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【発明の名称】 植物栽培用培地とその製造方法
【発明者】 【氏名】鈴木 公威

【氏名】川瀬 範毅

【氏名】永井 正幸

【氏名】熊谷 育也

【要約】 【課題】長期間にわたって培地内に植物の育成に適した根圏環境を維持することができる植物栽培用培地を提供する。

【解決手段】植物栽培用培地として、フェノール樹脂(バインダー)および界面活性剤からなる添加物をロックウール繊維に吹き付け、そのあと造粒機にかけて直径5.0〜25.0mmの球体となし、これを加熱処理し、ロックウール繊維の表面に付着したフェノール樹脂を熱硬化させてロックウール粒状綿とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 バインダーが添加された無機繊維から形成された球体からなることを特徴とする植物栽培用培地。
【請求項2】 請求項1に記載される植物栽培用培地において、前記球体の直径は、5.0mm以上25.0mm未満であることを特徴とする植物栽培用培地。
【請求項3】 請求項1または請求項2に記載される植物栽培用培地において、前記球体の密度は、60kg/m以上250kg/m未満であることを特徴とする植物栽培用培地。
【請求項4】 無機繊維にバインダーを添加し、次いで該無機繊維を成形して球体とすることを特徴とする植物栽培用培地の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ロックウール等の無機繊維を用いた植物栽培用培地とその製造方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、孔隙率の高いロックウール培地は、ロックウールの繊維と繊維との間の毛管にその容積の90%程度の水分を保持することができる。しかしながら、毛管がすべて培養液で満たされてしまうと、培地内の空気が不足して、根は酸素を吸収することが困難になる場合がある。このような状態が長期間続くと、根は呼吸することができなくなり、根腐れをおこして養分を吸収することができなくなる。その結果、地上部の生育も阻害されてしまう場合がある。
【0003】例えば特公平5−6969号公報には、ロックウールを粒状化した後、その表面に高分子系結合添加剤を添加して表面を硬化したロックウール粒状綿が開示されている。こうした粒状綿によれば、粒状綿との間には、毛細管現象が作用する毛管よりも大きい間隙が確保される。その結果、この隙間に入り込んだ培養液は保持されることはなく、空気が常にこの隙間に入り込むことができる。したがって、培地内には常に一定の空間すなわち気相が保たれ、植物の生育に適した根圏環境が保たれることが期待される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の表面に高分子系結合添加剤を添加したロックウール粒状綿では、粒状綿の内部にまで高分子系結合添加剤が入り込むことができず、内部のロックウール繊維は硬化されてない。したがって、長期間にわたって使用し続けて表面の繊維が酸性の培養液の作用により劣化してしまうと、粒状綿の形状が崩れて粒状綿と粒状綿との間に確保された間隙が狭められてしまう。その結果、培地内に常に保たれていた気相は減少してしまう。本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたもので、長期間にわたって培地内に植物の生育に適した根圏環境を維持することができる植物栽培用培地およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の植物栽培用培地は、バインダーが添加された無機繊維から形成された球体からなることを要旨としている。上記構成の植物栽培用培地によれば、球体と球体との間に毛細管現象が作用する毛管よりも大きい間隙が確保される。また、球体を加熱処理することによって、無機繊維を硬化させて球体全体を硬化させることができる。この場合、球体が植物栽培に使用される過程において、酸性の培養液の作用によって球体の表面が劣化しても、容易に球体の形状が崩されることは回避される。その結果、長期間にわたって、球体と球体との間隙は確保され続ける。
【0006】前記球体の直径は、5.0mm以上25.0mm未満であることが好ましい。一般に、5.0mm以上の球体であれば、球体と球体との間隙には、毛細管現象が作用する可能性が低くなる。また、球径が25.0mm以上になると、球体と球体との間隙が大きくなりすぎて、培養液の拡散に悪影響を与えることが懸念される。給液方法によっては培地全体に培養液が行きわたらなくなる場合が生じてしまう。また、この前記球体の密度は、60kg/m以上250kg/m未満であることが好ましい。一般に、密度が60kg/m以下になると培地の最大含水率が40%以下になってしまい、植物の生育に適さなくなってしまう。また、密度が250kg/m以上になってしまうと、培地が硬くなりすぎて植物の根が培地に入り込むことができなくなる。その結果、生育不良を招く恐れが生じてしまう。
