| 【発明の名称】 |
養殖海苔の魚食被害防止方法及び装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】浦野 隆文
|
| 【要約】 |
【課題】養殖海苔の育苗時では、海苔網に種付けして発芽した育苗初期の幼芽を好んで食べる魚類により、育苗初期から被害が拡大し、その後も続く魚食で海苔養殖は壊滅的な打撃を受けており、魚食被害の防止策としてボラ、チヌ、アイゴなどの魚類の防御ネットがあるが、海苔網を包囲し魚類の侵入を防止するには、莫大な費用と多くの人手を要し、更には潮流を阻害し品質が低下するので、海苔養殖の採算が取れなくなるという問題がある。そこで本発明は経済的にも有利で、海苔養殖が安定する魚食被害を防止する新技術を提供する。
【解決手段】完全防水の水中スピーカーを海苔網のある位置に適宜沈め、水中スピーカー専用アンプ等の水中音波伝達機器を海上に浮かべたブイ等の上に設置し、魚類が忌避するイルカの発する音声や、サイレン、打撃音等を収音した水中音波伝達機器を用いて、一定の間隔で作動させ、海苔を食害する魚類に前記の水中スピーカーから音波を流して、養殖海苔の魚食被害を防止する方法及びその装置を有効に作動させる電流を供給する電源から構成される養殖海苔の魚食防止装置。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】養殖海苔を好んで食害する魚類に対し、海獣と言われ魚類が忌避するイルカの発する音声や、サイレン、打撃音等を集音し水中音波伝達機器を用いて、海苔を食害する魚類に、水中スピーカーから一定の間隔で音波を伝達することにより、養殖海苔の魚食被害の防止方法。 【請求項2】請求項1に記載の水中音波伝達機器は、完全防水された水中スピーカー及び水中スピーカー専用アンプ等で、海上に浮かべたブイ等の上に適宜設置した格納庫内に、専用アンプ等と、その装置を有効に作動させる電流を供給する電源を内蔵して、持ち運び自在の海苔養殖の魚食被害防止装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明に係る養殖海苔の魚食被害防止方法及び装置は、養殖海苔の魚食被害防止に、水中音波伝達機器を用いて、養殖海苔の魚食被害防止を効果的に図った方法及び装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】海苔は古代から日本民族が嗜好し続けている優秀な食品である。養殖が普及し海苔の食文化も順調に発展して来たが、現状の海苔養殖には魚食被害の問題がある。 【0003】海苔養殖の歴史について説明すれば、最初に起こった海苔養殖の方法は至極簡単であったから何人もすぐ真似が出来たにも拘わらず、江戸以外の地に普及しなかった。その理由は、江戸幕府が海苔養殖を江戸の漁民の独占的産業として擁護し、外に伝授することを禁じていたからである。 【0004】それが明治から大正、昭和の時代になると、海苔養殖は全国的にも普及し、それにつれて生産が増加し、立派な産業として脚光を浴びることになり、そして戦後には人工採苗、浮流し養殖、冷蔵網など画期的な技術が相次いで開発され、海苔養殖は益々発展の途を辿り、今では、北海道から鹿児島県に至る28道府県で行われている。 【0005】養殖面積の推移を見ると昭和37年に水産庁漁業振興課が発表した予想では昭和45年迄に2,226万9,000坪が臨海工業地帯造成のための埋め立てや、干拓などにより失われ、その代わり、沖出しなどによる養殖漁場の拡張とか新規に開発される漁場が見込まれるので、昭和45年の海苔漁場面積は8,342万8,000坪になるだろうということであった。ところが、実際は減るよりも、増える方が多く、昭和44年現在では海苔養殖場総面積は、実に1億2,700万坪(4億1,967万平方メートル)にも達し、生産量も年間100億枚、金額では1,000億円となっており、1品目として昭和45年以降これだけの水揚げをしている水産物は他に類例が無く、海苔が水産の王座をしめていると言われる所以である。 【0006】海苔養殖は、海苔の繁殖を図り、それを採取して乾海苔に作り上げる産業で、即ち養殖から製造まで一貫するところの特異な水産業ではあるが、他の水産業とは趣が余程違い、又養殖の対象が植物である。漁場が浅海であるから農作物の栽培に似た点が多い。海苔養殖が急増したのは、新規に開発された浮流し養殖技術によるところが大きい。従来の海苔養殖は、漁場が遠浅で支柱を立てる事が可能な場所に限定されていた。然し、浮流し養殖は水深が大体10乃至30メートルの沖合に海苔網が張り込めるセットを浮き具とロープをアンカー等で設置し、海面で養殖する。この浮流し養殖法は、海苔網の管理や海苔の摘採作業が容易で、人手が余りかからず養殖が出来るため、規模の拡大を図る事が可能である。