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【発明の名称】 植栽ブロック
【発明者】 【氏名】河井 章

【要約】 【課題】軽量で保水性、透水性、耐久性に優れ、土壌を使用しないで植物を育生でき、ビル屋上、ベランダ等での使用に適した植栽ボードを得る。

【解決手段】スラグに発泡剤を添加した発泡性スラグを焼成し成形した多孔質セラミックス製の植栽ボード1と、これを支持する中間支持ボード2と、中間支持ボードを支持しかつ水を貯留する水受け皿3とから植栽ブロックを形成し、植栽ボード1の下面の脚部1aを中間支持ボードを挿通して水受け皿内に水没させて脚部から毛細管現象により植栽ボード1へ給水し、植栽ボード1上に植物を育生する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 スラグに発泡剤を添加した発泡性スラグを焼成して成形した多孔質セラミックスの植栽ボードと、この植栽ボードを支持する中間支持ボードと、中間支持ボードを支持しかつ水を貯留する水受け皿とを備え、植栽ボードの下面に設けた多孔質セラミックス製の脚部を中間支持ボードに設けた穴に嵌合挿通させ水受け皿内に水没させて脚部を介して植栽ボード上の植物に給水するようにした植栽ブロック。
【請求項2】 前記植栽ボードとその脚部を多孔質セラミックスの多数の造粒物で一体成形して形成したことを特徴とする請求項1に記載の植栽ブロック。
【請求項3】 前記水受け皿の縁材に各ブロック間の連結をするための連結手段を設け、この連結手段を中空の短管として各ブロック間に通水できるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の植栽ブロック。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ビル屋上や家庭のベランダで土壌等を使用せずに芝生等を植生するのに用いられる植栽ブロックに関する。
【0002】
【従来の技術】ビル屋上や家庭のベランダで植物を育生し、環境の緑化への取組みが種々行われている。このような植物の育生には、自然土壌や人工土壌が従来から使用されているが、これに代わるものとしてポーラスコンクリートのブロックの空隙部に人工土壌を含む培養土を充填し、これらブロックに植物を育生して床面、壁面、あるいは法面などに設置し、緑化をする方法が多数提案されている。その代表的なものとして特開平11−323882号公報(公報1)による「ポーラスコンクリート部体」の発明がある。
【0003】上記公報1の「ポーラスコンクリート部体」は、ポーラス孔とは別に口径が5〜80mmの独立又は連続した空隙穴を形成し、これらをポーラス孔と連通して形成したものである。このポーラスコンクリート部体は、代表的な形態としてブロック形状に成形し、これに客土、覆土などで土壌を空隙穴に充填し、植物を根付かせるように使用される。
【0004】土壌材を用いずに植物を植栽することができる基盤材の一例として、特開2000−92978号公報(公報2)の「無土壌植栽用セラミックブロック及びその使用方法」の発明が知られている。このセラミックブロックは、表面に植物を直接植栽することができる軽量のブロックであり、土壌材を用いずに植栽ができるとされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記公報1のポーラスコンクリート部体は、ポーラス孔と空隙穴が形成されてはいるが、素材がコンクリート材であるため重量がなお重く、土壌を充填して植栽するため土壌が流出し、植物が枯れてしまう。又流出した土壌により排水口が目詰まりするなどの問題がある。このような問題に対処するため、公報2のセラミックブロックは、軽量であって土壌を使用せず植物を植栽できるとしているが、このセラミックブロックでは次のような問題がある。
【0006】上記セラミックブロックは、嵩比重が0.8以下と明示され、軽量であるとされているが、0.8のものでは必ずしも軽量とは言えず、かつ嵩比重が0.3以下になると強度が低下するとされ、従って嵩比重の小さいものは好ましくない。この多孔質セラミックブロックに植物を植栽する際に植物の根が入り込む気孔を0.2〜2000μmの大きさとしているが、この気孔を発生させるために気孔付与材を添加しなければならないとされている。このため、材質が脆く、強度が低下する。又、保水性は80リットル/m3 以上と規定されているが、厚みが薄いと保水量が充分でなく、頻繁に散水する必要があると記載されているように保水性が不十分であり、特に夏場を想定すると炎天下ではその散水は朝晩必要である。
