トップ :: A 生活必需品 :: A01 農業;林業;畜産;狩猟;捕獲;漁業




【発明の名称】 植物育成培地の製造方法
【発明者】 【氏名】佐藤 裕隆

【氏名】角田 真一

【氏名】小堀 英和

【氏名】加藤 和生

【要約】 【課題】新たな植物育成培地の製造方法を提供することを目的とする。

【解決手段】浄水処理過程で発生する汚泥を濃縮槽で濃縮し次いで汚泥をフィルタープレスで脱水する前に、該汚泥にリン酸を添加し、得られる脱水汚泥から植物育成培地を製造することにより、汚泥の脱水効率が向上し、得られる植物育成培地は、リン酸肥料としてのリン酸の混合ムラがなく透水性に優れ、リン酸欠乏による植物栽培の弊害が解消され、種々の点で優れた植物育成培地が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 浄水処理過程で発生する汚泥を脱水して得られる脱水汚泥から植物育成培地を製造する方法において、濃縮槽で濃縮された汚泥をフィルタープレスで脱水する前に、該汚泥にリン酸を添加することを特徴とする植物育成培地の製造方法。
【請求項2】 リン酸の添加量は、汚泥1m3あたり、汚泥濃度(汚泥中の固形物含有量)1%につきリン酸(H3PO4)15g〜150gである請求項1記載の植物育成培地の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、浄水処理過程での浄水汚泥の処理方法を改善して脱水汚泥を得て該脱水汚泥から植物育成培地を製造する方法に関する。更に詳細には、浄水処理過程で発生する汚泥を濃縮槽で濃縮し次いで汚泥をフィルタープレスで脱水する前に、該汚泥にリン酸を添加し、得られる脱水汚泥から植物育成培地を製造する方法に関する。本発明の方法によれば、汚泥の脱水効率が向上し、脱水汚泥を発酵させる際の発酵抑制が改善され、得られる植物育成培地は、リン酸肥料としてのリン酸の混合ムラがなく、透水性に優れ、リン酸欠乏による植物栽培の弊害が解消され、種々の点で優れた植物育成培地が得られる。
【0002】
【従来の技術】浄水場における通常の処理工程は、着水井、凝集沈殿池、濾過池からなる。凝集沈殿池では凝集沈澱剤としてアルミニウム化合物(ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等)が添加され、重力により沈殿した汚泥を、濃縮槽にて重力により濃縮し、無薬注フィルタープレスにて脱水する方法が採られる。この結果、脱水汚泥(浄水ケーキ、脱水ケーキ、浄水スラッジ等とも呼ばれる)と呼ばれる廃棄物が発生する。濾過池では、凝集沈殿池でじゅうぶん除去できなかった物質が取り除かれ、とくに濾過砂の触媒作用により水中からマンガンが酸化除去される。これらは、定期的に行われる逆洗により濾過砂から剥離され、着水井等処理の初期工程へ戻され、結果として汚泥処理工程を経て脱水汚泥として排出される。脱水汚泥はその多くが埋め立て処分されていたが、近年、処分用地の確保が難しくなり、植物育成培地として加工し、農業、園芸、緑化等の分野で有効利用するケースが増加している。脱水汚泥の農業利用については、日本土壌肥料学会編(博友社)“浄水処理ケーキ:特性と農業利用上の問題点”に詳細に記載されている。脱水汚泥を植物育成培地として利用するために、次のような問題点が挙げられる。
(1) 浄水処理の過程で添加される、凝集剤(ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム)によって、発生土中のアルミニウム含有量が著しく高くなり、脱水汚泥が著しいリン酸欠乏土壌となる。土壌中の遊離アルミニウムがリン酸と容易に結合し、リン酸アルミニウムとなり、リン酸を不可給化するためである。
(2) 原水中の浮遊物質に含まれる天然由来のマンガンが、脱水汚泥中のマンガン含量を高める。
(3) 原水由来の有機物が含まれ、分解によって脱水汚泥及び培養土中の成分が変化する。
