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【発明の名称】 植物の栽培方法
【発明者】 【氏名】遠山 隆文

【氏名】岡部 勝美

【氏名】磯部 俊一

【氏名】石井 征亜

【氏名】禿 泰雄

【要約】 【課題】太陽光の光質を変えることにより、植物の生育花芽形成開花形態形成収穫時期等を調節することができる植物の栽培方法を提供すること。

【解決手段】不織布に色素を含有させた被覆資材等を用いて、赤色光(R;600〜700nm)と青色光(B;400〜500nm)との比R/Bが所定の値となるように制御した光を、所定の期間、例えば春分又は秋分を挟む1〜5ヶ月間、植物に暴露し、植物の生育花芽形成開花形態形成又は収穫時期を調節する。上記被覆資材としては、光合成有効放射領域(400〜700nm)の光透過率80%以上の資材を用いることが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 植物に、所定の期間、赤色光(R;600〜700nm)と青色光(B;400〜500nm)との比R/Bが所定の値となるように制御した光を暴露することを特徴とする植物の栽培方法。
【請求項2】 被覆資材を用いて、所定のR/B値となるように制御することを特徴とする請求項1記載の植物の栽培方法。
【請求項3】 被覆資材が色素含有着色被覆資材であることを特徴とする請求項2記載の植物の栽培方法。
【請求項4】 色素が、R/B値を減少させる作用を有する光質変換青色色素であることを特徴とする請求項3記載の植物の栽培方法。
【請求項5】 色素が、R/B値を増大させる作用を有する光質変換赤色色素であることを特徴とする請求項3記載の植物の栽培方法。
【請求項6】 不織布形状の被覆資材を用いることを特徴とする請求項2〜5のいずれか記載の植物の栽培方法。
【請求項7】 被覆資材として、光合成有効放射領域の光透過率80%以上の資材を用いることを特徴とする請求項2〜6のいずれか記載の植物の栽培方法。
【請求項8】 植物が、短日性植物又は長日性植物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の植物の栽培方法。
【請求項9】 所定の期間が、春分又は秋分を挟む1〜5ヶ月間であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の植物の栽培方法。
【請求項10】 植物の生育花芽形成開花形態形成又は収穫時期を調節することを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の植物の栽培方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、赤色光(600〜700nm)と青色光(400〜500nm)との比R/Bが所定の値となるように制御した条件下で植物を栽培する方法に関し、より詳しくは、被覆資材等を用いて、R/Bが所定の値となるように制御した光に所定期間植物を暴露し、植物の生育花芽形成開花形態形成収穫時期等を調節する植物の栽培方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、植物の栽培に被覆材を用いることにより、太陽光を調節し、植物の生育を制御あるいは生産物の増量を図ることが検討されている。例えば、特公昭49−16301号公報には、300〜340mμの紫外線が植物の生育に著しい障害を与えること、及び340〜380mμの紫外線もまた好ましい結果を与えないという発見に基づいた、植物の生育に効果のある農業用合成樹脂フィルムとして、フローレッセント・ブライトナーを0.1重量%以上添加した熱可塑性合成樹脂を用いて製造された、波長380mμ以下の紫外線を事実上完全に吸収し、波長380mμ以上の光線を実質的に阻害することなく十分に透過する農業用合成樹脂フィルムが記載されている。特公昭49−17092号公報には、可視光線および赤外線を実質的に透過するガラス板または合成樹脂フィルムに、可視光線および近赤外線を透過しかつ遠赤外線を反射する選択透過性フィルタを積層し、さらに保護フィルムを積層することを特徴とする選択透過性シート材が記載されている。
