| 【発明の名称】 |
炭素質のきのこ類栽培床およびその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】坂輪 光弘
【氏名】今西 隆男
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| 【要約】 |
【課題】古紙や木屑、竹屑等の繊維質廃棄物をきのこ類栽培床として再利用する手段を提供する。
【解決手段】紙粘土又はこれと木屑、竹屑、籾殻等の繊維質植物細片を混練した粘土状物を成型し、この成型体を炭化させた炭素質のきのこ類栽培床。この栽培床において、炭化された成形体の気孔率を50〜90%、マクロ気孔の平均径を0.05mm以上にする。また、細断された古紙又はこれと木屑、竹屑、籾殻などの繊維質植物細片との混合物に、水又は水と増粘剤を加えて紙粘土状に混練し、これを冷間又は熱間で成型した成型体を無酸化雰囲気で400℃以上に加熱し炭化させることを特徴とするきのこ類栽培床の製造方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 紙粘土又はこれと木屑、竹屑、籾殻などの繊維質植物細片とを混練した粘土状物を成形し、該成形体を炭化させてなる炭素質のきのこ類栽培床。 【請求項2】 炭化された成形体の気孔率が50〜90%であり、かつそのマクロ気孔の平均径が0.05mm以上である請求項1記載のきのこ類栽培床。 【請求項3】 裁断された古紙又はこれと木屑、竹屑、籾殻などの繊維質植物細片との混合物に、水又は水と増粘剤を加えて紙粘土状に混練し、これを冷間又は熱間で所定の形状に成形し、該成形体を無酸化雰囲気で400℃以上に加熱し炭化させることを特徴とする炭素質のきのこ類栽培床の製造方法。 【請求項4】 乾燥状態における前記繊維質植物細片の古紙に対する重量比を0.05〜0.50にすることを特徴とする請求項3記載の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、古紙や木片・竹片などの炭化物であって、原木やおが屑等に代えてきのこ類の栽培に使用しうる炭素質のきのこ類栽培床とその製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来からきのこ類の栽培は、ナラやクヌギの原木を適当な大きさに切ったものに栽培していた。あるいはおが屑を密に詰めたものを利用していた。これらは、重量があり、近年年配者の多いきのこ栽培者に重労働を強いてきた。また、繰り返し使用ができないので廃棄処理も問題になってきている。したがって上記のような栽培床に代わって、廃棄処理の問題が少なく、資源面での制約がなく、さらに軽量で安価な材料が求められている。 【0003】また、近年きのこ類の人工培地を構成する材料として、植物由来の廃棄物例えばもみ殻、ピーナツ殻、とうもろこしの芯、ビール粕等を利用する方法が多数提案されているが、古紙の加工物(例えば炭化物)を主体として、きのこ類の培地を構成するというような試みは未だなされていない。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】古紙や木屑、竹屑などの繊維質廃棄物は、そのリサイクルが問題となっているが、価格や再生品の品質などで問題がある。本発明者らは、かかる繊維質廃棄物をきのこ類の栽培床の材料として利用することについて種々検討した結果、これを適切な条件で炭化することにより、きのこ類等の担子菌類の栽培床として利用しうることを見出した。 【0005】すなわち本発明は、古紙や木屑、竹屑等の繊維質廃棄物をきのこ類の栽培床として再利用する手段であって、廃棄物の種類・形状を問わず広く利用することができ、担子菌類の生育に好適な炭素質きのこ類の栽培床とその製造方法を提供することを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、紙粘土(とくに古紙を原料とする)又はこれと木屑、竹屑、籾殻等の繊維質植物細片とを混練した粘土状物の成形体を炭化させた炭素質植物栽培床を先に提案した(特願平11ー255381)。その後研究を重ねた結果、この炭素質栽培床は、炭化時に生成する気孔の性状を適切に制御することにより、植物類に属さないきのこ類の栽培床としても好適であることを知見した。 