| 【発明の名称】 |
給水床を備えた育苗ポット、及びこの製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】辻本 建男
【氏名】湊 莞爾
【氏名】茂田 勝美
【氏名】松下 慎哉
【氏名】中田 博之
【氏名】赤尾 俊和
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| 【要約】 |
【課題】苗への給水のための保水ゲルを備える育苗用ポット、及びこの製造方法において、安価に製造することができ、保管及び輸送のためのスペース及び重量を節減できるものを提供する。
【解決手段】水ガラス希釈液等のアルカリケイ酸塩水溶液に中和用の酸を加えて保水ゲル形成液3を調製しておく。各セル(小鉢部)1に培養土2が充填されて苗が植えられたセルトレイ(セルがマトリクス状に連なったもの)をバット35に載置して、各セル1の底部15を浸漬する。これにより、各セル1の底部開口11から、底部15付近にある培養土2中に保水ゲル形成液3が浸透する。しばらく放置して固化させることにより、底部15の培養土2の空隙を充填する形の給水床を作製する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】苗に水を供給するための保水ゲルを備える育苗ポットにおいて、アルカリケイ酸塩及び中和用の酸を水とともに混合してなる混合液が、育苗ポットの内の培養材に吸収されてゲル状に固化することで、給水床としての保水ゲルを形成していることを特徴とする育苗ポット。 【請求項2】苗に水を供給するための保水ゲルを備える育苗ポットの製造方法において、アルカリケイ酸塩、及びこれを中和する酸を水とともに混合した後、この混合液を育苗ポット内においてゲル状に固化させることにより、保水ゲルからなる給水床を作製することを特徴とする育苗ポットの製造方法。 【請求項3】前記育苗ポットに、予め、土、砂、繊維またはその他の充填物からなる培養材を積載・充填しておいた後、この培養材に前記混合液を吸収させることを特徴とする請求項2記載の育苗ポットの製造方法。 【請求項4】前記育苗ポットの少なくとも一部を前記混合液に浸漬することによって前記培養材に吸収させることを特徴とする請求項3記載の育苗ポットの製造方法。 【請求項5】前記アルカリケイ酸塩として、常温で液状である水ガラスの希釈液、または常温で固体の粉末または顆粒を用いることを特徴とする請求項2記載の育苗ポットの製造方法。 【請求項6】ゲル状に固化する前に界面活性剤を添加することを特徴とする請求項2記載の育苗ポットの製造方法。 【請求項7】ゲル状に固化する前に水溶性高分子を添加することを特徴とする請求項2記載の育苗ポットの製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、苗を健苗状態のまま保管または輸送できるように苗に給水を行うための保水ゲルを備える育苗ポット、及びその製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、花や野菜苗などの育苗は個々の農家による生産が主体であった。近年、農業の近代化、さらに農家の老齢化等も加わって、セルトレイを中心としたポット育苗体系が確立され、苗生産が農業協同組合や農家の集合体および苗生産業者に移行してきた。そして、苗の安定供給が可能となった現在において、苗生産とその後の栽培との分業化が急速に進んでいる。 【0003】その反面、苗生産の分業化は、天候不良などの環境条件によって圃場の作業が計画通り進行しないと定植が遅延することから、苗に貯蔵性が求められるという問題点を抱えている。 【0004】また、ガーデニングを支える苗販売でも、計画通りに販売が進まないと、スーパーや小売販売の店頭で苗は何日かを過ごすことになる。この場合、管理者は1日何回かの潅水によって販売する苗の維持を図っているが、苗はそれなりに徒長し軟弱化してしまうのが通例である。 【0005】また、育苗場と利用者である植付け圃場あるいは苗販売店との距離が離れていることが多く、苗輸送中における育苗ポットの培土の乾燥、それに伴う苗の萎れや、輸送中に育苗ポットを収納する容器から育苗ポットが飛び出し転倒することによって苗が損傷するなど、改善すべき問題点が多い。 【0006】そのため、育苗業者は軟弱、徒長を避け、極力乾燥に耐え得る水切り育苗に努めているが、それが店頭での健苗貯蔵につながっていないのが現状である。 【0007】これらの問題を解決するため、育苗ポットを給水容器に搭載し、該給水容器に充填された給水材により育苗ポットに給水する方法が提案されており、このような給水材として有機または無機の保水ゲル等が用いられている。 