【0003】特公昭47−24376号公報には、主として赤の波長の光からなり、青の波長の光を含み、緑の波長の光の濃度が減らされた蛍光性の光を出すように選ばれた有機蛍光着色剤に太陽光線をあて、これによって生じた光の有効量を生長しつつある植物にあてて植物の生長を促進させる方法が記載されている。特公昭48−37459号公報には、植物の生育に障害となる紫外線の透過を阻止し、その育成に必要な可視部の光線をほぼ完全に透過する農業用合成樹脂フィルムとして、紫外線吸収剤を添加した合成樹脂を用いて波長380mμ以上の光線を実質的に阻害することなく、かつ、波長340mμ以下の紫外線の透過を実質的に、完全に阻止するようにした農業用合成樹脂フィルムが記載されている。
【0004】実開昭53−91946号公報には、合成高分子の長繊維からなる目付が100g/cm2以下の不織布であって、かつ可視光線の特定波長域光の透過性を制御するように着色が施されていることを特徴とする農業用被覆剤が記載されている。特開昭50−88177号公報には、植物にとって比較的重要度の低い紫外線エネルギーを転換して青色光エネルギーを増量できる農業用熱可塑性合成フィルムとして、熱可塑性合成樹脂に青色増量蛍光材を0.01〜10重量%混入し、可視光線の透過率を80%以上保持し、かつ0.42〜0.47μの波長域の青色光を、与えられた光源を含む同波長域の光量よりも増量したことを特徴とする植物の生育を調整する農業用熱可塑性合成フィルムが記載されている。
【0005】特公昭55−1010号公報には、自然光を畜光せしめて、日没後自然光の消失した後に発光させ、植物の光反応を一定時間持続せしめることにより、植物の組織分化等生活機能を刺激して、植物の生育の調節を図ることを目的とした植物栽培用材として、基材に青色の光線を発生する無機質のリン光剤を保持させ、これによって前記基材に日没後における補光効果を付与させて成る植物栽培用材が記載されている。特公昭57−59725号公報には、メロン、雑メロン、スイカ、カボチャ及びイチゴから選ばれる果菜類を栽培するに当り、少なくとも該果菜類の受粉時期から、少なくとも370nm及びそれ以下の波長に光を実質的に遮蔽し得るが、しかし400nmの波長の光は完全には遮蔽せず且つ450nm及びそれ以上の波長の光を実質的に透過し得る透明フィルムによって被覆した条件下で該果菜類を栽培することを特徴とする収穫される果実の糖度の増加方法が記載されており、「実質的に透過し得る」とは、該波長の光を100%透過することはもちろん、該波長の光を少なくとも70%、特に80%以上透過することをも包含する意味であると記載されている。
【0006】実開昭53−148938号公報には、二色以上に色分けした部分を全面又は一部に設けてなる着色農芸用フィルムが記載されている。実開平1−122095号公報には、熱可塑性樹脂繊維からなる不織布に青色蛍光剤および/または赤色蛍光剤を添加してなる不織布であって、秤量が10〜40g/m2、通気性が200〜2000cc/cm2/秒、厚さが30〜150μ、前記蛍光剤の添加量が0.01〜10重量%であるべたがけ栽培用不織布が記載されている。特開昭54−54843号公報には、イチゴの奇形果の発生を阻止し、それによって、イチゴの収量の増大を図る方法及び該方法に使用するための農業用被覆材として、少なくとも350nm以下の波長の光の透過を実質的に阻止する農業用被覆材の被覆下でイチゴを栽培する方法において、該農業用被覆材の一部に紫外線を実質的に阻止しない部分を設けることを特徴とするイチゴの栽培方法及び農業用被覆材が記載されている。特開平2−283217号公報には、植物の発芽、発育の成長を促進する栽培方法として、植物の生長初期の段階である球根又は苗に対し、太陽光そのものではなく偏光子を透過した太陽光を照射させて発育の促進をはかり、その後太陽光のもとに栽培する栽培方法が記載されている。
【0007】特開2000−139244号公報には、太陽光の透過の仕方を調節することが可能で、太陽光の強い夏場においても日覆いを必要としない能率的な作物の栽培を可能とする作物栽培用フィルム及びその使用方法として、透明樹脂フィルム層の片面に、屈折率1.37〜1.63、平均粒径1.0〜20μmの無機粉体が分散した透明樹脂からなる無機粉体含有フィルム層が積層され、無機粉体含有フィルム層側の表面が平均粗さRa=0.1〜5.0μmの梨地面とされると共に防曇性が付与されてなることを特徴とする作物栽培用被覆フィルムが記載されている。特開2000−117871号公報には、可視光の透過率が高く,紫外線,赤外線の遮蔽機能が高く,かつ表面電気抵抗が低い選択光透過フィルムとして、透明フィルムと,該透明フィルムの上に第1金属酸化物層,金属層,第2金属酸化物層を順次スパッタリングすることにより得られる透明機能膜とからなる選択光透過フィルムが記載されている。
