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【発明の名称】 水耕栽培用育苗シート
【発明者】 【氏名】小西 武四

【氏名】森安 英俊

【要約】 【課題】発芽の成長に不揃いなく、田植え機での掻き取りを均一に、容易に行うことができ、かつ横方向の安定性のよい水耕栽培用育苗シートを提供する。

【解決手段】生分解性複合繊維を10質量%以上含む不織布からなり、該不織布には、短径が0.3〜3mmの明瞭なる孔が存在し、かつ横方向における湿潤伸度が100%以下である不織布からなる水耕栽培用育苗シート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 生分解性複合繊維を10質量%以上含む不織布からなり、該不織布には、短径が0.3〜3mmの明瞭なる孔が存在し、かつ横方向における湿潤伸度が100%以下である不織布からなる水耕栽培用育苗シート。
【請求項2】 不織布の縦方向における湿潤強力が3.0Kg/5cm以下である請求項1に記載の水耕栽培用育苗シート。
【請求項3】 不織布の目付が10〜100g/m2である請求項1または2に記載の水耕栽培用育苗シート。
【請求項4】 不織布の表面の少なくとも一部がポリビニルアルコール系樹脂によって被覆されてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の水耕栽培用育苗シート。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水耕栽培用育苗シートに関するものであり、さらに詳しくは長尺マット上面に水稲苗を出芽させて、田植え機による移植栽培を容易にする水耕栽培用育苗シートに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、田植え機による移植栽培として、育苗箱で育苗した水稲苗を移植する方法があるが、この育苗箱による水稲苗の栽培方法は、灌水した苗マットに水稲種子を播種し、出芽棚に並べるかあるいは積み上げて保温し、出芽すれば棚あるいは積み上げから下ろして、ビニールハウス内に並べてトンネルをかけ、緑化、硬化を図り灌水・保温して育成し、移植に適した状態に育苗したら、育苗箱をトラックに積み込み、狭い畦を歩いて本田に持ち込み、苗マットを箱から剥がして田植え機に搭載し、田植え機の掻き取り爪で水稲苗を苗マットから掻き取って移植している。
【0003】その際、育苗基材として薄い不織布にて形成した水稲苗栽培用の長尺シートを水耕培養水槽の底部に敷き込み、長尺シート上面に催芽した水稲種子を播種し、水槽内に水または培養液を循環して育苗する水稲苗の栽培方法が開発されている。この方法で育苗された水稲苗は、移植に適した状態になると、長尺シートを巻き込んで田植え機に搭載し、巻きほぐした長尺シートから水稲苗を掻き取って移植することができる。
【0004】ところが、長尺シートを形成する不織布は、落綿を精練・脱色したものを各繊維にばらばらにし、この繊維を縦横に絡ませて圧縮し、接着剤で繊維相互を固定して布状としているので、催芽した水稲種子が出根する際に長尺シートを貫通しにくく、水稲種子が持ち上げられる根上がりが起こりやすい。根上がりすると、長尺シートに根が食い込まないので、水稲苗は各個にバラバラとなり、田植え機にかからなくなる。
【0005】そこで、長尺シートを形成する不織布として、例えば特許第2940608号明細書には、孔あき不織布を使用し、催芽した水稲種子が出根する際にシートを貫通し易くしようとする試みも為されている。しかしながら、かかる不織布は、孔の微妙な空き具合によって、催芽した水稲種子が出根しない箇所や欠株が発生したり、その成長が不揃いになったりするという問題があった。