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【発明の名称】 ブルーベリーの接ぎ挿しによる増殖方法
【発明者】 【氏名】渚 悟

【氏名】渚 ゆかり

【要約】 【課題】発根率及び活着率を向上させ、かつ品種更新を促進させ、接ぎ枝の部分が丈夫になるブルーベリーの接ぎ挿しによる増殖方法を提供する。

【解決手段】穂木1として美味で大玉果実のハイブッシュ系ブルーベリーを用い、その下端を略レ字形断面に切り落し、切り口面2には形成層を露呈させる。一方、台木3としては発根率の高いラビットアイ系ブルーベリーを用い、その上端部を斜めに切り落とした後、切り口4上端より真下に切り込んで形成層を露呈せる。そして、台木3の上端側切り込み部に、穂木1の下端部分を差し込む。その際、両者の形成層を互いに平面密着して接合させる。この後、両接合部をメデールテープで巻き、台木1の一節部がピートモスの中に入るように挿し木する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 台木としてラビットアイ系ブルーベリーを用い、該台木に、休眠枝挿し用穂木であるハイブッシュ系ブルーベリーを接ぎ木すると共に、前記台木を用土に挿し木することを特徴とするブルーベリーの接ぎ挿しによる増殖方法。
【請求項2】 台木及び穂木を縦方向に切断して形成層を露呈させ、該台木及び穂木の双方の形成層を合致させて接ぎ木することを特徴とする請求項1記載のブルーベリーの接ぎ挿しによる増殖方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発根率の高いラビットアイ系ブルーベリーと、休眠枝挿し用穂木であるハイブッシュ系ブルーベリーを用い、接ぎ木と挿し木を同時に行うブルーベリーの接ぎ挿しによる増殖方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ブルーベリーは、ツツジ科スノキ属に分類される米国原産の低木性果樹である。日本では主に、ハイブッシュ系ブルーベリーとラビットアイ系ブルーベリーが栽培されている。ハイブッシュ系ブルーベリーは寒冷地向きで耐寒性に富み、寒い地方でも栽培できる。しかし樹勢が弱く、品種によっては初期生育が非常に弱い。特に、大玉の品種ほど発根率が悪いため、通常挿し木で増殖する。一方、ラビットアイ系ブルーベリーは、耐暑性が強く暖地でも栽培でき、樹勢が非常に強く栽培が容易である。ただ耐寒性に劣るため、日本では北陸地方以北では栽培が難しい。参考のため、ハイブッシュ系ブルーベリーとラビットアイ系ブルーベリーの特徴を表1に示す。
【0003】
【表1】

【0004】一般にラビットアイ系ブルーベリーは、収穫期がハイブッシュ系ブルーベリーよりも遅いのに対し、ハイブッシュ系ブルーベリーは、ラビットアイ系ブルーベリーに比べ大玉で食味も非常に良く、消費者に好まれる品種が多い。したがって、栽培経営面からはハイブッシュ系ブルーベリーを栽培する方が有利になる。従来、ブルーベリーの増殖方法としては、挿し木、接ぎ木(高接ぎ、割り接ぎ)、実生などが知られているが、挿し木による栽培と接ぎ木による栽培は、それぞれ互いに独立別個に行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、挿し木による栽培では、ハイブッシュ系ブルーベリーの発根率及び活着率が悪いため、挿し木で増殖することは通常困難である。一方、接ぎ木による栽培では、経済樹齢に到達するのが比較的早いことから、栽培者にとって経営上有利にはなるものの、現在は余り普及していない。その理由は、台木を挿し木で作った後、二年以上経て接ぎ木を行うので、畑に定植するまでに5年以上の年月を要するため、必ずしも経済的なものとは言えないからである。特に割り接ぎは、樹木の枝を剪定して木質部の真中に差し込むため、穂木が樹木に成長し、実が多くなったり枝が張ると、風の力や果実の重みで接ぎ目の箇所で枝が折れやすいという欠点がある。また、実生による方法では、親の遺伝子を引き継がないので、品種の更新が難しくなるという課題がある。本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、その目的は、発根や活着の面で繁殖力を高め、且つ栽培時間を短縮して品種更新を促進させ、枝折れを防止できるブルーベリーの接ぎ挿しによる増殖方法を提供することにある。