【0008】特開2000−116252号公報には、太陽光に含まれる紫外線や近赤外線を程良く調光して作物の光合成を促進できると共に、適度の透湿抵抗と雨水遮蔽性能を発揮して作物栽培に適した栽培環境を簡易に作出することができる農産用被覆メッシュ材として、低繊度の合成繊維により組織された紗地であって、遮光率が25%以下、透湿度が700〜1200g/m2・hの物性を呈することを特徴とする農産用被覆メッシュ材が記載されている。特開2000−41504号公報には、例えば西日のような特定方向からの太陽光線の照射による農作物の育成阻害を防止する農業用マルチングシート及びこれを用いた農作物の育成方法として、農業用マルチングシートの本体シート部に、多数の、略「V」字状の切れ目を形成することによって、略三角形の起立部が形成し、間隔を農作物の適切な株間隔と同一とした農業用マルチングシートを、上側が西側、下側が東側となるように畑の畝の土壌表面を覆うことにより、起立部を底辺部分を支点とした開口部に農作物を植える農業用マルチングシート及びこれを用いた農作物の育成方法が記載されている。
【0009】その他、青色光の植物に対する作用に関しては、B.Thomas,D.Vince-Prue,(Photoperiodism in Plants 82 Academic Press (1997))や、I.Warrington,K.Michell(Agricultual Meteorology 16 247 (1976))などの文献があり、最近では石井、禿らは、春と秋とに長日性植物と短日性植物を用い、青や赤の単色光を暴露し、青色光と赤色光とでは花成等に逆の作用があるとの報告(植物化学調節学会講演要旨;11(1998), 117(1999), 119(1999) や、光質および光強度がアサガオの花芽形成に及ぼす影響についての報告(生物環境調節 38(1), 39-46, 2000)を行っている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、従来から作物の栽培に着色フィルムを用いる研究や報告が数多くなされているが実用に供したものはほとんどなく(施設農業における光質利用の技術化に関する総合研究農水省、着色フィルムの被覆を作物に有効か?稲田勝美農業および園芸第69巻9号(1994)〜第72巻12号(1997))、その理由としては、太陽光を単に植物の生育に適した状態に遮光又は選択するに過ぎず、また用いた資材の着色が濃く光量不足に陥り、作物の正常な生育を阻害する点が指摘されている。そこで、本発明者らは、植物栽培には、自然光すなわち太陽光が基本的に最適であり、植物は太陽光の光質によってもその生育を調節しているとの前提に立ち、太陽光の光質を変えることにより、植物の生育をコントロールできるのではないかという着想を得た。本発明の課題は、太陽光の光質を変えることにより、植物の生育花芽形成開花形態形成収穫時期等を調節することができる植物の栽培方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究し、前記のように、植物栽培には、自然光すなわち太陽光が基本的に最適であり、植物は太陽光の光質によってもその生育を調節しているとの前提に立ち、まず太陽光の特性を質的側面と量的側面から明らかにするために以下の測定実験を行い、その結果を解析することにした。測定に際しては、太陽光の領域を、便宜上400nmから100nmずつ区切って、400〜500nmを青(B)、500〜600nmを緑(G)、600〜700nmを赤(R)、更に700〜800nmを遠赤色(Fr)とした。また、太陽光の測定には、フォトリサーチ社のスペクラビューSV−650を用いたこの測定器の測定範囲は380nmから780nmなので700nm〜780nmの値の5/4倍をFrの値(700nm〜800nm)としたさらに、400〜700nmの領域を光合成有効放射領域とした。
