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【発明の名称】 農業用マルチシート
【発明者】 【氏名】八代 洵

【氏名】荒井 真

【氏名】羽藤 信弘

【要約】 【課題】従来のマルチフィルムの代替として使用が可能で、極めて安全性が高く、かつ使用中は十分な耐久性を有し、使用後は速やかに生分解する農業用マルチシートを提供する。

【解決手段】天然高分子を70重量部以上95重量部以下、リグニンを5重量部以上30重量部以下含有する農業用マルチシート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 天然高分子を70重量部以上95重量部以下、リグニンを5重量部以上30重量部以下含有する農業用マルチシート。
【請求項2】 天然高分子がセルロース、セルロース誘導体、澱粉、澱粉誘導体、キチン、キチン誘導体から選択された少なくとも1種である請求項1記載の農業用マルチシート。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、農業用マルチシートに関するものであり、植物育成期間中は強度が維持され、使用後は土中で消滅可能な農業用マルチシートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】農業用マルチシートは農作物あるいは花卉の周りの地面を被覆する資材であり、地温の調節、雑草発生の制御などの効果により農作物あるいは花卉の品質、収穫量の向上を目的として使用されている。従来、この農業用マルチシートはポリエチレンあるいはポリ塩化ビニルなどの合成樹脂系のフィルムが使用されてきた。しかしながら、これらは土壌中において微生物による分解性が殆どないため、使用後は回収・埋め立て及び焼却処理が必要である。この回収・埋め立て及び焼却処理にあたっては特殊な装置や多大な労力と時間が必要である上、環境汚染の点からも問題となっている。
【0003】そこで、農家の負担を軽減し農作業を省力化する目的で、使用後は土壌にすき込むと自然に分解する生分解性プラスチックを原料とするマルチシートが普及しつつある。ここでいう生分解性プラスチックとは、「使用中は通常のプラスチックと同じように使えて、使用後は自然界において微生物あるいは水分などが関与して低分子化合物となり、最終的には水と二酸化炭素に分解するプラスチック」のことであり、近年、環境問題に対する関心の高まりから生分解性プラスチックに対する関心は非常に高い。生分解性プラスチックを原料とするマルチシートに対しても、従来のプラスチックと同様に十分な耐久性等が要求される。しかし、ポリ乳酸やポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートなどの生分解性樹脂を原料として製造されたマルチシートは、従来のポリエチレンやポリプロピレン製のものと比較して高価であるのみならず、生分解速度の調節などが困難である、あるいは生分解が速やかに進行しないなどの欠点がある。
【0004】また、従来のマルチシートの代わりに故紙や再生紙などを利用する検討もなされてはいるが、これらは水の影響を受けやすく、夜露や雨にさらされると強度の低下や形状の崩壊等が促進され、実用に耐え得るだけの耐久性を有していないのが現状である。特開平8-205692号公報には紙基材にフミン酸またはフミン酸塩を含浸することにより生分解を抑制する方法、特開昭58-70800号公報にはオキシキノリンやその誘導体を添加することにより生分解を抑制する方法が開示されているが、土壌への悪影響が懸念される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上のような状況に望み、本発明の課題は従来のマルチフィルムの代替として使用が可能で、極めて安全性が高く、かつ使用中は十分な耐久性を有し、使用後は速やかに生分解が可能である農業用マルチシートを提供することにある。
【0006】
【発明を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、天然高分子を70重量部以上95重量部以下、リグニンを5重量部以上30重量部以下の範囲で含有するシートが上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明で使用する天然高分子は土中で生分解が可能であるものであれば、特に限定されないが、セルロース、セルロース誘導体、澱粉、澱粉誘導体、キチン、キチン誘導体を使用することが好ましい。セルロースとしては、サルファイト法やクラフト法で製造された木材パルプ繊維、バクテリアセルロースなど微生物によって合成されたバイオセルロース、コットン、綿花などが挙げられる。セルロースの誘導体としてはアセチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられる。また、澱粉としてはコーンスターチ、小麦、米、馬鈴薯、さつまいも澱粉が挙げられる。澱粉誘導体としては、酸化澱粉、燐酸エステル化澱粉、エーテル化澱粉、冷水可溶性澱粉や酵素変性澱粉などの各種変性澱粉が挙げられる。キチン誘導体としてはキトサン等が挙げられる。また、アラビアゴム、トラガンゴム等の植物ガム質、やまいも、こんにゃく、トロロアオイ等の植物粘質物、アルギン酸、フノリ、寒天等の海草類、大豆グルー、グルテン等の植物性タンパク質、ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の動物性タンパク質なども使用することができる。
【0008】本発明で使用されるリグニンについては特に限定されるものではなく、現在、工業的に主として利用されているリグニンスルホン酸、クラフトリグニン、及びそれらの変成物の他に、ミルウッドリグニン(MWL)、爆砕リグニン、木質から有機溶媒によって抽出したリグニン等も使用可能である。実用的な耐水性を有させるためには、リグニン中の有機硫黄含有率は4重量%以下、好ましくは3重量%である。有機硫黄含有率は4重量%を越えると親水性が高くなり、使用中のシートから溶出してしまう。