(4) 有機物が過剰に多い場合や原水中の窒素含有量が高い場合など、脱水汚泥中の窒素含有量が過剰となり、EC(電気伝導度)が高くなる。
(5) 雑草の種子や病原菌が混入する。
(6) 独特の臭気がある。
(7) 浄水ケーキの物理性に変動がある。
(8) 発生量に時期的変動がある。
【0003】リン酸欠乏の問題については、リン酸吸収係数が2000mg/リットルでマンガン含有量が低い脱水汚泥に燐酸肥料を添加する方法(特開平10−88137号公報)などによって解決される。しかし、大量の植物育成培地を製造する場合、浄水ケーキとリン酸肥料は物性と容量比が著しく異なるため、粗密なく混合することは技術的に難しく、均一に混合するには工程上多くの手間と時間を要する。このため、場合によっては混合ムラが発生し、リン酸肥料が不十分であった場合にはリン酸欠乏が発生する危険性があった。また、これを避けるために念入りな混合を行うと、浄水ケーキの粒が崩壊することによって粒径が細かくなり、その結果、透水性を悪化させる問題があった。
【0004】脱水汚泥中の有機物の分解による成分の変化、雑草種子や病原菌の混入等の問題を解決する方法として、堆積発酵処理を行う方法(特開平10−155358号公報)等が開示されているが、浄水発生土中の有機物含有量は10〜20%と一般的な堆肥の原料等に比べて低く、しかも時期的に変動するため、場合によっては十分な発酵温度が得られない場合があった。これを防ぐために有機物としてバーク堆肥等を添加して、発酵を促進する方法が考えられるが、添加する有機物の種類や特性によって発酵の程度が異なり、品質が一定の脱水汚泥を得ることが難しかった。
【0005】以上のように、植物育成培地の原料としての脱水汚泥が有するリン酸欠乏や発酵抑制等の問題点があり、浄水処理により発生する汚泥から安定的に植物育成培地を製造する方法が求められていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、浄水処理過程で発生する汚泥を脱水して得られる脱水汚泥から植物育成培地を製造する方法において、脱水汚泥が有するリン酸欠乏土壌、リン酸の欠乏による脱水汚泥の発酵抑制の問題等が発生することなく、安定的に優れた植物育成培地を製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、浄水処理過程で発生する汚泥を脱水して得られる脱水汚泥から植物育成培地を製造する方法において、濃縮槽で濃縮された汚泥をフィルタープレスで脱水する前に、該汚泥にリン酸を添加することを特徴とする植物育成培地の製造方法である。
【0008】本発明の製造方法によれば、植物育成培地を得るために用いる脱水汚泥中にリン酸が均一に混合されることになり、従来問題とされていた植物育成培地製造工程でリン酸肥料を添加する際の混合ムラによる不具合のリスクが軽減される。更には、脱水汚泥を発酵させる際の発酵抑制が改善される。また、得られる植物育成培地の透水性が改善され、植物栽培の際に発生するリン酸欠乏による植物栽培の弊害も改善され、種々の点において優れた植物育成培地を製造することが可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明では、浄水処理過程での濃縮槽で濃縮された汚泥に、フィルタープレスで脱水する前に、リン酸を添加する。加えるリン酸は水溶性であればいずれの形態でもよく、リン酸塩であってもよい。通常、リン酸、無水リン酸、リン酸一石灰等が例示さる。リン酸の添加量は汚泥の濃度(含水率)と凝集剤の添加量によって決められるが、汚泥1m3あたり、汚泥濃度(汚泥中の固形物含有量)1%につきリン酸(H3PO4)15g〜150gが好ましい。それ以上添加すると汚泥中のアルミニウムに対して過剰のリン酸が添加される可能性があり、水にリン酸が溶解したままフィルタープレス工程を通過し、浄水処理工程へ戻され、好ましくない。それ以下では、リン酸の添加量が少なすぎ、添加した効果がない。