【0012】(1)季節による影響東京都千代田区大手町にて午前11時の晴天の日を選んで水平面での太陽光を測定した平成10年12月20日〜平成11年12月17日の間で計37日のデータを得た光合成有効放射領域の周年変化を光合成有効光量子密度(PPFD)で示した結果を図1に、光合成有効放射分光スペクトルの周年変化を光量子数の割合で示した結果を図2に、B/RとR/Frの周年変化を光量子数比で示した結果を図3に、それぞれ示す図1に示されるように、PPFDは夏と冬では大きく異なることがわかる。また、図2に示されるように、光量子数の割合の周年変化は、青色光で平均22.3%(標準偏差1.16)、緑色光で平均35.5%(標準偏差0.12)、赤色光で平均42.2%(標準偏差1.27)であり、これらの結果から、緑色光の割合の変化が年間を通して他の青色光及び赤色光の変化とは標準偏差において一桁小さく、一定であることが判明したこのように、緑色光が年間を通して一定であることが判明したので550nmを基準(=1)として冬夏の光合成有効放射スペクトルをエネルギー相対比で表すと図4になる図4からわかるように、3月23日と7月7日のスペクトルがほぼ重なることから太陽光の光質は春分を過ぎれば秋分まで一定であると推定することができた。
【0013】また、図3から明らかなように冬至を境にしてR/Bは変化の方向が増加方向から減少方向に逆転する秋分から冬至にかけてR/Bが増加し冬至から春分にかけてR/Bが減少し、春分から秋分まではほぼ一定である。すなわち秋分から冬至にかけて赤色成分が増加し冬至から春分に青色成分が増加する更に春分から夏を通し秋分にかけて光質はほぼ一定である図3のデータにおける青を横軸に赤を縦軸にそれらの成分比で表すと図5になるこの図5より、日長を考慮に入れなくてはならないが植物は赤と青の比R/Bの変化により季節の変化を知覚していると推測することができる。また、図3、図5ともに春分と秋分付近の光質の変化を顕著に表している。なお、R/Frは年間を通して大きく変化しないこともわかった。
【0014】(2)天候による影響平成11年10月10日〜12月13日までの11時に、曇りの日や小雨の日を数日選んで測定したその間の光合成有効放射分光スペクトルの分布を光量子数の割合で示した結果を図6に示す図6は、赤色光や青色光は曇りの日や小雨の日と晴れの日とでは変化するのに対し、緑色光は天候の如何にかかわらず一定であることを示している。
【0015】(3)大気による影響シュルギンによれば太陽高度が高い場合には直達太陽光及び散乱光の黄緑光(500nm〜600nm)の割合は大気質量(m)にかかわらず一定でこの割合は日変化しないとされている(シュルギン著「太陽光と植物」 (1970)76頁)しかしその割合が遠赤色部を含んでいることから光合成有効放射領域のみで検討すると更に緑色光の割合が一定であることが明瞭となった理想大気(純粋乾燥大気)の大気質量(m)による光合成有効放射領域の計算値(シュルギン著「太陽光と植物」 (1970)63頁)により太陽放射エネルギーのスペクトル分布を図7として作図した図7より、光合成有効放射領域における緑色光の割合(エネルギー分布)はほとんど一定であることがわかるまた、地上500mと3000mの高度の違いによる光合成有効放射領域の計算値(シュルギン著「太陽光と植物」 (1970)69頁)により光合成有効放射領域の割合を図8に示す図8より、光合成有効放射領域における緑色光の割合(エネルギー分布)は大気質量(m)及び高度の如何にかかわらずほとんど一定であり、高度の高い方が青色光の割合が多いことがわかる【0016】(4)解析■太陽光はふつう太陽高度が10度以上になると光質が一定になるといわれている(稲田勝美著「光と植物生育」養賢堂 (1985)25頁)が、太陽高度が10度以上になるのは日の出から1時間後位であり、その後の光合成有効放射領域における緑色光の占める割合が、季節、地域、高度、大気の種類によらずほぼ一定であり、このことは、植物が緑色光を光質あるいは光量の基準としているとも考えられる。また、太陽光が青色光と赤色光を含む全ての波長の光をもつ白色光であることを考えると、緑色光が一定であるということは、青色光と赤色光のバランスで光環境を判断していると考えられる。