【0008】例えば、給水材として粘度の高い有機ポリマー水溶液をゲル化して用いる手法(特開平8−134447号公報、特開平10−14423号公報、特開平11−151041号公報)、育苗ポットの底部に密封槽を設けて水分を含む有機ポリマー等を充填する手法(特開平9−248066号公報)、無機系ゲル形成材に温水(40℃)を加え給水容器内で瞬時(30秒内)にゲル化する方法(GB2,310,352A)などがある。保水ゲルを給水材として用いる場合、苗への給水のみならず、育苗ポットの転倒防止手法としても有用である。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、水を含んだ有機ポリマーを用いる場合には、その粘着性のために取扱いにくい。また、瞬時にゲル化する方法では作業可能な時間が非常に短く、かなりの熟練を行っても確実な作業には困難を伴っていた。さらに、これらの給水材を用いる場合、育苗ポットが、農家等の使用者に到着した後、育苗ポットを給水容器から取り出しにくい等の問題が残る。また、特開平9−248066号公報の手法による場合、特殊な給水用密封容器が必要な上、保水剤として用いられる高吸水性ポリマーが高価であり、また廃棄処理の問題も残る。 【0010】そこで、本願発明者らは、本願出願時に未公開である特願平11−260196において、育苗ポットを搭載して給水する給水床を、水ガラスの水希釈液をゲル状に固化してなる給水材より形成することを提案している。 【0011】本願発明者らは、特願平11−260196に提案の方法をベースにさらに検討を行い、保水ゲル形成のための薬剤を給水に必要な最小限程度とすべく改良を行った。また、育苗用ポットとは別個の給水容器を不要とすることにより、給水容器のコストを省き、給水床の保管及び輸送のためのスペースや輸送重量についてさらに節減すべく改良を行った。 【0012】すなわち、本発明は、苗への給水のための保水ゲルを備える育苗用ポット、及びこの製造方法において、安価に製造することができ、保管及び輸送のためのスペース及び重量を節減できるものを提供する。 【0013】 【課題を解決するための手段】請求項2の育苗ポットの製造方法は、苗に水を供給するための保水ゲルを備える育苗ポットの製造方法において、アルカリケイ酸塩、及びこれを中和する酸を水とともに混合した後、この混合液を育苗ポット内においてゲル状に固化させることにより、保水ゲルからなる給水床を作製することを特徴とする。 【0014】上記構成によると、給水床を安価に製造することができ、保管及び輸送のためのスペース及び重量を節減できる。 【0015】請求項4の育苗ポットの製造方法は、前記育苗ポットに、予め、土、砂、繊維またはその他の充填物からなる培養材を積載・充填しておいた後、前記育苗ポットの少なくとも一部、例えば底部を、前記混合液に浸漬することによって前記培養材に吸収させることを特徴とする。 【0016】このような構成であると、育苗ポットに培養材を積載・充填した状態、また、さらに苗を植栽した状態で、容易に給水床を作製することができる。 【0017】 【発明の実施の形態】本発明で用いるアルカリケイ酸塩は、常温で液状である水ガラスであっても、常温にて固体のものであっても良い。水ガラスとしては、JIS K 1408に規定されたケイ酸ソーダ1号、2号、3号などを挙げることができる。 【0018】作業や保管の便宜から、常温にて固体のもの、すなわち、約30℃までの温度で、粉末または顆粒の状態を保つことができるものを用いても良い。 【0019】常温で固体のアルカリケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム(工業用市販品)、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、オルトケイ酸ナトリウム、及びオルトケイ酸カリウム、またはこれらの混合物が代表的なものとして挙げられる。これらは、取り扱いが容易であり、土壌中に廃棄してもなんら問題のないものである。 【0020】本発明で用いる中和用の酸は、特に限定されず、液状のものとして、例えば、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸などが挙げられる。作業や保管の便宜から常温にて固体のもの、すなわち、上記アルカリケイ酸塩の場合と同様、約30℃までの温度で、粉末または顆粒の状態を保つことができるもを用いても良い。常温にて固体である中和用の酸としては、ホウ酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、ピルビン酸、ラウリン酸、ミリスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等を挙げることができる。特に、好ましいものとしては、例えば、各種のホウ酸、及び、クエン酸の一水和物や無水物を挙げることができる。 【0021】育苗ポットとしては、培養材が充填される鉢部を有し、苗が植えられるものであれば特に限定されず、通常市販されているものを用いることができる。 