現在全国の海苔養殖の面積は、半分以上が浮流し養殖である。 【0007】この浮流し養殖セットの設置は、早いところでは9月から行われ、翌年3月頃まで設置されている。この浮流し養殖漁場はセットの設置からセットの撤去までの約半年余りの間は魚類にとっては漁網等で捕獲され難い安住の場所であるから、多くの魚類の住処になっている。その魚類の内ボラ科のボラ、メナダ(アカメ)は付着性の藻類や泥底の有機物を食べる習性がある。その他にもタイ科のクロダイ(チヌ)、アイゴ科のアイゴ等など殆どの魚類が海苔を食べる。これらの魚類は大きな群れで養殖海苔を食べる。特にこの魚類は小さい柔らかい新芽を好んで食べるので二次芽の放出をしない岩海苔の養殖海苔の被害は甚大である。この養殖海苔の魚食被害も海水温の降下により減少していたが、近年の異常気象で高水温化が続き低水温時の12月、1月になっても魚食被害が見られ、全国的に莫大な被害となっている。 【0008】養殖海苔の育苗時では、海苔網に種付けして発芽した育苗初期の幼芽を好んで食べる魚類により、育苗初期から被害が拡大し、その後も続く魚食で海苔養殖は壊滅的な打撃を受けており、その防御策には色々な方法が用いられたが、余り効果的な方法が無かった。一番効果的な方法は防御ネットを海中に張る方法である。各地で防御ネットの設置で魚食被害を防止出来たという報告はあったが、防御ネットの購入費、ネット投入時の人件費、更には撤去時では多くの汚れや藻が付着し撤去作業は大変である。又ネットの投入による作業の不便性や、海苔網を包囲し魚類の侵入を防止するには、莫大な費用と多くの人手を要し、更には潮流を阻害し品質が低下するので、海苔養殖に良くない結果が見られた。このような理由により、ボラ、チヌ、アイゴ等の魚類の防御ネットの設置は、海苔養殖の採算が取れなくなるという問題がある。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、経済的にも有利で、海苔養殖が安定する魚食被害を防止する新技術を提供しようとするものである。近年水中音波伝達機器が開発され、水中スピーカーを用いて海洋に放流した養殖魚に音楽を流し放流した魚類等を集め、餌付けに成功した事例や、シンクロナイズスイミングの演技に水中スピーカーが使用されている。然し養殖海苔の魚食被害防止に未だ水中音波伝達機器を用いた例は全くない。 【0010】そこで本発明は、魚類が恐れる鯨目イルカ科の海獣と言われるイルカの音声や魚類が嫌がる音を海苔漁場に設置した水中音波伝達機器を用いた方法で海苔漁場に群れる魚類に対して音波を流し、養殖海苔の魚食被害を防止しようとするものである。 【0011】 【課題を解決するための手段】本発明に係る養殖海苔の魚食被害防止方法及び装置は、完全防水の水中スピーカーを海苔網のある位置に適宜沈め(水深約1.5メートル)、水中スピーカー専用アンプ等の水中音波伝達機器を海上に浮かべたブイ等の上に設置し、魚類が忌避するイルカの発する音声や、サイレン、打撃音等を収音した水中音波伝達機器を用いて、一定の間隔で作動させ、海苔を食害する魚類に前記の水中スピーカーから音波を流して、養殖海苔の魚食被害を防止する方法及びその装置を有効に作動させる電流を供給する電源から構成される養殖海苔の魚食被害防止装置である。 【0012】請求項1に記載の発明は、養殖海苔を好んで食害する魚類に対し、海獣と言われ魚類が忌避するイルカの発する音声や、サイレン、打撃音等を水中マイクを用いて集音して、水中音波伝達機器を作動させて海苔を食害する魚類に、水中スピーカーから一定の間隔で音波を伝達することにより、養殖海苔の魚食被害を防止する事が出来る方法である。 【0013】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の方法を実践するための装置に関して提案されるものであり、海上に浮かべたブイ等の上に防水加工して設置した格納庫内に、完全防水された水中スピーカー及び水中スピーカー専用アンプ等で構成された水中音波伝達機器と、その装置を有効に作動させる電流を供給する電源を内蔵してある。更に持ち運び自在の海苔養殖の魚食被害防止装置である。 【0014】 【発明の実施の形態】本発明の優れた技術的思想は、魚類が忌避するイルカの発する音声や、サイレン、打撃音等を収音した水中音波伝達機器を用いて、一定の間隔で作動させ、海苔を食害する魚類に水中スピーカーから音波を流して、養殖海苔の魚食被害を防止する方法であるから、養殖海苔の漁場においてこの方法を実践するための装置は、実施例において次に記載のように具体化されている。 【0015】養殖海苔の育苗時では、海苔網に種付けして発芽した育苗初期の幼芽を好んで食べるボラ、チヌ、アイゴなどの魚類は、育苗初期から群れて食べるので被害が拡大している。