【0010】添加するリン酸は、水に対して1g/リットル以上の溶解度(水温0℃)があればいずれのものでもよいが、特にリン酸(液体)、無水リン酸(固体)が好ましい。本発明では、濃縮漕で濃縮された汚泥にリン酸を、通常リン酸溶液の形態で添加し、十分に撹拌処理を施してから脱水工程へと圧送する。汚泥の流量に合わせてリン酸を注入し、圧送過程中に混合させる方法や、バッチ方式により槽内にて濃縮される一定量の汚泥に所定のリン酸あるいは無水リン酸を添加し、撹拌装置にて撹拌する方法等が例示される。フィルタープレスで脱水される前の汚泥にリン酸を添加することによって、フィルタープレス後の脱水汚泥のリン酸吸収係数を低下させることができ、更に、汚泥中にリン酸が均一に混合されることになり、従来問題とされていた植物育成培地製造工程でリン酸肥料を添加する際の混合ムラによる不具合のリスクが軽減される。
【0011】フィルタープレス工程後に得られる脱水汚泥の含水率は、通常50%以上60%以下に調整され、脱水処理後直ちに解砕機によって解砕される。解砕機は通常脱水汚泥の解砕に用いられるものならいずれのものでもよく、通常、粒度分布が12mm以下となるように解砕する。解砕された脱水汚泥は発酵処理される。
【0012】脱水前の汚泥へリン酸を添加することによって、発酵堆積処理過程で脱水汚泥の発酵が促進される。通常はリン酸欠乏状態なので発酵が十分進まない場合があるが、リン酸を予め添加しておくことによって、リン酸欠乏による発酵抑制が緩和される。かくして得られる脱水汚泥に、バーク堆肥、ピートモス、窒素肥料、カリ肥料等の植物育成培地に通常用いられる資材を添加混合することにより、植物育成培地が得られる。
【0013】以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
実施例1汚泥濃度5%の汚泥1m3にリン酸を0、500g添加しフィルタープレス脱水装置にて圧入圧力0.4MPα、時間15分、圧搾圧力1.4MPα、圧搾時間10分で脱水した。脱水して得られた脱水汚泥の理化学特性について、調査を行った。得られた結果を表1に示した。また、10リットル容量の発泡スチロール容器に、外気とのガス交換を防ぐためにビニール袋に充填した脱水汚泥を入れ、30℃の恒温室にてインキュベートした。そのときの脱水汚泥の温度と電気伝導度(EC)を経時的に測定した。得られた結果を表2に示した。
表1: 脱水汚泥の理化学特性 脱水汚泥の厚さ 含水率 水溶性リン酸 有効態リン酸 リン酸吸収係数 mm % mg/100g mg/100g mg/100gリン酸無添加 8 62 0.0 1.2 3785リン酸添加 11 55 0.0 15.3 1856 表2:インキュベートした脱水汚泥の温度(℃)とEC(dS/m) 試験開始時 2週間後 4週間後 温度 EC 温度 EC 温度 EC リン酸無添加 29 0.13 32.5 0.26 33.9 0.31リン酸添加 28 0.25 38.9 0.48 41.0 0.52表1の結果から分かるように、リン酸を添加した区で、脱水汚泥の厚さが厚くなり、含水率が低下したことから、リン酸添加により脱水効率が向上した。供試脱水汚泥中のリン酸含有量とリン酸吸収係数については、水溶性リン酸はいずれもほとんど検出されなかったが、リン酸添加区で有効態リン酸が高まり、リン酸吸収係数が低下した。表2の結果から分かるように、恒温室でのインキュベート試験ではリン酸添加区で品温が高まり、ECが高くなった。この結果、リン酸添加により発酵が促進されることが証明された。
【0014】実施例2脱水汚泥から最終的に得られる植物育成培地中のリン酸添加量が2500mg/lとなるように汚泥へのリン酸添加量を調節して植物育成培地を作成しトマトの生育試験を行った。植物育成培地のリン酸以外の配合については次の通りである。脱水汚泥60%(v/v)、バークたい肥25%(v/v)、ピートモス15%(v/v)、窒素(CDU)100mg/l。得られた植物育成培地を6つに縮分し、それぞれのリン酸含有量とトマトの成育について調査した。得られた結果は表3に示した。