【0009】本発明の農業用マルチシートは、天然高分子を70重量部以上95重量部以下、好ましくは70重量部以上85重量部以下、リグニンを5重量部以上30重量部以下、好ましくは15重量部以上30重量部以下含有することを必須とする。また、生分解を抑制したい場合は、有機硫黄含有率が4重量%以下の親水性の低いリグニンを配合することにより生分解速度を遅くすることが可能である。
【0010】本発明の農業用マルチシートを製造する方法としては、天然高分子としてパルプ繊維等の繊維形態のセルロースを使用する場合は、リグニンを添加したパルプスラリーを長網抄紙機、ツインワイヤー式抄紙機、円網式抄紙機等で抄造して、シートを製造すればよい。また、一般的に製紙用として使用されている分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤等の各種助剤や、一般に使用されている可塑剤、発泡剤、染料、顔料、肥料及び農薬等を添加することも可能である。
【0011】あるいは、リグニンを添加していないシートを作成後、リグニンの溶液若しくは分散液をシートの両面あるいは片面に塗布あるいは含浸してもよい。塗工装置としては一般の塗工紙製造に用いられているブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、スプレーコーター等の塗工装置が挙げられ、オンマシン方式あるいはオフマシン方式によってシート上に単層あるいは多層塗工される。
【0012】天然高分子として繊維形態ではないものを使用する場合は、天然高分子とリグニンを混練後、成形体に加工すればよい。一般的な混練装置や成形装置で製造する。混練装置としては、ロールミル、インテンシブルミキサー、短軸押出機、二軸押出機等が使用できる。また、成形装置としてはT型ダイ、インフレーションダイが使用できる。
【0013】かくして製造されたシートは冷却されてそのまま製品化されるか、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射などの表面酸化や、サンドブラスト処理や溶剤処理による表面の凹凸化、溶剤や接着剤あるいは熱による接合、エキストルージョン方式やホットメルト方式、ドライ方式、ウエット方式等のラミネート加工、グラビアロールやマイヤーバー、ドクターブレード、リバースロールコーター、エアーナイフコーター等によるコーティング加工、真空蒸着処理、帯電防止処理等の二次加工を必要に応じて施される。
【0014】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その範囲に限定されるものではない。なお、例中の部及び%は特に断らない限り、それぞれ重量部及び重量%を示している。実施例及び比較例で製造したシートについて、以下に示す方法にて耐久性及び生分解性の評価を行った。
【0015】<生分解性の評価>土中における生分解性の評価は、土壌としてNP総合開発(株)土浦緑化センター内の苗畑土壌を用い、25℃の温室内で行った。5cm×15cmの短冊状に裁断し試料を土中に地上部が2cmとなるように埋設し、1ヶ月後に回収して分解状態を地際と土中に分けて評価した。地際の分解は、地際部分の分解によって切断されていないで、残存している長さを計測し、試料の全幅に対する%として表示した。土中の分解は目視で評価した。
【0016】[実施例1]澱粉系生分解プラスチック(商品名:CPR−F3E、日本コーンスターチ(株)製)90重量部、有機硫黄含有率が2.4重量%のリグニンスルホン酸(商品名:バニレックスHW、日本製紙(株)製)10重量部から成る混合物をインテンシブルミキサーにて温度130℃で混練後、T型ダイにより押出し、厚さ30μmのマルチシートを得た。得られたマルチシートについて生分解性の評価を行い、結果を表1に示した。
【0017】[実施例2]クラフトパルプスラリーにクラフトリグニンを添加し、Tappi標準シートマシンにて、坪量70g/m2、リグニン含有率10重量%の手抄き紙を作成した。この手抄き紙の生分解性の評価を行い、結果を表1に示した。
【0018】[実施例3]キトサン(商品名:ノースキンMA−1、北海道ソーダ(株)製)45重量部、セルロース粉末(商品名:KC−400、日本製紙(株)製)45重量部、有機硫黄含有率が2.4重量%のリグニンスルホン酸(商品名:バニレックスHW、日本製紙(株)製)10重量部から成る混合物をインテンシブルミキサーにて温度130℃で混練後、T型ダイにより押出し、厚さ50μmのマルチシートを得た。得られたマルチシートについて生分解性の評価を行い、結果を表1に示した。
【0019】[比較例1]リグニンスルホン酸を配合しなかった以外は、実施例1と同様にしてマルチシートを作成し、生分解性の評価を行い、結果を表1に示した。
【0020】[比較例2]クラフトリグニンを配合しなかった以外は、実施例2と同様にして手抄き紙マルチシートを作成し、生分解性の評価を行い、結果を表1に示した。
【0021】[比較例3]リグニンスルホン酸を配合しなかった以外は、実施例3と同様にしてマルチシートを作成し、生分解性の評価を行い、結果を表1に示した。。
【0022】
【表1】

実施例1〜3のリグニンを配合した農業用マルチシートは耐久性に優れていた。これに対して、比較例1〜3のリグニンを配合していない農業用マルチシートは耐久性に劣っていた。
【出願人】 【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
【出願日】 平成13年3月28日(2001.3.28)
【代理人】 【識別番号】100074572
【弁理士】
【氏名又は名称】河澄 和夫
【公開番号】 特開2002−281839(P2002−281839A)
【公開日】 平成14年10月2日(2002.10.2)
【出願番号】 特願2001−91935(P2001−91935)