また、一般的な孔あき不織布では、長尺シートの縦方向における湿潤強力が大きすぎる傾向があるため、田植え機の掻き取り爪で掻き取る際に切れにくかったり、横方向における湿潤伸度が大きすぎたりするため、均一に掻き取りにくく、いわゆる横ゆれが生じて欠株ができるという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述の問題を解決するものであり、発芽の成長に不揃いなく、田植え機での掻き取りを容易にかつ均一に行うことができ、かつ特に横方向の安定性に優れた水耕栽培用育苗シートを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、田植え機による移植栽培を容易にする育苗シートに関し鋭意研究を重ねた結果、特定の孔と物理的特性を有する不織布から得られる水耕栽培用育苗シートによれば、発芽の成長に不揃いなく、田植え機での掻き取りを均一に、容易に行うことのできることによって、欠株率を少なくすることができることを見出し、本発明に到達した。
【0008】すなわち、本発明は、生分解性複合繊維を10質量%以上含む不織布からなり、該不織布には、短径が0.3〜3mmの明瞭なる孔が存在し、かつ横方向における湿潤伸度が100%以下である不織布からなる水耕栽培用育苗シートである。
【0009】
【発明の実施の形態】まず、本発明の水耕栽培用育苗シートを構成する不織布について説明する。本発明に係る不織布は、生分解性複合繊維を10質量%以上含む点に特徴を有する。該複合繊維を混綿することにより、不織布の形態安定性、特に横方向の形態安定性が向上し、田植機による移植時の欠株率を減少させることができる。該複合繊維の混綿率は、20質量%以上が好ましい。該複合繊維の混綿率が10質量%未満であると不織布の形態安定性が十分得られず、横ゆれにより欠株が生じる結果となる。
【0010】かかる複合繊維を構成するポリマーとしては、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ(ε−カプロラクトン)などの各種脂肪族ポリエステルまたはそのコポリエステル、ポリビニルアルコール系ポリマー等の生分解性ポリマーがあげられる。
【0011】該繊維の複合形態については、特に限定はなく、目的に応じて選定すればよく、芯鞘型、偏心芯鞘型、多層貼合型、サイドバイサイド型、ランダム複合型等種々の形態が挙げられるが、芯鞘型複合繊維が好ましく用いられる。芯鞘型複合繊維とする場合、鞘成分を融点が70〜150℃であるポリマーを用いることが好ましい。
【0012】一方、本発明に係る不織布を構成する生分解性複合繊維以外の繊維については、特に限定はなく、目的に応じて選定すればよいが、該複合繊維と同様、生分解性を有する繊維を用いることが好ましい。かかる繊維として、レーヨン、デュラセル、木綿、羊毛あるいは各種パルプ等の天然繊維、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ(ε−カプロラクトン)などの各種脂肪族ポリエステルまたはそのコポリエステル、ポリビニルアルコール系ポリマー等からなる合成繊維等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組合わせたものであってもよい。
【0013】本発明における不織布は、上記の生分解性ポリマーからなる繊維を用いて、短繊維不織布を用いることが好ましい。本発明において、短繊維を用いる場合はその繊維長は、20〜100mmが好ましく、30〜70mmがさらに好ましい。
【0014】該不織布の製造方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、得られた短繊維をカーディングし、短繊維ウェブを得ることができる。かかる短繊維ウェブは、ランダムウェブ、セミランダムウェブ、パラレルウェブ等いずれを用いてもよいが、特にクロスレイド法により得られるウェブが好ましく用いられる。
【0015】次に本発明の水耕栽培用育苗シートについて説明する。本発明に係る育苗シートは、明瞭なる孔を有する点に特徴を有する。本発明にいう「明瞭なる孔」とは、該不織布に形成される孔であり、かつ孔の内部には繊維のはみ出しや交差が極めて少ないものをいう。かかる不織布は、上記の繊維からなるカードウェブを水流絡合によって処理することにより得ることができる。水流絡合における噴射の水流量、水流速度、位置、角度等、さらには金網のメッシュの大きさなどを調整することによって、明瞭なる孔が形成される。