【0007】本発明による植物栽培用培地の製造方法は、無機繊維にバインダーを添加し、次いで該無機繊維から球体を成形して球体とすることを要旨としている。前記製造方法によれば、球体の内部はバインダーが添加された繊維で構成される。この場合、球状に形成した後に加熱することによって、球体全体を均一に硬化させることができる。したがって、造粒後にバインダーを添加して表面だけ硬化させた粒体と比べて、球体は長期間にわたって形状を維持することができる。しかも、バインダーの濃度を調整することによって、球体の硬度を容易に変更することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の好ましい実施の形態としては、図1に示すように、栽培箱1内にロックウールの球体からなる植物栽培用培地2を設け、その培地表面に、ロックウール4aをプラスチックフィルム4bで被覆した育苗用ロックウール成形培地を載置して構成する。3は培養液を供給するための点滴チューブである。
【0009】前記植物栽培用培地2は、バインダーや界面活性剤といった添加物が添加されたロックウール繊維から球状に形成された球体で構成される。球体には加熱処理が施されて、球体全体が硬化される。球体は直径5.0mm以上25.0mm未満、密度130〜230kg/mの範囲内で球状に形成されることが好ましい。本発明において、球体とは、球形、楕円形、長楕円形などの形状も包含する。また、植物栽培用培地には、前述した球体のほかに、化学肥料や農薬といった無機物や土壌などの有機物が混合されていてもよい。
【0010】
【実施例】本発明の実施例について説明する。まず、銑鉄鉱滓、玄武岩、ドロマイトをキューポラで熔解し、これを繊維化してロックウールとする工程で、フェノール樹脂および界面活性剤を吹き付ける。次いで、これを造粒機にかけ直径5.0〜25.0mmの球状に形成する。最後に、球状に形成された球体を200℃のオーブンで15分間加熱処理して、ロックウール繊維の表面に付着したフェノール樹脂をキュアー(熱硬化)して植物栽培用ロックウール粒状綿を得る。なお、バインダーとするフェノール樹脂の濃度、割合およびキュアー温度や時間は、所望するロックウールの球体の硬度に応じて調整されてもよい。また、フェノール樹脂や界面活性剤のほかに親水性付与剤、pH調整剤、肥料などを添加してもよい。
【0011】前述したロックウール球体の水分特性を検証するために、下記する実施例および比較例において、最大水分率を測定した。上記で得られたロックウール球体をJISZ8801のふるいで粒度ごとに3段階に分け、下記実施例1〜3とした。
【0012】実施例1粒度:5.6mm以上12.7mm未満密度:220kg/m実施例2粒度:12.7mm以上18.0mm未満密度:173kg/m実施例3粒度:18.0mm以上25.0mm未満密度:164kg/m【0013】一方、実施例1〜3に対する比較例1は、従来植物栽培に使用されているロックウールマット(密度:80kg/m)であり、製繊時に空中に浮遊しているロックウールに接着剤溶液と界面活性剤をスプレーしてこれを積層し、圧縮養生したものである。
【0014】比較例2は、従来植物栽培に使用されているロックウール細粒綿(粒度:1.0〜11.2mm、密度:220kg/m)である。これは実施例と異なり、バインダーを添加しないロックウール繊維から粒体を造粒したものである。
【0015】比較例3は、ロックウールを粒状化した後、その表面に高分子系結合添加剤を添加して表面を硬化したロックウール粒状綿(粒度:5.6〜11.2mm、密度:120kg/m)である。これは、特公平5−6969号公報に開示される実施例2にしたがって製造したが、水がしみこまないため、ロックウール粒状綿1kgに対して界面活性剤(10%)200gを造粒機の上にて追加したあとに170℃で2時間かけて乾燥硬化し、硬化後に篩にて12.7〜18.0mmにふるい分けしたものである。
【0016】次に、最大含水率の測定方法を説明する。まず、100mm×100mm×100mmのステンレス製の網で形成された容器(1L)に試料を詰め、水を張った水槽に24時間沈没放置する。24時間経過後、試料が詰まった容器を水槽から取り出し、金網の上に静置して30分間かけて重力水を取り除く。重力水を取り除いた後の試料の質量を測定して、次式〔1〕により最大含水量を求める。なお、比較例1は100mm×100mm×100mmに切断したものを試料に供した。
B=(W1−W0)VW/VT×100 ……〔1〕
ここで、B:最大含水率(%)、W0:試料片の水中浸漬前重量(g)、W1:試料片の重量水を切った後の重量(g)、VT:試料片の体積(cm)、VW:水1g当たりの体積(cm/g)である。
【0017】その結果を下記表1に示す。表1に示されるように実施例1〜3は最大含水率(%V/V)が63.5〜65.3%となり比較例1、2に比べて低くなった。一般的に植物の生育には含水率65%前後が適当であるとされる。このことから、培地に過剰な培養液が供給された場合、比較例1、2では、培地に占める空気の割合すなわち気相が少なくなるのに対し、実施例1〜3では一定の気相を確保することができることが示唆された。また、比較例3は、粒体の表面のみが硬化したため、粒体内に培養液が入っていかず低い含水率を示したものと考えられる。
【0018】
【表1】