【0022】例えば、ポリエチレン等の合成樹脂製の鉢(角型、丸型)や、これらの鉢が複数個連結されたもの(連結したカットパック)、あるいはまた、多数の凹状のセル(鉢部)が縦横に配列して設けられたセルトレイなどが挙げられる。上記の合成樹脂製の鉢としては、上面開口部の直径が4〜40cm、高さが4〜30cmのものが挙げられる。セルトレイとしては、例えば、約30cm×約60cmで、セルの口径が11〜45mm、深さが25〜35mm、セル数が40〜800個のものが挙げられる。 【0023】育苗ポットとしては、底部に給水用開孔を備え、この給水用開孔が給水材中に埋没するように給水容器に搭載されるものであることが好ましい。市販の育苗ポットは、通常底部(底面及び底面に近い側面)に穴を有しているため、この穴を給水用開孔として利用することができる。 【0024】育苗ポットに充填される培養材は特に限定されず、タキイたねまき培土、タキイセル培土TM−1、タキイ育苗培土(いずれもタキイ種苗(株)製)等の市販の培養土(培土)を用いることができる。 【0025】場合によっては、砂、または水ごけ、ヤシ殻繊維、軟質の連通性多孔体等であっても良く、特に底部付近にある培養材のみがこのようなものからなり他の部分には土がが満たされたものであっても良い。 【0026】また、育苗ポットに植えられる苗も特に限定されず、幼苗から成苗までいずれでもよい。花卉、野菜、樹木苗に至るあらゆる苗に適用することができる。 【0027】育苗用給水床を製造する際に、非イオン性、アニオン性等の界面活性剤を添加するのが好ましい。界面活性剤の添加により、育苗ポットへの水の供給をより容易にし、育苗用ポット内の培養土の保水性を向上することができる。ここで、非イオン性の界面活性剤としては、高級アルコール、アルキルフェノールもしくはポリプロピレングリコールなどにエチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加してなるアルキレンオキサイド系界面活性剤、グリセリン、ソルビタンもしくはショ糖などを高級脂肪酸でエステル化してなるエステル系界面活性剤、このエステルにさらにエチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加してなるアルキレンオキサイド付加エステル系界面活性剤などが挙げられる。また、アニオン性の界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸系界面活性剤、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩もしくは高級アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩などの硫酸エステル塩系界面活性剤が挙げられる。これらは、給水性能の向上及び培養土の保水性の向上において優れた効果を発揮するとともに、環境や生体に対する毒性がないか、あってもきわめて小さいものである。 【0028】界面活性剤の添加量は、例えば、0.01〜10%(重量)である。 【0029】育苗用給水床を製造する際に、水溶性高分子を添加するのが好ましい。適当な水溶性高分子を添加することにより、培養土の保水性を向上させることができ、また、給水床をなす保水ゲルの機械的強度を向上させることができる。 【0030】適当な水溶性高分子としては、アルギン酸ナトリウム塩、各種PVA、カルボキシメチルセルロース塩(CMC)、でんぷん、加工でんぷん等を挙げることができる。水溶性高分子の添加量は、例えば、0.1〜20%(重量)である。 【0031】なお、育苗用給水床を製造する際に、必要に応じ着色剤、肥料、栄養剤、成長促進剤、酸素発生剤を添加することも可能であり、また、ゲル化直前にかき混ぜ、ゲル体に気泡を持たせることもできる。 【0032】<実施例1>育苗用ポットとして、縦横2.5cm角、高さ5cmの角形のセルが10X20個マトリクス状に連なったセルトレイ(タキイ種苗(株)TKポット200)を用いた。各セル1は、底部15中央に排水用開口11を有し、この周縁に足部をなす複数の突起12を有している(図1参照)。 【0033】このセルトレイの各セルに培養土(タキイたねまき培土)2を積載・充填した後、自動播種機にてハクサイ(品種「ほまれ」:タキイ種苗(株))を播種し、発芽して適当な長さにまで成長させた。 【0034】一方、水ガラス3号を重量比30倍に希釈して水ガラス希釈液4000gを得た後、10%硝酸水溶液を240g加えることによりpHを約7に調整した。このとき、非イオン活性剤であるポリオキシエチレン・ソルビタン脂肪酸エステルを4g添加するとともに、アルギン酸ナトリウムの粉末20gを添加した。 