【0006】現在、わが国におけるブルーベリーの栽培の歴史は浅いが、消費者の嗜好にあった美味しい果実を生産するため、ブルーベリーの栽培技術が日夜研究されている。ブルーベリーは、地域性の強い果樹であることから、優良品質の果実生産のためには、地域の条件及び特徴にあった栽培方法の確立が急務である。近年は特にブルーベリー果実のもつ健康増進機能が高く評価され、消費量が急激に拡大している現状にある。このような需要増大を背景に、高品質のブルーベリーの開発は、生産者サイド及び消費者サイドから益々強く要請されている。ここで肝要なことは、特に果実の大玉化と、定植までの栽培時間の短縮化及び苗木の定植後における栽培時間の短縮化を両立させることである。
【0007】そこで、本発明者が案出した方法は、接ぎ挿しによる大玉品種のブルーベリーの増殖である。樹勢の強いラビットアイ系ブルーベリーを台木にして、樹勢の弱いハイブッシュ系ブルーベリーを接いで挿し木することにより、3年目には畑に定植することができる。そして、定植後の生育も非常に良く、美味しい果実の大玉化などの品種更新が可能になり、総じて他の接ぎ木の方法よりも経済的に有利になる。
【0008】
【課題を解決するための手段】このため本発明は、台木としてラビットアイ系ブルーベリーを用い、該台木に、休眠枝挿し用穂木であるハイブッシュ系ブルーベリーを接ぎ木すると共に、前記台木を用土に挿し木することを第一の特徴とする。また、台木及び穂木を縦方向に切断して形成層を露呈させ、台木及び穂木の双方の形成層を合致させて接ぎ木することを第二の特徴とする。
【0009】本発明において、用土に挿し木する台木として、発根率の高いラビットアイ系ブルーベリーが用いられ、樹勢の強いホームベル、ティフブルー等の品種がある。一方、休眠枝挿し用の穂木として、自家受粉で結実して熟期が早いハイブッシュ系ブルーベリーが用いられ、美味で大粒の果実をつけるアーリーブルー、スパルタン、ヌイ、バークレイ等の品種がある。つまり、ラビットアイ系ブルーベリーを台木として、これにハイブッシュ系ブルーベリーを穂木として接ぎ挿す。
【0010】接ぎ木を行うため、台木及び穂木を適当長さに切り取るが、両者にはナイフで縦方向に平滑な切断面を形成し、この切断面に形成層を露呈させる。そして、台木の形成層と穂木の形成層どうしを接合して接ぎ木する。ここで、肝心なことは、両者の形成層を互いに突き合わせて接ぎ木することである。これは、双方の形成層を合わせないで接ぎ木すると、1年、2年と栽培期間が過ぎるにつれて、その後の成長が悪くなる恐れがあるからである。形成層を突き合わせて接ぎ木することで、台木と穂木の双方が順調に成長することになる。
【0011】本発明の増殖方法では、発根率が高く且つ環境順応性に優れたブルーベリーが効率よく増殖され、ブルーベリーの栽培適地範囲が拡大する。併せて、ブルーベリーの発根率が高くなるだけでなく、ブルーベリーの活着率も著しく高くなり、ブルーベリーが順調に栽培される。また、穂木等の親の遺伝子を引き継ぐことができるので、ハイブッシュ系ブルーベリーの優秀な品種改良が短期間で可能になり、特に土壌適応性の高い苗木などを作ることができる。
【0012】この接ぎ挿しによる増殖では、ブルーベリーの活着が確実になる上に、丈夫な接ぎ目が得られるため、大きな樹木に生長した時でも、風等により枝が接ぎ目から折れることは殆どない。また、成長の早い品種や美味の品種を選んで接ぎ木することで、ブルーベリーの成長を早めることができると共に、所望の品種更新及び改良を促すことができる。特に、従来発根率の低かった品種において、ブルーベリー品種の更新・改良の効果が顕著になる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。本実施例は、台木として適宜長さに切り取ったラビットアイ系ブルーベリー及び休眠枝挿し用穂木として適宜長さに切り取ったハイブッシュ系ブルーベリーとを縦方向に切断して、これら縦断面に形成層を露呈させ、両者の形成層を互いに完全に合致させて接ぎ挿したものである。
【0014】図1(a)及び(b)は、本発明に係る台木及び穂木の接ぎ挿しを説明する斜視図、図2(a)乃至(c)は、本発明に係る台木の切り出しを説明する斜視図、図3(a)及び(b)は、本発明に係る穂木の切り出しを説明する斜視図、図4は、本発明に係る穂木の切り出し面を示す斜視図、図5は、本発明に係る台木及び穂木の接ぎ挿し状態を示す平面図である。