【0007】この発明は、上記の問題に留意して、軽量で、保水性、透水性、耐久性に優れ、気孔付与材を用いることなく形成でき、土壌を使用せずに植物を育生でき、ビルの屋上やマンションのベランダ等での使用に適する植栽ボードを提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題を解決する手段として、スラグに発泡剤を添加した発泡性スラグを焼成して成形した多孔質セラミックスの植栽ボードと、この植栽ボードを支持する中間支持ボードと、中間支持ボードを支持しかつ水を貯留する水受け皿とを備え、植栽ボードの下面に設けた多孔質セラミックス製の脚部を中間支持ボードに設けた穴に嵌合挿通させ水受け皿内に水没させて脚部を介して植栽ボード上の植物に給水するようにした植栽ブロックとしたのである。
【0009】上記の構成としたこの発明の植栽ブロックは、土壌を使用することなくビルの屋上やベランダで芝生等の植物を育生することができる。芝生を育生する場合は、予め植栽ボードのみを外して外部で芝生を植付けしておき、ある程度育生された状態で所定場所へ運んで植栽ブロックの組立てを行なうとよい。植栽ボードに芝生が育生された状態で中間支持ボード上に置き、中間支持ボードを水受け皿に位置決めすると組立てが完了する。水受け皿には、水を予め給水しておくと、その水は植栽ボードの脚部を介して植栽ボードに給水される。
【0010】植栽ボード、脚部はそれぞれ多孔質セラミックで形成され、その内部には微細な連続気孔が形成されているため、水没した脚部から連続する気孔を通じて毛細管現象により水の重力に打ち勝って上へと上昇し植栽ボードへと水は給水され、植栽ボードの全面に給水がなされる。このため、植栽ボードに育生されている芝生に給水が行なわれ、芝生が育生される。なお、多孔質セラミックには気孔付与材などを含まないため、強度が確保される。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1に実施形態の植栽ブロックの外観斜視図及び断面図、図2に分解斜視図を示す。図示の植栽ブロックAは、植栽ボード1、中間支持ボード2、水受け皿3を重ねてブロックを形成したものから成る。植栽ボード1は、本出願人他が先の特許出願である特願2000−272797号で提案した「多孔質セラミックスの製造方法」の発明により製造された多孔質セラミックスが用いられる。この多孔質セラミックスは、スラグに発泡剤を添加した発泡性スラグを焼成し、成形して得られるものであり、その詳細については後で説明する。
【0012】植栽ボード1は図示の例では四角形の平板状に形成され、その下面には複数の脚部1aが所定の間隔で基盤目状に設けられている。複数の脚部1aは植栽ボード1と同材料で一体に形成されている。中間支持ボード2は、植栽ボード1と同形状の平板状であり、植栽ボード1の脚部1aの配置間隔と同一間隔で複数の小孔2aが設けられている。中間支持ボード2は、植栽ボード1とは材料が異なり、軽い硬質の合成樹脂製の板が用いられている。合成樹脂とはプラスチック、硬質発泡スチロール、塩化ビニールなどである。上記複数の小孔2aの周囲には十字状にリブが脚材2bとして設けられている。この脚材2bは隣接する小孔2aと2aの間では十字状にクロスするリブが用いられ、そのクロス下端には通水のための孔2cが設けてある。
【0013】水受け皿3も植栽ボード1と略同形状の平板の外周に沿って縁材3aを当接して水を貯留できる皿状に形成されている。この水受け皿3上に載置される中間支持ボード2の脚材2bを受止めて位置決めするための受材3bが図示の例では4箇所につき4つの止め具3cを以て皿板の上面に設けられている。この水受け皿3も、植栽ボード1とは異なる材料で、軽い硬質の合成樹脂製の板が用いられている。
【0014】水受け皿3は、実際の使用時には、複数枚の植栽ブロックを隣接して設置するのが一般的であるから、各水受け皿3の対向する縁材3aの二辺に連結手段4が設けられ、各水受け皿3と3がこれにより連結される。この連結手段4は、図示のように、縁材3aに設けた連結孔4aに中空の短管を挿通させ、短管の両端に設けたねじ部にナットを螺合させて縁材3a同士を相互に連結する。連結手段4の短管は中空であるため、水受け皿3の上流側から注水された水が各ブロックへ流通する。