表3:培地の理化学特性及びトマトの生育度 水溶性リン酸 有効態リン酸 トマトの生育(mgDW/株) mg/100g mg/100g 地上部 地下部リン酸無添加 平均値 14.0 84.2 1.33 0.19 標準偏差 4.77 8.37 0.62 0.11リン酸添加 平均値 23.9 94.7 1.90 0.30 標準偏差 3.24 3.94 0.14 0.04表3の結果から分かるように、リン酸の含有量については、水溶性、有効態リン酸いずれのリン酸もリン酸添加区で高くなり、更に縮分したサンプル間のバラツキが小さかった。トマトの成育では、地上部、地下部ともリン酸添加区で旺盛な成育を示し、株間の成育のバラツキが小さかった。
【0015】実施例3実施例1で用いた脱水汚泥から植物育成培地を作成した。最終的に得られる植物育成培地中のリン酸添加量が2500mg/lとなるようにリン酸肥料を添加して植物育成培地を作成した。リン酸以外の配合については、脱水汚泥60%(v/v)、バークたい肥25%(v/v)、ピートモス15%(v/v)とした。作成方法は所定の配合割合となるように材料を計量し、コンクリートミキサーで撹拌する方法をとった。このとき、実施例1でリン酸を添加しない区については混合時間を30秒、1分、2分の3段階行った。リン酸を添加した区は30秒の混合で作成した。作成した植物育成培地の粒径分布、透水速度(定水位法による水100mlの浸透に要する時間)、有効態リン酸の含有量について調査を行った。有効態リン酸の測定については、得られた植物育成培地を6つに縮分したものをそれぞれ測定した。得られた結果を表4に示した。
表4:培地の理化学特性 リン酸添加なし リン酸添加あり 混合時間 30秒 1分 2分 30秒 交換性リン酸 平均 84.2 84.3 85.5 94.7 標準偏差 8.37 5.77 3.48 3.94 粒径分布(重量%)
0−2mm 35 41 53 33 2−4 25 26 22 27 4−6 15 12 12 18 6−8 13 11 8 9 8−10 12 10 5 13 透水性 15 39 68 14 sec/100ml 表4の結果から分かるように、リン酸を添加しない場合には、有効態リン酸の含有量は混合時間を長くしても高くならなかったが、そのバラツキは混合時間が長いほど小さくなった。また、粒径分布については、混合時間を長くすると粒径0−2mmの割合が高くなり、その結果、透水性が著しく低下した。これに対して、リン酸を添加した場合には、短い混合時間により、混合ムラがなく、有機態リン酸の含有量が高く且つ透水性に優れた植物育成培地が得られた。以上の結果から、脱水処理工程前にリン酸を添加することで、リン酸肥料の混合ムラを発生させずに混合時間を短縮することが可能となり、細粒化による透水性の悪化を抑制することが可能であることが示された。
【0016】
【発明の効果】本発明によれば、浄水処理過程で発生する汚泥を脱水して得られる脱水汚泥から植物育成培地を製造する方法において、汚泥を脱水する前にリン酸を添加することを特徴とする製造方法が提供される。本発明の方法により、リン酸欠乏等の問題が解消され、透水性に優れ、リン酸肥料としてのリン酸の混合ムラのない種々の点で優れた植物育成培地が、浄水処理過程で発生する脱水汚泥から安定的に製造することができる。
【出願人】 【識別番号】000183428
【氏名又は名称】住友林業株式会社
【識別番号】501088590
【氏名又は名称】スミリン農産工業株式会社
【出願日】 平成13年3月5日(2001.3.5)
【代理人】 【識別番号】100066692
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 皓 (外3名)
【公開番号】 特開2002−253047(P2002−253047A)
【公開日】 平成14年9月10日(2002.9.10)
【出願番号】 特願2001−59746(P2001−59746)