| 【発明の名称】 |
大型褐藻類の種苗生産方法及びこれを使用した藻場の造成方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】松本 正喜
【氏名】斎木 正道
【氏名】綿貫 啓
【氏名】廣瀬 紀一
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| 【要約】 |
【課題】褐藻類の種苗生産法と、この方法で得られた種苗を利用する藻場造成法の提供。
【解決手段】褐藻類の母藻から採取される胞子を冷暗条件で任意の期間保存し、保存されていた胞子を幼少の胞子体に生長させて褐藻類の種苗を生産する。生産された種苗を陸上で増殖基盤に装着し、その増殖基盤を複数個海中に分散配置して藻場を造成する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 大型褐藻類の母藻から胞子を採取し、配偶体の状態で海水中または湿潤状態のもとで、4℃〜10℃でかつ遮光条件で任意の期間保存し、種苗の生産を企図した時期に、15℃〜20℃でかつ照明下で栄養分を含む海水培地を使用して、エアレーションによる攪拌を行って成熟・発芽させる大型褐藻類の種苗生産方法。 【請求項2】 母藻からの胞子の採取・配偶体の保存方法が、糸又は紐に胞子を着生させ、その後配偶体の状態として糸又は紐に付着させたまま保存する方法である請求項1記載の大型褐藻類の種苗生産方法。 【請求項3】 湿潤状態で保存する方法が、吸湿性包装材で包むことを特徴とする請求項2記載の大型褐藻類の種苗生産方法。 【請求項4】 請求項3記載の方法により種糸上で生育した褐藻類の種苗を増殖基盤に装着し、この基盤を陸上又は海中で藻場造成ブロック類に貼り付ける方法である大型褐藻類の藻場造成方法。 【請求項5】 種苗を装着する増殖基盤が、海水中でSi、Fe、P等のイオンを溶出するガラスを配設したモルタル板である請求項4記載の藻場造成方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は大型褐藻類の種苗生産方法と、この方法で得た種苗を活用した藻場造成方法に関する。 【0002】 【従来の技術】アラメ、カジメ、コンブなどの大型褐藻類は、肉眼で視認できる大型の胞子体と、顕微鏡で視認できる配偶体の世代交代を繰り返しながら繁殖する。すなわち、褐藻類は、■母藻(胞子体)から放出された遊走子(胞子)が、海中に散在する岩や人工ブロック等の表面に付着し、■その胞子から発芽した配偶体が、卵と精子である配偶子を形成して成熟し、■これらの配偶子が合体して接合子となり、■接合子が発芽、生長して胞子体となるサイクルを繰り返している。褐藻類を含めて一般に海藻類を増養殖させる場合には、人工的に育てた種苗を海域に移植して成熟させる手法が通常採用されているが、種苗の生産方法としては、次のような従来法が知られている。その一つは、図4で示す如く、母藻である胞子体を海域から採集し、その胞子体から胞子を放出させ、これを任意の着生基材に着生させる。着生基材には、通常、コンクリートプレート、合成樹脂板、タイル等の固形物あるいは合成糸ないし合成紐等が使用される。次いで、基材に着生した胞子を人工的に管理される条件下に培養し、幼少な胞子体まで生長させて種苗を得る方法である。胞子の培養は一般に海水培地中で行なわれ、培養条件としては、光の照射と通気を行ないながら培地温度を18℃に維持するのが通例である。そして、得られた種苗は着生基材ごと適当な海域に移植される。この種苗生産方法は、胞子を採取する時期が母藻の成熟期に限定されることに加えて、種苗を任意の期間保存しておくことに格別な工夫が施されていないため、種苗を通年的に供給することはできない。 【0003】種苗を生産する従来法の他の一つは、種苗を通年的に供給できる方法であって、その方法は、図5に示すように、母藻である胞子体を海域から採集し、その胞子体から放出される胞子を発芽させ、発芽で得られる配偶体を分離し、栄養塩の添加した海水培地に分離した配偶体を懸濁させる。その後は配偶体の懸濁海水培地を、概ね24℃以上の温度に保持するか、あるいは配偶体の海水培地を栄養塩濃度の低い(特に鉄分を含まない)海水培地に置き換え、配偶体の成熟(造精・造卵)を抑制しながら、配偶体を未成熟のまま室内で保存する。そして、所望の時期に種苗を産生させるに際しては、保存されていた配偶体を増殖させた後、ミキサーなどで細断し、これを適当な着生基材に着生させる。