【0015】植栽ボード1の多孔質セラミックスは、スラグに発泡剤を添加して形成した発泡性スラグを焼成して作られるが、その概略は次の通りである。スラグは鋳物用キュポラで発生するキュポラスラグ、高炉で発生する高炉スラグ、転炉、電気炉などで発生する製鋼スラグなどである。このようなスラグに発泡剤を添加して発泡性スラグを形成する場合、発泡剤は0.2〜1.0重量%の範囲の炭化珪素とし、発泡性スラグは平均粒子径が4〜40μmの範囲とされ、この発泡性スラグを0.2mm〜10mm範囲内の造粒物として形成した後、その造粒物を焼成するとよい。
【0016】造粒物の形成方法としては、発泡性スラグ粉末をパン型、インテンシブミキサ(アイリッヒミキサ)などの造粒機により形成してもよく、又はスラグ粉末と発泡材(S:C)とを水と共にボールミル等湿式粉砕し、平均粒子径7〜8μmのスラリーを作製した後、スプレードライヤで乾燥して形成してもよい。なお、造粒物の粒子径を1mm以下とする場合は、発泡剤と顆粒の強度保持のため、無機バインダ(水ガラス)0.5%などや、有機バインダ(ポリビニールアルコール)0.3%などを添加するのが好ましい。
【0017】この造粒物は、発泡性スラグを無機質粒子(粒子径0.5〜10mm)の表面にコーティングして形成してもよく、これにより発泡量が制限され粒子間隙間(アグリゲート)が確保されるため、無機質粒子の種類に応じて保水性、吸水性、通気性、吸音性、吸放湿性などに優れた多孔質セラミックスを作製できる。無機質粒子は砕石、ガラス粒、スラグ粒子、砂、黒曜石発泡粒子、真珠岩発泡粒子、又は調質機能を有する材料で形成した粒子のいずれかとするのがよい。スラグに発泡剤を添加して形成した発泡性スラグは、ボールミル等の粉砕機を用いてスラグを微粉化する際に、発泡剤を添加して乾式粉砕して形成するか、又はボールミル等粉砕機内にスラグ及び発泡剤を水と共に混入させ湿式粉砕した後スプレードライヤなどで乾燥粉末化して形成する。
【0018】コーティングに際しては、無機質粒子の径によって表面積が異なり、発泡性スラグのコーティング量が、粒子間隙間(通気性や吸音性と関係する)や製品強度に影響を与えるため、発泡性スラグの添加量を調整する必要がある。又、無機質粒子の径も粒子間隙間に係わり、通気性、透水性又は吸音性に影響するため調整が必要である。
【0019】個々に独立した多孔質セラミックスを得る場合は、発泡性スラグにて形成した造粒物、又は無機質粒子に発泡性スラグをコーティングして形成した造粒物を乾燥した後、ロータリキルンなどで融着防止剤(例えば水酸化アルミニウム水簸カオリン粘土類)と共に温度1000〜1100℃で焼成する。所要形態に形成した一体成形物の多孔質セラミックスを得る場合は、発泡性スラグ、発泡性スラグにて形成した造粒物、又は無機質粒子に発泡性スラグをコーティングして形成した造粒物を耐熱容器内に充填して、あるいは押出成形機やプレス成形機にて所要形態に成形した後、トンネルキルンなどを用いて温度1000〜1100℃で焼成する。
【0020】具体的に1例として挙げれば次のようなものである。無機質粒子として、スラグ粒(粒径1〜2mm、粒径2〜3mm)、黒曜石発泡粒(パーライト;粒径0.7〜1.2mm、粒径1.7〜2.4mm、粒径4.0〜4.8mm)をそれぞれ準備し、コンクリートミキサー(301容量)内において、スラグ粒2kg(1800〜1900ml)に対して発泡性スラグ1kgの割合でコーティングする。
【0021】より具体的には、メチルセルロース1重量%水溶液(有機質バインダー)をスプレーガンで噴霧して無機質粒子の表面を濡らしながら転動させて、造粒物をその表面にコーティングする。その後、耐熱容器中に充填し、温度1000〜1020℃で30分、昇温時間3.5時間の条件下焼成発泡させ、板状の多孔質セラミックスを作製する。
【0022】得られた多孔質セラミックスは、1つ1つの粒子の表面層に数ミクロンから100ミクロン程度の大きさを持つ無数の連続気孔を有し、無機質粒子の表面に造粒物をコーティングしているため、発泡量が制限され平均500〜600ミクロン程度の粒子間隙間(アグリゲート)が確保され、吸水性および保水性の他、通気性、透水性に富むものとなった。以下表1に各物性値を示す。また、黒曜石発泡粒にコーティングしたものは、優れた吸音特性を有する。
【0023】
【表1】

