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【発明の名称】 棚田への用水分配システム
【発明者】 【氏名】小野寺 恒雄

【氏名】中川 裕英

【氏名】大久保 学

【氏名】小川 真人

【要約】 【課題】より経済的にかつ効率的に稼動させることができると共に、システムを構成している各装置の寿命を可及的に延長させることができる棚田への用水分配システムを提供することである。

【解決手段】棚田への用水分配システム1は、傾斜地の圃場における各段の棚田2〜4ごとにそれぞれ設けられ、内部が上段側の貯留槽9a〜11aと下段側の流下槽9b〜11bとに分離堰12により区分された調整枡9〜11と、上位の調整枡9の流下槽9bの用水が下位の調整枡11の貯留槽11aへ自然流下するように直列にそれぞれ連結した連結管13、14と、各調整枡9〜11にそれぞれ設けられ、いずれかの貯留槽9a〜11aにおける貯留水量が一定量以下となったときに、その貯留槽9a〜11a内に水路6からの用水を供給する給水ポンプ15〜17とからなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】傾斜地の圃場における各段の棚田ごとにそれぞれ設けられ、内部が上段側の貯留槽と下段側の流下槽とに分離堰により区分された調整枡と、上位の調整枡の流下槽と下位の調整枡の貯留槽とを直列にそれぞれ連結した連結管と、各調整枡にそれぞれ設けられ、いずれかの貯留槽に貯留する用水量が一定量以下となったときに、その貯留槽内に水源から用水を供給する給水ポンプとからなり、より上位の調整枡において給水ポンプにより供給された用水を貯留槽から棚田の対応する耕作区に用水を供給すると共に、その流下槽へ分離堰を越流させて、その越流した用水をその流下槽から前記連結管を介してより下位の調整枡の給水槽へ順次供給するようにしたことを特徴とする棚田への用水分配システム。
【請求項2】各調整枡の貯留槽にリミットスイッチがそれぞれ設けられ、いずれかの貯留槽における貯留水量が一定量以下となったときに対応するリミットスイッチがON状態となり、これに対応する給水ポンプが作動して水源から用水を取水してその貯留槽に供給するように制御する電気回路構成を備えてなる請求項1に記載された棚田への用水分配システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、給水ポンプにより水源から取水した用水を各棚田の耕作区に分配する用水分配システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来は、傾斜地の圃場における各棚田の耕作区へ、水源で取水した用水を均等に分配するシステムは、水源から最高位の棚田の位置に設けた貯留枡に用水を圧送ポンプにより圧送して貯留し、この貯留枡に貯留した用水を各棚田の段差に基づく自然流下によって各棚田の耕作区に分配する方法によるものであった。
【0003】即ち、従来の棚田への用水分配システム21は、図3に示すように、川等の水源22に沿った位置に配設した圧送ポンプ23により、水源22で取水した用水を最高位の棚田26の位置に設けた貯留枡25にまで圧送パイプ24を介して圧送して貯留し、貯留枡25の貯留水を用水として最高位の棚田26の耕作区26aからより低位の棚田27及び28の耕作区27a及び28aへと自然流下により順次供給するものである。
【0004】この場合、棚田26の複数の耕作区26aへは、その高低差により順次用水が行き渡るようになっている。複数の耕作区27a及び28aについても同様である。また、棚田26と27との間及び棚田27と28との間は堰29及び30により区分されているが、これらの各棚田間の堰29及び30に通水路29a及び30aを設けて隣接する棚田に用水が自然流下により行き渡るようになっている。そして、最下位の棚田28の耕作区28aの全体に行き渡った用水の余剰分が、最下位に位置する耕作区28aから通水路31を介して最終的に川22に放流されるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記した用水の余剰分は、絶え間なく川22へ放流されるから、圧送ポンプ23による貯留枡25への圧送が常時行なわれる必要がある。このため、圧送ポンプ23を常に可動状態に維持されなければならない。
【0006】このように、圧送ポンプ23を常時可動させることになると、圧送ポンプ23の負担が大きいため、その寿命を短縮させることになるばかりでなく、その可動により消費される電気量が膨大となるため、その経済的な負担が過大となっているのが現状である。
【0007】そこで、本発明は、より経済的にかつ効率的に稼動させることができると共に、システムを構成している各装置の寿命を可及的に延長させることができる棚田への用水分配システムを提供することを目的とした。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するため、本発明の棚田への用水分配システムは、傾斜地の圃場における各段の棚田ごとにそれぞれ設けられ、内部が上段側の貯留槽と下段側の流下槽とに分離堰により区分された調整枡と、上位の調整枡の流下槽と下位の調整枡の貯留槽とを直列にそれぞれ連結した連結管と、各調整枡にそれぞれ設けられ、いずれかの貯留槽に貯留する用水量が一定量以下となったときに、その貯留槽内に水源から用水を供給する給水ポンプとからなり、より上位の調整枡において給水ポンプにより供給された用水を貯留槽から棚田の対応する耕作区に用水を供給すると共に、その流下槽へ分離堰を越流させて、その越流した用水をその流下槽から前記連結管を介してより下位の調整枡の給水槽へ順次供給するようにしたことを特徴とする。