【0017】■赤色光と青色光の比R/Bは、秋分から冬至にかけてが増加し冬至から春分にかけて減少し、春分から秋分まではほぼ一定である。植物は、日長とともにR/Bの変化で季節を知覚していることが考えられるが、この春分及び秋分付近におけるR/Bの変化は、春分及び秋分付近における日長の変化に比べると、短期間における変化ということができ、R/Bの変化は植物の生育調節にかなりの影響を与えていると予想することができる。また、高緯度ほど春分及び秋分付近におけるR/Bの変化割合が大きいことがわかった。
【0018】以上の測定・解析結果より、光合成有効放射領域における緑色光の割合は、太陽高度が低い朝夕を除き、季節、天候、時刻によらず一定であり、光質(R/B)の変化は春と秋の比較的短期間で生じ、また光質(R/B)の変化は植物の生育や生育調節にかなりの影響を与えるとの知見を得た。そこで、所定のR/B値となるように制御した光に、所定の期間植物体を暴露したところ、作物の生育花芽形成開花形態形成収穫時期等を調節することができることがわかった。本発明はこれら知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0019】すなわち本発明は、植物に、所定の期間、赤色光(R;600〜700nm)と青色光(B;400〜500nm)との比R/Bが所定の値となるように制御した光を暴露することを特徴とする植物の栽培方法(請求項1)や、被覆資材を用いて、所定のR/B値となるように制御することを特徴とする請求項1記載の植物の栽培方法や、被覆資材が色素含有着色被覆資材であることを特徴とする請求項2記載の植物の栽培方法(請求項3)や、色素が、R/B値を減少させる作用を有する光質変換青色色素であることを特徴とする請求項3記載の植物の栽培方法(請求項4)や、色素が、R/B値を増大させる作用を有する光質変換赤色色素であることを特徴とする請求項3記載の植物の栽培方法(請求項5)や、不織布形状の被覆資材を用いることを特徴とする請求項2〜5のいずれか記載の植物の栽培方法(請求項6)に関する。
【0020】また本発明は、被覆資材として、光合成有効放射領域の光透過率80%以上の資材を用いることを特徴とする請求項2〜6のいずれか記載の植物の栽培方法(請求項7)や、植物が、短日性植物又は長日性植物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の植物の栽培方法(請求項8)や、所定の期間が、春分又は秋分を挟む1〜5ヶ月間であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の植物の栽培方法(請求項9)や、植物の生育花芽形成開花形態形成又は収穫時期を調節することを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の植物の栽培方法(請求項10)に関する。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明の植物の栽培方法としては、植物に、所定の期間、赤色光(R)と青色光(B)との比R/Bが所定の値となるように制御した光を暴露する栽培方法であれば特に制限されるものではなく、ここで、赤色光(R)とは波長600〜700nmの領域の光をいい、青色光(B)とは波長400〜500nmの領域の光をいう。また、本発明において、光合成有効放射領域とは波長400〜700nmの領域の光をいい、光合成有功放射領域の光透過率(%)とは、太陽光の光合成有効放射領域の光エネルギーを100とした場合に対する、資材の透過光の光合成有功放射領域の光エネルギー比をいう。
【0022】本発明において、光質とは光のスペクトルで示される光の性質のことをいい、特定の波長領域間のエネルギー比で表すことができ、例えば、上記のように、400nm〜800nmの波長の光を4つに区切り400〜500nmを青色光(B)、500〜600nmを緑色光(G)、600〜700nmを赤色光(R)、更に700〜800nmを遠赤色光(Fr)とした場合、それぞれの波長領域のエネルギー比、例えばR/Fr、R/B、B/G等により光質を表すことができるが、本発明はこれら光質のうち、赤色光(R)と青色光(B)との比R/Bが所定の値となるように制御することを特徴とし、R/Bが所定の値となるように制御するとは、同一時期の同一地域における太陽光のR/B値と異なる所定のR/B値に変換することをいう。