【0016】本発明における明瞭な孔を得るためには、生産速度と水流を噴射する圧力の設定が重要である。水圧は少なくとも40kg/cm2以上が必要であり、生産速度の上昇とともに水圧も下記の式によって示された値に設定することが好ましい。
P=40+0.4Sここで、Pは水圧(kg/cm2)であり、Sは生産速度(m/分)である。
【0017】なお、水流絡合不織布の生産に際しては、水流絡合は一段のみでなく、数段階に分けて不織布ウェブに水流が噴射される。普通、最初はウェブを乱さないために10〜20kg/cm2の低圧力が適用され、二段目、三段目以降において、30kg/cm2またはそれ以上が適用される。本発明は、そのいずれかの段階で少なくとも上記式を満足する水圧を適用することが好ましい。
【0018】従来の孔あき不織布の孔はその大きさも形状も不揃いであるが、本発明における明瞭なる孔は、その形状が均一であり、かつその短径は0.3〜3mmである。孔の短径が0.3mm未満であると、催芽した水稲種子が出根する際にシートを貫通しにくくなり、発芽の際に苗の高さが不揃いとなり、均一な田植えができない。一方、孔の短径が3mmを超えると、種が均一に配置されず、その結果、発芽が不揃いとなる。
【0019】また、明瞭なる孔の数は1平方インチ当り30〜200個が好ましく、より好ましくは、50〜120個である。孔の数が1平方インチ当り30未満のように少ない場合、および200個を超える場合は均一な発芽が得られにくい場合がある。
【0020】本発明の水耕栽培用育苗シートは、不織布に穿かれた孔のほとんどがかかる明瞭なる孔が設けられたものであることによって、催芽した水稲種子の成長が不揃いになったりすることもなく、所期の目的が達成されるのである。
【0021】また、本発明の水耕栽培用育苗シートは、その横方向における湿潤伸度が100%以下であり、20〜80%が好ましい。横方向における湿潤伸度が100%を超えると、田植え機の掻き取り爪で掻き取る際に偏って均一に掻き取りにくくなり、横方向の安定性が得られず、欠株ができる原因となる。なお、本発明にいう横方向とは、不織布のCD(クロスディレクション)方向を示すものであり、本発明の育苗シートとした場合に、該シートの幅方向をいう。
【0022】また、本発明の水耕栽培用育苗シートは、その縦方向における湿潤強力が3.0Kg/5cm以下であることが好ましく、さらに好ましくは、0.3〜2.0Kg/5cmである。縦方向における湿潤強力が3.0Kg/5cmを超えると、田植え機の掻き取り爪で掻き取る際に切れにくい場合がある。なお、本発明にいう縦方向とは、不織布のMD(マシンディレクション)方向を示すものであり、本発明の育苗シートとした場合に、該シートの長さ方向をいう。
【0023】本発明の育苗シートの目付は、10〜100g/m2であることが好ましい。10g/m2未満では育苗マットとしての形状を保ちにくく作業に支障を来たす場合があり、100g/m2を超えると組織が緻密となり後述する明瞭なる孔を開けにくい場合がある。
【0024】本発明の水耕栽培用育苗シートは必要に応じて、部分けん化ポリビニルアルコール系樹脂、望ましくは完全けん化ポリビニルアルコール系樹脂によってコーテイングしてもよい。該樹脂で被覆することにより、湿潤時における横方向の形態安定性が一段と向上し、田植え機による移植の際の欠株率を低下させることができる。当該ポリビニルアルコール系樹脂の被覆量は不織布に対して0.1〜10質量%が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の被覆量が不織布に対して0.1質量%未満であると被覆による効果が十分に得られない場合がある。ポリビニルアルコール系樹脂の被覆量は不織布に対して10質量%を超えると不織布が硬くなり作業性が悪化する場合がある。
【0025】該樹脂の被覆方法は特に限定されず、プリント法、パダー法、浸漬法等が挙げられるが、効率よく被覆できる点からプリント法、パダー法が好ましく採用される。
【0026】