しかる後、配偶体の培地を、鉄分を含む海水培地に置き換える共に、培地温度を造精・造卵に適した15℃〜20℃の温度に保持して接合子を発芽、生長させ、着生基材上に幼少の胞子体を得ることにより、海中へ移植可能な種苗を生産することができる。この方法は、通年に亘って任意の時期に種苗を生産できる利点があるものの、配偶体を海水培地(栄養塩を添加しない海水培地又は鉄分を添加しない海水培地を使用する)中に懸濁させて保存しなければならない関係で、培養容器を使用すると共に、保存中は配偶体が懸濁している培地を定期的に交換しなければならない面倒もある。また、配偶体の保存には、培地温度を15℃以上に維持することと、適度の光照射が必要となるので、照明装置付きの恒温装置を用意しなければならない。これに加えて、保存されている配偶体から種苗を生産するには、培地に懸濁している配偶体を先ず増殖させる必要があるが、その際、配偶体が糸状に増殖するため、これを基材に着生させる前に、ミキサーなどを使用して糸状の配偶体を切断しなければならず、手間を要する不都合がある。なお、アマノリの養殖技術では、アマノリの糸状体の冷暗保存が知られているが、その冷暗保存は、養殖品種の保存を専ら目的としたものであり、この従来技術にはアマノリの種苗を任意の時期に生産するという技術思想はない。 【0004】海藻類の種苗を生産する従来法には、上記の問題点を指摘できるが、着生基材に付着させた種苗を海中に移植する場合にも、従来法は次のような問題を抱えている。すなわち、従来の移植法の一つに、コンクリート製プレートに着生させた種苗を予め水槽内で生産しておき、ダイバーの手を借りてこの種苗を海底の岩又はコンクリートブロックにボルトで固定する方法がある。この方法は成果が確実であるが、種苗の海中への設置をダイバーに頼らなければならないので、人件費が嵩む欠点がある。また、糸状又は紐状の基材に着生させた種苗を予め水槽内で生産しておき、これを海底の岩又はコンクリートブロックに巻き付ける方法もあるが、この方法もダイバーの助けを必要とすることに加えて、種苗が着生している糸又は紐が緩むと、種苗が岩やコンクリートブロックに活着しないなどの問題がある。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的の一つは、アラメ、カジメ、クロメなどの大型褐藻類の種苗を、通年にわたって任意の時期に、従来法よりも簡単な設備と操作で生産することができ、しかも、海中への移植が簡易な状態で生産することができる種苗生産方法を提供することにある。本発明の他の目的は、本発明の種苗生産方法によって生産された大型褐藻類の種苗を使用して、海中に大型褐藻類の藻場を造成する方法を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明に係る種苗生産方法は、大型褐藻類の母藻から放出される胞子の懸濁海水を調製し、この懸濁海水中の胞子を着生基材に着生させて配偶体に成長させ、着生基材上の配偶体を配偶体の状態のまま、窒素、リン等の栄養塩や金属を含む海水培地の共存下に、温度4℃〜10℃の遮光状態で任意の期間冷暗保存し、種苗の生産を企図した時期に、冷暗保存されていた着生基板上の配偶体を、栄養塩を含む海水培地に浸漬し、液温を15℃〜20℃に保持しつつ、光の照射とエアレーションを行いながら培養し、前記の配偶体を発芽させて幼少の胞子体に生長させて種苗を得ることを特徴とする。また、本発明が提案する大型褐藻類の藻場造成法は、上記の種苗生産方法において、母藻から放出された胞子を糸状又は紐状の基材に着生させることよって、幼少の胞子体が糸状又は紐状の基材上で胞子体が生長した種苗(以下これを種糸と総称する)を調製し、この種糸を陸上において木製の角材などを介して増殖基盤に装着した後、その増殖基盤の複数個を褐藻類が成育し得る海域に分散配置することを特徴とする。 【0007】 【発明の実施の形態】以下、図1に沿って本発明の実施形態を説明する。本発明の種苗生産方法において、大型褐藻類の胞子が懸濁した海水は、これを海中から直接採取しても差し支えない。しかし、海中からの直接採取では、高濃度の胞子懸濁海水を得ることが難しいので、高濃度の胞子懸濁海水を得るためには、成熟期にある母藻を海中から採集してこれを適当な貯槽に収容すると共に、この貯槽に夾雑物を濾別した海水を加え、その海水内で胞子を放出させることが好ましい。胞子懸濁海水には胞子が着生する基材を存在させる。