抜けてしまわない程度の大きさ、例えば10〜60cm程度を目安にする。また、十分に成育していないアラメCは柔らかいうえに、ウニ等の食害動物が嫌う独特の渋味成分であるフロロタンニン等を分泌できないため、海底Pに移設すれば簡単に食害を受けてしまうが、上述の大きさまで成育すれば自己防衛機能を発揮することができるため、そのような恐れを回避することができる。さらに、アラメCは、海底Pよりも強い日照量を受けることができ、生育が早く、中間育成としての育成日数を短縮できるメリットがある。なお、アラメCの活着が認められない場合には、図示しないが予めアラメCの胞子を付着させて海中Qで数cm程度の大きさの幼芽となるまで初期育成を終えた種糸(いわゆるクレモナ糸)を育成部材1に巻き付けておき、育成ゾーンXにおいてアラメCを成育させてから造成ゾーンYへの移設を行ってもよいし、当初から幼芽にまで成育したアラメCを活着させたクレモナ糸を育成部材1に巻き付けておいた状態でアラメCの育成を行ってもよい。
【0020】しかして、図3(b)に示すように造成ゾーンYにおいては、アラメCを活着させた育成部材1を、貫通孔15にアンカー部材2の突起21を挿入することにより取り付けて藻場増殖礁Bを構成する。藻場を広く造成する場合には、多数の藻場増殖礁Bを配置すればよい。このようにして、図4(a)に示すアラメCの海中林が完成する。そして、藻場を造成した後、同図(b)に示すように、磯焼け等の原因で一部又は全部のアラメCが死滅した場合、あるいは育成部材1に集まったアワビを漁獲する場合には、同図(c)に示すように、その育成部材1のみをアンカー部材2から取り外し、図3に示すように育成ゾーンXにおいてアラメCが成育した新たな育成部材1を移設してきて交換する。また、取り外した育成部材1にはメンテナンスを施して、再度育成ゾーンXにてアラメCを育成するために利用する。このようにすることで、藻場全体のメンテナンスを行うことができることとなる。
【0021】以上のようにして育成部材1を取り扱うようにすれば、育成部材1の表面11に海面Rに浮かべた筏7に取り付けたロープ8を良好に接触させて海中Qに吊り下げるようにしているため、ロープ8や育成部材1が潮流で揺れ動いても育成部材1をしっかりと保持しておくことができるだけでなく、多数の育成部材1をロープ8に同時に保持させて効率よく中間育成を行うことができ、またロープ8をさらに下ろしたり引き揚げたりすることで海水温に対応して育成部材1の吊り下げ深度を変更することも容易である。さらに、本実施形態では、上記のような育成部材1を海中Qに吊り下げ実海域でアラメCを中間育成するようにしているため、陸上で初期及び中間育成する場合に必要な土地や水槽等の設備或いはその水槽の水の循環作業や設備等が一切不要となるので、安価なアラメCの育成が可能である。また、筏7から吊り下げる深さを水温や日光量に応じて変更したり、潮流によって常に清浄な海水を与えることで、アラメCを自然な環境で順調に育成することが可能である。
【0022】また、育成部材1には厚み方向に貫通孔15を設けており、この貫通孔15に通した結束バンド17によってロープ8を拘束した状態で育成部材1を海中Qに吊り下げるようにしている。このため、吊り下げられた育成部材1の安定性を容易且つ確実に向上することができる。なお、本実施形態では、ロープ8に対する取付用の貫通孔15を、アンカー部材2に対する取付用に共用するようにしているので、アンカー部材2への取付部材が別途必要とならず、育成部材1の構造を簡素化し、製造コストを低減することができる。
【0023】さらに、育成部材1の裏面12を平らに形成しているので、一対の育成部材1を裏面12同士を向き合わせて吊り下げることによって、さらに多くの育成部材1を吊り下げることができるだけでなく、アラメCの中間育成中に、育成部材1の裏面12にフジツボやムラサキガイ等の不要な付着物が付着することを防止できるため、育成部材1を海底Pに移設する際にフジツボ等を除去する手間を省くことができるとともに、アンカー部材2への取付具合を良好に維持することができる。
【0024】なお、本発明の育成部材の取り扱い方法は上記実施形態に限られるものではなく、以下のようなものであってもよい。
【0025】すなわち、図1に示した育成部材1と同様の構成のものを、確実に筏7から吊り下げるようにするには、例えば図7に示すような一対のロープ180を利用して、次に説明するような方法を採用すればよい。同図に示す育成部材1の吊り下げ方法では、前記実施形態と同様に裏面12同士を合わせた一対の育成部材1に対して、各表面11の添接路16にそれぞれロープ180を沿わせ、これら育成部材1の上端部側及び下端部側においてロープ180同士を前記と同様の結束バンド17によって拘束するようにしている。このようにすれば、ロープ180や結束バンドの数は前記実施形態の倍だけ必要になるが、ロープ8を構成しているロープ要素81、82同士の捻りを部分的に解く手間を省くことができる。また、この場合、育成部材1の貫通孔15は主としてアンカー部材2への取り付けのために利用されることになる。尤も、この貫通孔15にも結束バンド17を挿入してロープ180同士を拘束することもできる。