【0023】所定のR/B値となるように制御する方法としては特に制限されないが、通常被覆資材を用いる方法を挙げることができる。被覆資材における資材の形状としては施設栽培・園芸に適用し得るものであればどのような形状のものでもよく、フィルム、板、ネット、織布、不織布などを例示することができるが、光質の安定性、光透過率、強度、製造コスト、蛍光色素等の自然脱落・不活性化等による限定された期間内でのR/B値の制御のしやすさ等の点から特に不織布が好ましい。
【0024】また、被覆資材における資材の材料としては、軟質、半硬質、硬質のPVC、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアクリレート、ポリビニルメタクリレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリルニトリル、ポリブタジエン、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、PET、PBTなどのポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、フェノキシ樹脂、ナイロン6、ナイロン6/6、ナイロン11、ナイロン12、MXD6ナイロンなどのポリアミド、ポリジメチルシロキサン、ポリトリメチルシリルプロピン、ポリウレタン、アイオノマー類、セロファン、ポリエチレンセロファン、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、エチルセルロース、ニトロセルロース等の軟質、硬質樹脂類、セルロース等の天然繊維類を例示することができる。
【0025】本発明に用いられる被覆資材の厚さは、色素で着色しない状態での光透過率が85%以上のものがよく、90%以上のものがより好ましいが、ネット形状の被覆資材を用いるときは、被覆資材の厚さを考慮することなく、光透過率が85%以上となるように留意することが好ましい。また、不織布形状の被覆資材の場合は、資材の強度と光透過率の兼ね合いから、10〜25g/m2の範囲、好ましくは10〜20g/m2の範囲の目付けのものを使用することが望ましい。
【0026】本発明に用いられる被覆資材の製造法には特に制約はなく、例えばその形状がフィルムの場合、基材樹脂の溶融特性、溶剤溶解性、色素の熱特性などに応じて押し出し成形、インフレーション成形、カレンダー成形によって製造するか、あるいは樹脂を溶解したワニスをベースフィルムにコーティングするか、または、織布、不織布などに色素を含浸することにより製造することができる。被覆資材における色素含有量は、着色した資材の光透過率が80%以上となる量であることが好ましく、資材の光透過率や色素の種類にもよるが、通常資材に対して0.01〜0.1%の範囲の色素を用いることができる。また、被覆資材には、農園芸用資材としての諸条件を満たすため、本発明の目的を損なわない範囲で各種添加剤を用いることもできる。かかる添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、その他の安定剤、分散剤、滑剤、防曇剤、流滴剤等を挙げることができる。そして、かかる被覆資材は、ビニールハウスとしての被覆材のほか、四方が開放された覆い、果実の袋掛け用の袋、枝掛け用資材などとしても適用することができる。
【0027】本発明に用いられる被覆資材のR/B値調節用色素としては特に制限されないが、R/B値を減少させる作用を有する光質変換青色蛍光色素としては、PTP、アントラセン、9,10−ジフェニルアントラセン等のポリフェニル系色素や、BPA、DPS、スチルベン1、スチルベン3等のスチルベン系色素や、1,4−ジスチリルベンゼンなどのスチリルベンゼン系色素や、popop、Dimethlpopopm、PBO等のオキザゾール系色素や、PBDなどのオキサジアゾール系色素や、クマリン4、クマリン151、クマリン307、クマリン311、DMAC等のクマリン系色素や、ミカホワイトATN、4−アミノフタル酸フェニルイミド等のフタルイミド系色素や、CI Vat Blue 19、CI Vat Blue 20、CI Vat Blue 22等のアントラキノン系色素や、ルミノール Red Violet 440PT、1,5−ジフェニル−3−スチリル−2−ピラゾリン等のピラゾリン系色素や、2,5−ジヒドロキシ−テレフタル酸エチル、2,5−ジヒドロキシ−4−メトキシカルボニル安息香酸エチル等のジヒドロキシテレフタレート系色素などを具体的に例示することができる。