【実施例】以下に水耕栽培用育苗用シートの製造方法を具体的に説明するが、本発明はこれになんら拘束されるものではない。なお、本実施例中の各物性値は以下の方法により測定されたものである。
(1)湿潤伸度の測定JIS L−1085に準じ、湿潤後の伸度を測定した。
(2)湿潤強力の測定JIS L−1085に準じ、湿潤後の強力を測定した。
【0027】実施例1融点170℃のポリ乳酸を芯成分、融点130℃のポリ乳酸を鞘成分とする、芯鞘型生分解性複合繊維(2dtex、カット長51mm)30質量%とレーヨン(2.2dtex、カット長51mm)70質量%からなる混合綿から、クロスレイド法により不織布を得た。生産速度は25m/分であり、一段目が10kg/cm2、二段目50kg/cm2、三段目70kg/cm2、四段目70kg/cm2の水圧を適用し、水流絡合を施した。水流絡合後、ウェブをシリンダー乾燥し、さらに135℃で熱処理を施した。得られた不織布には、不織布の流れ方向の長径が2mm、不織布の流れ方向と直角である横方向の短径が1mmである孔が、1平方インチ当り110個存在した。孔は明瞭に開いており、孔を横切る繊維はほとんど見られなかった。得られた不織布について完全けん化ポリビニルアルコール系樹脂((株)クラレ製)を不織布に対して0.5質量%被覆した。結果を表1に示す。
【0028】上記不織布上に催芽状態のコシヒカリをほぼ均一に播種し、坩水させて育苗を行った。稲の育苗後、シート巻きとって苗ロールとし、田植機にセットして田植えを行ったところ、田植機の爪で容易に切ることができ、また、苗の根をいためることもなかった。また、横方向の安定性もよく、欠株率は1%以下であった。
【0029】
【表1】

【0030】実施例2実施例1で使用した複合繊維40質量%と融点170℃のポリ乳酸繊維(1.7dtex、カット長51mm)60質量%からなる混合綿から、クロスレイド法によりウエブを製造し、水流絡合を施した。次いで、130℃で乾燥熱処理し、不織布を得た。得られた不織布には、不織布の流れ方向の長径が2.4mm、不織布の流れ方向と直角である横方向の短径が1mmである孔が、1平方インチ当り88個存在した。孔は明瞭に開いており、孔を横切る繊維はほとんど見られなかった。得られた不織布に完全けん化ポリビニルアルコール系樹脂((株)クラレ製)を0.5質量%被覆した。結果を表1に示す。この不織布上に実施例1と同様に播種し、稲の育苗後、シート巻きとって苗ロールとし、田植機にセットして田植えを行ったところ、田植機の爪で容易に干切ることができ、苗の根をいためることもなかった。また、横方向の安定性もよく、欠株率は1.0%以下であった。
【0031】実施例3実施例1において生分解性複合繊維/レーヨン=30/70(質量比)からなる不織布を135℃でカレンダー処理した。得られた不織布28cm巾上に実施例1と同様に播種し、稲の育苗後、シートに巻きとって苗ロールとし、田植機にセットして田植えを行ったところ、田植機の爪で容易に干切ることができ、苗の根をいためることもなかった。また、横方向の安定性もよく、欠株率は1.0%以下であった。
【0032】比較例1レーヨン(2.2dtex、カット長51mm)を100質量%用いたこと以外は実施例1と同様にして不織布を製造した。得られた不織布について実施例1と同様に播種し、稲の育苗後、シートに巻きとって苗ロールとし、田植機にセットして田植えを行ったところ、横方向の安定性が極めて悪く、育苗シート両端が幅縮みし、欠株率の大きいものとなった。
【0033】
【発明の効果】本発明の水耕栽培用育苗マットを使用すれば、発芽の成長に不揃いなく、田植え機での掻き取りを均一に、容易に行うことのでき、横方向の安定性のよい水耕栽培用育苗シートを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
【出願日】 平成13年1月18日(2001.1.18)
【代理人】
【公開番号】 特開2002−209460(P2002−209460A)
【公開日】 平成14年7月30日(2002.7.30)
【出願番号】 特願2001−9895(P2001−9895)