【0007】この知見に基づく本発明のきのこ類栽培床は、紙粘土又はこれと木屑、竹屑、籾殻、わら屑、とうもろこしの芯、ピーナツの殻などの繊維質植物細片の1種以上とを混練した粘土状物を成形し、該成形体を炭化させてなる炭素質のきのこ類栽培床である。 【0008】上記のきのこ類栽培床においては、炭化された成形体の気孔率が50〜90%であり、かつそのマクロ気孔の平均径が0.05mm以上であることが好ましい。 【0009】また、本発明のきのこ類栽培床の製造方法は、裁断された古紙又はこれと木屑、竹屑、籾殻、わら屑、とうもろこしの芯、ピーナツの殻などの繊維質植物細片の1種以上との混合物に、水又は水と増粘剤を加えて紙粘土状に混練し、これを冷間又は熱間で所定の形状に成形し、該成形体を無酸化雰囲気で400℃以上に加熱し炭化させることを特徴とする炭素質のきのこ類栽培床の製造方法である。 【0010】上記のきのこ類栽培床の製造方法においては、乾燥状態における前記繊維質植物細片の古紙に対する重量比を0.05〜0.50にすることが好ましい。 【0011】 【発明の実施の形態】本発明のきのこ類栽培床(以下、本栽培床という)は、紙粘土又はこれと繊維質植物細片とを混練した粘土状物を、所定の形状に成形し該成形体を炭化させてなるものである。図1は、立方体状に成形された本栽培床における気孔の生成状況を例示する断面模式図で、成形体1の炭素質の連続相の中に無数の気孔2が形成されている。 【0012】図2は、本栽培床におけるヒラタケの成育状況の例を示す断面模式図で、図2(a)は発芽後2日目の状況、図2(b)は発芽後7日目の状況を示す。本栽培床に植え付けられたヒラタケの種菌は栽培初期に栽培床の内部に増殖して、図2(a)に示すように、表層近くに厚さ1〜3mm程度の菌糸の層3を形成し、その後発芽して、きのこ(子実体4)の成育が始まる。 【0013】発芽後、菌床表面に細かい粒状の子実体原基が塊となって形成され、これが盛り上がって傘に分化しはじめる。菌糸の層3は気孔内部にも蔓延して、内部の養分を吸収しながら子実体4が成長する。 【0014】このような菌系の増殖と子実体の成育に対しては、気孔率と気孔の大きさが大きなかかわりがあり、これらを適正に制御することが重要である。本栽培床における気孔率は、その嵩比重と、不定形炭素を主体とする連続相の比重(例えば、炭化後の成形体を所定粒度に粉砕し、ピクノメータで測定した比重値)とから算定することができる。なお、連続相中には、極めて微細な気孔や格子欠陥が多量に含まれていると考えられ、実際に100メッシュ以下に粉砕してトルエンピクノメータで測定した連続相粉末体の比重は、0.3〜0.8gf/cm3と低い値であった。 【0015】また、気孔の大きさの指標としては、マクロ気孔(5倍以下の断面拡大写真で、目視で明らかに気孔と判定できるもの)の平均径(気孔は大部分細長い形状を有しており、各気孔の径又は短軸長の最大値の平均)を用いることができる。本発明においては、炭化された成形体の上記の気孔率が50〜90%であり、かつ上に定義したマクロ気孔の平均径が0.05mm以上であることが好ましい。 【0016】気孔率が50%未満であると、通気性や保水性が不十分となって、菌系の増殖及びきのこの成育がともに悪くなるためである。また、これが90%を超えると、排水性が過剰で栄養分を保持しにくくなって、きのこの成育が悪くなるとともに、炭化された成形体の強度が不十分となるためである。なお、より好ましい気孔率の範囲は60〜80%である。 【0017】また、マクロ気孔の平均径が0.05mm未満であると、目詰まりを起こし易く、通気性や排水性が不良となるためである。なお、本栽培床の気孔率及びマクロ気孔の大きさを制御する手段については後述する。 【0018】本発明において、成形体の形状はとくに限定を要せず、使用目的に応じて適宜選択すればよい。例えばきのこの多量生産に用いる場合は、棒状、プレート状、ブロック状などの形状で、栽培室や栽培棚の形状等を考慮して定めれば良い。また、本栽培床は室内観賞やベランダ園芸にも用いることができ、その場合は植木鉢状、吊鉢状、各種プランター状等の形状にすれば良い。本栽培床は、嵩比重が0.05〜0.5gf/cm3程度と小さいため、成形体がやや大きくても、持ち運びにほとんど不便を生じないという利点を有する。 【0019】次に、本発明の炭素質植物栽培床の製造方法について説明する。まず、古紙をシュレッダー、ミキサー等を使って裁断する。これに水又は水と増粘剤(例えばパルプ排液、熱硬化性樹脂液など)を添加し、十分に混練して紙粘土状とする。