【0035】この保水ゲル形成液3を平底トレイ状のバット35に移して、この上に、ハクサイの苗4を育苗した上記のセルトレイを載置することにより、各セル1の底部15付近が保水ゲル形成液3に浸漬されるようにした。保水ゲル形成液3が各セル1の底部開口11から充分に培養土2中へと浸透したならば、セルトレイを引き上げて、数時間放置した。数個のセル1中の内容物を引き出して見たところ、セル1の底部15付近で、培養土2の空隙に充填した保水ゲルが形成されたことが確認された。 【0036】バット35に、適宜に保水ゲル形成液3を補充しつつ複数のセルトレイの底部に給水床を形成した。このようにして、調製した保水ゲル形成液をほぼ使い切ることができた。 【0037】このように得た、ハクサイ苗4を育苗する給水床付きの育苗ポットを、直射日光を遮断したハウス内になんら外からの給水を行わないまま放置した。経日による苗の状況を観察したところ、14日後にも、ハクサイの苗が健全な状態に保たれ、「萎え」や「徒長」も観察されなかった。すなわち、苗がへたることや、もやし状に伸びる現象は全く観察されなかった。 【0038】<実施例2>育苗ポットとして、単一の鉢部をなし、上面開口部が直径10cmの円形である、ポリプロピレン製の丸形ポットを用いた。これに、本葉6枚のペチュニア苗(品種:カーニバルローズ、タキイ種苗(株)製)を鉢上げ後、一番花の開花まで育苗した。 【0039】一方、アルカリケイ酸塩としてJIS K 1408に規定するメタケイ酸ナトリウム1種の白色粉末を用い、重量比60倍に希釈した水溶液4000gに、中和用の酸として、クエン酸を67g添加して攪拌混合した。さらに、実施例1と同様、非イオン活性剤であるポリオキシエチレン・ソルビタン脂肪酸エステルを4g添加するとともに、アルギン酸ナトリウムの粉末20gを添加した。このようにして保水ゲル形成液を調製した。 【0040】この後、へらを用いて、一時的に、育苗ポットの鉢の内壁に沿って空隙を設け、この空隙から、上記保水ゲル形成液を流し込んだ。このようにして、ポットの底部付近の培養土に、保水ゲル形成液が浸透・充填されるようにした。空隙をふさいだ後、数時間放置することにより保水ゲル形成液を固化させた。 【0041】このようにして得られた、ペチュニア苗を植栽する給水床付き育苗ポットを、日陰の屋外に、ポット外からの給水のない状態で放置した。1週間観察したが、開花を続け何ら異常は認められなかった。 【0042】<実施例3>実施例2で用いたと同様の丸形ポットを少し傾けた状態で、実施例1と同様に調製した保水ゲル形成液を約20g注ぎ込んだ。このまま数時間放置して保水ゲル形成液を固化させた後、上記実施例2と同様の培養土を積載・充填した。さらに、上記と同様のペチュニア苗を鉢上げ後、外部から適宜給水しつつ、一番花の開花まで育苗した。 【0043】このようにして得られた、ペチュニア苗を植栽する給水床付き育苗ポットを、上記実施例2と同様、日陰の屋外に、ポット外からの給水のない状態で放置した。1週間観察したが、開花を続け何ら異常は認められなかった。 【0044】上記実施例によると、植物の根部付近に設けた保水ゲルから給水を行うことができることから、最小限の給水効率が高く、最小限の量の保水ゲルより充分な給水を行うことができる。そのため、過剰の薬剤が不要になる。 【0045】また、給水容器が不要になることから、輸送及び保管の際のスペースを最小限とすることができる。また、一連の連続作業により処理できることから、給水床を製造する作業労力を充分に節減することができる。 【0046】さらに、適当な界面活性剤、及び水溶性高分子の適量添加することにより、給水床からの給水性、及び、培養土の保水性及び保型性を向上させている。 【0047】 【発明の効果】苗への給水のための保水ゲルを備える育苗用ポット、及びこの製造方法において、安価に製造することができ、保管及び輸送のためのスペース及び重量を節減できるものを提供する。
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| 【出願人】 |
【識別番号】594003104 【氏名又は名称】株式会社テイエス植物研究所 【識別番号】000003506 【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
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| 【出願日】 |
平成13年3月12日(2001.3.12) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2002−262681(P2002−262681A) |
| 【公開日】 |
平成14年9月17日(2002.9.17) |
| 【出願番号】 |
特願2001−69172(P2001−69172) |
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