胞子の着生基材としては、前記した糸状物又は紐状物が適しているが、これら以外の着生基材として、コンクリート製プレート、合成樹脂板等を使用することもできる。基材に着生した胞子は、海水温度を15℃〜20℃の範囲に維持し、光照射を行って4〜7日間(4〜7昼夜)培養することで発芽し、配偶体に生長する。この培養に際しては、海水に必要に応じて、窒素、リンなどの栄養塩及び/又は微量金属を添加することができる。また、海水に代えて、PESI強化海水培地を使用することも可能である。 【0008】本発明では、着生基材上で生長した配偶体を、配偶体の状態のまま保存する。すなわち、着生基材上で生長した配偶体を着生基材ごと、栄養塩を含む海水培地に浸漬させるか、あるいは栄養塩を含む海水培地で湿潤させた吸湿性包装材で包んで任意の期間保存する。いずれの場合とも、配偶体の保存には、光の照射を断った遮光条件(暗黒条件を含む)と、培地温度4℃〜10℃、好ましくは5℃〜7℃の冷温条件が採用され、以下これを冷暗保存と呼ぶ。冷暗保存期間中は培地の交換が不要であるが、吸湿性包装材を用いて保存する場合は、水分の蒸発による培地の濃縮を予防する目的で、配偶体などを包んだ吸湿性包装材を非通気性の袋に封入することが好ましい。浸漬保存の場合も、包装保存の場合も、配偶体の保存期間は最長8〜10ヶ月間とすることができる。 【0009】種苗の生産に際しては、上記の如く冷暗保存されていた着生基材上の配偶体の遮光状態を解除し、これを濃度1/2のPESI強化海水培地内に移し、培地の液温を15℃〜20℃に、好ましくは17℃〜18℃に上昇させ、エアレーションを行いながらその温度を保持して約2〜3ヶ月間培養する。この種苗生産期間は、胞子体の発生が肉眼では認めらない前半期と、胞子体の存在が肉眼で認められるようになり、これが10〜30mm前後に生長する後半期に大別できる。一般に前半期は約30日間程度あり、後半期は約30〜60日間である。培養の前半期及び後半期とも、液温を上記の範囲に保持し、エアレーションを継続するが、前半期は必ずしも培地の交換を必要としない。培養後半期は、前半期に使用していた培地を、濃度10分の1のPESI強化海水培地に交換し、この培地を1週間に1回の頻度で濃度10分の1のPESI強化海水培地と入れ替える。そして、培地に栄養塩を補給する目的で、培地1リットル当たりPESI強化海水培地2mlを、2日に1回の頻度で添加することが好ましい。着生基材に着生した胞子体が10〜30mm前後に生長した段階を培養終期とし、こうして得られた着生基材上の幼少胞子体は、これを褐藻類の種苗として海中に移植することができる。本発明で利用されるPESI強化海水培地(以下PESI原液と呼ぶ)の組成を表1に示す。標準のPESI強化海水培地とは、PESI原液と海水を2:100の容量比で混合したものを意味する。濃度1/2のPESI強化海水培地とは、PESI原液と海水を1:100の容量比で混合したものを意味する。また、濃度1/10のPESI強化海水培地とは、PESI原液と海水を2:1000の容量比で混合したものを意味する。また、本発明における光に照射には、一般的には太陽光が使用されるが、照射される光は、光合成に寄与する波長を有する光であれば、その種類を問わない。 【0010】 【表1】
【0011】本発明の藻場造成方法を実施するに際しては、上記した種苗生産方法において、胞子の、さらには配偶体の着生基材として糸状又は紐状の基材を採用することで得られるところの種苗(糸状又は紐状基材に幼少の胞子体が着生している)を使用する。本発明によれば、種糸は陸上において適宜な寸法の木質角材などに取り付け、その角材を増殖基盤に装着される。増殖基盤としては、海水中でSiイオン、Feイオン、Pイオンを溶出するガラスを配設したセメントモルタル板からなる基盤(商品名:イオンカルチャープレートとして市販されている)を使用することが好ましい。種糸を角材に取り付ける手段には、ステンレス製のステープラー(ホチキス)などを使用することができ、角材を増殖基盤に固定する手段には、増殖基板の上面に角材を埋め込むか、耐水性接着剤などが利用できる。角材などを介して増殖基盤に取り付けられた種糸は、これをそのまま褐藻類が生育できる海域に複数個適当な間隔で分散配置する。種糸を取り付けた増殖基盤を海中に分散配置する際しては、当該増殖基盤を陸上で複数個のコンクリートブロックに固定してから海中に沈めてもよく、また、前記の増殖基盤を海中に散在するコンクリートブロック等の海中構造物や岩などに固定しても差し支えない。 