この発明の提案する魚食被害の拡大防止策は、漁場に設置した海苔網を海中に沈めた水中スピーカーから魚類が忌避する音波を流し、その音波により魚類の侵入を防止しようとするものである。このため、水深1.5メートルぐらいの位置に水中スピーカーを適宜設置して、イルカの音声や打撃音等を海中に広く音波を流す事が出来ることが必要である。広い範囲に群れている魚類がイルカの音声等を忌避する効果があり、防御ネットに比べて侵入防止の効果が広くなる。魚食被害防止装置は、漁場に設置することも容易であり、漁場からの撤去も簡単な被害防止のための新技術である。 【0016】この新技術を具体的にした魚食被害防止装置は、完全防水の水中スピーカーを海苔網のある位置に適宜沈め、水中スピーカー専用アンプ等の水中音波伝達機器を海上に浮かべたブイ等の上に設置した完全防水の格納庫内に設置し、そのアンプ等の水中音波伝達機器を有効に作動する電流を供給する電源から構成される。 【0017】 【実施例】添付図面は、本発明に係る養殖海苔の魚食被害防止装置を海苔漁場の海苔網のある位置に設置した実施例について被害防止技術の概念を図示しているものである。図1は、魚食被害防止装置を設置した漁場の状態図、図2は、ブイ上に設けた格納庫内に設置した水中音声伝達機器の構成図をそれぞれ示すものである。図面に基づいて実施例について詳細に説明する。 【0018】海苔漁場の海苔網1のある位置にブイ2を浮かべ、ブイの上面に設けた支柱上に防水の完全な格納庫3を設けて、その中にアンプ等の水中音波伝達機器5を格納し及び電源6を設置し、完全防水の水中スピーカー4を水深1.5メートルぐらいの位置に沈めて設置したものである。 【0019】試験例についてイルカの脳は、人間より大きく猿よりも人に近い構造をしており、情緒を司るとされる大脳皮質が高度に発達しているイルカは知的存在だと言われている。又、オーストラリアの先住民族は、イルカがある音を出すと魚の群れが浅瀬に打ち上げられたとか、アフリカでは漁師の仕掛けた網にイルカが魚を追い込み、共に漁を行った部族の話もある。そのような事例から養殖海苔を食する魚類もイルカの発する音声に対して高い忌避効果があると思われる。このような事例を参考にして、イルカの音声、サイレンの音、打撃音等の録音を準備した。 【0020】水中マイクで音声を録音する。試験例は、水中の音を録音出来る完全防水マイクでイルカの音声を収録した。その他、サイレンの音、物を激しく叩く音なども収録した。 【0021】水中音波伝達機器の設置について海苔養殖用灯台に水中音波伝達機器が設置内蔵出来るように改良して、完全防水の格納庫の中に水中音波伝達器及びこれを作動させる電源を収めた持ち運び自在のブイを製作した。そしてこれを浮流し養殖セットの養殖海苔の魚食被害場所に設置し、水中音波伝達器を作動させ、水中スピーカーで広く音波を漁場に伝達した。 【0022】試験の結果について水中音波伝達機器を作動させて実験したところ、魚食被害は全く見られなかった。この試験では、常時水中音波伝達器の作動は不必要であった。場所と魚類により多少の違いはあるが適宜な間隔をおいて伝達することで十分な効果があることが判明した。 【0023】本発明の魚食被害防止方法及び装置を用いた効果は高く、防御ネットの設置と比較して作業性が容易で何ら海苔養殖に支障なく有効であった。 【0024】 【発明の効果】本発明の効果は、請求項1乃至請求項2に記載の各項の構成により次に記載の効果を奏するものである。 【0025】この発明の方法により、イルカの音声や打撃音等魚類の忌避する音波を海苔漁場に広く流して伝達し、養殖海苔の魚食被害を防止する事が出来る。この装置は、漁場に適宜設置することにより水中スピーカーから音波が伝達される区域を広く設置することが出来る。水中スピーカーより出る音波が広い範囲に渡って伝達されるので、養殖海苔の漁場へ魚類の侵入を防止する事が出来る。 【0026】イルカの音声等を魚類は忌避する性質を利用して、養殖海苔の漁場に魚類が侵入するのを防止する事により、防御ネットに比べて侵入防止の効果が広く、設置や撤去も簡単で、人手を余りかける事なく実践出来るため経済的にも有利で、海苔養殖が安定する新技術である。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】391039081 【氏名又は名称】浦野 隆文
|
| 【出願日】 |
平成13年2月26日(2001.2.26) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100071892 【弁理士】 【氏名又は名称】河野 隆一
|
| 【公開番号】 |
特開2002−247926(P2002−247926A) |
| 【公開日】 |
平成14年9月3日(2002.9.3) |
| 【出願番号】 |
特願2001−50756(P2001−50756) |
|