この際の水の添加量は、紙粘土の変形性を指触等で判断しつつ、適宜調節すればよいが、通常は古紙に対する重量比で2〜50倍程度添加する。 【0020】本栽培床は、古紙のみを原料としてもよいが、その場合は気孔が小さくなり、気孔率も低くなる傾向があるため、上記の混練過程で、これに木屑、竹屑、籾殻、わら屑、とうもろこしの芯、ピーナツの殻等の繊維質植物細片(一般には廃棄物)の一種以上を所定量添加することが好ましい。 【0021】木屑や竹屑は鋸屑をそのまま用いてもよく、鋸屑以外の加工屑や廃棄木竹材を適当な大きさ(1〜10mm程度)に破砕したものを用いてもよい。また、もみ殻はそのまま用いることができるが、わら屑、とうもろこしの芯、ピーナツの殻等は数mm程度の大きさに切断又は破砕したものを用いればよい。例えば、このような繊維質植物細片を古紙に対する重量比で10%程度加えることにより、気孔径は1.5倍程度大きくなり、気孔率も30%程度増加する。 【0022】また、本栽培床の気孔率及びマクロ気孔の平均径を前記の好ましい範囲に制御するという目的からは、これら繊維質植物細片の添加量は、乾燥状態での古紙に対する重量比で5〜50%であることが好ましい。この添加量が5%未満では気孔径や気孔率を大きくするという効果がほとんど得られず、これが50%を超えると、気孔率が過大になるとともに、炭化前及び炭化後の成形体の強度が不十分となって、ハンドリングしにくくなるためである。なお、より好ましい繊維質植物細片の添加量は10〜30%の範囲である。 【0023】次いで、この紙粘土又はこれと植物細片の混練物を冷間又は熱間で、所定の型枠を用いて成形する。通常は、冷間で容易に成形することができるが、大量生産の場合には熱間で成形して、炭化工程に直結させることも可能である。冷間成形の場合は、型枠の材料に特殊なものを用いる必要はなく、例えば通常の素焼きの鉢やプラスチックの容器等を用いてもよい。 【0024】成形圧力によって、炭化後の本栽培床の気孔率や強度が大幅に相違するため、これを気孔率や強度の制御手段とすることができるが、通常は圧縮板を人力で押圧する程度で、適当な気孔率と強度を有するものが得られる。 【0025】さらに、この成形体を必要に応じて、天日又は乾燥器で乾燥した後、炭化炉を用いて炭化する。炭化炉は、無酸化雰囲気(O2濃度が1%程度以下の不活性雰囲気)下で加熱することが必要である。加熱時に昇温速度が大き過ぎると、製品に割れを生じるおそれがあるため、250℃から400℃の間は20℃/分以下の昇温速度であることが望ましい。炭化温度は400℃以上であることが必要で、この温度域で所定時間保持して、ほぼ揮発ガスが発生しなくなる状態とする。 【0026】本栽培床によるきのこ類の栽培方法は、従来の人工培地による方法に準ずればよいが、以下に簡単に説明する。まず、本栽培床に栄養剤として、炭素源、窒素源などを含んだ液体肥料を含水率が60から90%になるように添加する。この培地を高圧殺菌の場合、120℃で1時間殺菌する。室温まで冷却後、培地の表面又は内部に菌糸を接種する。 【0027】菌糸の増殖は、接種したきのこに適した環境下で行なう。例えば、ヒラタケであれば20℃程度で30日間程度増殖させる。また、発芽時もそのきのこに適した環境に調整する。例えば、ヒラタケであれば13℃程度で、90%の湿度で発芽させる。 【0028】以下、本発明により得られる効果について説明する。まず、本栽培床は繰り返し使用することができる。きのこ類を取り除いた後、洗浄して栄養剤を添加し、その後殺菌して再び菌糸を接種すればよい。最終的には、燃料として燃やしても問題はない。また、畑などに鋤きこむことで土壌の改良にも有用である。 【0029】また本栽培床は、食用菌のみならず菌根菌や他の菌類の生育にも用いることができる。これらの菌類を適当な形状の炭で生育させた菌糸を共生する樹木の根元などに埋め込めば、樹木の活性化に役立つ。また菌根菌を培養した炭は樹木などの育苗床として最適であり、家庭園芸用として、或いは劣悪な土壌での植林や緑化資材にも使うことができる。 【0030】さらに、近年は、ダイオキシンなどの有害成分の分解菌が報告されている。本栽培床はこれらの菌類の生育にも使うことができ、その際本栽培床は自由な形に加工ができるので、利用に適した形にすればよい。 【0031】さらに、本栽培床を室内観賞用に用いた場合には、室内の環境浄化に役立つという作用を有する。