【0028】その他、R/B値を減少させる作用を有する光質変換青色色素として、吸収極大が570〜700nmにある青色色素、例えば、チオニンブルーGO、アリザリンシアニングリーンF、キニザリングリーンSS、ライトグリーンSF黄、パテントブルーNA、ギネアグリーンB、スダンブルーB、ナフトールブルーブラック、クチナシ青色素、クロロフィル、スピルリナ青等のエネルギー関連色素又は食品・化粧品用色素や、ダイレクトスカイブルー5B、シリアススープラブルーBRR、ダイレクトファースターコイスブルーGL、ダイレクトコッパーブルー2B、コプランチングリーンG、ダイレクトファーストブラックD、アシッドバイオレット5B、アリザリンダイレクトブルーA2G、アシイドサイアニン6B、アシッドサイアニン5R、アシッドサイアニングリーンG、アシッドファーストブラックVLG、カチオンブルーGRL、カチオンブルーGLH、カチオンネイビーブルーRLH、バットブルーRSN、バットブルーBC、バットブリリアントグリーンFFB、ディスパースブルーFFR、ディスパースブルーグリーンB、ディスパースブルーFB、ディスパースターコイスブルーGL、ディスパースネイビーブルー2LG、ソルベントファーストブルーHFL、リアクティブブルー3G、リアクティブブルーR、リアクティブブルーBR、リアクティブターコイスGF、リアクティブブリリアントブルーR、アイゼンダイレクトスカイブルー5B、アイゼンプリムラターコイスブルーGLH、アイゼンプラムラキュプログリーンGH、サンライトスープラグレイCGL等の染料や、ジオキサンジンバイオレット、チオインジゴマゼンダ、ビクトリアブルーレーキ、ビクトリアブルー6Gレーキ、フタロシアニンブルーR、フタロシアニンブルーG、フタロシアニンブルーE、無金属フタロシアニン、ファストスカイブルー、紺青、コバルトブルー群青、アルカリブルーG、インダスロンブルー等の顔料などを具体的に挙げることができる。
【0029】他方、R/B値を増大させる作用を有する光質変換赤色蛍光色素としては、モルゲンF Red 300等のペリレン系色素や、ルミノール Red Violet 635P等のアントラキノン系色素や、チオインジゴ Bright Pink G、チオインジゴ Scarlet Rなどのチオインジゴ系色素や、ルミノール Bright Orange 575PT等のナフタル酸系色素や、ローダミン、アクリジン Red等のキサンテン系色素や、クマリン系色素や、ナフトレイン系色素や、特開平5−105683号公報記載のベンゾプテリジン誘導体系色素や、特開平5−32640号公報、特開平6−179660号公報記載の2,5−ビス(ジメチルアミノ)−3,6−ジシアノピラジン等のシアノピラジン誘導体系色素等を具体的に例示することができる。
【0030】その他、R/B値を増大させる作用を有する光質変換赤色色素として、吸収極大が400nm〜530nmにある光質選択性赤色色素、例えば、リソールルビンB、レーキレッドC、リソールレッド、ブリリアントレーキレッドR、トルイジンレッド、パーマネントレッド等の食品・化粧品用色素や、アリザリンレッド、アシッドブリリアントスカーレットR、カチオンブリリアントレッド4G、カチオンレッドGLT、カチオンレッドBLT、カチオンレッド6B、カチオンレッド5B、ファストスカーレットG、ディスパースレッドFL、ディスパースレッドGFL、リアクティブレッド3B、リアクティブスカーレット2G等の染料や、ナフトールレッドFRR、レーキレッド4R、ナフトールカーミンFB、ナフトールカーミンFFB、ペリレンレッドBL、ナフトールレッドM、ブリリアントファストスカーレット、ナフトールレッドBS、ナフトールレッドRN、ピラゾロンレッド、パーマネントレッド2B、ブリリアントカーミン6B、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミンBS、チオインジゴボルドー、べんがら、モリブデートオレンジ、カドミウムレッド、ナフトールレッドFGR、キナクロドンマゼンダ、ペリレンバーミリオン、ペリレンレッドBL、クロモフタールスカーレット、アンスアンスロンレッド、ナフトールレッドF5RK、ジアントラキノリルレッド、ペリレンレッド、ペリレンマルーン、ベンズイミダゾロンカーミンHF4C、ペリレンスカーレット、キナクリドンレッドE等の顔料などを具体的に挙げることができる。