【0009】上記した本発明の棚田への用水分配システムにおいて、水源としては、棚田沿いの川やため池等の貯水池、あるいは川等から用水を誘導する水路を利用することができる。
【0010】上位の調整枡の給水ポンプにより送り込まれてきた用水は、その貯留槽から棚田の対応する耕作区に用水を供給すると共に、その分離堰を越流してその流下槽に及んで、連結管を介して自然流下によってより下位の調整枡の貯留槽に及ぶ。
【0011】各調整枡の貯留槽への用水の供給水量が、分離堰を越流するのに十分な量である場合、その越流した用水はその給水槽からさらに下位の調整枡の貯留槽に及び、以下同様に連結管内を自然流下し、最終的には、最下位の調整枡の貯留槽にまで及ぶ。この結果、自然流下により調整枡に供給された用水は、より下位の調整枡の貯留槽に順次満たされることなる。
【0012】各給水ポンプの作動は、いずれかの調整枡の貯留槽における貯留水量が一定量以下となったときにのみ生じるから、各調整枡における貯留槽の貯留水量が所定の水量となった時点でそれぞれ停止する。従って、各給水ポンプの作動時間は、いずれかの調整枡における貯留槽の貯留水量が一定量以下となった場合に限られる。
【0013】上記した本発明の棚田への用水分配システムにおける圧送ポンプの制御構成については、各調整枡の貯留槽にリミットスイッチがそれぞれ設けられ、いずれかの貯留槽における貯留水量が一定量以下となったときに対応するリミットスイッチがON状態となり、これに対応する給水ポンプが作動して水源から用水を取水してその貯留槽に供給するように制御する電気回路構成を備えてなるように構成することができる。
【0014】上記の電気回路構成を備える棚田への用水分配システムによれば、いずれかの調整枡の貯留槽におけるリミットスイッチがON状態となったときに、対応する給水ポンプが作動して水源から用水を取水するから、各調整枡の貯留槽には常に所定量以上の用水を常に貯留して確保することができると共に、各調整枡の貯留槽に一定量以上の用水の量が確保されている時間内は、各給水ポンプを停止させておくことができる。
【0015】即ち、この場合、各給水ポンプが供給すべき棚田の対応する耕作区の範囲は、棚田ごとの狭小な範囲に限定されているから、各給水ポンプが稼動すべき時間は、より短時間で済むからである。また、最上位の調整枡の越流水が、連結管を介してより下位の調整枡へも供給されるから、下位の調整枡の給水ポンプが稼動する時間は、より短時間で済む。この結果、各給水ポンプの稼動する時間は、より短縮化される。この各給水ポンプの稼動時間の短縮化により、給水ポンプによる単位時間あたりの給水量を低減させることができるから、給水ポンプとしてより小さいものを利用することが可能となる。
【0016】なお、このように棚田の耕作区に補給された用水が、その各耕作区の間の高低差により、その棚田に含まれる全耕作区に補給されるのは、従来どおりである。
【0017】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。実施の形態に係る棚田への用水分配システム1は、図1及び図2に示すように、傾斜地の圃場における高低差のある各段の棚田2、3及び4ごとにそれぞれ設けられた調整枡9〜11と、調整枡9と10との間及び調整枡10と11との間をそれぞれ直列に連結する連結管13及び14と、水源としての水路6から用水を取水して、各調整枡9〜11へそれぞれ供給する供給ポンプ15〜17とからなる。なお、水路6は、川7から連絡したもので、棚田2〜4付近の地形に応じて、これらの棚田の下流から上流に向けて流れるように設けられている。
【0018】調整枡9〜11については、内部が上段側の貯留槽9a、10a、11aと下段側の流下槽9b、10b、11bとに分離堰12によってそれぞれ区分されている。分離堰12は調整枡9の内部において、送り込まれてきた用水が貯留槽9aを満たし、さらに、この分離堰12を越流し、この越流水が流下槽9bに及ぶように形成されている。調整枡10及び11についても分離堰12が同様に形成されている。
【0019】図2に示すように、給水ポンプ15〜17は、その取水管15a、16a及び17aにより水路5から用水をそれぞれ取水し、その用水を給水管15b、16b及び17bから貯留槽9a、10a及び11aにそれぞれ供給できるようになっている。
【0020】貯留槽9a〜11aには、補給管9c〜11cがそれぞれ設けられており、補給管9c〜11cから、給水槽9a〜11aの用水がそれぞれ自然流下によって各棚田2〜4の耕作区2a、3a及び4aへそれぞれ補給される。また、図2に示すように、棚田2〜4におけて隣接する耕作区2a〜4aのそれぞれ間には、連絡溝2b〜4bがそれぞれ設けられており、これらの連絡溝2b〜4bから各耕作区2a〜4aへ用水が自然流動により補給されることになる。さらに、各棚田2〜4の間に連絡溝5がそれぞれ設けられていて、これらの連絡溝5から上位の棚田2から下位の棚田4にまで用水が自然に流れるようになっている。そして、棚田4の末端の耕作区4aに及んだ用水は、排水路20から水路6に排出されるようになっている。