すなわち、本栽培床は炭としての吸着作用があるから、室内の消臭剤として有効である。また、室内の微細な浮遊物を吸着し、灌水時にこれを洗い流す作用があるから、空気の清浄化とともに室内の黴や菌類、微小な害虫等を低減する効果も期待できる。 【0032】 【実施例】本発明の炭素質栽培床を用いてヒラタケの栽培を行い、従来の人工培地を用いた場合と成育状況を比較した。 【0033】栽培床の製造実施例の栽培床は、新聞紙ともみ殻を炭化させて製造した。シュレッダーで裁断した新聞紙に、水を新聞紙の約30倍量添加して混練し、これに新聞紙に対する乾燥重量の比で20%のもみ殻を加えてさらに混練し粘土状にした。 【0034】この粘土状物を立法形の容器内に充填し、その上から人力で押圧して成形した。成形体の寸法は10×10×10cmであった。この成形体を105℃で24時間乾燥した後、窒素雰囲気の炭化炉で炭化させた。 【0035】炭化時の昇温速度を約10℃/minとし、800℃まで加熱した後、この温度で1時間保定し、その後熱源を断った炉内で放冷した。加熱開始から取出しまでの所要時間は約10時間であった。このようにして製造された本実施例の炭素質栽培床の嵩密度は0.1g/cm3(気孔率約70%に相当)で、断面の拡大写真から計測したマクロ気孔の平均径(約20個の気孔の平均値)は0.08mmであった。 【0036】炭化後、栄養分を含んだ水に浸して、含水率約90%とした。使用した栄養分はグルコース、酵母エキス、麦芽エキスを配合したものである。一方、比較例の人工培地は、上記と同様な形状の容器に、杉のおが屑と米糠を3:1の割合で混合して、含水率約65%に加水したものを用いた。 【0037】きのこの栽培実施例、比較例ともに、略同一の条件で(栽培床の殺菌)−(種菌の接種)−(栽培室内の雰囲気保持)を行った。栽培床の殺菌は、121℃の加熱蒸気に1時間曝露して行った。種菌としてはヒラタケ菌を用い、これを寒天培地で培養したものを、内径10mmのコルクボーラで打ち抜き、両栽培床の中央に植え付けた。 【0038】種菌を植え付けた両栽培床を、同一の栽培室内に保管し、下記の条件で継続して栽培した。 菌糸の培養:温度20℃、湿度70%の暗黒下きのこの成育:温度13℃、湿度90%の約100ルックスの照明下上記の条件で栽培したときの発芽状況及びきのこの成育状況の観察結果をまとめて表1に示す。この結果から、本栽培床を用いた場合のヒラタケの発芽状況及びきのこの成育状況は、従来のおが屑を主体とする人工培地を用いた場合と遜色ないことが明らかになった。 【0039】 【表1】
【0040】なお、上記の実施例はヒラタケの場合についてのみであるが、他の食用きのこ、例えばシイタケ、ブナシメジ、エノキダケ、マイタケ等についても、本栽培床により従来の人工培地に遜色なくきのこ類の栽培が可能なことが確かめられている。 【0041】 【発明の効果】本発明により、古紙や木屑、竹屑等の繊維質廃棄物を有効に活用して、これをきのこ類の栽培床として再使用することが可能になった。本発明の栽培床は、安価で資源上の制約もなく、かつ繰返し使用することができる。また、この栽培床は土壌改良剤や、有害物質の分解資材、樹木の活性化剤としても用いることができ、これを室内観賞用に用いた場合には、室内の環境浄化の効果も大きい。
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| 【出願人】 |
【識別番号】597154966 【氏名又は名称】学校法人高知工科大学 【識別番号】501093583 【氏名又は名称】今西 隆男
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| 【出願日】 |
平成13年3月8日(2001.3.8) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100104754 【弁理士】 【氏名又は名称】石川 英毅
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| 【公開番号】 |
特開2002−262662(P2002−262662A) |
| 【公開日】 |
平成14年9月17日(2002.9.17) |
| 【出願番号】 |
特願2001−64179(P2001−64179) |
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