【0031】本発明の植物の栽培方法の対象となる植物としては特に制限されるものではないが、農園芸用作物を好適に例示することができ、中でも本発明の優れた効果を特に享受することができるイネ、イチゴ、キク、ダリア、アサガオ、ダイズ、タマネギ、ラッキョウ、ニンニク、カニサボテン等の短日性農園芸用作物又はホウレンソウ、コムギ、バレイショ、サツマイモ、ペチュニア、ハツカダイコン、パンジー等の長日性農園芸用作物が好ましい。また、カキ、ブドウ等の果樹にも応用することができる。
【0032】本発明の植物の栽培方法においては、R/B値を制御した光に植物を暴露することにより、植物の生育花芽形成開花形態形成又は収穫時期を調節することが可能となるが、制御したR/B値の光を植物に暴露する期間は、所定の期間とすることが好ましく、植物の種類や栽培目的にもよるが、通常、R/B値が減少傾向から一定値に変化する春分を挟む1〜5ヶ月間、好ましくは1〜3ヶ月間、あるいはR/B値が一定値から増加傾向に変化する秋分を挟む1〜5ヶ月間、好ましくは1〜3ヶ月間の期間とすることができる。このように所定の期間、光質変換青色不織布、光質変換赤色不織布等を適用することにより、植物の生育花芽形成開花形態形成又は収穫時期を調節することが可能となる。
【0033】
【実施例】以下、本発明を実施例等により詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例等によって限定されるものではない。
参考例[各種被覆資材の調製]
15g目付け(15g/m2)の白不織布1m2(クラレ社製 商品名パスライト)にチオニンブルーGO 0.02gを水1Lに加え、120℃に1時間加圧加熱し、次いで冷却してから不織布を絞り乾燥させ、光質変換青色不織布を調製した。上記チオニンブルーGO 0.02gに代えて、アリザリンレッドGO 0.02g又は2,5−ビス(ジメチルアミノ)−3,6−ジシアノピラジン0.045gを用いて、それぞれ光質変換赤色不織布、光質変換蛍光赤不織布を調製した。なお、1999年9月中旬における太陽光とこれら光質変換不織布及び上記白不織布における太陽光の透過光のスペクトルをフォトリサーチ社のスペクトルスキャンSV650で測定した結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】実施例透明ビニールのハウス内で、短日性植物であるダリア(品種ハーレクイーンミックス)のプラグ苗の生育を3月6日に開始した。参考例で調製した光質変換青色不織布と光質変換蛍光赤不織布をそれぞれ30株のプラグ苗にトンネル掛けの被覆をし、対照としての無被覆の30株のプラグ苗の場合と、ダリアの開花期について比較した。その結果、青色不織布区では5月6日〜5月11日に開花し、蛍光赤不織布区では5月14日〜5月29日に開花し、無被覆の対照区では5月11日〜5月30日に開花し、青色不織布区では対照区に比べておよそ1週間開花時期が早まったが、蛍光赤不織布区では対照区より若干遅くなった。これらの結果から、短日性植物においてはR/B値を小さく制御することにより、開花時期を早めることができることがわかった。
【0036】
【発明の効果】本発明の植物の栽培方法によると、植物の生育花芽形成開花形態形成又は収穫時期を調節することが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
【識別番号】000204099
【氏名又は名称】太洋興業株式会社
【出願日】 平成13年2月23日(2001.2.23)
【代理人】 【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
【公開番号】 特開2002−247919(P2002−247919A)
【公開日】 平成14年9月3日(2002.9.3)
【出願番号】 特願2001−48794(P2001−48794)