【0021】貯留槽9a〜11aの内部には、リミットスイッチ19がそれぞれ設けられ、いずれかの貯留槽9a〜11aにおける貯留水量が一定量以下となったときに対応するリミットスイッチ19がON状態となり、これに応じて給水ポンプ15〜17が作動して水路6から用水を取水してその貯留槽9a〜11aに供給するように制御する電気回路構成を備えている。
【0022】最上位の調整枡9の貯留槽9aに供給されてきた用水のうち過分量は、調整枡9において貯留槽9aから流下槽9bへと分離堰12を越流すると共に、その越流した用水が流下槽9bから連結管13を介して直下の調整枡10の貯留槽10aに自然流下により送り込まれる。さらに、上記同様に、調整枡10の貯留槽10aで越流した用水が、流下槽10bから連結管14を介して直下の調整枡11の貯留槽11aに自然流下により送り込まれる。
【0023】これにより、各貯留槽9aに供給された用水が、貯留槽10a及び11aにも満たされることになる。また、各貯留槽9a〜11aへ供給された用水は、自然流下により給水管9c〜11cから対応する棚田2〜4の各耕作区2a〜4aにそれぞれ補給される。また、最下位の調整枡11の流下槽11bに至った用水は、排水管18から水路6に排出される。また、給水管9c〜11cを灌漑用パイプにし、各耕作区に地下灌漑用パイプから用水を給水させることも可能である。
【0024】上記したように、棚田への用水分配システム1においては、給水ポンプ15〜17の作動及び停止を繰り返えして、狭小な面積の各棚田2〜4の耕作区2a〜4aに対して用水の補給を効率的に行なうことができるから、従来のシステムにおけるような大型圧送ポンプが常時作動している場合に比べて、より小型の給水ポンプ15〜17の間欠的な稼動によってより少ない消費電力量で棚田への用水分配システムを働かせることができると共に、給水ポンプ15〜17の故障発生率を低減させることにより、このシステムで使用する装置の耐久性を大幅に向上させることができる。
【0025】
【実施例】(実施例)図1及び図2に示す態様の棚田への用水分配システム1を次の仕様により構成した。
棚田2〜4:耕作区2a〜4aの全面積800ヘクタール、用水の水深164mm、水深の減量率20mm/日、棚田2〜4の間の軽斜度1/500°調整枡9〜11:貯留槽の容量10m3 、流下槽の容量10m3給水ポンプ15〜17:消費電力75kW、供給水量0.90m3 /sec(比較例)各調整枡の構成及び容量を調整枡9〜11と同様に配置し、水源としての川から圧送ポンプ(消費電力440kW/時、圧送用水量平均4.19m3 /sec)を常時稼動させることにより用水を取水した。
【0026】この棚田への用水分配システム1を稼動させたところ、各給水ポンプ15〜17の作動時間は、合計して12時間/日であった。
【0027】この結果、従来のシステムにおける大型圧送ポンプを常時作動させた場合の電力消費量が440kW/時と比べて、電力消費量が225kW/時と少なくて済んだ。これにより、棚田への用水分配システムの運転費用を大幅に削減することができた。さらに、圧送ポンプ6や給水ポンプ15〜17の耐久性の向上を考え合わせると、さらなる経済的効果が期待できる。
【0028】
【発明の効果】上述したように本発明は構成されるから、次のような効果が発揮される。本発明の棚田への用水分配システムによれば、狭小な面積の各棚田ごとに調整枡を設け、これらの調整枡ごとに給水ポンプを設けて対応する棚田にだけに用水を補給するようにしたので、給水ポンプは必要に応じて作動し、それ以外の場合には停止状態となるので、各棚田の耕作区への用水の補給を効率的に行なうことができると共に、小型の給水ポンプの使用により、より少ない設備費でかつより少ない消費電力量で棚田への用水分配システムを稼動させることができる。
【0029】しかも、給水ポンプは駆動と停止を繰り返すことから、その故障発生率を低減させることにより、このシステムで使用する装置の耐久性を大幅に向上させることができることによる経済的効果が期待される。
【0030】また、上位の調整枡から連結管を介して下位の調整枡の貯留槽にも用水が供給されるから、各棚田の耕作区へ用水が迅速に補給される。従って、各棚田の水涸れによる作物の被害を的確に防ぐことができる。
【出願人】 【識別番号】596029085
【氏名又は名称】株式会社パディ研究所
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
【識別番号】000006172
【氏名又は名称】三菱樹脂株式会社
【出願日】 平成13年3月8日(2001.3.8)
【代理人】 【識別番号】100075502
【弁理士】
【氏名又は名称】倉内 義朗
【公開番号】 特開2002−262677(P2002−262677A)
【公開日】 平成14年9月17日(2002.9.17)
【出願番号】 特願2001−64481(P2001−64481)