【0015】
【実施例】一般にブルーベリーの増殖においては、挿し木による方法が最も効果の高いものとされている。本実施例による挿し木方法では、休眠枝挿し用穂木(挿し穂)1として充実した若枝等のハイブッシュ系ブルーベリー(アーリーブルー、スパルタン、ヌイ、バークレイ等の品種)を用い、この穂木1の枝をナイフによって、4cmから5cmの長さに切り取る。そして、図3(a)に示すように、穂木1の下端部右側を右斜め下方向C1に切り落とすと共に、図4及び図3(b)に示すように、切り落とした部分と反対側の左方下端部を、穂木1の中心線(長手方向の軸心線)と平行に真下方向C2に切り落とす。この場合、穂木1の下端よりも2cm乃至3cm程上方の箇所において、適当な深さ寸法tで切り込みを入れて、そのまま縦に下端側に切り落す。これにより、図3(b)に示すように、穂木1の下端部は縦断面「レ」の字形となり、図中左側の切り口面(縦断面)2には穂木1の形成層が表れる。
【0016】一方、台木3についてはラビットアイ系ブルーベリー(ホームベル、ティフブルー等の品種)を用い、図2(a)に示すように、先ず、台木3をナイフで10cmから20cmの長さに切り取る。そして、図2(b)に示すように、台木3の上端右側部を左上斜め方向C3に切り落とす。次いで、図2(c)に示すように、切り落とした斜め切り口面4の左側上端よりも僅かに左側の位置から、台木3の中心線と平行な真下方向C4に切り込みを入れる。この上端面からの切り込み量は、穂木1の切り口面2の長さ(2cmから3cm程度)よりも若干大にする。これにより、真下方向C4に切り裂いた台木3の切り口面(縦断面)5には、穂木1の形成層と対応する長さの形成層が表れる。
【0017】そして、台木3の真下方向C4に沿って切り裂いた部分に、穂木1の下端部を差し込んで接ぎ木する。この場合、図5に示すように、台木3側の形成層と穂木1側の形成層とが互いに左右密着するように合わせる。穂木1と台木3両者1、3の形成層を接合して接ぎ木したら、図1(a)に示すように、台木3の下端部分の右側、左側をそれぞれ、左斜め下方向C5、右斜め下方向C6に切り返す。これにより、図1(b)に示すように、台木3の下端形状は略V字形の断面に成形される。
【0018】この後、穂木1及び台木3の形成層を互いに合わせたままの状態で、これらの接合部全域をメデールテープ(接ぎ木テープ)で取り巻く。この場合、ブルーベリーの一芽が健全に成長するように、一芽のみを残してメデールテープで接合部外周を巻く。そして、接合部外周をテープで巻いたら、台木3をピートモスの挿し床の中に斜めに差し込み。差し込む際、台木3の一節部または二節部がピートモスの中に完全に入るようにし、台木3の差し込み角度は、用土に対して約45度が好ましい。
【0019】これにより、ピートモスへの台木3の差し込みが完了する。差し込んだ後は、水をかけて寒冷紗等で被覆し、太陽光線の当たる風通しの良い場所で増殖栽培する。この場合、水を切らすと枯れるので、水はできるだけ多くかける。この後、約2ケ月ほど経過すると、台木3が活着して丈夫な根を張るようになる。
【0020】上記の接ぎ挿し作業において、ブルーベリーの活着を確実するために、特に留意すべき点として次の3つが挙げられる。すなわち、第一の留意点は、台木3の切り込みを平滑な箇所に形成することである。第二の留意点は、穂木1及び台木3の削り面を平滑にして密着状態で接合させることである。第三の留意点は、穂木1を台木3の切り込み部に挿し込む場合、両者の形成層が完全に合致した状態で挿し込むことである。これらの点に留意して接ぎ挿し作業を行えば、ブルーベリーを確実に活着させることができる。本実施例では、発根率の高いラビットアイ系ブルーベリーの台木3に、ハイブッシュ系ブルーベリーの穂木1を接いで挿し木したことにより、従来に較べてブルーベリーの繁殖効果が著しく向上する。
【0021】実際に、ハイブッシュ系ブルーベリーを休眠枝挿し用穂木として、ラビットアイ系ブルーベリーの台木に接いで挿し木したときの活着状態を調べるために、ラビットアイ系ブルーベリーを台木にした場合と、ハイブッシュ系ブルーベリーを台木にした場合とについて、それぞれ戸外(畑)及びミストハウス(散水装置付き栽培器)内で試験栽培を行った。尚、接ぎ挿しの手順方法や栽培環境などは、各試験栽培において全く同じ条件下(場所は宮崎県中央部、時期は三月中旬)に行い、台木に使用した品種のみを各試験例において、ハイブッシュ系ブルーベリー(アーリーブルー、スパルタン、ヌイ、バークレイ)及びラビットアイ(ティフブルー)系ブルーベリーに異ならせた。