【0012】 【実施例】海域から成熟したアラメ胞子体(母藻)の葉状部分を採集し、これを濾過海水で満たされた水槽に収容した。水槽の液温を18℃に保持し、照度2000ルックスの光を照射しながら胞子体から胞子を放出させ、胞子懸濁海水を作成した。この胞子懸濁液に糸状の着生基材(直径2mmのクレモナ糸)を投入し、これを上と同様な光照射及び温度条件下に1時間液中に保持することによって、糸状の基材上で胞子が配偶体に生長した種糸を作成した。なお、着生基材は胞子を放出させる前の濾過海水に予め投入しておいても差し支えない。次いで種糸を上記の懸濁海水から取り出し、濃度1/2のPESI強化海水培地で充分に湿らせたペーパータオルにて種糸を包み、さらに塩化ビニル製の袋に収納して密封した。湿潤ペーパータオルと塩化ビニルで二重包装された種糸を、遮光条件のもと5℃〜7℃で4ヶ月間冷暗保存した。冷暗保存された種糸の包装を解いて遮光を解除し、これを濃度1/2のPESI強化海水培地に移し、液温を17℃〜20℃に保持し、エアレーションを継続して種糸に着生している配偶体を培養した。培養の前半期(30日間)は、水分の蒸発によって培地の栄養塩分の濃度が上昇しないように注意し、必要に応じて精製水(蒸留水)を補給した以外は、培地の交換は行なわなかった。培養の後半期(30日間)は、培地に濃度1/10のPESI強化海水培地を使用し、1週間に1回の割で新鮮な濃度1/10のPESI強化海水培地に取り替えると共に、2日に1回の頻度で水槽内の培地1リットル当たりPESI強化海水培地(原液)2mlを水槽に添加した。上記のような培養を60日間行なうことによって、10mm程度に生長したアラメの胞子体が多数着生した種糸を得ることができた。種糸に着生した胞子体は、種糸1cm当たり10個体以上であることが確認できた。得られた種糸をステープラーにて木質角材に取り付け、その角材を図1に示す如く、増殖基盤(前記したイオンカルチャープレートを使用)に装着し、これを水深5mの海底に設置したところ、1ヶ月後にはアラメが10〜13cmに成長していた(図2参照)。 【0013】 【発明の効果】本発明の種苗生産方法によれば、母藻から放出される胞子を、配偶体の状態で、しかも培地交換を行なわずに長期間保存することができる。そして、胞子を着生基材に着生させて配偶体に成長させ、配偶体の状態で冷暗保存するので、着生の歩留まりが良いばかりでなく、その保存には必ずしも照明装置付き恒温装置などの特別な施設を必要としない。従って、保存時の省スペース化・省力化を図ることができる。ちなみに、従来法では、着生基板に着生させることなく、配偶体の状態で保存していた関係で、これから種苗を生産するには、培地に懸濁している配偶体を先ず増殖させるが、増殖に際して配偶体は糸状に生長するため、これを基材に着生させる当たっては、糸状に生長した配偶体をミキサーなどにて切断しなければならいない面倒がある。これとは対照的に本発明の種苗生産方法では、その面倒がなく、加えて胞子の状態で基材に着生させるため、着生の歩留まりも高い。また、本発明の藻場造成方法では、幼少の胞子体が着生した種糸を増殖基盤に取り付ける作業を行なうことができ、その増殖基盤を陸上でコンクリートブロックなどに取り付けて海中に分散設置することができるので、ダイバーなどの特殊技能者を必要としない利点もある。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000229243 【氏名又は名称】株式会社テトラ 【識別番号】391042782 【氏名又は名称】日本エヌ・ユー・エス株式会社
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| 【出願日】 |
平成13年1月12日(2001.1.12) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100072224 【弁理士】 【氏名又は名称】朝倉 正幸
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| 【公開番号】 |
特開2002−247925(P2002−247925A) |
| 【公開日】 |
平成14年9月3日(2002.9.3) |
| 【出願番号】 |
特願2001−5344(P2001−5344) |
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