【0019】球体と球体との間隙が大きくなることで培地内の培養液の拡散が悪くなることが懸念される。そこで、前述した試料を用いて培地内における培養液の拡散状態を調査した。
【0020】次にその調査方法を説明する。まず、100mm×200mm×100mmのステンレス製の網で形成された容器(2L)に試料を詰め、低濃度(0.3dS/m)の培養液を張った水槽に24時間沈没放置する。24時間経過後、試料が詰まった容器を水槽から取り出し、金網の上に静置して30分間かけて重力水を取り除く。重力水が取り除かれた試料の表面に一定の流量(200ml/min)で高濃度(1.0dS/m)の培養液を供給する。この場合、培養液は点滴チューブなどを用いて供給されればよい。このとき同時に培養液の供給部位から水平方向に10cm離れた部位の培地から培養液を抜き取り、その濃度を測定する。試料に供給された培養液が拡散するにつれて供給部位の周辺の培養液濃度が上昇する。すなわち、測定された濃度が高いほど培地の拡散性が良いことを示している。図2のグラフに示されるように、実施例1〜3は、比較例1、2に比べて同等またはそれ以上の拡散性を示した。これは実施例1〜3の球体の密度が比較例1、2に比べて高く、かつ培養液を含んだ状態でも球体の形状が変形することがないためと思われる。
【0021】次に、前述した試料を用いて培地内の培養液を置換する能力と培地の耐久性とを測定した。次にその測定方法を説明する。まず、100mm×100mm×100mmのステンレス製の網で形成された容器(1L)に試料を詰め、低濃度(0.3dS/m)の培養液を張った水槽に24時間沈没放置する。24時間経過後、試料が詰まった容器を水槽から取り出し、金網の上に静置して30分間かけて重力水を取り除く。重力水が取り除かれた試料の表面に一定の流量(200ml/min)で高濃度(1.0dS/m)の培養液を供給する。この場合、培養液は点滴チューブなどを用いて供給されればよい。このとき同時に培養液の供給部位から水平方向に10cm離れた部位の培地から培養液を抜き取り、その濃度を測定する。試料に供給された培養液が培地内の培養液に置換されるにつれて、培地内の培養液濃度が上昇する。すなわち、測定された濃度が高いほど培地の置換性が良いことを示している。図3のグラフに示されるように、実施例1〜3は培地内の濃度は供給した培養液濃度と同じになったが、比較例1では培地内濃度は供給した培養液濃度まで至らなかった。このことから、比較例1に比べて実施例1〜3が培地内の培養液を置換する能力が高いと考えられる。これは、上記の拡散性と同様で実施例1〜3の球体の密度が比較例1に比べて高く、かつ培養液を含んだ状態でも球体の形状が変形することがないためと思われる。
【0022】次に培地の耐久性の測定方法を説明する。実施例2、比較例3をそれぞれ20個取り出して以下の試験に供した。まず、それぞれ10個の硬度をゴム硬度計((株)テクロック製 GS−701N)で測定した。次に残りのそれぞれ10個を300ccの共栓フラスコに入れた後、塩酸にてpH4.0に調整した酸性の水溶液をそれぞれ200cc添加した。これを振とう培養機の上に置き、50Hz/分にて連続振とうした。10日後にフラスコから取り出し、水洗いした後、105℃にて12時間乾燥した後、前記のゴム硬度計で硬度を測定した。
【0023】測定結果を下記表2に示す。表中の変化値は、酸処理によって球体の硬度(mN)がどの程度低下したかを示すものである。ここで処理前の硬度と変化値に基づいて劣化率(%)を算出した。ここで、実施例2の劣化率(%)は比較例3に比べて著しく低いことが確認された。このことから、長期間培養液にさらされても球体の形状は維持することができることが示唆された。
【0024】また、処理前において、実施例2が比較例3と比べて高い硬度を示したのは、球体の表面から内部にかけて均一に硬化されたことによると考えられる。その一方、比較例3は、表面のみ硬化して内部の繊維は柔らかいままの状態である。このため、粒体全体に外圧が加えられても、内部の繊維がつぶされて変形すると同時に硬化された表面が形状を維持しようと撓むことができるため、外圧を容易に吸収することができると考えられる。その結果、比較例3の硬度は、実施例2と比べて著しく低い値を示したと考えられる。
【0025】
【表2】

【0026】
【発明の効果】以上詳述したように本発明による植物栽培用培地によれば、下記の効果が得られる。
〔1〕培養液の拡散性を損なうことなく、培地内に常に一定の気相を保つことができる。
〔2〕酸性の培養液の作用によって粒体の表面が劣化しても、粒体全体が均一に硬化されているため、容易に球体の形状が崩されることは回避される。
〔3〕長期間にわたって、球体と球体との間隙は確保され続ける。したがって、長期間にわたって培地内に植物の生育に適した根圏環境を維持することができる。
【出願人】 【識別番号】590002389
【氏名又は名称】静岡県
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
【出願日】 平成13年3月28日(2001.3.28)
【代理人】 【識別番号】100072383
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 武三郎
【公開番号】 特開2002−281825(P2002−281825A)
【公開日】 平成14年10月2日(2002.10.2)
【出願番号】 特願2001−91944(P2001−91944)