【0024】上記の構成とした実施形態の植栽ブロックは、植栽ボード1、中間支持ボード2、水受け皿3を図1のように組立て、その複数組のブロックを連結手段4により連結し、図7のように、例えばビルの屋上又はマンションのベランダに設置して使用される。各ホードの組立ての際、水受け皿3を所定位置に配置し、その上に中間支持ボード2を置き、このとき脚材2bを止め具に当接させて位置決めし、さらに中間支持ボード2の小孔2aに植栽ボード1の脚部1aを挿通させて脚部1aの下方を水受け皿3に貯留されている水内に水没させる。
【0025】複数組の植栽ブロックの水受け皿3、3・・・はそれぞれ互いに連結手段4で連結されて配置され、連結手段4の中空短管を通じて水が各水受け皿3、3・・・に給水される。植栽ブロックの上流側には貯水タンク5が設置され、このタンク5に貯留された水が各水受け皿3、3・・・へ給水される。タンク5に水位センサSが設けられ、水位が低下すると制御部10から電磁弁Vに信号を送り、電磁弁Vを開いて給水ラインにより、タンク5へ給水する。上記給水はポンプにより循環させるようにしてもよい。
【0026】こうして給水される植栽ブロックには、例えば芝生が植生される。この場合、芝生は最初から植栽ブロック上に植えるのではなく、植栽ボード1だけを取り外して外部で植物の種を撒き予め初期の芝生の育生を行なうとよい。そして、ある程度芝生が生長すると、植栽ボード1と芝生を各ブロック毎にビルの屋上又はベランダへ運んで、中間支持ボード2上へ乗せてセットする。その後は水を供給するだけで芝生は生育が維持される。植栽ボード1の粒子間は平均500〜600ミクロン程度の空隙を有するため、芝生等毛根の細い植物の育成に適している。
【0027】植栽ボード1を中間支持ボード2の上に乗せ、水受け皿3、3・・・に水を給水した際に、植栽ボード1上に生育された芝生には植栽ボード1の脚部1aの多孔質セラミックスの粒子間に作用する毛細管現象により給水が行なわれる。植栽ボード1も脚部1aも共に多孔質セラミックスで形成されているから、脚部1aの下部が水受け皿3、3・・・内に水没されているため、脚部1aの水没していない部分に毛細管現象で水が伝達される。
【0028】これは脚部1aを形成している粒状物の微細組織内には微細な連続気孔が含まれているため、その連続気孔内に水が毛細管現象で伝達され、脚部1aの下部から上部へと重力に逆らって上昇し、植栽ボード1へと伝達され植栽ボード1の全面に給水されるからである。植栽ボード1から芝生に水分が吸い取られると、植栽ボード1へは脚部1aから常に一定量の水が送られ、水枯れすることなく給水が行なわれる。このため、必要以上の水を与えた場合に発生し易い各種の病気や根腐れの防止にも役立つ。
【0029】又、植栽ボード1に芝生を育生した後、植栽ブロックを1単位として多量に設置する遠隔地に運搬する際も植栽ボード1には多孔質セラミックスの微細な連続気孔内に多量の水を含んでいるため、夏の炎天下に放置した状態でも一定期間水を給水せずとも直ちに芝生が枯れることはない。上記植栽ブロックにより育生できる植物の対象は、芝生以外にも苔や一部シダ類が含まれる。多孔質セラミックスには気孔付与材を含んでいないため、材料としての強度も十分確保されている。
【0030】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、この発明の植栽ブロックは発泡性スラグを焼成、成形した多孔質セラミックス製の植栽ボードに脚部を設け、中間支持ボードでこれを支持し、中間支持ボードを水受け皿で支持しかつ水を貯留、給水するようにしたから、水受け皿内に水没する脚部を介して植栽ボードに給水を行い、植栽ボードに植付けられた植物を育生することができる。水受け皿に水を貯留する限り、植物に水を補給し続けることができ、このため夏季の炎天下でも散水を必要とせず、土壌を使用せず多孔質セラミックス製であるため軽量である。
【出願人】 【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
【出願日】 平成13年2月23日(2001.2.23)
【代理人】 【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二 (外2名)
【公開番号】 特開2002−247915(P2002−247915A)
【公開日】 平成14年9月3日(2002.9.3)
【出願番号】 特願2001−48382(P2001−48382)