【0022】各試験例の実験結果を表2に示す。各試験例に対する評価の方法は、台木を挿し木してから65日経過後における根付き具合や芽、枝の生長状態等を総合的に判断して、「枯死」、「活着疑問」、「活着確実」の3つに分けて評価した。
【0023】
【表2】

【0024】表1から明らかなように、戸外での栽培において、ラビットアイ系ブルーベリーを台木にしたものでは、「活着確実」の割合が90%と高く、「枯死」及び「活着疑問」の割合が10%以下であった。これに対して、ハイブッシュ系ブルーベリーを台木にしたものでは、バークレイを除いて、「活着確実」の割合が80%、45.5%、40.7%と低かった。
【0025】また、ミストハウス内での栽培において、ラビットアイ系ブルーベリーを台木にしたものでは、「活着確実」の割合が100%と完璧であり、「枯死」及び「活着疑問」となるものが皆無であった。これに対して、ハイブッシュ系ブルーベリーを台木にしたもの、特にスパルタン及びヌイの品種では、「活着確実」の割合が52.9%及び60.0%と、ラビットアイ系ブルーベリーの場合に比べて低くなった。一方、アーリーブルー及びバークレイの品種では、「活着確実」の割合が79.5%以上であったが、「枯死」及び「活着疑問」の割合が15.0%から47.1%程あり、ラビットアイ系ブルーベリーの場合に比べて活着率は低かった。
【0026】これらのことから活着率を高めるには、ラビットアイ系ブルーベリーを台木として用い、これにハイブッシュ系ブルーベリーを接ぎ木することが効果的であることが判明した。さらに、この試験栽培では下記のことが判明した。すなわち、(1)発根率の高い試験例では、ブルーベリーの活着率も良くなった。
(2)また発根率の高い試験例では、花芽を早く着けるものが多くなった。
(3)台木と穂木の形成層を合致させると、形成層を合致させない場合に比べて、ブルーベリーの成長及び伸び率が格段に良くなった。特に、形成層を合致させない場合は、栽培期間が過ぎるにつれて、その後の成長が悪くなった。
【0027】尚、本発明は上記実施例に限定されず、種々の応用変形例が可能である。例えば上記実施例では、台木と穂木の接合部すべてをメデールテープで巻いたが、条件によっては接合部すべてをメデールテープで巻かないことがある。また、挿し木される用土は、ピートモスと鹿沼土を混合したものなど、その他の土壌を使用できることは言うまでもなく、要は、ブルーベリーの栽培に適応した土壌であればよい。特に土壌の酸度は適正値に矯正する必要がある。具体的には、硫黄粉末を適当両散布し、植え穴に適量のピートモスを混入して酸度矯正を行う。尚、ブルーベリーの根は繊維根主体の浅根性であるため、通気性のよい排水良好な乾燥しにくい土壌で栽培するのがよい。
【0028】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、台木であるラビットアイ系ブルーベリーに、休眠枝挿し用の穂木であるハイブッシュ系ブルーベリーを接いで挿し木したことにより、下記のような優れた効果を奏する。
(1)ブルーベリーの発根率及び活着率が高くなり、併せてブルーベリーの栽培適地を拡大させることができると共に、ブルーベリーの増殖栽培を容易かつ確実に行うことができる。
(2)種々の品種をもつハイブッシュ系ブルーベリーの親株を接ぎ木することで、優れた遺伝子を引き継いでブルーベリーを育てることができるので、優秀な品種改良が可能になり、土壌適応性の高い苗木を簡単に作ることができる。
(3)成長を早くさせることができるので、品種更新を早く行うことができる。
(4)ブルーベリーが大きな樹木に生長した場合でも、従来のように風などでブルーベリーの枝が裂けるおそれがなくなる。
【出願人】 【識別番号】501094111
【氏名又は名称】渚 悟
【出願日】 平成13年3月8日(2001.3.8)
【代理人】 【識別番号】100087228
【弁理士】
【氏名又は名称】衞藤 彰
【公開番号】 特開2002−262665(P2002−262665A)
【公開日】 平成14年9月17日(2002.9.17)
【出願番号】 特願2001−65794(P2001−65794)