【0026】また、上述のような育成部材1の吊り下げ方法の他にも、例えば図8に示すような方法を採用することもできる。同図に示す育成部材110は、前記実施形態と同様に表面111に凹凸部114を有しており、吊り下げた状態で上端部110a及び下端部110bとなる部位よりも中央部寄りに一対の貫通孔115を設け、それら貫通孔115と上端部110a及び下端部110bとの間に添接路116をそれぞれ形成したものである。このようなものであれば、吊り下げた際に上側となる育成部材110の下端部110bの貫通孔115と下側となる育成部材110の上端部110aの貫通孔115とを、例えば金属製チェーン280等からなる吊り下げ部材によって繋ぐことで、多数の育成部材110を上下に吊り下げることができる。また、その際、チェーン280は前記添接路116に添接して取り付けられるので、凹凸部114と干渉することはない。前記チェーン280の代わりにロープ等の紐状の部材を用いて育成部材110を吊り下げるようにしてもよいのは勿論である。
【0027】さらにまた、育成部材の吊り下げ方法は上述した各方法に限られず、垂下させた一本のロープを育成部材の複数箇所に形成した貫通孔に通した結束バンドで固定するなどして、育成部材がロープに対して回転しないように吊り下げることもできる。その際、ロープは育成部材の表面又は裏面に添接させ、若しくはロープが二本以上の場合は表面と裏面の両方に添接させるようにすると、育成部材の吊り下げ時における安定性を向上することができる。
【0028】その他、前記実施形態において、育成部材1をロープ8を用いて海中に吊り下げる際に、ロープ要素81、82同士の撚りを解いた箇所には二つの育成部材1を同時に挟み込むのではなく、一つだけの育成部材1を挟み込むようにしても構わない。このようにすると育成部材1の裏面12にフジツボや貝等の付着物が付いてしまい、アラメCが生育した後で育成部材1をアンカー部材2に取り付けるためには、付着したフジツボ等を取り除く作業が必要となるので、このような手間を防止するためには、裏面12にプレートや枠状物、ラップフィルム(食品ラップフィルム)等の着脱容易なものを取付けておいて、育成部材の裏面にフジツボ等が付着しにくいようにすればよい。
【0029】また、育成部材の貫通孔をネジ孔とするとともにアンカー部材の突起を金属製或いは樹脂製のボルトとして、それらの螺合関係によって育成部材をアンカー部材に取り付けられるようにすることができるなど、各部の具体的構成や具体的な方法は、上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【0030】
【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0031】すなわち、本発明の育成部材の取り扱い方法は、育成部材の表面に添接させた吊り下げ部材を海面に浮かべた浮遊物に取り付け、育成部材を海中に吊り下げて藻類の中間育成を行うようにしているので、広大な土地や設備が必要な陸上で藻類の育成を行うよりも有利な条件、すなわち藻類に常に新鮮な海水と十分な日照量を常に与えられる自然な環境下で藻類の中間育成を行うことができ、その際に、育成部材の吊り下げ状態の安定性を向上し多数の育成部材を同時に吊り下げられることができる。したがって、低コストで取り扱いの簡便な藻類の中間育成を極めて効率的に実施することができる。
【0032】特にこのような方法において、少なくとも2本のロープ要素を互いに交差させて撚り合わせたロープを吊り下げ部材として適用し、そのロープの一部におけるロープ要素同士の撚り合せを解いた間に育成部材を挟み込んだ状態で育成部材を吊り下げて藻類の中間育成を行うようにすれば、解かれたロープ要素同士が撚り合わせた元の状態に戻ろうとする力によって育成部材を強く挟み込むため、非常に簡単な方法で育成部材を海中に保持しておくことができる。
【0033】また、前記育成部材に厚み方向に貫通する貫通孔を形成している場合、その貫通孔に挿通した結束具によって育成部材を保持している吊り下げ部材を拘束するようにすれば、またその育成部材の脱落防止を更に確実なものとすることができ、吊り下げ部材は育成部材に添接されているため擦れて取り下げ部材が貫通孔で擦れて切れてしまうこともない。
【0034】さらに、育成部材の裏面を平面的にして、一対の育成部材の裏合わせにしてそれら育成部材の表面にそれぞれ前記吊り下げ部材を添接させるようにすれば、より多数の育成部材の吊り下げが可能となり、中間育成の効率を有効に向上することができる。さらには、裏合わせにした育成部材同士を引き離すと、育成部材の裏面はフジツボ等の付着物が付いておらず、表面には中間育成された藻類が活着しているため、その後このような状態の育成部材を海底に沈設されるアンカー部材等に取り付ける際に、フジツボ等を裏面から除去する手間が省け、海底での藻場増殖礁の形成を容易且つ迅速に行うことが可能である。
【出願人】 【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
【出願日】 平成13年3月29日(2001.3.29)
【代理人】 【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博 (外1名)
【公開番号】 特開2002−281849(P2002−281849A)
【公開日】 平成14年10月2日(2002.10.2)
【出願番号】 特願2001−95294(P2001−95294)